遠藤周作のレビュー一覧

  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    2026年共通テスト国語で出題されていたことをきっかけに興味を持ち、手に取った短編集。

    芸術の追求のために、我が子の手を払いのけることができた意志の強い女性——それが主人公の母だった。
    戦前の昭和には珍しく、家庭に馴染めず、離婚という道を選んだ母。
    幼い頃に植えつけられた寂しさ、慕情、後悔。
    そうした生々しい傷や感情を、主人公は無理に忘れ去ろうとするのではなく、向き合い、人生の傍らに置いたまま生きていこうとする。その姿が静かに描かれていたように思う。

    私が特に驚いたのは、母が遺した言葉である。
    「海の砂浜は歩きにくい。歩きにくいけれど、うしろをふりかえれば、自分の足あとが一つ一つ残っている

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    2026年02月15日
  • 死海のほとり

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    主人公が自身の信仰への疑念や葛藤に区切りをつけるため、イスラエルへ巡礼の旅に出る。一方、イエスを巡る群像達の物語が描かれ、これらが交互に織りなし、信仰の本質とは何んであるかが問われていく。
    それにしても「ねずみ」の存在は印象的だ。主人公が学寮に住んでいた頃に出会った臆病でずる賢いゆえに軽蔑されていたユダヤ系ポーランド人のねずみは、収容所で飢餓の刑に処せられる。そのなんとも哀れな姿は、群像達の描写に現れる哀れな十字架を背負うイエスの姿と折り重なる。このねずみとイエス交差に著者の信仰のあり方を感じる。

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    2026年02月14日
  • 侍

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    解説で、この物語の元となる歴史背景が書かれている。江戸初期に支倉という人物が使節団の一員として、メキシコを経て、ローマまで渡ったそうだ。
    物語の侍はこの人物で、ベラスコ神父も支倉の使節団に関わった神父がモデルとなる。

    17世紀初期に、実際に使節団としてアメリカ大陸からヨーロッパまで渡った日本人がいたことに驚いた。
    また、物語は旅の苦労や日本で起こるキリスト教迫害をドラマチックに描いている。激しい争いなどは起こらないが、使命(仕事)を命懸けで果たす姿は、私の目を離さなかった。
    それ故に、時代の運で使命が無意味になってしまう事が、無念という言葉で表せられないほど虚しい。

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    2026年02月14日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    葛藤や自分自身に対して噛み砕いて自分という人間を言語化してる事がかっこいいなと思った。
    罪悪感の感じ方は人それぞれ。
    戸田はサイコパスではないと思う。真人間だと思う。

    僕はあなた達にも聞きたい。あなた達もやはり、僕と同じように一皮剥けば、他人の死、他人の苦しみに無感動なのだろうか。

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    2026年02月12日
  • 死について考える

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    死にざまは美しくなければならないか
    私がこの本を読んで1番よく考えた事です。
    彼は、その美しさを保つ自信がないと言い、
    神は死に際、冷静さを装ったもしても
    その深層を見抜けるのだから
    じたばた死んでも良いのだと教えてくれる。
    私は例え神であっても私の深層を覗けないだろうと
    そういう種類の傲慢さがあり、美しく死にたい。
    特に、生活をするための自分(社会的な自分)は
    地上に残していくかたみのようなものだ
    というセリフにはグッときたし、
    尚更綺麗なまま残していきたいと思ってしまった。

    また、カトリックで自殺が良くない
    とされている理由は自分の人生への愛がないから、
    という理由にはかなり納得してしま

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    2026年02月09日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    勝呂や戸田のその後の人生に関してもう少し深掘りされるかと思いきやされなかったが、それは戸田も勝呂も看護婦もどこにでもいる誰かであり、本を読んでいる私たち自身であり得るからだろうか。

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    2026年02月04日
  • 深い河 新装版

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    なぜ人は神を信じたり、信じなかったりするのか、ガンジス河に集う様々な人たちの物語。キリスト教も仏教もヒンズー教も混じる聖なる河。

    「信仰」「転生」について自分なりの答えを出すきっかけになりました。解説で遠藤周作が闘病中に執筆した作品らしく、渾身の作品というのが伝わってきます。

    個人的は「沈黙」より読みやすくとっつきやすかったです。すごく面白かった。

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    2026年02月01日
  • 周作塾

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    好奇心旺盛な先生はどうでもいいことを書いておいて、実は密かに何より無意識という観念に結構時間をかけて語っている。でもメインはためにならない話だけど。

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    2026年01月29日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    キリスト教、戦争、虐殺、男女の恋愛という重奏のベクトルを通じて宗教観や人間観を表現した作品。作中に幾度となく登場する『人、その友のために死す。これより大いなる愛はなし』を多層的に描写して、愛の深みや広さを表現したかったのかなと思った。
    サチ子と修平の心の動きもリアルで、苦しさと切なさと愛おしさを一緒に感じながら読み進めた。特に、2人が詩でつながる様子に、人を本当に愛することの意味を感じた。鎮魂歌の章はこの作品の核心。「そして、それから」との対比が重い。
    長崎必ず行こう。

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    2026年01月28日
  • 深い河 新装版

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    多くの感想に「インドの情景が浮かんだ」とありますが、本当にその通りです。
    私自身の良き本の基準として「ページをめくる手が止まらないほどおもしろい」「読後自分が本の世界ではなく現実世界に生きていることを実感する」の2つがあり、本作は後者。頭に思い描く''インド''にどれほど没入していたか、読後、本から離れて気づかされました。
    頭の中に(すごく)情景が浮かぶ、(すごく)没入できる、これだけで読む価値のある本だといえるのではないでしょうか。

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    2026年01月24日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ

    罪の意識、自責を期待したが何も感じられない戸田と、所々で迷いや後悔の念が見える勝呂の対比が良かった。

    上田の回想にも戸田の回想にも「面倒くさい」という表現が出てきたので、彼らは思考を途中で放棄してしまったが故に生体解剖の場に立ち会うことになってしまったのではないかと思った。

    海の描写がしばしば出てきたが、その描写が登場人物の感情を繋げてる?

    解説にあった、「罰は恐れながら罪を恐れない日本人の習性がどこに由来しているか、を問いただすために生体解剖という異常な事件を、ひとつの枠組みに利用した形跡がある。」とはどういうこと?▶︎行為の善悪よりも損得で動くから、罪の意識が育たず、倫理観の空白とし

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    2026年01月23日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    悲しみの歌

    著者:遠藤周作
    発行:1981年6月25日
    新潮文庫
    初出:週刊新潮1976年1月1日号~9月2日号『死なない方法』
    書籍化:1977年1月、新潮社

    遠藤周作の初期の代表作といえば、戦争中、九州大学でアメリカ兵捕虜を殺した生体実験という犯罪を描いた小説『海と毒薬』。その続編と考えられる作品。『海と毒薬』では、若い助手時代に生体実験を手伝った医師・勝呂が、企業村のような殺伐とした郊外都市で開業している変わり者の開業医という設定だったが、この小説では舞台を新宿にしている。勝呂は、戦犯のその後を追う新聞記者の折戸から取材を受ける。自分はもう裁判も受けたし、あの時は断れなかったんだ、書

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    2026年01月20日
  • 沈黙

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    重く、苦しく、面白い

    印象に残った点
    ・番人の鼾だと思っていたものが、その実拷問受ける信徒の呻き声だったという場面は本当に意地が悪いというか、これほどまでに主人公に試練を与えるのかと思った。ここまでの2択を突きつけられたら、(もしも神が本当にいるとしたら、)神も転んだに違いないと思う。
    ・キチジローが悪者として書かれていて、私も嫌いだが、それは自分の弱さや都合の良さを彼の中に見るからで、彼のような弱い部分を誰しも否定できないのではと思った。むしろ、沈黙を貫いて殉教した方々の方が異常と感じるのは、時代か自分に信ずるものが無いからか。
    ・ロドリゴは救われた、自分の中で神を引き受けてある種の納得感

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    2026年01月11日
  • イエスの生涯

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    遠藤周作による聖書の読み方の本.
    本当かどうかはさておき、遠藤周作作品の底に流れる愛と孤独と、切なさ悲しさの源流がわかった

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    2026年01月11日
  • 深い河 新装版

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    ・3年前は挫折したけれど、好きな人達が好きな本だという事実で何とか読み切れた。成長した。
    ・純文学ってこういうことかと知った。文章が美しい。
    ・人々の心の拠り所になって、でも争いを世界中で引き起こし続けて、宗教の不思議さに思いを馳せた時間になった。

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    2026年01月06日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    5よりの★4!!
    やはり遠藤さんの小説は面白い。
    自伝を読んでるのか、小説を読んでるのか、
    展開によって今までの作品の登場人物にも重なり、過去の作品を再読せんといかんか?
    と思わせてくれる作品でした。

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    2026年01月04日
  • 沈黙

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    "信じる"とはどういうことか考えさせられた。
    基督はひたすらに沈黙をつらぬき、司教の問いに答えることは、ついになかった。けれど、転ぶことさえも主は赦すのだと。
    信じながら疑い、背くことで、却ってその存在と向き合わされる。
    残酷でありながら、どこか美しく、悦びを伴う結末。

    キチジローは自分のことを弱い者だと言ったが、彼はまさしく私であった。
    転んで、後悔して、縋ってもがいて、また転んで後悔して……
    だけど赦されることを諦めない。
    情けなくて、恥ずかしくて、思わず目を背けたくなるけれど、どうしても放ってはおけない、そんな人だった。
    それが弱い生き方だと言われたら、そうなのかも

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    2026年01月04日
  • 眠れぬ夜に読む本

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    別に寝る前に読まなくても十分面白い。若い人を奥さんにもらうと大変だ、という話は笑いました。エピソードトークだと思って読むとスラスラ読めます。

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    2026年01月03日
  • 沈黙

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    何を信じて生きていくべきか分からないけど、信徒のために死ぬ覚悟で海に潜れる友人もいれば、そうなれずに背教してしまう主人公もいるというようなところで、その時その時自分が正しいと思うことをやっていくしかないのかなぁと思いました。
    どんな状況であろうとも、失っていい命なんていうものはないので、自分や仲間、他人の命を守るための行動をすることが、大切なんじゃないかなと考えました。

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    2026年01月02日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    今年から感想残そうと思う!

    年明け早々、読むものではなかった...
    プロローグがあったのは、戦争では人を殺すことだということが強調したかったのかしら。
    全員の解剖に至るまでの背景に迫っていて、誰にも共感は出来なかったけど、日本人特有の「みんなしているから」、「今更断れないから」などの同調圧力がずっと隠れてる感じがした。

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    2026年01月02日