主人公である本郷は元探偵である。
ドラマや小説の中に登場する探偵とは違い実際の探偵は法に許された範囲でしか活動することができない。
しかも勤めていた探偵事務所が解散となり失業中の身ともなれば、せっかくの口利きは無駄にしたくない。
警察官の素行を調査する監察の仕事を得た本郷は、警察官にしか使えない調査
...続きを読む方法に驚きながらも戸惑いを隠せない。
何故なら、監察の仕事とは犯罪を摘発することや犯人を逮捕することではないからだ。
悪事の証拠を揃えても、諸事情から闇から闇へと葬らなければならないこともあるらしい。
本郷にはそのあたりがどうにも納得できない。
ひとりの女性が殺害された。
本郷たちは監察の対象となっている浅野の素行調査をしているうちに、浮気相手の姉妹が殺人事件の被害者だと知る。
怪しげな動きをする機捜の小松など、事件は思いもかけない方向へと進んで行く。
警察官を取り締まる警察。
監察とは、監察が果たすべき役割とは。
警察小説であまり描かれることのない監察が物語の中心にいるのは新鮮だった。
キャラクターもいい。
一番のお気に入りは監察の先輩である北本だ。
やけに経験豊かな一面を見せるかと思うと、妙に子供っぽい一面をのぞかせたりする。
入江に心酔し、監察の仕事に真正面から取り組んでいる姿もいい。
「嫌われる仕事」 といったイメージしかなかった監察の果たす役割が丁寧に描かれていて、従来の警察小説とは少し違った楽しみ方ができた。