遠藤周作のレビュー一覧

  • 侍

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    沈黙とは異なるキリスト教歴史小説。
    政治の闇に弄ばれたと書くには足りない、男の生きざま。
    日本人の不気味さと誇りとを外国人の目を通し語らせているのが秀逸で、著者の目線の低さを感じる。

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    2019年04月12日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    昭和32年に発表された海と毒薬からほぼ20年後に書かれた後日談。読んだのは、昭和56年発行の7刷。
    読後、涙が。悲しすぎる。おバカさんで読んだガストンがキリストの再来かのような立ち位置で描かれている。勝呂医師の悲しみが若い新聞記者の折戸にはわからない。わかるはずもない。大学教授の矢野の表裏の顔。人間はひとつの偶然に、のればあるいは置かれた状況しだいでどんな悪をもやれる存在だ。それは水が低きにつくようなものでいかんともしがたい。そんなやんわりとした意図が悲哀とともに書かれてる。つらい。

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    2019年02月18日
  • 白い人・黄色い人

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    再読です。ちゃんと感想を記して​(2006年9月27日)​いるのにすっかり忘れています。感想を読み直してみるとわたしは主題(神の存在)を意識して読んでいません。同じ作家の『イエスの生涯』を読む前と後では理解度が違ってくるということだということです。

    「遠藤氏のごく初期の作品であり、・・・」(文庫解説山本健吉)確かに新鮮さと勢いがあります。解説最後に「作者は小説の中で、神の存在を証明するためには、いっそう氏のこと抱懐する主題を掘り下げなければならない、・・・」(昭和35年1960年)と鼓舞するようにお書きになっています。遠藤氏の友人ならではで、ないでしょうか。

    処女作『白い人』で芥川賞を受

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    2019年02月03日
  • 彼の生きかた

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    生来の吃音から人を避け動物に興味を持つようになった主人公が、職業もニホンザル研究を選択する。人間たちに翻弄されるサルを自分と同化し、幼なじみの朋子の影響で徐々に強い気持ちを持つように成長していく。2019.1.1

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    2019年01月01日
  • 白い人・黄色い人

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    暗く重い。後の作品につながるテーマがいくつも出てくる。深すぎて消化できなかった感じだけど、山本健吉のあとがきでちょっとすっきり。

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    2018年12月31日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    幕末から明治にかけての長崎において、密かに信仰を保っていたキリスト教徒が弾圧された”浦上四番崩れ”という歴史的史実を、弾圧されたキリスト教徒に思いを寄せる非キリスト教徒の女性キクを主人公に描いた遠藤周作の1982年の作品。

    『沈黙』でも描かれるようなキリスト教徒への迫害の様子のおぞましさはさることながら、主人公のキクとの出会いにょり最終的に改修する迫害する側の人間の心の弱さや、明治に入り諸外国との外交関係の観点から弾圧が次第に問題視されていく様子など、様々な主題が交差する。

    それにしても、若干ステレオタイプな表現もあるにせよ、遠藤周作はこうした悲劇的な女性を描かせても巧い。通俗小説ではある

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    2018年12月30日
  • 侍

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    「侍」は、実在した仙台藩の支倉六衛門常長をモデルとした史実に基づく小説であり、遠藤夫人が夫遠藤作周作の著作中で最も好きな作品として挙げている。

    キリスト教に帰依したことを理由に処刑されることとなった「侍」に従者が伝える「ここからは……あの方が、お仕えなされます」という台詞について、遠藤は「この一行のためにこの小説を書いた」と後に語っている。

    「あまりにも多くのものを見すぎたために、見なかったのと同じなのだろうか」

    「日本人たちはこの海を日本を守る水の要塞にして、自分たちは土の人間として生きてきたのだ。日本人たちはこの世のはかなさを楽しみ享受する能力もあわせ持っている」

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    2018年12月22日
  • イエスに邂った女たち

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     先日「遠藤周作で読むイエスと十二人の弟子」を読んだ。そちらは生前のエッセイや著書からの引用でまかなっていたが、本書は全編を通じて遠藤節が味わえる。
     『赤毛のアン』シリーズの中に「求婚する前に、彼女の父親の支持政党と母親の教派を調べておけ」という処世術が出てくる。男性と女性で信仰のありようが違うのは、今も昔も変らない。

     思うに、多神教のはびこる未開のヨーロッパへ布教するには、十二使徒や聖母・マグダラ両マリアのタレント性が不可欠であろう。

     第9章「かくれ切支丹のマリア」は興味深い。切支丹の教義の中で、イエスの贖罪の対象は人類に非ず、まさかの……。

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    2018年12月20日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    ちょうど幽閉されたシャルルを描いた絵画を観た後で
    興味があったところ同僚に勧められて読んだ本。
    フィクションを含めた歴史小説。
    堅苦しさがなくとても読みやすかった。
    お陰様でフランス史に興味が出てきたので
    他も当たってみようと思う。

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    2018年12月09日
  • 彼の生きかた

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    2つのテイスト違いの物語が絶妙に絡み合う良作。ひとつめは、一平と猿、そしてとそれを取り巻く人たちの純情物語。勝手にココリコ田中を想像しながら読んでました。そしてもう一つが、朋子の大人の恋愛事情。絵に描いたような小者の夫・藤沢と、切れ者専務・加納(ここまでくれば調教師と呼んでも良いかも)の両方ともいいキャラしてる。結局良いも悪いもなく、最後は個々の納得感が大事、とまとめてもよいくらい、教訓めいたものもなくさらりとした読後感。

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    2018年11月25日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    やはり周作さんらしい救いのないお話でした。
    1部に続き2部でも大量虐殺が…

    今まで本当に上っ面の事しか知らずに生きてきた自分が情けない思いでいっぱいになりました。
    だからって自分に何が出来るのかは分からないけど、せめて「女の一生」に出会えたことに感謝して生きて行きたいです。

    P98、そは求むところなき愛なり
    p263、労働をつづけながらも…
    P347、路は悪いかわりに…
    P487~ラスト迄
    とっても心に響く言葉であったり文章でした。

    あと、長崎の方言好きだな(笑)
    大浦大聖堂にも行ってみたい!
    マリア像の前で思いっきり泣きたい!

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    2018年11月08日
  • 侍

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    主命でメキシコ・スペインへ渡った「侍」は、役目を果たすため、キリスト教へ帰依をする。しかし、旅の途中で日本の政情が鎖国へと変わり、当初の役目を果たせなかったばかりか、偽りとはいえ受洗したことが咎となり、帰国後も潜むように生きることを強いられる

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    2018年11月04日
  • イエスの生涯

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    イエスは他人から憎まれても他人を愛した、そんなイエスが何故十字架の上で殺されなければならなかったのか、いまだに良く分からない。不条理はこの世でよくあるということの典型だと思う。キリスト教の愛、無力、復活という考え方は初めてよく理解できた。重荷を負うているすべての人を休ませてあげる、敵を愛し恵むこと、苦しみを分かち合う、神の愛、イエスの再来等”沈黙”で書かれていたキリスト教的考えもよく分かった。日々の生活でも参考にしていきたい。

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    2018年10月08日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    転落の象徴的逸話である首飾り事件の余波で民衆のアイドル的存在から憎悪の対象へ一変し公開処刑に至るまでを描く。気まぐれで移り気な民衆の怖さ、それでも貴族としての立ち振舞を意識し愛と優雅さに生きるアントワネットの姿が印象的だ。徹底的な悪政のイメージが強いルイ16世だが、王と王妃は囚われ逃亡しながらの何度も救出が試みられることから貴族社会からはそれなりに支持があったことが窺える。

    搾取された民衆に同情すべきであるが、万策尽き刑宣告まで幽閉され疲弊しながら衰弱するアントワネットのさまはなんともいたたたまれない。ギロチンによる公開処刑直前、執行人の足を踏み一言「あらごめんあそばせ」、最後まで気品ある態

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    2018年09月29日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    マリー・アントワネットの壮大な一大歴史叙事詩を遠藤周作氏が描く。アントワネット氏の豪奢で絢爛な面だけでは品性を保ちながらもフランス革命前夜の時代に翻弄される姿が印象的に描かれる。史実を、マルグリットやフェルセンのフィクションで照らすことで、さらに物語的な深みが増している。マルグリットとサド侯爵のやり取りはもちろん架空だがひょっとしたらこういうエピソードもあったのではないかと思わせるのは遠藤氏の極めて高度なレトリックの結果だろう。特にギヨサンとサンソンの話は結果皇妃自らが裁かれることを知る我々にとっては不気味にそしてなにかもの哀しい。

    教科書で見る浮世離れしたアントワネット氏の姿ではなく、純粋

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    2018年09月29日
  • 夫婦の一日

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    この短篇集含めて、僕が遠藤周作を好きなのは、高潔に生きたいという理想と情欲に溺れたいという堕落性、その双方が一人の人間の中に存在している矛盾について、認めて、許して、悩んでいるからです。
    良い悪いの二元論で物事を切るのは明快かつ論理的で、一見逞しいけれども、空疎で断定的で、どこか脆い。
    誰かと戦っているわけでもないし、自分に正直に存分に苦しめば良いのではないか、そう伝えてくれているように思えるのです。

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    2018年09月20日
  • 王国への道―山田長政―

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    江戸時代初期、太平の世となった日本を捨て、遠くアユタヤへと渡った日本人。そして、キリシタン禁制の日本を後にして、ポルトガルで神父となった日本人。異国での野心に満ちた生き方が描かれます。

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    2022年04月09日
  • 死海のほとり

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    聖地エルサレムを訪れる「私」の現代の物語と聖書の挿話を小説として描く過去の物語が相互に進行する。「私」の物語は実話かと思いきや創作であるが遠藤周作氏の実体験に基づくものと考えても差し付けないだろう。

    特に印象的なのは小説的手法を用いて等身大のイエスを描いたことだ。「人として」のイエスを描くことで同列の人間たち、現代の物語の冷めながらも何処かで神を捨てきれない戸田や卑屈に神に縋り続けたねずみ、過去の物語での様々な登場人物の目線や感情を通して、筆者自身も見出せてない信仰心の「在り方」を問うことに成功している。信仰と奇蹟を結び付ける人々と寄り添うことに神の愛の本質を説く信仰、その差が落胆や失望を生

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    2018年07月23日
  • 侍

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    果たして基督教の信仰とは何なのか、苦難に対峙してもなお沈黙する神とは何なのか。時代と政に翻弄される「侍」長谷倉と烈しい信仰を持ってベラスコの眼と体験を通して日本人の宗教観が立体的に描かれる。万の神を認めて藩主を絶対的統治者とした当時の侍たちに対し、当初は使命感と意志をもって基督教布教を謀るベラスコの姿は滑稽で狡猾ともみえるが、後半になるに従って長谷倉は藩への疑義に反して信仰を問い、ベラスコは教会への不信に反して信仰を深める姿が印象的だ。

    『沈黙』と比べると直接的表現も多く、理解しやすい反面文学性はやや劣るが、『侍』のほうが会社の命令に右往左往する悲哀溢れるサラリーマンに通じるものがあり感情移

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    2018年07月17日
  • 十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。

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    死後に未発表の原稿が見つかり出版された本。読み物として面白かったし、遠藤周作がこんな軽快な文章を書くだんて意外だった。修飾語の表現を鍛える「〜のようなゲーム」はぜひ習慣にしたい。

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    2018年07月14日