遠藤周作のレビュー一覧
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遠藤周作の小説は、読みやすいけど重い。
タイトルからして明るい内容ではないだろうとは思って読み始めたのだけど、こういう流れと結末が待っていることは予想できなかった。
大学生の吉岡努が2回目のデートで身体を奪って棄てた森田ミツは、不美人だけど無垢な、田舎生まれの苦労人の娘だった。面倒になった吉岡はミツとの連絡を断ち、月日は流れた。
大学卒業後、吉岡は勤め先の社長の姪との結婚を決めた。一方ミツは、孤独で貧乏な生活に耐えながら、吉岡からの連絡を一途に待ち続けていた。
そしてミツは、さらに過酷な運命に弄ばれてゆく。
吉岡はエゴイズムの権化で、一方ミツは自己犠牲や愛の化身、という印象。ミツは容姿だけ -
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戦前に灘中に通っていた父と、大病院で癌患者を担う息子。戦争と医局の力関係という、それぞれ大きな力の元、一人の女性によって人生が交わっていく。
医療系で真面目な方の遠藤周作であるが、かなり読みやすい部類だと思われる。戦時中の灘中(今の高校)で、平目という同級生と出会い、成績不良で挫折し、戦争によって引き裂かれる。一方で、医者の上下関係によって、正しい治療法を見誤っていく。
戦争の話は、かなり端折って軽く描かれている分、医局の異常さという部分が重くのしかかる文章となっているものの、難しい文章ではないため、理解しやすいだろう。展開としては、最後に大きくカタルシスがあるわけでもないので、最後の部分 -
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☆☆☆2020年3月☆☆☆
江戸時代初期、まだ大坂の陣は終わっていない頃。
徳川氏の天下が確定しつつあった頃の物語。
東北から、宣教師とともにメキシコへ、ヨーロッパへと旅した「侍」と、宣教師を中心とした物語。
「侍」=長谷倉のモデルは、明らかに支倉常長だろう。
異国との通商を求めるという親書を携え、メキシコへ、スペインへ、イタリアへ、苦難の旅。
「宣教師」=ベラスコはポーロ会という宗派の宣教師で、日本にキリスト教を広めたいという強い思い、そして自分が出世したいという秘めた野望を持っている。
長谷倉らは、使命を果たすため、やむなくキリスト教に改宗。これが帰国後彼らにとって悲惨な結果と -
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ネタバレ20年も前に書かれた本ではあるが、その姿勢は現代のターミナルケアに通ずる部分も多い。以下、自分の印象に残ったこと、気づき。
・最期に自分を支えるのは、やはり精神だ。先立たれた大切な人に会える、だとか苦しんでいることを理解してあげることが一番いい。
・延命処置の是非。尊厳死はどうなのか?天寿を全うしているなら、尊厳死でもいいのか?
・ACPは、死に直面したときに初めてスタートする。在宅医の先生の訪問診療について行った時の経験を思い出した。
・安楽死は可哀想だから死なせてあげるという家族のエゴが入っている。尊厳死はその人が死に方を選べる。しかし自殺はダメ。天寿を全うしてないから。
・痛みも生きて -
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遠藤周作先生による恋愛というか男女のあれやこれやに関するエッセイ
前半はまぁ大体納得できる
「情熱」と「愛」の違いとは?
「信じる」とはどういうことか?
「嫉妬」とはなにか?
愛とは信じる事
「裏切られた」「女は信用できない」という言葉は、まず「信じる」ありきということ
心に残った部分
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現代において女とたくさん寝ることは易しい。
青春の論理としてむつかしい行為を選ばねばならぬ。むつかしい行為とはなにか。それはこの地上でたった一人の女を選び、その女を愛するように努力 することである。ひとりの女を選んだならば、それを生涯、棄てぬことである。これはやさしいこ -
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遠藤周作、高校生以来久々に読んで、あれ、こんな読みやすい人だったのか。と思う。
なんとなく親しみにくいイメージだったけど、まず、文体が読みやすい。
今回は、イスラエル旅行に合わせて、イスラエルを舞台にした小説ということで読み始めた。
なんせ、宗教をしっかり勉強したことなく、キリスト教とは、ユダヤ教とは、というか宗教だけじゃなくて、イスラエルの建国ってどういうこと?から、よく分かっていなかった私にとって、なんとなくキリスト教と、イスラエルの理解が進む、良本でした。
特にキリスト教について、遠藤周作なりの、私なりの、理解ができて、なんとなくキリスト教に納得がいった。
奇跡を起こさないキリスト、 -
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--概要--
・「イエスが死後どのようにキリスト(救世主)として認められていったか」というテーマ。『イエスの生涯』に続く著書とのこと(私はこちらは未読)。
・巻末の高橋たか子氏の解説にあるように、「イエスという人が実際にいた、そして十字架上で死んだ、ということがあった、それを素材として創作された話が新約聖書なのだという見方」で書かれている。ペトロ、ヤコブ等の弟子や宣教師ポーロなどの視点で、彼らがどのような体験・思いから書簡(=今日の新約聖書)を書いたのかが様々な資料の研究の上に述べられている。
・イエスの死、迫害、分派、弟子や伝道師の殉教、ユダヤ戦争での多くの信徒の死といった苦境の中で、「神が -
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イケメン南条、デブサ野呂、美人な戸田京子の三角関係のお話
遠藤周作が本人の役で出てきて、若者から請われてトンデモな恋愛指南(唐辛子作戦とかヤキモチ作戦とか)をしてたりする
こんな設定は現代のラノベに通じるものもあるし、前半は男女の機微を知らない若者をからかい半分にいじる周作先生のキャラがユーモラスに感じる
でも、中盤から描かれてあるのは運命に翻弄される若者たちの姿
何というか、もっとどうにかならなかったのかなぁと思わざるを得ない
南条はまぁ一般的な感覚を持っているのであろう
時として軽率だけども、若者ゆえのこらえ性のなさと見ればまぁ許せなくもない
ただ、その行為が後にどんな結末をもたらすか -
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◯青春小説、と帯にはあり、解説にも軽小説・青春小説とあるが、個人的な感想としては、別段軽小説でも青春小説とも感じなかった。(解説の文芸評論家は片手間で書いたのだろうか、それともこれが世間的な評価なのだろうか。)
◯「善なるもの、美しいもの」(自分が信じるなすべきことなのか、)を追い求めるも、時代や環境の波に飲まれ、脆くも崩れ去る砂の城としての人間の「エゴ」が描かれており、そういった重厚なテーマを、掲載雑誌テーマと、その読者層に伝わるように書いていると思う。
◯もしも軽小説・青春小説と読めるのであれば、表面的な感想であるが、むしろ著者の技術の賜物である。
◯ただし、その根底に流れるテーマは、「軽 -
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ネタバレ「沈黙」のテーマ「神の存在の有無」に対し「侍」は「宗教とは何か」という問いかけの小説だと思います。
キリスト教のお話でありながら、日本の宗教観についても描かれていて、「なぜキリスト教は日本に向かないのか」をヴァレンテ神父が語る場面は、深く頷きながら読みました。ヴァレンテ神父の語った日本の宗教観や社会構造は現代日本に脈々と受け継がれているものがあるのを感じました。
また、江戸時代の日本社会の陰湿な部分を、政府上層部や役人の描き方や、暗く冷たい建物の描写で表してるところがすごく印象に残りました。
でも正直読みながらずっと思ってたのは「ベラスコのせいでこんな事に…!!」ということです。こいつさ