遠藤周作のレビュー一覧

  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    戦中実際に起きた事件をベースに書かれたもの。
    当時の空気感、病院という閉鎖空間の空気感の中で、運命に流されるがままに実験に参加することになった主人公たちの罪の意識・倫理観を通して、日本人の罪や罰の捉え方とはいかなるものかを作者は問いかけてきてるのではないかと考えさせられる一冊。
    登場人物のバックボーンと関係付けながら、登場人物各々の実験への感情のアプローチがあり、今後登場人物たちはどのように生活をしていくのか、非常に気になる作品でもある。

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    2026年05月03日
  • 新装版 海と毒薬

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    太平洋戦争中に、捕虜となった米兵が臨床実験の被験者として使用された事件(九州大学生体解剖事件)を題材とした小説。
    重いテーマなのでなかなか手に取りにくかったが、文章自体は読みやすく、あっという間に読めた。
    戦後の人の視点から始まり勝呂(すぐろ)医師の視点、加害者達の視点から感情を描写する。自分の事情や感情に囚われながら殺人に加担していくところに恐怖を覚えたけど、勝呂の気持ちだけでなく、一見冷酷に見える戸田や上田の気持ちも分かる気がする。表面的な正義感では語れない、極限状態におかれた人間の心理は実際には戸田に近いかもしれないとも思う。呵責や罪悪感を感じないようにすることで精神的重圧から耐えれたの

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    2026年04月29日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    ミツという女は、愛を与える行いを考える上で自分の中から消えないものになると思う。

    登場当初からこの女は鈍臭く頭が弱そうに卑下し、目の前を通る人たちがどうしようもない弱さや辛さを抱えているとみえるや否や、自分を犠牲にして尽くす。
    そこまでするところか?自分がなさすぎる、自分が地に足をつけて健康でいて初めて人を愛し救えるのではないのかと苛立ちながら読み進める。

    しかし福祉や看護など奉仕を生業とする仕事をしている人には浮かぶのではないか。自分ももしかしたら、カーディガン諦めて戻ろうかとよぎるのではなかろうか。自分ももしかしたらハンセン病でなかったと知ってももう一度御殿場の輪に戻ろうとよぎるのでは

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    2026年04月27日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ

    再読。神を持たない日本人の良心のあり方が描かれている。神なきがゆえに、罪を罪として拒絶することもなく、罰を受けることもないかわりに救いもないような。アメリカ人の捕虜を生体解剖して殺した、そのことへの呵責に苛まれる勝呂はまだ良心があって、罪の呵責を背負って生きている。彼にはまだ救いがある気がするけれど(その救いは描かれてはいないけれど)、全てに無感動で己の出世のことしか考えないような医師たちには何があるんだろうか。呵責の念の起きない戸田は戸田で、何も感じない自分を不気味に感じ、勝呂がうらやましいのだと思う。寂寞とした海鳴り。
    作品冒頭では、腕は良いが機械的で人間味を感じさせない変わり者として登場

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    2026年04月21日
  • 白い人・黄色い人

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    ネタバレ

    白い人
    キリスト教でドイツ人の母親と、放蕩に酔しれる父との間に生まれた斜視の主人公
    母親の父親への犯行を示すかのようなまでの厳しい禁欲的な教育を、様々な罪悪で呼び覚まされる
    (父が斜視を馬鹿にし女にモテないと言ったことで生じた女性に対するコンプレックス、女中が肺病の犬を懲らしめる為に膝で押さえつけ殴り口を紐で結ぶ、父について行った旅行でサーカスの少年が女性に踏みつけにされる、その少年を黒い日陰に失神させた状態で放置した)
    そんな少年期を経て、父は浮気中に自動車事故で死に、母は大学在学中に病気で死んだ
    両親のどちらにも主人公の本心は知られることなく、敬虔なキリスト教として終わった
    大学生の時、主

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    2026年04月18日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    人が持つどうにもならない影や矛盾、割り切れないものを描いた作品。勝呂医師やガストンさんを中心としながら多くの登場人物が交差する中で、それぞれが持つ卑しさや罪の意識、割り切れない感情に、大なり小なり自分にもある部分だと共感しながら読み進めた。作者が表現する『自分がその時、その立場だったら同じことをしていたかもしれない』がまさにそれだと思う。

    海と毒薬の続編ということで、海と毒薬を再読してこの本を手に取った。この2冊は必ず続けてまた読もう。『おらぁだめだ』と言ったあのシーンに勝呂のすべてが凝縮されていて、その勝呂の葛藤がまた続編でも描かれている。たとえ救えなくても寄り添おうと、彼は生きたと思う。

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    2026年04月14日
  • 沈黙

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    遠藤周作めっちゃ好き。途中で、小説の形式が変わるのも面白かった。最初が手紙の形やったから、入り込みやすかった。最後の方に、一気に伏線回収が来るのも面白かった。

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    2026年04月13日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    感想というか思ったこと
    (キクや清吉についても語りたいことは尽きないけど、いったん整理)

    『女の一生』第二部では、戦争や日本におけるキリスト教弾圧に対するローマ・カトリック教会の姿勢に疑問を抱く修平の葛藤が描かれていたが、第一部にもまた、キリスト教弾圧の中でローマ法王の沈黙に対する疑問が示されていたのが印象的だった。

    それでもなお、人は信じるしかないのはなぜなのか。
    考えてみると、信仰とは本来、人の内に宿るものであって、教会はあくまでその信仰を持つ者たちの集まりにすぎないのかもしれない。だからこそ、信仰心において絶対的なのは教会という組織ではなく、むしろ個人の内にある信仰そのものなのだと思

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    2026年04月10日
  • 沈黙

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    爆笑問題の太田さんが2025年8月のラジオで触れていて知った作品。
    沈黙を続ける神を信じて疑って、また信じる宣教師の葛藤が見事に描かれている。

    弾圧については踏み絵くらいしか知らなかったが、一気に解像度が上がった気がする。
    私も含め多くの読者はキチジローに感情移入するのではないかと思う。

    一方で本作についてカトリック教会側が批判したのも頷け、安易に決着がつけられるものでもないのだろう。
    短絡的に答えを求め、正解に雁字搦めになっている現代において、本作および「深い河」などと併せて、筆者の生き様が問い続けることの本質を読者に投げかけているように思う。

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    2026年04月01日
  • 深い河 新装版

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    いいものを読ませていただいた⋯

    何か自分を生かしたものへの「後ろめたさ」に悩まされ、それぞれの儀式的行いを経てそれを解消し、人生に秩序を取り戻していく。でもその秩序にも綻びがあるってことを、きっとそれぞれが感じてもいる⋯そんな雰囲気があって、その割り切れなさがすごく良い。

    そこから逸脱した、(おそらく主題の)美津子と大津の話は一層良かった。
    美津子は、自らの世界を規定する幻想の向こう側に行きたいのだろう。それ故、そういう枠組みを持たず、形式としての義務に従う(ように見える)大津に執着するのだと思う。大津は自身の行いを「イエスの真似事」と言うものの、その行いは限りなく純粋な形式に近いように思

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    2026年04月01日
  • 海と毒薬

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    そんな事実が本当にあったのかって
    新たな知識を得た小説でもあり
    それぞれの状況や心情、理由あっての行動
    今の時代、自分の生活ではありえない
    そういうものを知れる良い小説。

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    2026年03月30日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ

    この本のモデルになった、当時研修医として実験に参加していた先生が昔近所にいらっしゃって、時々講演会をしていた
    それをきっかけに親から勧められて読んだ本。講演会も行ってみるかと聞かれたけど当時高校生だったのでなんとなく怖くて断ってしまって。大人になってから行ってみたいなと思ったけれど先生は最近亡くなってしまったようで、今になってそれをすごく後悔している
    こうやって戦争の体験を直接経験者の方から聞ける機会って、これからどんどん失われていくんだろう
    そしておそらく、私たちはその最後の世代なんだろうな。

    この本に登場する人物は誰も極悪人ではないのに、一人一人が手に取るナイフや、時には一本のペンが誰か

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    2026年03月28日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    潜伏キリシタンたちのはなし。
    特定の宗教への信仰のない私は、貧困に喘ぎ、社会的排除や壮絶な拷問を受けながらも信仰を守り続ける理由がわからなかった。でもそれが信仰というものなんだろう。
    人の信仰を弾圧しようとするのは愚かで非道なことだけれど、それでも、私はキクと同じように、キリスト教や、それを日本に伝えた宣教師、それから数百年後に再びやってきた神父たち、そして彼らが崇めるデウス様というものに対して。苛立ちと憤りを感じた。
    「転べ!」と心の中で叫んだ。
    同時に、姑息でクズみたいな伊藤に、神父が言った言葉、多分伊藤と同じ気持ちになった。
    キリシタンたちの純真さをたたえたい思う。

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    2026年03月25日
  • 砂の城

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    1976年作品。著者の作品は5冊か6冊くらいしか読んでないので。多くは語れないのですが、今まで読んだ本は「沈黙」「海と毒薬」「深い河」など。信仰に関する本や重いテーマの作品を書く作家さんと言うイメージがありました。この作品は少し毛色が違います。分けるとすると青春小説でしょうか。ただ、1970年代の若者が描かれています。長崎で生まれ育った若者たちが、自分の信じる美しいものに従い破滅するもの・罪を犯すもの。決して甘い青春小説ではありません。著者の筆力に感服です。文章も美しい。

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    2026年03月22日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    人体実験ってショッキングな事件やけど、それを行ってた人達の心理が、僕とそう変わらんのが辛かった。最近小説書いてみたいなって思ってちょっと書き出してたから、文体にも目が行った。目的語がないとか、文法が緩い感じなのに頭にスルッと入ってくるのが面白かった。この独特の文章が、心情パートと描写パートを溶かしてるんだと思った。

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    2026年03月17日
  • 沈黙

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    ネタバレ

    この時代の長崎の神の沈黙を通じて、世界の綺麗事だけでは済まされない戦争や貧困などの理不尽について考えさせられた

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    2026年03月09日
  • 沈黙

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    最後の数ページに無茶苦茶読むのに時間かかって、日本語って難しいなぁと思ったけど、これは傑作。

    江戸時代の日本と信仰について書かれているんだけど、内省的で観察眼に優れた宣教師の目を通したことで、人間の感情の機微が、胡乱な私が実生活で得る以上に感じ取ることが出来る。

    個人的には、特定の文化の上に生まれた宗教が、他の文化の上で変質しているというのが面白かった。日本は布教するには泥沼だという記載がありましたが、文化基盤が違えば変質するっていうのは日本だけに当てはまることではないと思うんですよね。

    こと概念的である宗教において信じるものは文化基盤によって変異しているものなんじゃないかと思うので、そ

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    2026年03月08日
  • 沈黙

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    「殉教した人の話」を、この本を読む時にどれだけ知っているのか。これでこの本に抱く感想は変わるのではないか、と最近ふと思った。
    私はカトリックの一貫校でずっと宗教なる授業(一般でいうところの倫理という科目に該当する)を受けてきた。特に中高の宗教の授業では旧約聖書から新約聖書はもちろん、世界各国で平和を願い平和のために尽力した人や信仰を貫き殉教した人について学ぶ。隠れキリシタンのことも学ぶし、天正遣欧少年使節のうち殉教したのは誰かという質問にも答えられるし、第二次世界大戦の際にドイツだ殉教した司祭の話も知っている。
    そしてそれは単に「殉教しました」というナレ死のような学びではなかった。逆さに疲れて

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    2026年03月01日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    いい本だった。


    持病持ちのサラリーマンが引っ越してきた町で、
    主治医と出会うとこから始まる。
    医師には人に知られたくない過去があった。
    場面は医師の若かりし頃に変わる。


    読みやすくて、情景もよく浮かんだ。
    いろんな人の気持ちになれた。
    豊かな時間、過ごせた。
    今まで読んでなかったの申し訳なく思った。






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    2026年02月22日
  • 沈黙

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    信仰とは何かについて核を突かれたお話で面白かった。鎖国当時のキリシタンの迫害や、人種差別、外国人が日本をどう見ているのかが生々しく感じられた。「神はなぜ沈黙されているのですか」、カトリック教徒である遠藤周作が神の存在に関する記述や踏絵を持ってくるのはとても興味深かった。

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    2026年02月19日