あらすじ
数々の難壁に初登攀の足跡を残してきた新進気鋭のアルパインクライマー奈良原和志。彼が初めて目指す八〇〇〇メートル峰は世界第四位のヒマラヤのローツェ、しかも最難関の南壁ルートだった。そこは伝説的登山家トモ・チェセンの“疑惑の登頂”の舞台、因縁の壁でもあった――名もなき日本人がいわれのない妨害にも屈せず、世界屈指の大岩壁に単独登攀(ソロ)で挑む本格山岳小説。
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Posted by ブクログ
笹本稜平『ソロ ローツェ南壁』祥伝社文庫。
笹本稜平が描く本格山岳小説。山の世界を舞台にした人間ドラマがあり、男の意地があり、ロマンがある。ミステリーとサスペンスの要素もあり、非常に面白い。
無名ながら数々の難壁を単独登攀で制覇してきた新鋭アルパインクライマー奈良原和志が標高世界4位のローツェ最難関の南壁冬期単独登攀に挑む。
ローツェ南壁を単独登攀した伝説の登山家トモ・チェセンはその登攀を疑問視されたことから第一線を退く。奈良原和志はトモの疑惑を晴らすため、さらなる己れの高見を目指すために妨害を受けながらも難攻不落のローツェ南壁の制覇を目指す。
本作はジョージ・マロリーが果たしてエベレストの山頂に立ったのかというミステリーを1つのテーマにした夢枕獏の『神々の山嶺』と通じるものがあるが、『神々の山嶺』に比べると些か劣るように思う。それだけ『神々の山嶺』が抜群の傑作であるのは仕方がない事実であり、本作が山岳小説の中でも一定水準以上にあるのは間違いない。
本体価格870円
★★★★★
Posted by ブクログ
そうか、笹本稜平は亡くなっていたのか。
この人の男性と女性の会話の感じが少し苦手なのだ。そもそもすべての会話がなんというか不自然というか前時代的な感がある。とはいえ山岳本は好きなので読んでしまうのだが。
Posted by ブクログ
ソロで数々の難壁を初登頂してきた奈良原和志が、伝説的登山家の初登頂に疑惑を持たれた最難関のローツェ南壁に挑む本格山岳小説。
山岳冒険小説や山岳警察小説といった山を舞台にした小説は数多あるが、登攀自体にここまで的を絞った山岳小説は稀であろう。
ローツェ南壁登攀の前哨戦として、先輩アルピニストの磯村とともに挑むローツェ・シャール縦走もリアル感がタップリ迫力のある描写で、著者もこのコースを経験したのだろうかとの思いがよぎる。
「単なる功名心や征服欲のためではなく、素直で謙虚な心で山と戯れる人びとが増えてくれば、人類はそれだけ豊かになるはずだ」との和志の思いは、作者の思いでもあるだろう。
「大事なのは心の中の真実ですよ。・・・必要なのは、自分が信じることができる真実なんだと思います」は、登攀ばかりでなく全ての事柄に当てはまる言葉。
3部作シリーズだそうで、残りもいつか読んでみたい。
Posted by ブクログ
ヒマラヤ、バルンツェの氷壁をソロで踏破した奈良原和志は一匹狼のアルピニストだった。仲間であり師である磯村に迎えられ、下山してからヒマラヤの登山記録を編纂しているエリザベス・ホーリーのインタビューを受けた。
大人数でチームを組み、大量の酸素ボンベや器材を活用して登る極地法が一般的な登山のイメージだが近頃は高山病のリスクを避けるため軽装で短時間での登坂と下山を目指すアルパインスタイルが主流と成りつつある。
他人と関わることを苦手とする和志としてはバディのスキルや判断決心の容易さから単独でのアルパインスタイルが性に合っており、合理的だった。
和志の夢である、世界第4位の高さでありながら実質高低差が3200mにも及ぶローツェ南壁の初単独登攀を実現するために、磯村からノースリッジ社の支援を受けることを提案された。1人の方が気が楽、孤独の中での集中力が最もパフォーマンスが発揮できるといった考えは次第に薄まり、周囲の期待を受け、仲間の支援があることが集中のための要素と思うようになってきた。
ノースリッジ社の担当の広川友梨、社長の山際、そしてローツェ南壁単独初登攀を疑惑ながらも打ち立てた先人トモ・チェセンを味方に付けローツェ南壁に和志は挑む。
Posted by ブクログ
無名のアルパインクライマー・奈良原和志がスポンサーや仲間を得て成長して行く様子は、読んでいて気持ちが良かったです。そしてマルク一味やネパール役人などダークサイドが存在しての攻防戦は、まさしく人間の性(さが)で、アルパインクライミングにおいても例外じゃないですね。
「大事なのは誰かがその頂に立ったという真実であって、それを信じることが登山という文化の高貴なモラル」の一文、なかなかシビアな課題だなと思いました。結局は「たとえ噓をつく人間がいたとしても、それは当人が心に恥を抱えて生きればいいだけの話」なのでしょうが、人間が不完全な以上、この課題は永遠に続きますね。
Posted by ブクログ
良えよ。笹本君の久しぶりの山岳小説や。
駐在警察はイマイチやったもんなあ。テレビドラマもねえ。
マルクって奴が何するねんとハラハラしながら読み進んだが・・・チョット肩透かし。
Posted by ブクログ
ソロクライマー、奈良原和志。知り合いの磯村のパーミッションに相乗りし、アルパインスタイルで未踏の壁やバリエーションルートに挑戦している。
磯村の公募登山で一緒だったメンバーが日本の登山用具メーカーで広報をやっており、このメーカーのサポートをもらって、ローツェ南壁の登記単独登攀に挑戦する。
と、こう書いてしまえば簡単だが、ソロクライマーの奈良原がすんなりサポートに承諾しないわ、ローツェにはなかなか挑戦できないわと、ストーリーが交錯する。