遠藤周作のレビュー一覧
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「白い人」「黄色い人」に描かれるのは後発的な神への信仰心と先天的なプリミティブな本能との相反である。
「白い人」では第二次世界大戦のナチズムという異常下において主人公と弱さを持つ敬虔なカトリックとしてジャックを、「黄色い人」では「転んだ」人デュランとブロウを対比させている。文学作品としては芥川賞受賞「白い人」に軍配が上がると思うが、「黄色い人」における「中庸な」黄色い人である道子の存在がテーマを浮き立たせているように思う。「なむあむだぶつと唱えればよいものをなぜ基督に拘るのか」、遠藤周作氏が描く東洋思想と西洋思想の違い、ひいては「沈黙」のなかで語られた「根が育たない土壌」である日本人気質を言 -
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’’ブラック大名に仕えてるんだが、俺はもう限界かもしれない’’ー信長に仕えて反逆した荒木村重と明智光秀が主役に据えられています。
明智光秀が本能寺の変に踏み切った理由として信長が違約して四国の長宗我部討伐に踏み切ろうとしたことを中心に、荒木村重が有岡城の謀反をおこした理由として本願寺顕如に魅かれつつあったという設定で書いていますが、要するに信長の恐怖威圧に対するプレッシャーに耐えきれなかったという書きぶりです。
両者の戦に共通する人物として、高山右近と豊臣秀吉をうまくフューチャーしています。特に秀吉が戦を始める前に徹底的に根回しするさまの書きぶりは、遠藤周作が日本統一するまでの秀吉のスキル -
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作者の作品、「沈黙」と双を成すキリスト教をめぐり時代に翻弄される人々の物語。あまりに無情な仕打ちを受ける主人公の侍。もう一人の主人公、野望をもったベラスコが悟りを開いていく過程をじっくり描いていて説得力があります。ベラスコが日本に再上陸することで結局は侍も残念な結果に。。侍はある程度納得しているのかもしれないが、残された家族はいたたまれないです。
キリスト教は精神の安定を目指しているのは司教の考えであって、仏教も含め多くの宗教を信仰する庶民は現世の幸せを願うものでは、と考えてしまいます。
人それぞれの価値観と尊厳を考えさせられる深い一遍です。 -
Posted by ブクログ
下巻はフランス革命がいよいよ始まる。市民の暴動や貴族たちの特権はく奪など、革命に向かうそれぞれの立場での情景が描かれている。14歳で異国から嫁ぎ、37歳で断頭台の露と消えたマリーアントワネット。統率力のない王へのいらだち、貴族たちの策略、裏切り、ひそかな愛…なんと波乱に満ちた短い人生だったのだろう。フランスの財政難を理解できなかった王妃は湯水のように公費を使う。そして、その贅沢三昧は、やがて恨みから国民の暴動へと発展。今や歴史を代表する悪女のレッテルを貼られた王妃だが、その行動の中に、心から楽しんでいるわけではない、何かとても暗い孤独を感じた。晩年の生活を読み進むとさらにその印象が一転する。心