あらすじ
株式会社秋田書店と株式会社誠文堂新光社による新たな文芸エンタテインメントを生み出す新レーベル【APeS Novels】がいよいよ始動!!
そのスタートラインナップは、本年7月に創刊50周年を迎える大人気コミック誌『週刊少年チャンピオン』の、輝かしい歴史を彩った名作コミック『ブラック・ジャック』のノベライズです!!
「マンガの神様」としていまなお絶大な支持を集める手塚治虫氏。
折しも生誕90周年を迎えている氏の数ある名作の中でも、ひときわ光り輝き、後の医療マンガはもちろん、実際の医療従事者にも大きな影響を与え続けている名作『ブラック・ジャック』が、同作品の熱烈なファンでもある瀬名秀明氏の筆により、小説として現代に蘇ります!!
「現代にもしブラック・ジャックがいたら……」誰もが思い描いたことのあるそんなファンタジーを、小説家としての想像力、研究者としての分析力、ファンとしての圧倒的な知識と情熱で瀬名氏が現実のものとします。
「医療ロボット」「iPS細胞」「終末期医療」などの現代医療、さらにはそれを飛び越え近未来をも予感させるテーマで描かれる、ブラック・ジャックの活躍。
そして、それぞれの事情を抱えた患者たち・医師たちと、無免許の天才外科医の邂逅が紡ぎ出すヒューマンドラマ。
もちろんピノコやドクター・キリコといった作品キャラクターは言うに及ばず、思わぬ手塚キャラたちとも再会できる1冊となっています。
誰もが読みたかった、誰もがもう読めないと思っていた、懐かしく新しい『ブラック・ジャック』がここにあります!
感情タグBEST3
・「どうしてこいつ(AI手術ロボット。《サージェリー・プロ》)は、わたしのやってほしいことがわかるんだ?」
・「そうです、ブラック・ジャックさん。《サージェリー・プロ》にはこれができるんです。
誰よりも早くあなたの思ったところへ先回りして、サポートすることができるんです。
なんといっても《サージェリー・プロ》のAIの学習には、ブラック・ジャックさん、
あなたの手術の映像をいくつも使ったんですから…!」
・「まったくおまえさんには驚かされる。未来にはこのわたしが、世界中の病院でメスをふるっているというわけか。フフフ…。
この手術代は全てひっくるめておまえさんに請求するから、そのつもりでいろよ。
そうだな、ラーメンを一杯おごってもらおう」
・「おまえさんは夢を語っている」
「もちろん夢です。まだ未来の医療です。それでも必ず未来はやって来る。誰に対しても平等に」
・「この賭けは五分五分だぞ」
「わかっています。でも最高のコンディションを用意できなければ、五分五分の勝負にもならないでしょう?」
・「先生が手術の後、すぐ眠っちゃうわけがわかったわのよさ…」
・「おまえさんの心のうちまではわたしも治せない。
だが、わたしが知るよりずっといい治療法をこの子は知っているだろうよ」
・「ピノコ、おまえの気持ちはよくわかった。おまえに何も言わずすまなかった。
まだわたしの目は殺し屋のようか?まだわたしは怖い顔をしているか?
おまえを心配させるような男に見えるか?」
「ううん、先生」
「おまえが教えてくれなかったら、わたしは気付かないところだった」
「先生」
「今日、わたしはどうしても行かなきゃならない。わたしが行かなければ、ひとりの男が死ぬんだ。
まさにいま、その男は死のうとしている。それを知っているのはわたしひとりなんだ」
「先生はお医者さんよね?」「そうだ、わたしは医者だ」
「人を殺ちたりちないわのよね?」「人を殺したりしない」
「人が嫌がゆこともちないわのよね」「ああ、嫌がることはしない」
「おくたんと約束できゆ?」「おくさんと約束する」
「先生、行ってらっちゃい、先生」「ああ、行ってくる」
Posted by ブクログ
小中学生のころに読みふけっていた、手塚治虫の『ブラック・ジャック』が、現代に実在したら、という想定で描かれた作品です。
AI医療や冷凍睡眠とiPS細胞、安楽死についてなど、昨今の医療テーマを扱っているだけでなく、原作のストーリーをしっかりと踏まえた物語になっていることや、ドクター・キリコなどの登場人物もその魅力を残したまま描かれていて、とても楽しく読むことができました。
全部で5つのエピソードが収録されていますが、どの物語も、切なくもあり温かくもある原作同様の読後感で、とても満足できるものでした。
やはり、ブラック・ジャックはカッコいいです。
Posted by ブクログ
漫画「ブラックジャック」が持つ倫理観と生命科学の世界観は、もとより瀬名さんが有していたものでもあり、この2人の相性はとても良く、何の違和感もかんじることがなかった。ブラックジャックはかっこ良く、ピノコはこの上なく可愛い。ただ、違和感が無さすぎて、これなら普通に漫画を読むのと変わらないのでは?と思ってしまったのが残念だった。とはいえ、登場人物の紹介にはあっと言わされたし、瀬名さんがこのオマージュ作品に込めた畏敬の念はとても純粋に伝わってきた。