遠藤周作のレビュー一覧

  • 哀歌

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    名作『沈黙』を生み出すきっかけになった短篇集。苦いコーヒーに入ったほんの少しの甘味のような作品群。隠れた名作「札の辻」は後に『死海のほとり』として蘇ります。

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    2009年10月04日
  • 沈黙

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    キリストの最期・江戸時代の基督教の弾圧が重なる。
    自身の使命感のために迫害され殺されていく百姓や非人、彼らの声を聞かされ棄教を迫られる。かつての師にさえ諭される。もっともこの師も拷問され他者の死の責任を押し付けられ続けた結果なのだが。
    終わりのないこれらの気怠さのため、唯一の拠り所であり、生涯愛すると心に誓った者の顔を踏みつけるまで追い込まれた。

    師は言う「神は何もなさらなかったからだ」と。
    自分の信仰心と目の前の惨たらしい狼藉とが闘い、全てを諦めた先にあったのは、どす黒い余生だった。(しかも踏絵後も助けられなかった信徒がいた始末)

    理不尽と自分の中の「正義」の衝突が起こった時どうするべき

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    2026年03月20日
  • さらば、夏の光よ

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    鈍くてモテない気の優しい青年の恋。何度も繰り返される普遍的な設定ではあるけれど、遠藤周作にかかればやっぱり光る。人間はか弱い小鳥じゃない。

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    2026年03月19日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    表紙のキクが可愛くて手に取ったので、こういうお話とは全く知らずに読んで、序盤では後にこんな展開になるとは思いもしていなかったのでものすごくショッキングだった。
    あまりにも凄惨で苦しかった。
    それでも読み進められずにはいられずすぐに読み終えました。
    長崎を訪れた際、大浦天主堂で綺麗と感動して、こんな歴史があったなんて知らなかった自分を恥じるような気持ちになりました。
    信仰とは、愛とはなんなんだろうとなんとも言えない気持ちになりました。

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    2026年03月12日
  • 侍

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    長谷倉という侍と、ベラスコという司祭、二人の視点で描かれる物語。
    『沈黙』と似た雰囲気があり、本書も事実に基づいているらしく、こんな辛い時代があったのかと驚かされる。

    キリスト教にも宗派の違いがあり、そこに政治も絡んでくる。
    ベラスコは征服欲の強さから教えを押し付けるような行為をしてしまい、その傲慢さを自覚しながらも正当化していた。
    しかし終盤になると、自分の行いを見つめ直すことになる。
    そこでキリストや神への信仰が本物であると感じた。

    暗く、報われない現実。
    そんな世界にこそキリストは寄り添ってくれる存在なのだという。
    華やかな生活の中ではなく、見すぼらしい苦しみの中に、それぞれの人の中

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    2026年03月11日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    時代だとは思いますが、女性の立ち場が無い。
    現東京藝術大学を卒業した母が、ヴァイオリンばかり練習していて家庭のことを顧みないと思ってる夫、
    主人公が入院したときに、子どもをちゃんと面倒みてないから入院したんでしょ?と思い込む伯母、
    病院のベッド脇で左指だけでもバイオリンの練習をする母見て、怒りだす主人公。
    主人公の退院後、まったくバイオリンを弾かなくなった母を見て、夫は満足そうにしていたが、結局両親は離婚。精神を病む母。
    満州から帰国後も、バイオリン指導が厳しすぎて仕事をやめされられた母。

    誰も救われない。

    父親が酷い。主人公を父の元か、母の元、どちらに住むか選ばせるようでいて、半強制的。

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    2026年03月11日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ずっと濁ってて良かった。
    こんな事言うべきではないんだろうけど、現代のsnsでもこんな感じなんだろうなぁ。
    変な正義感持った奴の声が大きすぎる。

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    2026年03月10日
  • 沈黙

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    島原天草一揆くらいの時代、日本の調査と布教に来たポルトガル司祭が苦難に遭い背教を迫られるという話だが凄かった。
    タイトル「沈黙」にもあるように、一つの大きな主題として「なぜ苦境の折に神は沈黙しているのか(なぜ救ってくださらないのか)」という悲痛な嘆きがあったが、主人公司祭の強い苦しみと実感を伴う問いとして物語終盤常に大きな存在感を保っていた。
    主人公司祭が来日する理由にもなった、「拷問の末既に背教した司祭」の存在とのやり取りや奉行との問答の末の結末には陰鬱な気分になり、体調が悪くなった。
    「布教は善であったのか」「何が民を救うことなのか」「主は何をしているのか」
    じめじめと腐った潮風の様な問い

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    2026年03月02日
  • 沈黙

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    沈黙は見方によっていろいろな解釈ができる小説だなと思う。宣教師には宣教師の、切支丹になった農民には農民の、取り締まる役人には役人の理屈がそれぞれあって、どれも正しい。

    救いを求めるロドリゴに対して神は「沈黙」したままで、結果的にロドリゴは棄教をしてしまう。でもそれは形だけの棄教で、信仰なんてものは自分の外側にいる神に祈ることではなく、自分の内面にいる神と対峙し対話することだということに気づいたが故の結果なのではないかと思う。

    そして、キチジローの弱さはロドリゴの弱さで、キチジローとはロドリゴであったのではないかとも思う。人間は強いだけではいられない。誰にでもキチジローのような自分を抱えてい

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    2026年02月25日
  • 沈黙

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    ゼロか100かの選択となり、信仰をもっても信じるものは救ってはくれず、殉教者たちはなぜ死ななくてはならなかったのか。
    葛藤が文章に表現される、文学の力が思い知らされる作品。
    暗いし、好きではないけれど、圧倒的なパワーがあった。
    同じモチーフを描き続け、ずっと悩んでんでいたのか。作家について知りたいと思える作品。

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    2026年02月24日
  • 沈黙

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    キリシタン禁令時の長崎を描いている歴史小説ともいえる。司祭が棄教、転ぶまでの心理描写とキリストへの信仰心が描かれた興味深い作品

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    2026年02月23日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    2026年共通テスト国語で出題されていたことをきっかけに興味を持ち、手に取った短編集。

    芸術の追求のために、我が子の手を払いのけることができた意志の強い女性——それが主人公の母だった。
    戦前の昭和には珍しく、家庭に馴染めず、離婚という道を選んだ母。
    幼い頃に植えつけられた寂しさ、慕情、後悔。
    そうした生々しい傷や感情を、主人公は無理に忘れ去ろうとするのではなく、向き合い、人生の傍らに置いたまま生きていこうとする。その姿が静かに描かれていたように思う。

    私が特に驚いたのは、母が遺した言葉である。
    「海の砂浜は歩きにくい。歩きにくいけれど、うしろをふりかえれば、自分の足あとが一つ一つ残っている

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    2026年02月15日
  • 死海のほとり

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    主人公が自身の信仰への疑念や葛藤に区切りをつけるため、イスラエルへ巡礼の旅に出る。一方、イエスを巡る群像達の物語が描かれ、これらが交互に織りなし、信仰の本質とは何んであるかが問われていく。
    それにしても「ねずみ」の存在は印象的だ。主人公が学寮に住んでいた頃に出会った臆病でずる賢いゆえに軽蔑されていたユダヤ系ポーランド人のねずみは、収容所で飢餓の刑に処せられる。そのなんとも哀れな姿は、群像達の描写に現れる哀れな十字架を背負うイエスの姿と折り重なる。このねずみとイエス交差に著者の信仰のあり方を感じる。

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    2026年02月14日
  • 侍

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    ネタバレ

    解説で、この物語の元となる歴史背景が書かれている。江戸初期に支倉という人物が使節団の一員として、メキシコを経て、ローマまで渡ったそうだ。
    物語の侍はこの人物で、ベラスコ神父も支倉の使節団に関わった神父がモデルとなる。

    17世紀初期に、実際に使節団としてアメリカ大陸からヨーロッパまで渡った日本人がいたことに驚いた。
    また、物語は旅の苦労や日本で起こるキリスト教迫害をドラマチックに描いている。激しい争いなどは起こらないが、使命(仕事)を命懸けで果たす姿は、私の目を離さなかった。
    それ故に、時代の運で使命が無意味になってしまう事が、無念という言葉で表せられないほど虚しい。

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    2026年02月14日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ

    葛藤や自分自身に対して噛み砕いて自分という人間を言語化してる事がかっこいいなと思った。
    罪悪感の感じ方は人それぞれ。
    戸田はサイコパスではないと思う。真人間だと思う。

    僕はあなた達にも聞きたい。あなた達もやはり、僕と同じように一皮剥けば、他人の死、他人の苦しみに無感動なのだろうか。

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    2026年02月12日
  • 死について考える

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    死にざまは美しくなければならないか
    私がこの本を読んで1番よく考えた事です。
    彼は、その美しさを保つ自信がないと言い、
    神は死に際、冷静さを装ったもしても
    その深層を見抜けるのだから
    じたばた死んでも良いのだと教えてくれる。
    私は例え神であっても私の深層を覗けないだろうと
    そういう種類の傲慢さがあり、美しく死にたい。
    特に、生活をするための自分(社会的な自分)は
    地上に残していくかたみのようなものだ
    というセリフにはグッときたし、
    尚更綺麗なまま残していきたいと思ってしまった。

    また、カトリックで自殺が良くない
    とされている理由は自分の人生への愛がないから、
    という理由にはかなり納得してしま

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    2026年02月09日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ

    勝呂や戸田のその後の人生に関してもう少し深掘りされるかと思いきやされなかったが、それは戸田も勝呂も看護婦もどこにでもいる誰かであり、本を読んでいる私たち自身であり得るからだろうか。

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    2026年02月04日
  • 深い河 新装版

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    なぜ人は神を信じたり、信じなかったりするのか、ガンジス河に集う様々な人たちの物語。キリスト教も仏教もヒンズー教も混じる聖なる河。

    「信仰」「転生」について自分なりの答えを出すきっかけになりました。解説で遠藤周作が闘病中に執筆した作品らしく、渾身の作品というのが伝わってきます。

    個人的は「沈黙」より読みやすくとっつきやすかったです。すごく面白かった。

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    2026年02月01日
  • 周作塾

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    好奇心旺盛な先生はどうでもいいことを書いておいて、実は密かに何より無意識という観念に結構時間をかけて語っている。でもメインはためにならない話だけど。

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    2026年01月29日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    キリスト教、戦争、虐殺、男女の恋愛という重奏のベクトルを通じて宗教観や人間観を表現した作品。作中に幾度となく登場する『人、その友のために死す。これより大いなる愛はなし』を多層的に描写して、愛の深みや広さを表現したかったのかなと思った。
    サチ子と修平の心の動きもリアルで、苦しさと切なさと愛おしさを一緒に感じながら読み進めた。特に、2人が詩でつながる様子に、人を本当に愛することの意味を感じた。鎮魂歌の章はこの作品の核心。「そして、それから」との対比が重い。
    長崎必ず行こう。

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    2026年01月28日