遠藤周作のレビュー一覧
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以前、映画が公開された事もあり沈黙を読んだ。切支丹禁制の中の重い考えさせる話だった。この侍という本は、キリスト教から行き着いたのではなく、メキシコ、バチカンまでの航海の方からたどり着いた。この本の解説によると支倉使節団については資料が少ないらしい。支倉が書いた日記も処分されてしまったらしい。もったいない。使節団として送り出されたのに状況が変わり、帰ってからの不遇。現代のサラリーマン社会にも通じるな。可哀想。ここでも沈黙同様、運命に翻弄されるキリスト教徒の信仰についての苦悩が語られる。航海の記録というより、こうした神をどう理解するかというところに主眼が置かれている。考えさせられる一冊。しかしこの
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「死について考える」なんていうタイトルなので、死ぬことを哲学するような内容の本かと思うけれど、
それよりは少し肩の力の抜けた、老年を迎えた作者が死や歳を取ることについて思うことを書いたエッセイである。
カトリック信者の著者による本なのでところどころキリスト教について触れているところがあり、そうは言えども日本人でもあるわけなので、西洋と日本の死生観の違い、その辺を本人の中でどう折り合いをつけているのかなどが面白い。
どちらかと言えばキリスト教から見た死と、日本人にとっての死との共通点を見出そうとしている感じである。ただ、カトリックと日本古来の信仰とは比較的近く、仏教(主に禅)はやや離れている -
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"正義"とはなんだろう・・・?
言論の自由が保障されていて、何を考えていても、誰かに処罰されることなどない世界。一方で、世間の考えに反する意見を持つ者は、暴力をふるわれ、白い目を向けられる世界。
両者は同じ世界でも、そこで発言することの重みは違うと思う。殴られたり、家族に危害を加えられたり、職を失う可能性があったりすることがある場所で、その一線を踏み越えてはいけないと抵抗できる人はどれだけいるのだろう・・・。
「そんなこと、普通だったらしない。」口で言うのは簡単。ましてや、その状況にいなかった人ならなおさら。
同じ命を奪うことに対して、葛藤し、背負った重さを胸に秘め -
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■美しい魂が宿す悲しい運命が切ない。■
疑うことを知らず、馬鹿がつくほど正直でお人好し、母性の塊のような女ミツ。彼女は誰かの不幸せが自分のことのように悲しく、自分を犠牲にしてまで助けてしまう。彼女はその美徳ゆえの悲しい性を背負って生きていくしかないのか。
一方の吉岡は、勉強して大学に入り、背伸びしてちょっと世間を知ったつもりの男子学生。若者にありがちな見栄、傲慢さ、無責任さ、そして抑えがたい性欲を持つ。根っからの悪人というわけではない。
誰しも(もちろん僕にも)思い出すのも恥ずかしくなるようなほろ苦い経験や深い悔恨がある。若気の至りってやつだ。
吉岡はミツの性格を利用し、遊んだ後はボロ雑 -
Posted by ブクログ
著者のイメージはテレビで、ユーモアあふれる会話をする作家さんと言うものでした。間違いなく著者は日本の文壇で名前を残している方だと思います。ただ残念ながら、後世に読み継がれていくのかと思うと不安になります。私の杞憂かもしれませんが、「海と毒薬」「沈黙」「深い河」など。感銘を受けた作品が沢山あります。今回読んだ作品は彼の代表作とまでは言えない作品かもしれませんが、面白く読めました。著者の弱い立場の人に寄り添う姿勢が読み取れます。主人公の学歴に対するコンプレックスなどは著者に通じるものがあるのではないかと勝手に思っています。今度は、著者のエッセイを読んでみようと思います。
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Posted by ブクログ
昔のエリート――というほどではないが、二流三流とはいえ大学出の――男が、過去に残酷にやり棄てた女に対する懺悔や言い訳の入り混じった告白をする話かな・・・と思いきや、まあそうといえばそうだけど(いや懺悔はしてないな)、やはり遠藤周作だし、神の愛まで話は至った。
田舎出の、愛情にも運にも恵まれなかった森田ミツという女性が、タイトルでいう「棄てられた」女なのだが、彼女が、人の苦しみを自分の苦しみと思い人のために尽くさずにはいられない人間で、ある価値観ではこれを「お人よしで損ばかりしている愚鈍なやつ」ととらえることもできるが、この本のテーマとしては彼女こそが神のいうところの「幼子のように素直に愛の行