遠藤周作のレビュー一覧

  • 秋のカテドラル 遠藤周作初期短篇集
    ここまで心の機微を表現出来るのが、凄い。自分の気持ちの有り様を言葉に正確に移し替えてあるその見事さ。初期でこれほどとは。
  • 侍

    なんというか、すごい本を読んだ。
     300ページ超とそれほど分厚い本ではないのに、重苦しく読むのに10日と、とても時間がかかった。が、つまらないからでは決してない。
     この本の感想を言葉で表す術がない。怒り、悲しみ、切なさ、理念、信念…少し、頭をひやしてじっくりと脳みそがことの本質を理解するのを待つ...続きを読む
  • 私にとって神とは
    キリスト教は人間の執着とか欲望があってその中に神の動きをみつける、というのが面白いと思った。
    ユダヤでは差別されていた人たちに声をかけて慰めたのがキリスト。仏教のように執着を捨て、静かに死んでいくのではなく、波瀾万丈でドラマチックに苦しい死に方をするキリスト。
    また男性的なユダヤの世界旧約聖書と比べ...続きを読む
  • 海と毒薬(新潮文庫)
    職場の人に勧められて。
    遠藤周作先生の著作を読むのはこれが初めて。
    何というか、とにかく凄いものを読んだという語彙力皆無の言葉しか出てきません。

    実在の事件を下敷きにしたお話。
    ただ事件の残虐さや非道さを描いたものではない。
    「戦中」という今のわたしたちの価値観では量れない時代の話ではすませない。...続きを読む
  • 沈黙
    遠藤周作氏の代表作と呼ばれる作品。江戸時代の日本にキリスト教を布教する活動を行ってきたポルトガルの司祭たち。
    しかし、長年日本で布教をしていた司祭フェレイラが棄教したという報を聞き、教会の不名誉を挽回すべく、フェレイラを師と仰ぐ司祭ロドリゴが日本に潜入する。
    そこには、幕府の年貢によって食べるものを...続きを読む
  • 深い河 新装版
    様々な過去を背負った人達が自分の中にある痛みと向き合いながらインド旅行に行く話。
    作品を通じて生死や苦悩などの普遍的なテーマと神の存在や輪廻転生など宗教的な問いが一貫して流れている。
    とは言え、それは「沈黙」のようにキリスト教だけを対象としたものでなく、むしろあらゆる宗教に通底した何かを求めているよ...続きを読む
  • 沈黙
    史実と物語世界の結び付けが遠藤周作はとにかく卓越している。

    西欧のキリスト教と日本風のキリスト教受容との乖離を繊細に描き出し、当時の宗教のあり方を抉り出している。
    日本と世界の結びつきや宗教的観念に基づくアイデンティティを、主人公のロドリゴを始め、他の登場人物にも適応して考えられる作品。俺もキチジ...続きを読む
  • 海と毒薬
    ・あらすじ
    終戦直後の日本、東京。
    私は気胸治療を受けるために勝呂という陰気で無愛想な町医者の元を訪れる。
    治療は的確だが、どこかその「手」に冷たさと不気味さを感じるその医者は、戦中の大学病院で起こった生体解剖事件に関わっていた。

    3章仕立てで2、3章はその生体解剖事件に関わった勝呂、看護婦の上田...続きを読む
  • 沈黙
    暗く悲痛な叫びが聞こえてくるようだった。過酷な日本への宣教活動はやはり胸が痛くなる。
    次々と現実を突きつけられる冒険チックな展開にハラハラドキドキした。

    キリスト教が急速に浸透した理由は時代背景もあるのかなぁとか、役人達もできれば拷問などは避けたいんだろうなぁとか…教科書でみた踏み絵の印象は幕府は...続きを読む
  • 海と毒薬
    「しぬことがきまっても、殺す権利はだれにもありませんよ」と言うヒルダさんの良心が信仰によって導かれているのに対し、手術の当事者は医学の進歩を建前とすることで自身の良心をねじ曲げ、残虐行為に及んだ。
    この違いは信仰神の有無なのだろうか。結局我々は、神の教えが無ければ都合良く良心の書き換えを行い、道徳に...続きを読む
  • 海と毒薬
    福岡で起きた人体実験をもとにつくったとされる小説。戦中の暗い時代を舞台に、体制にいかに従順に生きるのか、正義とは何か、を考えるきっかけになる。

    冒頭は人間味のない描き方がされた現代の勝呂。学生時代は怯え、上に意見も言えない存在だった。そこから現代にどう繋がったのかは読者の想像に委ねられるが、自分だ...続きを読む
  • 秋のカテドラル 遠藤周作初期短篇集
    知り合いから聞いた話のような、フィクションかノンフィクションか曖昧で不思議な短編集。えぇ…て感じで終わる話もあれば、くすっとしてしまう話もある。旅をしていろんな人に出会ったような充実感がある。
  • 現代誘惑論 遠藤周作初期エッセイ
    遠藤周作先生の初期のエッセイ。
    冒頭はこの本が書かれた当時の
    プレイ・ボーイとはどういう者か、
    それとドン・ファンそしてカサノバの違いについて。
    どれも、女性を誘惑する者であるが、
    遠藤先生はどれも情熱はあるかもしれないが
    愛を知らなかったと。

    私も結婚して10年以上たつので
    多くの人と同様に倦怠...続きを読む
  • 沈黙
    重いながらにすごい本だよね、、
    解説でも触れられてるけど、歴史的な背景を踏まえると最初から話の筋や結末はある程度見えているのに文章の面白さでぐいぐい先に進んでいくし、主人公が踏み絵をして棄教する瞬間は本当に胸が苦しくなった。文章が面白くて話の構成が上手く、その上テーマの回収も完璧だ…。主人公が最後に...続きを読む
  • 海と毒薬(新潮文庫)
    ・罪の価値観
    「俺もお前もこんな時代のこんな医学部にいたから捕虜を解剖しただけや。──(本文より)」
    世間の罪というのは、時代によって異なるとだな思った。例えば、平安時代では一夫多妻が当たり前だったが、今は不埒なこととして世間から見られている。

    ・本文の心情描写
    さすが遠藤周作。色々な背景を持つ人...続きを読む
  • 海と毒薬
    解説が分かりやすかった。
    生体解剖の恐ろしさを伝えるのが目的ではなくて、それはあくまでも、良心を持たない日本人というものをあぶり出すために扱ったんやね。
    でも私はその事件の気持ち悪さがしんどくて、それに気持ちを持って行かれて、本当に伝えたい感情のところまで思いを馳せるのが大変やった。

    一神教のよう...続きを読む
  • 海と毒薬(新潮文庫)
    ヒーーーー、えぐい話
    激ヤバ人体実験に関わる人たちの罪の意識を描いた作品

    "闇の中で眼をあけていると、海鳴りの音が遠く聞こえてくる。その海は黒くうねりながら浜に押し寄せ、また黒くうねりながら退いていくようだ。"
    動揺の感情表現の比喩やばすぎる

    "恨み悲しみ、悲歎、呪詛、そうしたものをすべてこめて...続きを読む
  • 沈黙
    キリスト教のような宗教が絡む小説を初めて読んだ。

    自分が特定の宗教をあまり持たない日本人として生きているため、主人公であるロドリゴに共感しにくい部分が多かった。そこまで、神にすがる感情を理解することに難しさを覚えた。
    また、逆にキチジローにはとても共感してしまった。はじめは卑下して読んでいたが、ペ...続きを読む
  • 海と毒薬
    タイトル含め、色々と考えさせられる作品。とても暗く重々しいけれど、読みやすく 苦痛なく読めた。実話をもとに書かれており、その事件について調べてみたら 自分なりに感じるものがあり、もう少し深く知りたいと思った。

  • 死海のほとり
    私と戸田の巡礼の記録と、2000年前のイエスを取り巻く群像の一人ひとりの物語が交互に語られ、一度その人の人生を横切ったからには「永遠の同伴者」として共にいる惨めで貧しいイエス像を描き出す。
    神は清らかで威厳があり高く尊いもの、という一般的なイメージに対して、今回も遠藤周作が描くのは、無力で惨めで汚ら...続きを読む