瀬名秀明のレビュー一覧
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「パラサイト・イヴ」は、ミトコンドリアという細胞内小器官をテーマに据えた、斬新なSFホラーです。生物学への興味から読み始めましたが、単なる知識の羅列に終わらず、生命の根源的な問いを投げかけてくる物語に引き込まれました。
物語は、主人公・利明の妻・聖美の謎の急死から始まります。冒頭のこの衝撃的な出来事が、物語全体を覆う不気味な雰囲気を作り出しています。死後、聖美の臓器はドナーとして提供されますが、利明はまるで何かに取り憑かれたように、聖美の肝臓の培養に取り組み、「聖美は生きている」と信じようとします。この常軌を逸した行動は、後に聖美の肉体を乗っ取った**「イヴ」の思惑とも絡み合い、読者に生命の定 -
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将棋や絵画、小説といった分野にAIが進出した近未来。人々がAI(とAIが生み出す新しい時代)に対し時に葛藤し、時に煩悶しながら向き合っていく様子を描いた短編集。
4つの作品が収録されており、初出は2012年〜19年の間。
当時は遠くない未来だった作中の世界だが、この感想を書いている2025年になると誰でもAIに頼めばそれなりに整った文章やそこそこ高精度な絵を描ける時代が来ており、かなりの部分で現実が作中の世界に追いついたように感じる。
正直作者の伝えたい主張を受け止められたか自信のはないけれど、読後には上手く説明できないけど何となく何かを受けとったような気持ちになった。
AI技術 -
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ネタバレ解説とか好きだからもう「はじめに」から面白かった!
ホラージャンルを5W1Hに分類しようなんて思わないでしょ。楽しい。
それで言うと全部の項目に好きなジャンルがあったから、自分って案外ホラー好きなんだな、と思った。
この本は全章怖くなかった。入門書扱いだからかな?ホラー苦手でも読めそう。
[特に良かったやつ↓]
終わった町 芦花公園
とざし念仏 五味弘文
一一分間 瀬名秀明
民法第961条 梨
最近モキュメンタリー(っていうジャンルだって初めて知った)系の小説多いよねって前話してたけど、好きなジャンルはどれだけ増えてくれても有難いな。
梨先生の、「折り目をつけてください」でワクワクしながら -
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ネタバレ2020年2月に刊行されていた、瀬名秀明さんの小説の最新刊である。文庫化されているのを見かけ、手に取った。タイトルからして相変わらず小難しそうだが、読んでみるとすいすいと読める。いい意味で裏切られた印象を受けた。
一時期はロボット分野に傾倒していた瀬名さんだが、本作のテーマはAI(Artificial Intelligence)、人工知能である。全4編に描かれたAIの実力は、決して遠い未来の話とは思えない。AIという言葉は、現代社会でも人口に膾炙しているのだから。
『負ける』。チェスや将棋において、人間対AIの対戦は実際に行われたが、今では聞かなくなった。藤井聡太ら現役棋士がAIで研 -
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AI(Artificial Intelligence)人工知能が進歩した先にどんな社会が到来するのか?このAIの定義を私は明確に語ることができていないのですが、私なりの理解でいうと、「機会が人間の知能を持ったように振る舞えるもの」となります。
機械学習、ディープラーニングと言われるように、機会が自ら学びを深めることができる存在であります。
絵画、小説など、ある作家の作風を機械が学び極めると、あたかもその作家が創造した絵画や小説を生み出せるのかもしれない。その作品は、著作権を侵害したとえるのか?本書は、4つの短編集であります。テーマは進化したAIが存在している社会での出来事です。チェスや将棋、囲 -
ネタバレ 購入済み
・「どうしてこいつ(AI手術ロボット。《サージェリー・プロ》)は、わたしのやってほしいことがわかるんだ?」
・「そうです、ブラック・ジャックさん。《サージェリー・プロ》にはこれができるんです。
誰よりも早くあなたの思ったところへ先回りして、サポートすることができるんです。
なんといっても《サージェリー・プロ》のAIの学習には、ブラック・ジャックさん、
あなたの手術の映像をいくつも使ったんですから…!」
・「まったくおまえさんには驚かされる。未来にはこのわたしが、世界中の病院でメスをふるっているというわけか。フフフ…。
この手術代は全てひっくるめておまえさんに請求するから、そのつもり -
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小中学生のころに読みふけっていた、手塚治虫の『ブラック・ジャック』が、現代に実在したら、という想定で描かれた作品です。
AI医療や冷凍睡眠とiPS細胞、安楽死についてなど、昨今の医療テーマを扱っているだけでなく、原作のストーリーをしっかりと踏まえた物語になっていることや、ドクター・キリコなどの登場人物もその魅力を残したまま描かれていて、とても楽しく読むことができました。
全部で5つのエピソードが収録されていますが、どの物語も、切なくもあり温かくもある原作同様の読後感で、とても満足できるものでした。
やはり、ブラック・ジャックはカッコいいです。