遠藤周作のレビュー一覧

  • 哀歌

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    名作『沈黙』を生み出すきっかけになった短篇集。苦いコーヒーに入ったほんの少しの甘味のような作品群。隠れた名作「札の辻」は後に『死海のほとり』として蘇ります。

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    2009年10月04日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    モデルとなった事件は数年前にWikipediaで読んでおり、その際は流し読みする感覚で「こんな事があったんだ〜」くらいの軽い気持ちでした。
    本書を読み終わり、改めて事件の概要を読んでやるせない気持ちで胸がぐっと締め付けられました。
    クリスチャンである遠藤周作さんが書かれたためか、登場人物のヒルダの言動や彼女に対する周りの感情がひどく印象的でした。

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    2026年04月13日
  • 新装版 海と毒薬

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    著者はキリスト教徒。本書は〈神を持たない日本人〉をテーマの一つとして書かれたものらしいが、人は神がいれば(宗教を持っていれば)道を踏み外さない…わけではない。
    人を救うために医者になった者が「生体実験はゆくゆくは大勢を救う」と解釈して人を殺すように、どれだけ残忍な行為でも自分の都合の良いように解釈して正当化できてしまうという人間の恐ろしさを炙り出している。
    戦争がはじまれば人はいまより簡単に人を殺す、という認識を共有するために読むべき本である。

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    2026年04月09日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    一部のキクの従姉妹、ミツの孫にあたるサチ子のお話。サチ子の幼なじみの修平との話と長崎の教会にいたあとポーランドに戻ったコルベ神父の話とが並行して描かれています。

    五百ページを超える長編に様々な登場人物の関わりが細やかに描かれていて、非常に読みやすい文章ではあるものの、苦しくて途中から涙が止まらなくて休み休み読み終えました。

    ひとたび戦争が始まると殺すことを命じられる苦しさ。
    見下ろす港がキラキラとして綺麗で、美しい教会、坂道、緑多い山々。
    あんな悲惨なことがこの美しい長崎で暮らした普通の人たちに起こったということがあまりにも苦しく切ないです。

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    2026年04月07日
  • 海と毒薬

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    実際に会った事件をモチーフにしているとのことで衝撃。
    人間の生体実験なんて昔の遠い国の一部の人間性を失った集団が行なっていたというイメージだった。
    でもそこに関わっていたのは、普通に出世欲に塗れたり、普通に自分の境遇に鬱屈してたり、普通に良心があったりする、どこにでもいる人間だったのかもしれないと思うとやるせ無い気持ちになった。

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    2026年04月05日
  • 沈黙

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    ずっと読みたかったけど難しそうと躊躇してた作品。しかし非常に読みやすく全然難しくなかった。(最終章は別として笑)内容はかなり重くて考えさせられた。ぜひスコセッシの映画も観たい!

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    2026年03月27日
  • 沈黙

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    この作品読んで、強く印象に残ったのは「信仰とは何か」という問いだった。
    江戸時代の禁教令のもとで、隠れキリシタンたちは壮絶な弾圧を受けながらも信仰を守り続けた。なぜ彼らはそこまでして信じ続けたのか。
    貧しい農民たちにとって、信仰は生きる希望であり、初めて知る人の温かさそのものだった。
    しかし、その信仰の中で彼らが直面したのは、あまりにも過酷な現実だった。
    何も悪いことをしていないのに与えられる苦しみ。そして、その中で神は何も語らない。「なぜ助けてくれないのか」という問いに対する、神の沈黙。

    また、印象的だったのは、「弱さ」に対する描き方だった。
    拷問や仲間の死に耐えきれず信仰を捨ててしまう者

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    2026年03月26日
  • 沈黙

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    キリストの最期・江戸時代の基督教の弾圧が重なる。
    自身の使命感のために迫害され殺されていく百姓や非人、彼らの声を聞かされ棄教を迫られる。かつての師にさえ諭される。もっともこの師も拷問され他者の死の責任を押し付けられ続けた結果なのだが。
    終わりのないこれらの気怠さのため、唯一の拠り所であり、生涯愛すると心に誓った者の顔を踏みつけるまで追い込まれた。

    師は言う「神は何もなさらなかったからだ」と。
    自分の信仰心と目の前の惨たらしい狼藉とが闘い、全てを諦めた先にあったのは、どす黒い余生だった。(しかも踏絵後も助けられなかった信徒がいた始末)

    理不尽と自分の中の「正義」の衝突が起こった時どうするべき

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    2026年03月20日
  • さらば、夏の光よ

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    鈍くてモテない気の優しい青年の恋。何度も繰り返される普遍的な設定ではあるけれど、遠藤周作にかかればやっぱり光る。人間はか弱い小鳥じゃない。

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    2026年03月19日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    表紙のキクが可愛くて手に取ったので、こういうお話とは全く知らずに読んで、序盤では後にこんな展開になるとは思いもしていなかったのでものすごくショッキングだった。
    あまりにも凄惨で苦しかった。
    それでも読み進められずにはいられずすぐに読み終えました。
    長崎を訪れた際、大浦天主堂で綺麗と感動して、こんな歴史があったなんて知らなかった自分を恥じるような気持ちになりました。
    信仰とは、愛とはなんなんだろうとなんとも言えない気持ちになりました。

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    2026年03月12日
  • 侍

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    長谷倉という侍と、ベラスコという司祭、二人の視点で描かれる物語。
    『沈黙』と似た雰囲気があり、本書も事実に基づいているらしく、こんな辛い時代があったのかと驚かされる。

    キリスト教にも宗派の違いがあり、そこに政治も絡んでくる。
    ベラスコは征服欲の強さから教えを押し付けるような行為をしてしまい、その傲慢さを自覚しながらも正当化していた。
    しかし終盤になると、自分の行いを見つめ直すことになる。
    そこでキリストや神への信仰が本物であると感じた。

    暗く、報われない現実。
    そんな世界にこそキリストは寄り添ってくれる存在なのだという。
    華やかな生活の中ではなく、見すぼらしい苦しみの中に、それぞれの人の中

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    2026年03月11日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    時代だとは思いますが、女性の立ち場が無い。
    現東京藝術大学を卒業した母が、ヴァイオリンばかり練習していて家庭のことを顧みないと思ってる夫、
    主人公が入院したときに、子どもをちゃんと面倒みてないから入院したんでしょ?と思い込む伯母、
    病院のベッド脇で左指だけでもバイオリンの練習をする母見て、怒りだす主人公。
    主人公の退院後、まったくバイオリンを弾かなくなった母を見て、夫は満足そうにしていたが、結局両親は離婚。精神を病む母。
    満州から帰国後も、バイオリン指導が厳しすぎて仕事をやめされられた母。

    誰も救われない。

    父親が酷い。主人公を父の元か、母の元、どちらに住むか選ばせるようでいて、半強制的。

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    2026年03月11日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ずっと濁ってて良かった。
    こんな事言うべきではないんだろうけど、現代のsnsでもこんな感じなんだろうなぁ。
    変な正義感持った奴の声が大きすぎる。

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    2026年03月10日
  • 沈黙

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    島原天草一揆くらいの時代、日本の調査と布教に来たポルトガル司祭が苦難に遭い背教を迫られるという話だが凄かった。
    タイトル「沈黙」にもあるように、一つの大きな主題として「なぜ苦境の折に神は沈黙しているのか(なぜ救ってくださらないのか)」という悲痛な嘆きがあったが、主人公司祭の強い苦しみと実感を伴う問いとして物語終盤常に大きな存在感を保っていた。
    主人公司祭が来日する理由にもなった、「拷問の末既に背教した司祭」の存在とのやり取りや奉行との問答の末の結末には陰鬱な気分になり、体調が悪くなった。
    「布教は善であったのか」「何が民を救うことなのか」「主は何をしているのか」
    じめじめと腐った潮風の様な問い

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    2026年03月02日
  • 沈黙

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    沈黙は見方によっていろいろな解釈ができる小説だなと思う。宣教師には宣教師の、切支丹になった農民には農民の、取り締まる役人には役人の理屈がそれぞれあって、どれも正しい。

    救いを求めるロドリゴに対して神は「沈黙」したままで、結果的にロドリゴは棄教をしてしまう。でもそれは形だけの棄教で、信仰なんてものは自分の外側にいる神に祈ることではなく、自分の内面にいる神と対峙し対話することだということに気づいたが故の結果なのではないかと思う。

    そして、キチジローの弱さはロドリゴの弱さで、キチジローとはロドリゴであったのではないかとも思う。人間は強いだけではいられない。誰にでもキチジローのような自分を抱えてい

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    2026年02月25日
  • 沈黙

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    ゼロか100かの選択となり、信仰をもっても信じるものは救ってはくれず、殉教者たちはなぜ死ななくてはならなかったのか。
    葛藤が文章に表現される、文学の力が思い知らされる作品。
    暗いし、好きではないけれど、圧倒的なパワーがあった。
    同じモチーフを描き続け、ずっと悩んでんでいたのか。作家について知りたいと思える作品。

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    2026年02月24日
  • 沈黙

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    キリシタン禁令時の長崎を描いている歴史小説ともいえる。司祭が棄教、転ぶまでの心理描写とキリストへの信仰心が描かれた興味深い作品

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    2026年02月23日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    2026年共通テスト国語で出題されていたことをきっかけに興味を持ち、手に取った短編集。

    芸術の追求のために、我が子の手を払いのけることができた意志の強い女性——それが主人公の母だった。
    戦前の昭和には珍しく、家庭に馴染めず、離婚という道を選んだ母。
    幼い頃に植えつけられた寂しさ、慕情、後悔。
    そうした生々しい傷や感情を、主人公は無理に忘れ去ろうとするのではなく、向き合い、人生の傍らに置いたまま生きていこうとする。その姿が静かに描かれていたように思う。

    私が特に驚いたのは、母が遺した言葉である。
    「海の砂浜は歩きにくい。歩きにくいけれど、うしろをふりかえれば、自分の足あとが一つ一つ残っている

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    2026年02月15日
  • 死海のほとり

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    主人公が自身の信仰への疑念や葛藤に区切りをつけるため、イスラエルへ巡礼の旅に出る。一方、イエスを巡る群像達の物語が描かれ、これらが交互に織りなし、信仰の本質とは何んであるかが問われていく。
    それにしても「ねずみ」の存在は印象的だ。主人公が学寮に住んでいた頃に出会った臆病でずる賢いゆえに軽蔑されていたユダヤ系ポーランド人のねずみは、収容所で飢餓の刑に処せられる。そのなんとも哀れな姿は、群像達の描写に現れる哀れな十字架を背負うイエスの姿と折り重なる。このねずみとイエス交差に著者の信仰のあり方を感じる。

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    2026年02月14日
  • 侍

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    ネタバレ

    解説で、この物語の元となる歴史背景が書かれている。江戸初期に支倉という人物が使節団の一員として、メキシコを経て、ローマまで渡ったそうだ。
    物語の侍はこの人物で、ベラスコ神父も支倉の使節団に関わった神父がモデルとなる。

    17世紀初期に、実際に使節団としてアメリカ大陸からヨーロッパまで渡った日本人がいたことに驚いた。
    また、物語は旅の苦労や日本で起こるキリスト教迫害をドラマチックに描いている。激しい争いなどは起こらないが、使命(仕事)を命懸けで果たす姿は、私の目を離さなかった。
    それ故に、時代の運で使命が無意味になってしまう事が、無念という言葉で表せられないほど虚しい。

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    2026年02月14日