遠藤周作のレビュー一覧
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ネタバレ「死なないで」彼女は引き絞るように叫んだ。「生きて。戻ってきて」+++
高校で出された課題本は一部だけでしたが、二部も読んでみたいと書店へ走った記憶があります。一部はひたすらに胸が張り裂けるような本でしたが、この二部はサチ子のひたむきな愛情に泣かされっぱなしでした。
そしてこの本を読んだ翌年の、高校三年の夏。キャンパス見学の帰りに、私はふと靖国神社にたちよりました。余りの暑さに辟易して、境内に涼を求めたのです。ついでだからと参拝しようとなんとなく思って拝殿に向かいました。
拝殿でお参りが終わったときに、車いすのおじいさんとすれ違いました。そのおじいさんは本殿にたどりついた途端てぬぐいを握 -
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ネタバレ5編を収めた短編集。『日本の聖女』が素晴らしい。修道士の独白体で細川ガラシャを描いている。
謀反人・明智光秀の娘であり、秀吉が禁制とした切支丹である彼女の危険な立場は、夫との確執を生み、彼女は厭世観を強くしていく。キリスト教への信仰を深めていくように見えるガラシャだが、現世の苦悩(十字架)を背負おうとはせず、むしろ死による救済を願う姿に、修道士はキリストの教えとの根源的な差異を感じ取る。
修道士はガラシャの死を「切支丹として死んだのではなく、日本人の宗教で亡くなったのだ」と語る。彼女の宗教観、人生観は本質的に変わることはなく、その死にいたるまで、極楽浄土を願う日本的な精神に支配されたまま -
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【さらば、夏の光よ】 遠藤周作さん
お茶の水にある短期大学のB学院
遠藤先生はこの学校でフランス文学を教えていた。
その遠藤先生の講義を受けていた生徒の中に
背が低く小太りで女性にまったくもてない野呂という
生徒がいた。
善良で愚鈍な彼は人から頼まれたことには
嫌な顔せずどんなことでも引き受けてくれるので
いつも女性に利用されて、しかも感謝されないでいた。
彼には南条という親友がいた。
南条は野呂とは異なり、明るく快活な青年だった。
ある日野呂は南条に同級生の戸田京子が好きだと
打ち明けられた。
実は野呂も京子に恋心を寄せていたのだ。
しかし自分が女性に関心をもたれないコトを
自 -
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遠藤さんの本にはまっているときに古本屋で手に入れたもの。どちらかというと罪、信仰、孤独というテーマに惹かれていたので、この本の前半に収められている短編は中途半端というか、阿部公房になりきれない作品に下ネタを加えたような印象で、かといって星新一のような短編の魅力に書ける・・・こんな作品も書いていたのかと衝撃だった。しかも残念な意味で古臭さを感じさせてしまう。でもこのなかで輝いてたのは「うちの親爺」と「昔の教官殿」いう作品かもしれない。特に、つい先日NHKで松本清張シリーズを見たが、その時代背景と重なるものもありつつ、もっとさりげなくていいなと思った。