遠藤周作のレビュー一覧

  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ

    調度良い長さ、かつ文体も読みやすかった
    勝呂医師の非情な過去が明らかになるかと思ったが彼は年老いても良心の呵責に苦しんでいて、本当の化け物は戸田だった
    誰もが戸田のような一面と勝呂のような道徳を持ち合わせているものだと思う。2人ともに共感できる部分があった。

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    2025年09月25日
  • 彼の生きかた

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    ネタバレ

    吃りのあるニホンザル研究者の話。
    主人公一平は吃りのため弱気な性格。昔から動物に心惹かれ、恩師の言葉もあり、動物の研究者となる。
    小学校からの幼馴染朋子に恋をするも、大学進学してから縁遠くなっていた。
    ニホンザル研究者として猿の餌付けに従事するも、ホテル建設問題や新しく来た研究所長との関係悪化により退所。
    その後別の山で研究を進めるも、以前の研究所でホテルを建設した加納専務の邪魔が入る。加納の秘書は朋子であった。
    朋子は専務の部下である夫がいたが、途中で夫が飛行機事故により死亡。朋子と一平、加納との三角関係や、汚れた人間の世界と自然に生きる猿たちの世界が描かれる。

    今回はキリストには触れられ

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    2025年09月18日
  • 海と毒薬

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    日本人の精神性を追求する」といった解説もあるけれど、罪の意識や良心は国籍や宗教に規定されるだろうか。むしろ先天的な資質の影響が、環境や教育など後天的な影響より大きいと感じる。時代や国境を越えて読み継がれているのも納得の一冊。

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    2025年09月14日
  • 深い河 新装版

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    前回の聖書読書会でおススメされたので、有名な「沈黙」とあわせてバリューブックスさんでポチった。

    実はわたしにとっては初の
    遠藤周作作品。
    聖書に興味を持つ前からいつか「沈黙」は読みたいと思っていたが、おススメしてくれた方が、
    「それなら是非こちらの方から」と教えてくれたので、「深い河」から読み始めた。

    小説の時代背景は1984年…なので、
    少し古い時代ではあるが、
    歴史ものというわけでもなくとっつきやすい。

    バブル経済が始まる少し前の、日本の景気が上向きで、かと言って戦争の生々しい記憶も留めている世代がいる頃。
    ちょうど今の時代から振り返ると、40年前、アジア太平洋戦争からは40年後の世

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    2025年09月12日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    捕虜の生態解剖がテーマと聞いていたからどれほど解剖や付随した描写があるのかと思ったけど、そういうわけじゃなかった

    海のように寄せては引いていく非人道的な事柄や勝呂自身ではどうしようもない患者の容体云々に対する勝呂の葛藤が見てとれた

    生態解剖は医学的な観点からは正に傾くし、人道的な観点からは負に傾くが、、、という感じ

    25.09.0.9-10

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    2025年09月11日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    良心とは社会的な恥からこそ生まれるものなかのか。本当は、罪の意識や道徳的なものから生まれてくるのが良心ではないのか。人は社会的な評価がもしなくなってしまえば良心はなくなるのか。そういったことを考えさせられるほんだった。

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    2025年09月11日
  • イエスの生涯

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    遠藤周作が四つの福音書を引用し、解釈するイエス像。

    人智を超越した・圧倒的な希望の象徴・神の子イエスではなく、人間イエス・同伴者イエス。
    人間の苦しみに嘆き悲しみ、「愛」を持って寄り添おうとするイエスの姿が強調されている。
    人間が一番辛いのは貧しさや病気ではなく、貧しさや病気による孤独や絶望。
    人間に必要なのは「愛」であり、一時的な効果を産む「奇蹟」ではない…とイエスは苦悩する。
    奇蹟は起こらず人々に失望され、やがて十字架に向かう、無残なイエス。
    しかし、イエスはその死さえも理解していた、人間の苦しみを理解する為の「愛」によるものだった…。


    本来の全能の救世主のイメージからかけ離れた、人

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    2025年09月10日
  • 沈黙

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    扱われている事件や人物の大方は史実に基づいているとのこと。日本潜入を敢行した3人の司祭も、モデルがいる。フェレイラ司祭が棄教するはずがないと信じるロドリゴ(主人公)と、棄教して彼らに常について回るキチジロー。やっと会えたフェレイラとの衝撃の結末。すごく勉強になった。

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    2025年09月08日
  • 沈黙

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    「幕府はキリスト教の警戒心を強め、絵踏みを行わせて信者を摘発した。」くらいに、社会の授業でサラッとしか触れられないキリシタン弾圧。弾圧の様子の絵を教科書等で目にしたこともあるけど、あまり実感を持ったことはありませんでした。
    ですが今回その内容の重大さに触れられました。
    私の不勉強さ未熟さが大きい気もしますが(-_-)
    さくらももこのエッセイで遠藤周作の人物像が出てきた際に気さくな人という印象を持ったけど、その印象とは180度異なる内容。
    テンポがほどよいしページ数も多くないので中高生でも読みやすいとも思います。

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    2025年09月05日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    「沈黙」からの流れで。人の残虐さと、そうなれなかった勝呂の良心はじつに良心だったのか、あるいは冷徹に見える戸田にほんとうに良心はなかったのか、まざまざと考えさせられる。

    佐伯彰一が解説ですべて書いてしまっているけれど、導入部の計算され尽くしっぷりに感嘆する。

    黒い海が引き込んだのだ、みんな死ぬ世の中なんだから、一人くらい生きたまま殺したって自然死とどうちがうんだよ、と、ああ呵責さえ感じられない戸田を思う。(黒い)海が自然死で、毒薬が実験死だったのかもしれない。

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    2025年09月05日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    全体的に暗めの色調で描かれていて
    明るさをイメージするタイミングがなかった
    佐伯彰一の解説を読むこと作者の伝えたいテーマがハッキリ分かった。
    当時のことについて全く詳しくないけど
    登場人物それぞれが秘めるココロの声や言動に
    理解できるものもあった。
    良い人でありたいっていう自分の理想とはまた別に一皮剥いたら別の自分もいる気がするのも理解できた。良心というのは地盤が緩んだ状態というのはブレブレになる。
    登場人物がそれぞれが自分という人間に翻弄されているような感じが面白かった。
    シンプルに話の流れが良くてめちゃくちゃ没入できたし、全体的に暗いイメージなのに「西陽が白い埃を浮かせながら誰もいない机や

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    2025年09月04日
  • 深い河 新装版

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    何年か前に買って、棚に眠っていた一冊。つまり、積読本。
    ここまで感想が書き辛くて、私にとって共感性も低い本だったとは思いもしなかった。書き出すほどに支離滅裂になりそうで、正直戸惑っている。それでも手探りしながら、書き終わりというゴールを目指そうとは思うけど。
    ちょうど、それぞれの目的を果たすため、インド行きを決行した登場人物たちみたいに。

    長年連れ添った妻を癌で亡くした磯辺。学生時代に弄んだ男の行方を追う美津子。動物とのふれあいを、唯一の拠り所とする沼田。「旧日本軍 史上最悪の作戦」と称されるインパール作戦で奇跡的に生還した木口。
    本書のテーマを一言で述べるとしたら、「信仰」になるだろう。登

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    2025年08月30日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    マルグリットという架空の女の子がいることで、物語、市民らに共感でき、読みやすいと感じた。

    マリー・アントワネットは、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」の印象しかなかったから、首飾り事件などもっととんでもないことをしているとは驚きだった。
    そんな中で、可愛げがあるところがたまらない、王宮にはやはりロマンがある。そう思わされる一冊だった。
    トリアノン、ヴェルサイユ宮殿いきたくなる。
    実際、訪れてみると広すぎて、もう行きたくない^_^

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    2025年08月29日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    結末がわかっているが故に、読み進めるのが荷が重く感じる。

    マリー・アントワネットの美しさは、どこか価値観が王妃らしい、危ういところにあるのではないかと思う。

    たくさんの人の前で、祝福されて受け入れたれたのに、

    結末は、投獄されて処刑される運命は悲劇すぎるし、人間の恐ろしく、愚かなところが見え隠れしているのではないか。

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    2025年08月29日
  • 深い河 新装版

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    理路整然としている戦後の資本主義社会と、混沌としていて陰を残したインド社会との対比。
    そんなインドにおいて来るもの全てを拒まないガンジス川だからこそ、そこには神の力が宿る。

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    2025年08月26日
  • 沈黙

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    信仰の在り方というテーマ。形の上だけ信仰を捨てるということがあり得るのかどうか。信仰は心の救いはもたらしても物理的な救いはもたらさないことを明確にした上で、形にこだわらずに神を信じる道は示されていると思う。

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    2025年08月14日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    適当に手にした小説だったが、名作が過ぎる。そう思って後を見ると2008年第92刷発行て。初版が1972年とあるので、やはり長年人々の心を惹きつけてきたのかしら。

    セックスをするためだけにミツに近づき一晩で棄てた男。なんのことはない、どこにでもあるありふれた一幕だと思う。でも読んでて苦しい。それは相手がミツだからだろう。
    私は、純朴ゆえ生きるのが下手なミツが愛おしい。そして歯痒い。
    ミツのような人間が近くにいたのなら、あるいは私の人生感も変わっていたに違いない。

    当時の時代背景などもあるが、フェミニスト系の人には受け入れ難いかもしれない。

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    2025年08月11日
  • 沈黙

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    新潮文庫夏の100冊からチョイス。書き出しが好みでした。

    テーマは信仰心とエゴイズム。信仰を巡っての"強きもの"と"弱きもの"の対比。400年前に本当にこんな事があったなんて信じられないです。歴史の教科書を読むだけじゃ伝わって来ない迫力が有りました。

    同時にキリストとユダの関係性を巡る逡巡は、俗世間に塗れた自分には到底たどり着けない境地なんだろうな、とも思いました。

    圧倒的なのは9章。信仰を巡る問答が求道的に過ぎて言葉にならなかった。主が回答を与えず沈黙を貫き通すのは、自己内省を促す為であったのだ。そうゆう意味じゃ基督教ってなんて残酷な宗教なんだろ

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    2025年08月07日
  • 白い人・黄色い人

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    〝理想モデル“を持つ人間は、現実と理想の差を悔い改める事ができる。神の存在は、その理想づくりに役立つ。必ずしも神である必要はない。無神論者が、人目さえなければ常に悪事を働くという事もない。自らの道徳観に照らして善行を行おうとするのは教育だけではなく、本能でもあり、他者との関わりも善行の動機にはなるだろう。

    「白い人」では、ナチス協力の過去を持つ男が、自らの罪と向き合い続ける姿が描かれ、その姿勢は西洋的な「個人の良心」の象徴として浮かび上がる。一方、「黄色い人」は戦後の日本を舞台に、集団の中で責任を曖昧にして生きる人々を描き、作者はここに日本社会に根差した構造を見たのではないか。

    「白い人」

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    2025年08月04日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    ネタバレ

    本編の主人公・サチ子は第一部の主人公キクの遠い親戚(祖母のいとこがキク)。
    舞台は第二次世界大戦ごろの長崎。やはり切支丹が題材。

    正直作者が取り込みたいエッセンスを全部一つの小説に入れ込むタイプの小説は好きではない。今回で言うと原爆、学徒出陣、特攻、アウシュビッツという要素がそれに当たり、山崎豊子の二つの祖国を読んだときにも同じような感想を持ったことがある。

    一方で作者は人間の弱さ、強さ、汚さ、美しさ等あらゆる側面を捉えているため、惹き込まれる。
    色々詰め込み過ぎかなと思う一方、色んな人が色んな立場で現実に向き合ったんだなと思わせる1冊でした。

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    2025年07月31日