瀬名秀明のレビュー一覧
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「ホラーは怖くて手が出せない方でも、ホラージャンルを整理しつつ、恐怖を紐解いていくことで、挑戦することができるのでは」という本書のコンセプトで他に類を見ない一風変わったホラー入門書で興味を惹かれた。5W1Hにセグメントされたユニークな設定 気鋭の現代ホラー作家の短編を8つに分け、ホラーというジャンルを体系化して解説する粋な試みで、ブックガイドや怪談の音源等もついていて充実している。内容としては若年層向けということもあって各作家の作風を知っているとあまり怖すぎないホラーという感じではあった。作家さんそれぞれの個性と、幅広いホラーの楽しみ方を味わえる良書だった。
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Posted by ブクログ
「パラサイト・イヴ」は、ミトコンドリアという細胞内小器官をテーマに据えた、斬新なSFホラーです。生物学への興味から読み始めましたが、単なる知識の羅列に終わらず、生命の根源的な問いを投げかけてくる物語に引き込まれました。
物語は、主人公・利明の妻・聖美の謎の急死から始まります。冒頭のこの衝撃的な出来事が、物語全体を覆う不気味な雰囲気を作り出しています。死後、聖美の臓器はドナーとして提供されますが、利明はまるで何かに取り憑かれたように、聖美の肝臓の培養に取り組み、「聖美は生きている」と信じようとします。この常軌を逸した行動は、後に聖美の肉体を乗っ取った**「イヴ」の思惑とも絡み合い、読者に生命の定義**を問いかけます。
一方、聖美の腎臓のレシピエントとなった少女・真理子の物語が並行して展開されます。彼女は幼い頃、腎移植に対する無知な偏見と言葉の暴力に深く傷ついた経験を持ちながらも、二度目の移植に踏み切ります。しかし、移植後、真理子は「何か良くないもの」の気配を感じ始め、「誰かがここに来る」という予感に怯えます。この真理子の不安は、読者にも細胞レベルの侵略の恐怖をリアルに感じさせます。
聖美の回想シーンは、自我を乗っ取られる恐怖が鮮烈に描かれています。「自分でした覚えがないのに、身体が勝手に動く」という描写は、自己と他者の境界線、そして意識と肉体の関係性が崩壊していくホラーとしての本質を突いています。
クライマックスでは、ついにミトコンドリア、すなわち**「イヴ」が人類に宣戦布告します。「私の子供たちがあなたたちを滅ぼす!」という言葉は、かつて共生関係を結び生命の進化を支えた存在が、今や人類を支配し、淘汰しようとする敵へと変貌したことを示します。利明の精子**を獲得するための「罠」や、受精卵を育てる母体として真理子の適合性を利用しようとする展開は、生物の根源的な生殖本能と結びつき、さらに恐ろしさを増します。
最後に引用された一節は、この小説のテーマを最もよく表しています。
進化とは自らと全く異なるものと共に暮らす過程で起こるものだ。相手が生命体のときもあれば環境のときもあるだろう。その場所が地球なのか、別の惑星なのか、それとも細胞の中であるのか、それはわからない。だが新しい共生関係を作り上げることができたとき、ヒトはさらに一歩進んだ世界を手に入れることができるのだろう。 -
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将棋や絵画、小説といった分野にAIが進出した近未来。人々がAI(とAIが生み出す新しい時代)に対し時に葛藤し、時に煩悶しながら向き合っていく様子を描いた短編集。
4つの作品が収録されており、初出は2012年〜19年の間。
当時は遠くない未来だった作中の世界だが、この感想を書いている2025年になると誰でもAIに頼めばそれなりに整った文章やそこそこ高精度な絵を描ける時代が来ており、かなりの部分で現実が作中の世界に追いついたように感じる。
正直作者の伝えたい主張を受け止められたか自信のはないけれど、読後には上手く説明できないけど何となく何かを受けとったような気持ちになった。
AI技術が急速に進歩し続けていて、かつまだ辿り着く終着点が見えない今のような時代に読む事で、今しか得られない読書体験ができると思う。 -
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ネタバレ2020年2月に刊行されていた、瀬名秀明さんの小説の最新刊である。文庫化されているのを見かけ、手に取った。タイトルからして相変わらず小難しそうだが、読んでみるとすいすいと読める。いい意味で裏切られた印象を受けた。
一時期はロボット分野に傾倒していた瀬名さんだが、本作のテーマはAI(Artificial Intelligence)、人工知能である。全4編に描かれたAIの実力は、決して遠い未来の話とは思えない。AIという言葉は、現代社会でも人口に膾炙しているのだから。
『負ける』。チェスや将棋において、人間対AIの対戦は実際に行われたが、今では聞かなくなった。藤井聡太ら現役棋士がAIで研究する時代。それでも人間同士の対局はなくなっていない。AIはむしろ、人間による棋戦の価値を高めた気がする。
『144C』。創作分野へのAIの進出は時間の問題に思える。現在は定型的記事の自動生成に留まるが、小説のディープラーニングだって可能なはず。AIが物語を生成する未来は、読者にとって福音なのかどうか。怖いもの見たさという心理は、正直ある。
『きみに読む物語』。小説の評価の数値化は難しいとされるが、こんな指数が普及したとしたら。優れた作品が売れるわけではないし、読者に寄り添うのが悪いわけでもない。多くの作品が「4.0」以上であろう、作家・瀬名秀明の自虐という気がしないでもない。本作に限れば「3.5」くらいか。我々読者は気楽なものである。
表題作『ポロック生命体』。一世を風靡した画家や小説家の、輝いていた頃をAIが吸収し、さらに発展させた。人間のような創作の限界はない。やがて、開発者が辿り着いた結論とは。彼がやったことが「悪」とは思わない。古今東西、創作者たちは名声の裏でもがいてきた。もがかないAIの作品に、感動しないと言い切れるか。
読者に問いかけるという点では過去作品に通じるものがあるが、本作の問いは至ってシンプル。AIが大きく進歩した未来を、どう感じるか? 倫理だの人間らしさだのを持ち出しても、AIの進歩は止められない。ならば見届けよう。我々人類の選択を。
大御所中の大御所・島田荘司氏は、AIが書いた本格ミステリを読んでみたいと発言していた。実に懐が深いと思う。少なくとも、自分は創作の未来を悲観していない。 -
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AI(Artificial Intelligence)人工知能が進歩した先にどんな社会が到来するのか?このAIの定義を私は明確に語ることができていないのですが、私なりの理解でいうと、「機会が人間の知能を持ったように振る舞えるもの」となります。
機械学習、ディープラーニングと言われるように、機会が自ら学びを深めることができる存在であります。
絵画、小説など、ある作家の作風を機械が学び極めると、あたかもその作家が創造した絵画や小説を生み出せるのかもしれない。その作品は、著作権を侵害したとえるのか?本書は、4つの短編集であります。テーマは進化したAIが存在している社会での出来事です。チェスや将棋、囲碁の世界ではAIが人間に勝利している世界のお話です。近未来のSF小説でした。読み応えありました。 -
ネタバレ 購入済み
・「どうしてこいつ(AI手術ロボット。《サージェリー・プロ》)は、わたしのやってほしいことがわかるんだ?」
・「そうです、ブラック・ジャックさん。《サージェリー・プロ》にはこれができるんです。
誰よりも早くあなたの思ったところへ先回りして、サポートすることができるんです。
なんといっても《サージェリー・プロ》のAIの学習には、ブラック・ジャックさん、
あなたの手術の映像をいくつも使ったんですから…!」
・「まったくおまえさんには驚かされる。未来にはこのわたしが、世界中の病院でメスをふるっているというわけか。フフフ…。
この手術代は全てひっくるめておまえさんに請求するから、そのつもりでいろよ。
そうだな、ラーメンを一杯おごってもらおう」
・「おまえさんは夢を語っている」
「もちろん夢です。まだ未来の医療です。それでも必ず未来はやって来る。誰に対しても平等に」
・「この賭けは五分五分だぞ」
「わかっています。でも最高のコンディションを用意できなければ、五分五分の勝負にもならないでしょう?」
・「先生が手術の後、すぐ眠っちゃうわけがわかったわのよさ…」
・「おまえさんの心のうちまではわたしも治せない。
だが、わたしが知るよりずっといい治療法をこの子は知っているだろうよ」
・「ピノコ、おまえの気持ちはよくわかった。おまえに何も言わずすまなかった。
まだわたしの目は殺し屋のようか?まだわたしは怖い顔をしているか?
おまえを心配させるような男に見えるか?」
「ううん、先生」
「おまえが教えてくれなかったら、わたしは気付かないところだった」
「先生」
「今日、わたしはどうしても行かなきゃならない。わたしが行かなければ、ひとりの男が死ぬんだ。
まさにいま、その男は死のうとしている。それを知っているのはわたしひとりなんだ」
「先生はお医者さんよね?」「そうだ、わたしは医者だ」
「人を殺ちたりちないわのよね?」「人を殺したりしない」
「人が嫌がゆこともちないわのよね」「ああ、嫌がることはしない」
「おくたんと約束できゆ?」「おくさんと約束する」
「先生、行ってらっちゃい、先生」「ああ、行ってくる」