遠藤周作のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ吃りのあるニホンザル研究者の話。
主人公一平は吃りのため弱気な性格。昔から動物に心惹かれ、恩師の言葉もあり、動物の研究者となる。
小学校からの幼馴染朋子に恋をするも、大学進学してから縁遠くなっていた。
ニホンザル研究者として猿の餌付けに従事するも、ホテル建設問題や新しく来た研究所長との関係悪化により退所。
その後別の山で研究を進めるも、以前の研究所でホテルを建設した加納専務の邪魔が入る。加納の秘書は朋子であった。
朋子は専務の部下である夫がいたが、途中で夫が飛行機事故により死亡。朋子と一平、加納との三角関係や、汚れた人間の世界と自然に生きる猿たちの世界が描かれる。
今回はキリストには触れられ -
Posted by ブクログ
前回の聖書読書会でおススメされたので、有名な「沈黙」とあわせてバリューブックスさんでポチった。
実はわたしにとっては初の
遠藤周作作品。
聖書に興味を持つ前からいつか「沈黙」は読みたいと思っていたが、おススメしてくれた方が、
「それなら是非こちらの方から」と教えてくれたので、「深い河」から読み始めた。
小説の時代背景は1984年…なので、
少し古い時代ではあるが、
歴史ものというわけでもなくとっつきやすい。
バブル経済が始まる少し前の、日本の景気が上向きで、かと言って戦争の生々しい記憶も留めている世代がいる頃。
ちょうど今の時代から振り返ると、40年前、アジア太平洋戦争からは40年後の世 -
Posted by ブクログ
遠藤周作が四つの福音書を引用し、解釈するイエス像。
人智を超越した・圧倒的な希望の象徴・神の子イエスではなく、人間イエス・同伴者イエス。
人間の苦しみに嘆き悲しみ、「愛」を持って寄り添おうとするイエスの姿が強調されている。
人間が一番辛いのは貧しさや病気ではなく、貧しさや病気による孤独や絶望。
人間に必要なのは「愛」であり、一時的な効果を産む「奇蹟」ではない…とイエスは苦悩する。
奇蹟は起こらず人々に失望され、やがて十字架に向かう、無残なイエス。
しかし、イエスはその死さえも理解していた、人間の苦しみを理解する為の「愛」によるものだった…。
本来の全能の救世主のイメージからかけ離れた、人 -
Posted by ブクログ
全体的に暗めの色調で描かれていて
明るさをイメージするタイミングがなかった
佐伯彰一の解説を読むこと作者の伝えたいテーマがハッキリ分かった。
当時のことについて全く詳しくないけど
登場人物それぞれが秘めるココロの声や言動に
理解できるものもあった。
良い人でありたいっていう自分の理想とはまた別に一皮剥いたら別の自分もいる気がするのも理解できた。良心というのは地盤が緩んだ状態というのはブレブレになる。
登場人物がそれぞれが自分という人間に翻弄されているような感じが面白かった。
シンプルに話の流れが良くてめちゃくちゃ没入できたし、全体的に暗いイメージなのに「西陽が白い埃を浮かせながら誰もいない机や -
Posted by ブクログ
何年か前に買って、棚に眠っていた一冊。つまり、積読本。
ここまで感想が書き辛くて、私にとって共感性も低い本だったとは思いもしなかった。書き出すほどに支離滅裂になりそうで、正直戸惑っている。それでも手探りしながら、書き終わりというゴールを目指そうとは思うけど。
ちょうど、それぞれの目的を果たすため、インド行きを決行した登場人物たちみたいに。
長年連れ添った妻を癌で亡くした磯辺。学生時代に弄んだ男の行方を追う美津子。動物とのふれあいを、唯一の拠り所とする沼田。「旧日本軍 史上最悪の作戦」と称されるインパール作戦で奇跡的に生還した木口。
本書のテーマを一言で述べるとしたら、「信仰」になるだろう。登 -
Posted by ブクログ
適当に手にした小説だったが、名作が過ぎる。そう思って後を見ると2008年第92刷発行て。初版が1972年とあるので、やはり長年人々の心を惹きつけてきたのかしら。
セックスをするためだけにミツに近づき一晩で棄てた男。なんのことはない、どこにでもあるありふれた一幕だと思う。でも読んでて苦しい。それは相手がミツだからだろう。
私は、純朴ゆえ生きるのが下手なミツが愛おしい。そして歯痒い。
ミツのような人間が近くにいたのなら、あるいは私の人生感も変わっていたに違いない。
当時の時代背景などもあるが、フェミニスト系の人には受け入れ難いかもしれない。 -
Posted by ブクログ
新潮文庫夏の100冊からチョイス。書き出しが好みでした。
テーマは信仰心とエゴイズム。信仰を巡っての"強きもの"と"弱きもの"の対比。400年前に本当にこんな事があったなんて信じられないです。歴史の教科書を読むだけじゃ伝わって来ない迫力が有りました。
同時にキリストとユダの関係性を巡る逡巡は、俗世間に塗れた自分には到底たどり着けない境地なんだろうな、とも思いました。
圧倒的なのは9章。信仰を巡る問答が求道的に過ぎて言葉にならなかった。主が回答を与えず沈黙を貫き通すのは、自己内省を促す為であったのだ。そうゆう意味じゃ基督教ってなんて残酷な宗教なんだろ -
Posted by ブクログ
〝理想モデル“を持つ人間は、現実と理想の差を悔い改める事ができる。神の存在は、その理想づくりに役立つ。必ずしも神である必要はない。無神論者が、人目さえなければ常に悪事を働くという事もない。自らの道徳観に照らして善行を行おうとするのは教育だけではなく、本能でもあり、他者との関わりも善行の動機にはなるだろう。
「白い人」では、ナチス協力の過去を持つ男が、自らの罪と向き合い続ける姿が描かれ、その姿勢は西洋的な「個人の良心」の象徴として浮かび上がる。一方、「黄色い人」は戦後の日本を舞台に、集団の中で責任を曖昧にして生きる人々を描き、作者はここに日本社会に根差した構造を見たのではないか。
「白い人」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本編の主人公・サチ子は第一部の主人公キクの遠い親戚(祖母のいとこがキク)。
舞台は第二次世界大戦ごろの長崎。やはり切支丹が題材。
正直作者が取り込みたいエッセンスを全部一つの小説に入れ込むタイプの小説は好きではない。今回で言うと原爆、学徒出陣、特攻、アウシュビッツという要素がそれに当たり、山崎豊子の二つの祖国を読んだときにも同じような感想を持ったことがある。
一方で作者は人間の弱さ、強さ、汚さ、美しさ等あらゆる側面を捉えているため、惹き込まれる。
色々詰め込み過ぎかなと思う一方、色んな人が色んな立場で現実に向き合ったんだなと思わせる1冊でした。