遠藤周作のレビュー一覧
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"正義"とはなんだろう・・・?
言論の自由が保障されていて、何を考えていても、誰かに処罰されることなどない世界。一方で、世間の考えに反する意見を持つ者は、暴力をふるわれ、白い目を向けられる世界。
両者は同じ世界でも、そこで発言することの重みは違うと思う。殴られたり、家族に危害を加えられたり、職を失う可能性があったりすることがある場所で、その一線を踏み越えてはいけないと抵抗できる人はどれだけいるのだろう・・・。
「そんなこと、普通だったらしない。」口で言うのは簡単。ましてや、その状況にいなかった人ならなおさら。
同じ命を奪うことに対して、葛藤し、背負った重さを胸に秘め -
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■美しい魂が宿す悲しい運命が切ない。■
疑うことを知らず、馬鹿がつくほど正直でお人好し、母性の塊のような女ミツ。彼女は誰かの不幸せが自分のことのように悲しく、自分を犠牲にしてまで助けてしまう。彼女はその美徳ゆえの悲しい性を背負って生きていくしかないのか。
一方の吉岡は、勉強して大学に入り、背伸びしてちょっと世間を知ったつもりの男子学生。若者にありがちな見栄、傲慢さ、無責任さ、そして抑えがたい性欲を持つ。根っからの悪人というわけではない。
誰しも(もちろん僕にも)思い出すのも恥ずかしくなるようなほろ苦い経験や深い悔恨がある。若気の至りってやつだ。
吉岡はミツの性格を利用し、遊んだ後はボロ雑 -
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著者のイメージはテレビで、ユーモアあふれる会話をする作家さんと言うものでした。間違いなく著者は日本の文壇で名前を残している方だと思います。ただ残念ながら、後世に読み継がれていくのかと思うと不安になります。私の杞憂かもしれませんが、「海と毒薬」「沈黙」「深い河」など。感銘を受けた作品が沢山あります。今回読んだ作品は彼の代表作とまでは言えない作品かもしれませんが、面白く読めました。著者の弱い立場の人に寄り添う姿勢が読み取れます。主人公の学歴に対するコンプレックスなどは著者に通じるものがあるのではないかと勝手に思っています。今度は、著者のエッセイを読んでみようと思います。
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昔のエリート――というほどではないが、二流三流とはいえ大学出の――男が、過去に残酷にやり棄てた女に対する懺悔や言い訳の入り混じった告白をする話かな・・・と思いきや、まあそうといえばそうだけど(いや懺悔はしてないな)、やはり遠藤周作だし、神の愛まで話は至った。
田舎出の、愛情にも運にも恵まれなかった森田ミツという女性が、タイトルでいう「棄てられた」女なのだが、彼女が、人の苦しみを自分の苦しみと思い人のために尽くさずにはいられない人間で、ある価値観ではこれを「お人よしで損ばかりしている愚鈍なやつ」ととらえることもできるが、この本のテーマとしては彼女こそが神のいうところの「幼子のように素直に愛の行 -
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遠藤周作の小説は、読みやすいけど重い。
タイトルからして明るい内容ではないだろうとは思って読み始めたのだけど、こういう流れと結末が待っていることは予想できなかった。
大学生の吉岡努が2回目のデートで身体を奪って棄てた森田ミツは、不美人だけど無垢な、田舎生まれの苦労人の娘だった。面倒になった吉岡はミツとの連絡を断ち、月日は流れた。
大学卒業後、吉岡は勤め先の社長の姪との結婚を決めた。一方ミツは、孤独で貧乏な生活に耐えながら、吉岡からの連絡を一途に待ち続けていた。
そしてミツは、さらに過酷な運命に弄ばれてゆく。
吉岡はエゴイズムの権化で、一方ミツは自己犠牲や愛の化身、という印象。ミツは容姿だけ -
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戦前に灘中に通っていた父と、大病院で癌患者を担う息子。戦争と医局の力関係という、それぞれ大きな力の元、一人の女性によって人生が交わっていく。
医療系で真面目な方の遠藤周作であるが、かなり読みやすい部類だと思われる。戦時中の灘中(今の高校)で、平目という同級生と出会い、成績不良で挫折し、戦争によって引き裂かれる。一方で、医者の上下関係によって、正しい治療法を見誤っていく。
戦争の話は、かなり端折って軽く描かれている分、医局の異常さという部分が重くのしかかる文章となっているものの、難しい文章ではないため、理解しやすいだろう。展開としては、最後に大きくカタルシスがあるわけでもないので、最後の部分 -
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☆☆☆2020年3月☆☆☆
江戸時代初期、まだ大坂の陣は終わっていない頃。
徳川氏の天下が確定しつつあった頃の物語。
東北から、宣教師とともにメキシコへ、ヨーロッパへと旅した「侍」と、宣教師を中心とした物語。
「侍」=長谷倉のモデルは、明らかに支倉常長だろう。
異国との通商を求めるという親書を携え、メキシコへ、スペインへ、イタリアへ、苦難の旅。
「宣教師」=ベラスコはポーロ会という宗派の宣教師で、日本にキリスト教を広めたいという強い思い、そして自分が出世したいという秘めた野望を持っている。
長谷倉らは、使命を果たすため、やむなくキリスト教に改宗。これが帰国後彼らにとって悲惨な結果と