遠藤周作のレビュー一覧

  • 死海のほとり

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    死海およびエルサレム周辺の、イエスにまつわる地を巡礼する現代の話しと、遠藤周作の解釈によるイエスの伝導と処刑されるまでの当時の話しが交互に進んでいく内容。

    愛のみを実践したイエスとしての解釈が新しくもあり、とても考えさせられました。

    「沈黙」= 赦されている人間の話し
    「死海のほとり」= 同伴者としてのイエス

    個人的には「沈黙」よりも「深い河」よりも好き。

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    2026年06月29日
  • 深い河 新装版

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    ネタバレ

    若松英輔『日本人にとってキリスト教とは何か_遠藤周作『深い河』から考える』を読んでいる時、将来入団するつもりでウオッチングしていた近所の合唱団が、黒人霊歌『深い河(ディープ・リバー)』をたまたま練習しているのを知って、不思議な縁を感じながらこの本も読むことにした。
    少年時代に洗礼を受けた遠藤周作は、キリスト教は肌に合わぬ、出来合いの洋服を無理やりに着させられたような、違和感にたえず苦しんだという(『日本人にとってキリスト教とは何か』)。その遠藤が人生の終盤でどんな考えに至ったか。この本から、それを読み取りたいと思った。

    読後、作者は「神という言葉を使わずに」、「神」または「神の愛」ということ

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    2026年06月30日
  • 沈黙

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    日本人信者のその拷問に耐える姿、悲惨な死を受け入れる姿を前にして神は沈黙を守る。信念を貫き死を選ぶことは正しいのか、自分の命を惜しむことは間違っているのか弱いのか。絶対的な正義を地の奥から揺さぶるような厳しい歴史小説。

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    2026年06月22日
  • 深い河 新装版

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    大切な人との別れや、自分自身の死に対する恐れが和らぎ、心が穏やかになりました。
    読後に深い安心感と癒やしを与えてくれる一冊です。

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    2026年06月22日
  • 沈黙

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    ネタバレ

    とても難しい本だった。信仰の形は国によって違うけど、確かに日本人は形にこだわる部分が強いから、司祭たちが違うと感じたのも頷ける。でも、そんな司祭たちも転ぶ転ばないの形にこだわっていた。だから転んだ後の方が本当の意味での信仰になった気がする。ロドリゴのキチジローに対しての見方も転んだ後の方が寄り添ってる気がする。キチジローは初めは嫌な感じに写っていたけど途中からは弱さを認められる強い人にも見えた。転ぶ事を失敗と捉えるなら、失敗を重ねた人の方が強く優しくなれるんだと改めて思った。

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    2026年06月18日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    ネタバレ

    海と毒薬含めて面白い作品でした。
    面白いというかずっしりと心にのしかかるというか。
    私もそうであるが、読者の大半は折戸と矢野に苛立ちともどかしさを覚えるのと思う。しかし、いざ自分や社会を俯瞰して見てみるとほとんどが、折戸や矢野のようなことを知らず知らずのうちにしているはずである。だからこそ、わかっているからこその苛立ちやもどかしさである。

    勝呂は生体実験に携わったことが原因で、過去が知られる度にその街から追い出されるように転々としている。
    海と毒薬では気胸のおじさんが引っ越した街で医師をしていた筈だが、あの街は今回の舞台の新宿ではないはずで、海と毒薬の後に追い出されたということが分かる。

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    2026年06月15日
  • さらば、夏の光よ

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    なんか切なくなった。野呂の優しくて、誠実で堅実な性格は人としてすごく魅力的な一方で、自分が女性側に立った時に、その愛情を受け取れるかと言ったら無理だろうと思った。そう考えると結局愛だのなんだの言いつつ、外見で人は判断してるのか?とか思ったり…でも、彼女が自分と南条しか見てなかった一方で、きっと彼も彼女のことを考えているようで自分のことしか考えていなかったんだろう。ハッピーエンドではないんだけど、読みやすくていい作品。自分がどん底に落ちた時はきっとこの小説に救われるだろうと思った。

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    2026年06月13日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    すごく読みやすい一方で、神や愛、運命とは何かを考えさせられた作品だった。作品自体が良かったことももちろん、特に解説が素晴らしかった。あの時のこの表現はこういう意味だったんだ!という気づきがたくさんあって、この解説を踏まえてもう一度読み直したらまた新しい発見があるだろうと感じた。主人公の吉岡と森田ミツのリアルな男女関係と人間性の違いを反映していて共感しやすかった。でも読み終わった後に振り返るとその対比が鮮やかで、さすがなと思う。
    醜く、教養のない家庭で育ったがために無償の愛をもらえず、孤独に苦しみ、病気になった時は周りの恵まれた人間を妬ましく思うミツ。病気で体が変形した患者を忌み嫌いながら、自分

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    2026年06月13日
  • 海と毒薬

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    ネタバレ

    戦後、一人称の肺を患った男が勝呂医師と出会うことから始まり、徐々にその闇に迫ったところで回想に入るが、その後物語の終わりまで回想から出てくることなく綴られる。初めて読む構成で驚いた。
    戦時中の異様な空気感を肌で感じる。病院の屋上の夜の景色、空気、音が、読後も心細くてやるせの無くて気持ち悪い感情と共に想起される。
    どろどろとしていて爽やかではないが、透き通っているような雰囲気を纏った作品。

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    2026年06月10日
  • 沈黙

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    むごい……ただその一言に尽きる……。
    そして内容があまりにも深すぎて一読では味わいきれないので、また再読したいと思う。
    ただの信仰の話ではないのは確か。

    日本という閉鎖的な国家はやっぱりどこかおかしいらしい。キリスト教の本来の信義を曲解して日本流の宗教にしてしまっていたり。
    そもそも信仰する習慣そのものがない気がする。
    お正月の初詣だって、都合よく神様にお祈り。
    クリスマスなんてそもそもキリスト教徒でもないのに今や国民全員に染み付いてしまって。
    すぐにいろんなことに対して、神だ!神だ!といったり。

    読んでて苦しかったのは、日本人を救いたい一心でキリスト教を布教をしようとしたのに、その行為が

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    2026年06月09日
  • 沈黙

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    この小説と同格の小説はあれどこの小説を上回る小説はこの世に存在しない。この作品を読むことができただけでもこの世に生まれた価値があったと感じさせてくれるほどの作品。小説という表現型が到達しうる最高到達点の一つ。
    普遍的な命題を扱いメッセージの方向性は提示しながらもすべてを解説することは避け解釈に余白を持たせる、いくつかの矛盾を矛盾のまま残しておくなど、意味のつながりと余白のバランスが後世に残るマスターピースとなるための条件の一つであると考えるが、この作品ほど精緻なバランスを高い密度で実現している作品を私は知らない。信仰という普遍的なテーマに対し江戸時代長崎のキリシタン弾圧というドラマティックな舞

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    2026年06月04日
  • 沈黙

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    「沈黙」というタイトルは神の沈黙だけを指すか?
    →違う。3つの意味がある。

    キリシタン禁制時代の布教活動の話が本書のストーリー。
    しかし、その舞台設定で描いたのは、「人間の思いの強さ」「生の意義(あるかないか含め)」「守るべきもの」「人間や社会の残酷さ」。

    私のようないわゆる普通の宗教感(≒無宗教)を持つ日本人に、宗教の話は伝わらないと思っていた。でも、同じ日本で行われていたキリシタン迫害について、こんなに物語として魅力的で早く続きを読みたくなるように描けるのは、遠藤周作、凄まじい。。
    そして、この歴史という存在の過酷さに絶望する。


    そして、「沈黙」というタイトルが指すのはなにか

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    2026年05月31日
  • 海と毒薬

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    戸田は罪悪感が湧かないと言っていたけど、最後の「世間の罰だけじゃ何も変わらんぜ」という言葉が印象に残った。
    勝呂は罰を受けることを怖がっていたけど、戸田はやってしまった事実は変わらないことを、どこかでわかっていたのかもしれない。
    だから本当は戸田の方が重く受け止めていた可能性もあると思った。

    人は誰でも「やるしかなかった理由」を探して自分を納得させることがあるけど、ただ蓋をするだけでは、それは何かの瞬間に顔を出してまた自分を苦しめるのかもしれない。誰が悪いかではなく、人間の弱さや複雑さについて色々考えさせられた。

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    2026年05月27日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    あまり読み慣れない歴史小説だったけど、スラスラと読み進められた。内容は重いが、日本人として知っておかなければならない事実だと感じた。当たり前に何かを信じることができて、それを共有することができる現代の幸せを、改めて実感するとともに、何かを信じることがどれだけ人間の心を救うのかと考えさせられた。家族よりも大切なものなんてこの世にないと思っていたが、信じるものを裏切ることは、その家族も裏切ることなのだと、当時の価値観には今と違うものがあるのだなと、強く思った。正直、うわべでも信じてませんって言えばいいのに。と思ってしまったが、きっとそれは自分の人生を否定することに等しいのだろう。その気持ちを理解し

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    2026年05月23日
  • 沈黙

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    圧倒的に素晴らしかった。

    江戸時代前半の話。
    それよりちょっと前からイエズス会は、その版図を広げるために東へ東へ布教していき、ついぞ日本へ辿り着き、日本でもその版図は広がりました。
    貿易で利益を得ていた切支丹大名がいた一方で、勢力の拡大から、侵略を危惧した日本は鎖国、キリスト教の禁制を行いましたね。
    政治的にはそういう背景があったと思います。

    末端の司祭達はどうかというと、純粋に、東の果ての日本においても、キリスト教を求めている人がいて、救われることを信じている。
    日本の信徒はというと、貧しく厳しい生活の中で、確かに救いを求めているが、ヨーロッパでのキリスト教とは違う理解が進んでいそうで、

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    2026年05月14日
  • 海と毒薬

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    戦争について考えた作品で1番好き。ミソジニーらしいと色んなところで聞いたし作中でそれとなく感じるところもあったけど、だからと言って作品も嫌いにはなれないくらい良かった。地続きになっている病棟をずっと歩いている感覚

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    2026年05月12日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    戦中実際に起きた事件をベースに書かれたもの。
    当時の空気感、病院という閉鎖空間の空気感の中で、運命に流されるがままに実験に参加することになった主人公たちの罪の意識・倫理観を通して、日本人の罪や罰の捉え方とはいかなるものかを作者は問いかけてきてるのではないかと考えさせられる一冊。
    登場人物のバックボーンと関係付けながら、登場人物各々の実験への感情のアプローチがあり、今後登場人物たちはどのように生活をしていくのか、非常に気になる作品でもある。

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    2026年05月03日
  • 新装版 海と毒薬

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    太平洋戦争中に、捕虜となった米兵が臨床実験の被験者として使用された事件(九州大学生体解剖事件)を題材とした小説。
    重いテーマなのでなかなか手に取りにくかったが、文章自体は読みやすく、あっという間に読めた。
    戦後の人の視点から始まり勝呂(すぐろ)医師の視点、加害者達の視点から感情を描写する。自分の事情や感情に囚われながら殺人に加担していくところに恐怖を覚えたけど、勝呂の気持ちだけでなく、一見冷酷に見える戸田や上田の気持ちも分かる気がする。表面的な正義感では語れない。極限状態におかれた人間の心理は実際には戸田に近いかもしれないとも思う。呵責や罪悪感を感じないようにすることで精神的重圧から耐えれたの

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    2026年04月29日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    ミツという女は、愛を与える行いを考える上で自分の中から消えないものになると思う。

    登場当初からこの女は鈍臭く頭が弱そうに卑下し、目の前を通る人たちがどうしようもない弱さや辛さを抱えているとみえるや否や、自分を犠牲にして尽くす。
    そこまでするところか?自分がなさすぎる、自分が地に足をつけて健康でいて初めて人を愛し救えるのではないのかと苛立ちながら読み進める。

    しかし福祉や看護など奉仕を生業とする仕事をしている人には浮かぶのではないか。自分ももしかしたら、カーディガン諦めて戻ろうかとよぎるのではなかろうか。自分ももしかしたらハンセン病でなかったと知ってももう一度御殿場の輪に戻ろうとよぎるのでは

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    2026年04月27日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ

    再読。神を持たない日本人の良心のあり方が描かれている。神なきがゆえに、罪を罪として拒絶することもなく、罰を受けることもないかわりに救いもないような。アメリカ人の捕虜を生体解剖して殺した、そのことへの呵責に苛まれる勝呂はまだ良心があって、罪の呵責を背負って生きている。彼にはまだ救いがある気がするけれど(その救いは描かれてはいないけれど)、全てに無感動で己の出世のことしか考えないような医師たちには何があるんだろうか。呵責の念の起きない戸田は戸田で、何も感じない自分を不気味に感じ、勝呂がうらやましいのだと思う。寂寞とした海鳴り。
    作品冒頭では、腕は良いが機械的で人間味を感じさせない変わり者として登場

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    2026年04月21日