ソロで数々の難壁を初登頂してきた奈良原和志が、伝説的登山家の初登頂に疑惑を持たれた最難関のローツェ南壁に挑む本格山岳小説。
山岳冒険小説や山岳警察小説といった山を舞台にした小説は数多あるが、登攀自体にここまで的を絞った山岳小説は稀であろう。
ローツェ南壁登攀の前哨戦として、先輩アルピニストの磯村とと
...続きを読むもに挑むローツェ・シャール縦走もリアル感がタップリ迫力のある描写で、著者もこのコースを経験したのだろうかとの思いがよぎる。
「単なる功名心や征服欲のためではなく、素直で謙虚な心で山と戯れる人びとが増えてくれば、人類はそれだけ豊かになるはずだ」との和志の思いは、作者の思いでもあるだろう。
「大事なのは心の中の真実ですよ。・・・必要なのは、自分が信じることができる真実なんだと思います」は、登攀ばかりでなく全ての事柄に当てはまる言葉。
3部作シリーズだそうで、残りもいつか読んでみたい。