あらすじ
海賊より強欲! 積荷の財貨は10億ドル!
日本本土から約2000キロ、北緯28度5分、東経158度19分の地点で、興田真佐人は400年前に沈んだスペイン船「アンヘル・デ・アレグリア」を発見した。船は、海山の上、水深50メートルの地点で危うい均衡を保っている。海底で運命の出会いを果たした真佐人は、一刻も早い「アンヘル・デ・アレグリア」の引き揚げを目指すが、そのコストは天文学的なものになる。最新鋭の探査船「オーシャン・イリュージョン」を所有する水中遺物専門のサルベージ会社「ネプチューン・サルベージ」CEOジェイク・ハドソンは、共同での引き揚げを真佐人たちに提案するが、その条件は到底受け入れられるものではない。障害は、地上だけにあるわけではなかった。沈船ポイントから東に100キロの地点にあった海底火山が噴火を繰り返し、ついに新島が誕生した。震動によりあと何百メートルかずり落ちたら、「アンヘル・デ・アレグリア」は4000メートルの深海底へ一直線に墜落してしまう--。
水中考古学を専攻する興田真佐人は、四百年前、祖先・正五郎とともに沈んだスペイン船「アンヘル・デ・アレグリア」号を、太平洋のど真ん中の海底で発見した。スペイン人実業家アントニオと引き揚げの計画を練る真佐人の前に、世界一のトレジャーハンティング会社「ネプチューン」のCEOジェイク・ハドソンが立ちはだかる。恩師の田野倉教授、同期の片岡亞希の協力を得て、真佐人の“魂の遺産”獲得をめぐる闘いが始まった。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
海洋冒険小説と謳っているから、ドンドンパチパチの活劇要素たっぷりの作品かとの思惑とは全く違った(笑)(活劇要素を求めるなら、未読だが『太平洋の薔薇』らしい)。
しかし、沈船をめぐってのスリリングな展開に、本を置く能わず。
400年の時を超えて、祖先が眠っている沈船の引き揚げを計画するその末裔。
そのプロジェクトに携わる水中考古学の泰斗。
沈船の財貨を巡って引き揚げ方法で敵対するビジネスパーソン。
さらには、頻発する海底火山の噴火。
果たして、沈船の引き揚げは?
壮大なスケールで描く海洋ロマンは、どなたかのレビューにあったように、猛暑たけなわの今、読むのにふさわしい。
また、こんなエンターテイメントを書く著者ほど、「読んだ人全てに希望と勇気を与える」作家は、稀だろう。
その思いは、作中の水中考古学者田野倉のこんなセリフにも現れている。
「前進のない人生は生きることを放棄した人生だ。どんな立派な理屈をこねようとそんな人生には人を動かす力もない。そもそも未来というのはリスクそのものだ。一番大事なのは、そのリスクを背負って一歩前に踏み出すことなんだ。おれはそれを戦略的楽天主義と呼んでいる」