遠藤周作のレビュー一覧
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小説というよりは評伝である。
しかし、明確な問いが立てられ、それに明敏な答えを与えている点では学術論文にも等しい。
遠藤周作は小説家だけではなく、なぜ哲学者にならなかったのだろうか。
当世の安っぽい社会学者や思想家とは異なる、ちいさき者への優しさがある。
イエスの名前やその最期を知ってはいても、なぜ磔刑に処せられたか、弟子に裏切られ、また復活の伝説が興されたのか、その詳細は日本ではあまり知られていない。
『侍』でも描かれていた、現世利益をもとめる仏教観と、奇蹟でなく
苦悩と悲哀に寄り添うキリスト教観の違い。
イエスの愛は現代のキリスト教ではゆがめられている気がしないでもないが。 -
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「正義とは何か?」
この問いにぶち当たる度に、私はこの本を読んでいる。
先日、居眠り運転をして交通事故を起こしてしまった。
その時に正義感に満ちた警察官は「事故を起こした悪人」である私に対して威圧的で、とても苦しかった。そして、この本が無性に読み返したくなった。最近読んだ中で最高に面白い、改めて大好きな本。
同じ遠藤周作の著書『海と毒薬』の続編で、戦時中外国人捕虜の人体実験に関わった勝呂医師のその後の話だ。この小説の中で「正義」という単語が8回でてくる(数えた)。正義という名のもとで悪を糾弾する若手の新聞記者が、勝呂医師を追いつめていく。白か黒か。正義を信じて疑わない人は、自分がそちら側の -
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ネタバレ『海と毒薬』の勝呂医師が登場する、ということで読んだ。彼が主人公の続編というよりは、群像劇の中のもっとも重要な一人というような立ち位置である。
事前に読んだ人たちからの感想を聞いていたので、かなり身構えつつ読んだのだが、本当に悲しい結末だった。しかし、その救いのなさのために、私は遠藤周作に感謝した。
なんて人は悲しくどうしようもないのだろう。なぜ善人が傷つけられ、痛めつけられ、苦しみ悲しむのに、しょうもない人間がのうのうと生きてえらい顔をしているのだろう。
この作品に出てくる勝呂医師やガストンに比べて、若手記者や大学教授、そして学生たちは本当に愚かでしょうもない。彼らは深く考えず自分のために -
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ネタバレやや性差別的な表現・性的少数者への攻撃ともとられかねない表現があるものの、その時代にあって、倫理的に恋愛を説こうとした誠実な本だと思った。
神話のなかに見られる恋愛の、非常にピュアな「この人にさわってみたい」というやわらかな性欲の描写はなんだかとてもうらやましかった。
男性が感じる性衝動と女性が感じる性衝動の違いについては、「信じるしか無い」部分があり難しいのだが、性行為へのリスクの違いを述べている点は非常にいいと思った。いかに避妊の技術が進化したといえども、妊娠/堕胎/出産による女性の心身への影響が甚大であることは想像に容易い。肉体的には女性に負担が偏った行為なのだ。異性間の性行為におい -
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ネタバレ2021/6/29
長崎に行くことがあり、再読。
前に読んだ時より、コルベ神父の存在を強く感じた。
ヘンリックに与えた小さな変化は他の誰かにとっての大きな変化。人を少しでも変えるほど影響力を持ったコルベ神父はやっぱりすごい。
結末はわかっているのに後半読み急いでしまった。
今回は修平に寄って読んでしまう。どうにもならない運命に理由をつけて進んでいく。矛盾してることはわかっていても抗えない運命を受け入れる。
キリスト教はつくづく受け止める受動的な宗教だなと思った。
そは求むるところなき愛なり、これに尽きる。
かなり昔に読んだきりだった為、再読。
前より面白かった気がする。
キクの時と比べて話 -
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映画の「沈黙-サイレンス」を先日観た。
小説の「イエスの生涯」を先日読んだ。
その流れで、本書を手に取ることに。
映画も小説も遠藤氏は、「神の沈黙」という事をテーマにされているんですね。
ステファノの事件
エルサレムの会合
アンティオケの事件
この流れがキリスト(教になる節目)を誕生させる物語などは、初めて知る内容だけに面白かった中、登場人物のポーロが一番気になった。
ビジネス社会でベンチャー企業だと、ある程度の規模から鈍化することがあっても、熱く猛る信念で、常識を超えて突き進んでいく人が、ある意味無茶苦茶に引っ張る瞬間、異常な壁を軽々と越える時がある。
それも名もなき人達だったりする -
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2018.05.29再読しました。
前回この作品を読ませていただいた時は、お借りしていた本にもかかわらず、泪が止まらなくてページをぬらしてしまいました。まさに自分にとって人生の教科書になる作品だったので、今回は泣かないように再読を試みましたが…
ムリでした(TT)
浦上四番崩れ。
今からわずか145年前までこんなにも酷い事が行われてたんですね。
何回読んでもキクの美しい愛と心に感動します!
そして、「女の一生」、「沈黙」を読んだ時にも深く考えさせられる神の存在。
神は存在するのか?カタチはあるのか?と言う事。
わたくしの勝手な考えなのですが、神ってその人の人生なのではないか?と思うんで -
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三章仕立てですが、前半部を工藤と荒木トマスの類似、後半部を田中とサド侯爵の対比として読みました。
作中人物たちの葛藤が解消不可能であるだけに、バッドエンドであろうとわかっていながら、それでも救われてほしいという願いを込め、頁をめくりつづけました。「虚無に祈るような」と形容すれば良いのでしょうか、読者にこうした姿勢をとらせるのは、遠藤周作の作品に特徴的であるように思えます。
さらにいえば、この姿勢に、作中人物、あるいは作者自身が異教ーつまりはキリスト教、あえてここでは「異教」と記しますがーの洗礼を受けながら、自らの信仰と対峙しており、自分自身が祈る先には、偽りを隠せない信仰の前には、何者 -
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物凄く面白かった。キリスト教との関わりの中から、他の作品と同じように、日本人の本質をことごとく見事にあぶりだした作品だったと感じる。
30年近く日本で布教活動をしてきたヴァレンテ神父の「日本人はこの世界の中で最も我々の信仰に向かぬ者達です。彼らにとってもし、人間以上のものがあったとしても、それは人間がいつかなれるようなものです。たとえば彼らの仏とは、人間が迷いを棄てた時になれる存在です。日本人は決して1人では生きていません。彼の背後には村があり、家があり、彼の死んだ父母や祖先がいて、彼らはまるで生きた生命のように彼と強く結びついているのです。一時的にであれ改宗したはずの彼が、棄教してもとに戻 -
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ネタバレこの小説は二つの話が交互に出てくる。
一つは現代(といっても戦後30年後くらいの話だが)においてかつてキリスト教系の大学に通っていたが、信仰を捨てた(あるいは見失った)、同級生だった二人の中年の男がイエス・キリストの足跡を辿る旅をする。
もう一つは過去のイエス・キリストの生涯が書かれている。
過去の話は実際にイエス・キリストと出会った人々が彼に対して何を感じたのか、ということに焦点が当たっているように思える。現代においては聖書やその足跡を辿って見えてくるイエス・キリストに対して何を感じるかということが主題に感じた。ただ、現代においては、後半はネズミと呼ばれる神学校時代の修道士に焦点が当