【感想・ネタバレ】侍のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年03月31日

まさに皆の思い浮かべるTHE SAMURAI的なやつ。もちろんハリウッド版じゃなくて三船敏郎版みたいな。
侍ってひたすらに我慢を強いられるというか、そういうイメージのもとに明治から昭和の戦時体制やらその後の昭和やら、ずっと力を持っていたわけで、しかしついに日本でもそういう人種が隅に追いやられ始めて、...続きを読む今この令和はまさに時代の切り替わりなんだとか思ったり。さてどうなるのか。
とは言え日本人にはこの我慢の感覚が染み付いてるわけで、ついつい心を打たれるのは昭和世代ということなんだよね。

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Posted by ブクログ 2023年12月29日

弱い人でも強い人でも心挫かれたときに、その辛さを分かち合ってくれる理解者としてのキリスト。そして現世利益を重視する日本人にとっては富めるものよりも貧しいものがあの世で救われる考えや、実存的でないものがあまり合わない。こうした遠藤周作さんの考えるキリスト教や日本文化論を感じられる1冊でした。

過去作...続きを読む『沈黙』よりも運命や身分、政治といった大きい力の前で従うしかない弱い人と抗う強い人が強調されている感じでした。
とくに強い人として描写される宣教師の身勝手で欲深いために、周りに迷惑をかけてしまうところは共感を感じました。
そんな強い人が心を折られ、そのなかで自分が成すべきことを見出し最期はある意味で救われるところは感動しました。

遠藤周作さんの考えるキリストは自分にとっては本に近いとも感じました。辛いときに同じ境遇やもっと苦しく絶望に陥っても、それでも生を全うする登場人物をみて、不思議と心が安らぐ感じに近いと思います。
そして、本作の侍も宣教師も苦難ばかりの長旅と失意の底に陥ります。彼らの旅に比べれば多少の現実の困難は大したことないかもですが、それでも彼らからしたら「わかるよ、辛いよな」という気持ちになってくれるはずです。
そのうえできっと裏表なく理解してくれる。とくに仕事や人間関係で辛いときはわかりあってくれて、人生に全うできるように肩を並べてくれるような気がします。
この作品を読んでわずかでもキリストに関われたのだからきっとそうだと私は信じてしまう。そんな読後感でした。

【お気に入りフレーズ】
泣くものはおのれと共に泣く人を探します。嘆く者はおのれの嘆きに耳を傾けてくれる人を探します。世界がいかに変わろうとも、泣く者、嘆く者は、いつもあの方を求めます。あの方はそのためにおられるのでございます。

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Posted by ブクログ 2023年01月08日


遠藤周作の圧倒的無力感・孤独感を凝縮した野間文芸賞受賞の傑作。
鎖国下での宣教師と侍という特殊な立場の対比が興味深い。
長編の中でも尺のあるボリュームだが、その前半で何となく結末が分かってしまうにも関わらず読ませてしまうエネルギーと説得力。

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Posted by ブクログ 2020年10月07日

久しぶりに読んだ遠藤周作。
さすがというか、やっぱり文豪。
40年たっていても、文章が生きている。
しばらく、遠藤文学を読み直してみようと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年11月13日

◯昔のことなので記憶が怪しいが、「沈黙」の時に感じた日本人の現世利益的な信仰と、西洋的な信仰の関係性とは異なり、個人の信仰と、組織や政治との関係に関する小説だと読んでいて感じた。
◯また、読みながら、歎異抄の「親鸞一人がためなりけり」という言葉を思い出した。こちらは能動的に関係を築き、この境地に至っ...続きを読むている点を思えば、「侍」の中で日本には根付かないとされた信仰の心は確実にあったと思う。解説にもあるとおり、侍自身は受動的に始まったものだが。
◯そう考えると、「侍」はやはり純粋に信仰に対する試論なのかなと思った。

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Posted by ブクログ 2019年08月25日

実に丁寧に書かれている文章だと感じた。
侍が、キリスト教に関して問うている部分が、非常に共感できて、また、時代の流れも感じられた。
淡々と進むストーリーと、感情の変化、揺れが、非常におもしろかった。

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Posted by ブクログ 2019年06月26日

転ぶ。

信仰とは何か?、ということすら、生きる上で全く考えることのない、無意味なくらいの、そんな侍の社会。
その社会で大切なのは、ただただ忠誠であり信仰とは似て非なるモノ。

その時代の人達が。
何故ヨーロッパに行くのか?
キリスト教が介在したのは何故?
危険を冒す理由があったのか?

という事は...続きを読む、史実でも、まさに本文中でも、たっぷり書かれている。

個人的に唸ったのは。

商売の利と信仰を天秤に計る人の心理
忠誠を示す為に信仰を選ぶ心のさざ波
司祭同士の出世争いの場にされた日本
功名心を信仰心で巧みに隠してく醜さ
棄教を前提に自分自身を欺くその描写

日本に戻った侍の心の描写が、その答えだった。
「侍は自分が見たのは、あまたの土地、あまたの国、あまたの町ではなく、結局は人間のどうにもならぬ宿業だと思った」

信仰と不信。
二つのテーマが、ぐるぐると廻り、巡り、描かれる一冊でした。

信仰があることがイイワルイではない。
自分がどうあればいいのか?とか、信じないといけないとか、奇跡なんて科学的じゃない、理論的じゃないとか、どうでもいい。

信仰することで救われる人がいるんだ。
ただただ、そのコトだけを知り認める心を持つだけでいいんだと、そんな読後の感想でした。

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Posted by ブクログ 2018年12月27日

久々に読み応えのある小説に出会えた。自分の力ではどうにもならぬ運命に流されていく切ない物語。「転ばない」美学

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Posted by ブクログ 2017年12月21日

物凄く面白かった。キリスト教との関わりの中から、他の作品と同じように、日本人の本質をことごとく見事にあぶりだした作品だったと感じる。

30年近く日本で布教活動をしてきたヴァレンテ神父の「日本人はこの世界の中で最も我々の信仰に向かぬ者達です。彼らにとってもし、人間以上のものがあったとしても、それは人...続きを読む間がいつかなれるようなものです。たとえば彼らの仏とは、人間が迷いを棄てた時になれる存在です。日本人は決して1人では生きていません。彼の背後には村があり、家があり、彼の死んだ父母や祖先がいて、彼らはまるで生きた生命のように彼と強く結びついているのです。一時的にであれ改宗したはずの彼が、棄教してもとに戻ったとは、彼がその強く結びついた世界に戻ったということです。」という、研究結果の報告文書に近いような諦めの言葉にも負けず、熱と烈しさを持って挑んだベラスコ神父の心理描写が、刻々と変化していく様も実に鮮やかだった。

司教就任のためにキリスト教や切支丹、さらには母国の同胞までもを世俗的に利用していたベラスコが、終盤では政治の世界で敗れはしたものの、魂の世界においては勝利したのであり、それはイエスキリストと全く同じ状況であったとする下りからも、つまりはキリスト教全体が包括する様々な価値観から、自身の人生に意味を与えるものを抽出して当て込んでいるのだと思う。「夜と霧」にあるアウシュビッツの囚人たちと全く同じで、「自分の人生に意味を持たせる」ために、神はいるのであって、安直なオプティミズムで受難を隠すためにいるのではない。そのためには時として苦しみ、嘆き、辛苦を徹底的に味わうことで、みすぼらしく痩せて困難にまみれた生涯を生き抜いたとされるイエスキリストの人生を体現し、意味を持たせることすらできる。

言っちゃえば、人がどんな人生を歩もうと、何もかも超越した神様が見てるぞーってなればどうとでも意味づけができるんだということ。意味づけのない人生こそ、何より虚しいものだと。人生が上手く行ってれば、感謝してたらいいし、上手く行ってないなら、上手く行くために頑張る活力を与えたり、反省懺悔させて救ったり、なんだかんだで「自分はこのために生まれてきたのだ」に近いものを授けてくれる。それがキリスト教なんじゃないか。

日本人は上にもあるように、家や村や家族あってのものなので馴染むわけがない。日本人は1人で生きていないってのは名言。その点、創価学会がここまで広まった経緯は、地方から出稼ぎで出てきた、つまり家も村も祖先も棄てた人達が共同組合みたいな成り立ちで出来たと聞く。なので地方民が集められたような街で勢力を広めていけたわけで、その点キリスト教みたいに1人で生きていかなければいけない人達を救うことができているのかもしれない。

従者として苦心を共にしてきた与蔵がキリスト教を強く信仰していた理由は、村での人生に意味づけができていなかったからだし、最後の与蔵の一言に侍が大きく頷いた理由も、自身の労苦が報われず主従関係が反故にされたことで、人生の意味を失ってしまったからだ。人生の意味をもう一度見つけてくださいと、与蔵が侍に伝えたかったのだろう。

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Posted by ブクログ 2014年08月23日

『沈黙』よりももしかしたら、こちらの方が好きかもしれない。ずしーん、と心に重くのしかかってくる作品。
自分のことや、友だちのことを考える時、信仰って一体なんだろう、と思うことがよくある。
それでも信じ続ける理由?
僕はまだ、よく分かりません。

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Posted by ブクログ 2014年07月28日

江戸時代初頭、仙台藩が送った遣欧使節の話である。主人公は、長谷倉六右衛門と宣教師ベラスコ。ベラスコの持つ、驕慢と野心、日本という困難な国で布教し、征服したいという野望。一方、侍の持つ、お役目に対する真摯さ、たとえ不条理なものでも定めと受け入れる愚直さ。この二人は対照的だが、読み終えてから気づいたのは...続きを読む、実は表裏一体なのではないかということ。
物語は、月の浦から出航するまで、ノベスパニア、さらにエスパニア、ローマ、そして空しき帰路と展開していく。ヴァレンテ神父との対立の中、切り札である侍たちの洗礼がなされ、ベラスコの野望は成功し、使節団と国王との謁見が実現するかに見えた。ところが、江戸幕府がキリシタン禁制に舵を切ったことが発覚し、形勢は一転する。
破れた悲壮さの中で、侍は御政道の現実を知る。そして、人間が求めるものは、生涯そばにいてくれ、裏切らぬものである、それがあの男の存在意義なのかもしれないと気づくのだ。
この著作は、物語の展開や、登場人物の深さにおいて、誠に読み応えがあった。自刃で以て、自己を完結させた施設の一人田中。ベラスコは、自殺に等しい禁教となった日本への潜伏を試み、火刑に処せられる。私は生きた、という言葉を残して。それは、自殺を禁じられたキリスト教徒ベラスコの、自己完結の手段だったのだと感じる。

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Posted by ブクログ 2023年12月20日

大事に少しずつ読んだ。
フィクションとはいえ 悲しい 日本 いにしえの時代の黒歴史。
なぜ日本は ラテンアメリカ諸国のように キリスト教 に征服されなかったのか ここに一つの答えがあるように思う。

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Posted by ブクログ 2023年08月13日

策士で出世欲をにも駆られたエスパーニャ人宣教師。その宣教師と共にノベスパニアへ旅立つ四人の伊達藩使者たち。
宣教師と日本人も旅立つ目的は全く異なるもの。

現世の利益のみにだけしか宗教心を持たず、無表情で寡黙、狡猾とも表現される日本人。
侍とは、日本人とはそういう存在である事が時に哀れに表現されつつ...続きを読むも、例え袂を分かつ仲間でさえもその強さに魅了されてしまう。

『沈黙』に続き手にした作品。
宗教とは?信じるものとは?そもそも信じるものが現実世界に必要なのか?存在するのか?
筆者の狙いは別としても、考えずにはいられない謎が浪漫を導く一冊。

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Posted by ブクログ 2023年07月20日

慶長遣欧使節の一員としてローマにわたった支倉常長をモデルとした小説です。

宣教師のベラスコは、現世を超越したものへの関心をもたない日本人にキリスト教の信仰にみちびこうとする強い情熱をもっていました。同時に彼は、布教のためには手段をえらばない、策略家でもありました。そんな彼のもくろみが功を奏して、陸...続きを読む前の港からノベスパニア(メキシコ)に向けて、使節が派遣されます。使節の役目を果たすことになったのは、召出衆と呼ばれる不遇の「侍」であった長谷倉六右衛門をはじめとする四人でした。長谷倉たちは、ベラスコに不信感をいだきながらも、海外との通商の窓を開くことを決意した藩主の親書をもって海をわたります。

その後一行は、大西洋を越えてヨーロッパへわたり、さらにローマ法王に謁見することになります。しかしそのころ日本では、幕府が禁教政策の強化に動き出し、主君の命を果たそうとする長谷倉たちの思いはむなしく終わります。そしてベラスコもまた、日本人をキリスト教の信仰にみちびくという望みがついえたことを知ります。

ベラスコに対立するペテロ会のヴァレンテ神父との討論では、キリスト教がけっして根づくことなく、いつのまにかそれを伝統的な信仰に変えていってしまう日本という風土にかんする著者自身の見かたが示されています。野心的な宣教師が経験することになったの挫折と、当初は簡単にわかりあうことがないように思えた「侍」の悲劇的な運命が交わるというストーリーの運びかたが見事な作品だと感じました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年02月18日

侍って作中にあえてでているのはなぜなんだろう。
安土桃山時代に主君の命とはいえ、異国に行けといわれどんな気持ちだったろ。
実話に基づく話でこんな日本人がいたことを知らなかった。時代の流れに翻弄され無念だったろう。
ローマに残るのも心残り。不本意にキリシタンになりそこの地で暮らすのも不本意。行き場のな...続きを読むい気持ちがえがかれていた。
キリスト教にとって、インディオの村も日本も野蛮で改心させねばとおもわれていたんだな。何故ほっといてくれないのかと悲しい。

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Posted by ブクログ 2022年08月31日

戦国時代、藩主の命令によってローマ法王への親書を携えて海を渡った東北の貧しい侍の話。侍から見た世界、キリスト教とは。4人の侍の性格の違いとたどった道筋の違い、そして太平洋から南米大陸、大西洋、ローマへの長い旅路の様子も興味深い。
忍耐強い侍の心理描写や従者との信頼関係も印象に残った。

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Posted by ブクログ 2021年08月04日

以前、映画が公開された事もあり沈黙を読んだ。切支丹禁制の中の重い考えさせる話だった。この侍という本は、キリスト教から行き着いたのではなく、メキシコ、バチカンまでの航海の方からたどり着いた。この本の解説によると支倉使節団については資料が少ないらしい。支倉が書いた日記も処分されてしまったらしい。もったい...続きを読むない。使節団として送り出されたのに状況が変わり、帰ってからの不遇。現代のサラリーマン社会にも通じるな。可哀想。ここでも沈黙同様、運命に翻弄されるキリスト教徒の信仰についての苦悩が語られる。航海の記録というより、こうした神をどう理解するかというところに主眼が置かれている。考えさせられる一冊。しかしこの使節団が無事に日本に戻ってくるのは素晴らしいことだ。

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Posted by ブクログ 2020年03月15日

☆☆☆2020年3月☆☆☆


江戸時代初期、まだ大坂の陣は終わっていない頃。
徳川氏の天下が確定しつつあった頃の物語。
東北から、宣教師とともにメキシコへ、ヨーロッパへと旅した「侍」と、宣教師を中心とした物語。


「侍」=長谷倉のモデルは、明らかに支倉常長だろう。
異国との通商を求めるという親書...続きを読むを携え、メキシコへ、スペインへ、イタリアへ、苦難の旅。
「宣教師」=ベラスコはポーロ会という宗派の宣教師で、日本にキリスト教を広めたいという強い思い、そして自分が出世したいという秘めた野望を持っている。


長谷倉らは、使命を果たすため、やむなくキリスト教に改宗。これが帰国後彼らにとって悲惨な結果となってしまう。つらく悲しい物語だ。特に若者の西が可哀そうに感じる。異国の珍しいものに心から感動していた、好奇心の強い若武者。


「日本人は利に聡く、利用できるものなら何でも使用しようとする」ような記述が所々にあったが
これは筆者の想いだろうか? これは日本人のいい面でもあり、悪い面でもあるだろう。


ベラスコは、最終的に自ら日本に赴き殉教する事になる。「信仰」のために何故そこまで?というのは、私たちにはわかりにくい。

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ネタバレ購入済み

歴史に翻弄され

2021年04月22日

海外からの文化が入ってきたばかりの時代で
太平洋、アメリカ大陸、大西洋を渡って旅をするなんて
とんでもない冒険であった事だろう。

帰国後の国内情勢の変化も不遇であったが、信仰心に救いはあったのだろうか。

#泣ける #タメになる #ダーク

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年04月30日

「沈黙」のテーマ「神の存在の有無」に対し「侍」は「宗教とは何か」という問いかけの小説だと思います。

キリスト教のお話でありながら、日本の宗教観についても描かれていて、「なぜキリスト教は日本に向かないのか」をヴァレンテ神父が語る場面は、深く頷きながら読みました。ヴァレンテ神父の語った日本の宗教観や社...続きを読む会構造は現代日本に脈々と受け継がれているものがあるのを感じました。

また、江戸時代の日本社会の陰湿な部分を、政府上層部や役人の描き方や、暗く冷たい建物の描写で表してるところがすごく印象に残りました。

でも正直読みながらずっと思ってたのは「ベラスコのせいでこんな事に…!!」ということです。こいつさえいなければ…!!そして、やはり宗教の押し付けは古今東西良いことがない。
ただし、最終的には実はベラスコは自らの信仰と布教において勝利しているところがまたこの小説のすごいところです。
「侍」は最期、何を、誰を思ったのでしょうか…
残酷な現実と絶望の向こう側に真理が少しだけ見えるような描き方が素晴らしかったです。

神とは、宗教とは、日本とは…考えさせられる一冊です。

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Posted by ブクログ 2019年04月12日

沈黙とは異なるキリスト教歴史小説。
政治の闇に弄ばれたと書くには足りない、男の生きざま。
日本人の不気味さと誇りとを外国人の目を通し語らせているのが秀逸で、著者の目線の低さを感じる。

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Posted by ブクログ 2018年12月22日

「侍」は、実在した仙台藩の支倉六衛門常長をモデルとした史実に基づく小説であり、遠藤夫人が夫遠藤作周作の著作中で最も好きな作品として挙げている。

キリスト教に帰依したことを理由に処刑されることとなった「侍」に従者が伝える「ここからは……あの方が、お仕えなされます」という台詞について、遠藤は「この一行...続きを読むのためにこの小説を書いた」と後に語っている。

「あまりにも多くのものを見すぎたために、見なかったのと同じなのだろうか」

「日本人たちはこの海を日本を守る水の要塞にして、自分たちは土の人間として生きてきたのだ。日本人たちはこの世のはかなさを楽しみ享受する能力もあわせ持っている」

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Posted by ブクログ 2018年11月04日

主命でメキシコ・スペインへ渡った「侍」は、役目を果たすため、キリスト教へ帰依をする。しかし、旅の途中で日本の政情が鎖国へと変わり、当初の役目を果たせなかったばかりか、偽りとはいえ受洗したことが咎となり、帰国後も潜むように生きることを強いられる

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Posted by ブクログ 2018年07月17日

果たして基督教の信仰とは何なのか、苦難に対峙してもなお沈黙する神とは何なのか。時代と政に翻弄される「侍」長谷倉と烈しい信仰を持ってベラスコの眼と体験を通して日本人の宗教観が立体的に描かれる。万の神を認めて藩主を絶対的統治者とした当時の侍たちに対し、当初は使命感と意志をもって基督教布教を謀るベラスコの...続きを読む姿は滑稽で狡猾ともみえるが、後半になるに従って長谷倉は藩への疑義に反して信仰を問い、ベラスコは教会への不信に反して信仰を深める姿が印象的だ。

『沈黙』と比べると直接的表現も多く、理解しやすい反面文学性はやや劣るが、『侍』のほうが会社の命令に右往左往する悲哀溢れるサラリーマンに通じるものがあり感情移入する人は多いかもしれない。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年01月22日

藩主の命によりローマ法王への親書を携えて海を渡った一人の侍。多くのものを失い傷つき絶望し、7年もの後やっとの思いで故郷の地を踏んだ彼を待っていた運命はあまりに過酷だった。
共に旅をした宣教師ベラスコはすごく傲慢で初めは嫌いだったが、読み進めるほどに彼の人間らしさ未熟さに興味がわく。
宗教は好きではな...続きを読むいが、最後に侍の心にその人が寄り添って少しでも楽になったのならいいなと思う。だけどラスト、ベラスコがその知らせを聞いたときの反応には正直がっかり。その思考は理解できなかった。
小説としてはすごくおもしろかった。

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Posted by ブクログ 2017年07月21日

作者の作品、「沈黙」と双を成すキリスト教をめぐり時代に翻弄される人々の物語。あまりに無情な仕打ちを受ける主人公の侍。もう一人の主人公、野望をもったベラスコが悟りを開いていく過程をじっくり描いていて説得力があります。ベラスコが日本に再上陸することで結局は侍も残念な結果に。。侍はある程度納得しているのか...続きを読むもしれないが、残された家族はいたたまれないです。
キリスト教は精神の安定を目指しているのは司教の考えであって、仏教も含め多くの宗教を信仰する庶民は現世の幸せを願うものでは、と考えてしまいます。
人それぞれの価値観と尊厳を考えさせられる深い一遍です。

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Posted by ブクログ 2016年05月18日

支倉常長の海外渡航から死に至るまでを書いた重厚な1冊。

これは旅行記ではなく、信仰についての問いかけに満ちている。前に読んだ「沈黙」は神の存在について考えさせられるものであったが、この本は神を信じる人間についての本にだと思う。

ノベスパニヤにいた日本人が信じる神とローマで信じられている神との隔た...続きを読むりは強者と弱者の信仰の違いを語っているように感じ、そこに神という存在の不明瞭さからくる悲劇を思う。

最後に支倉常長に寄り添う神はローマの神ではない。

神とはなんなのだろうか。

「沈黙」の時にも感じたが、やはり人の心の中にだけ神は存在し、そこに真実があるように思う。

形に意味はなく、見えない部分こそが大切なのだ。

それにしても支倉常長、全然わかってなかったが一言でいうと悲しすぎる。

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Posted by ブクログ 2016年05月16日

遠藤周作の作品は「痛快」という言葉がよく合う。
「沈黙」よりも動きのあるストーリーなのに、なぜだろう、すごく長く感じてしまった。きっと自分の歴史の知識が乏しいことと、総じて暗いからなんだろうけど。
遠藤周作の作品はノンフィクション風に描かれているので、まま信じてしまいそうになる。解説を見ると、船上で...続きを読むの生活や洗礼儀式など、彼自身の体験を忠実に再現しているそう。リアリティに溢れているのも納得である。
彼の表現は正確である以上に、人が潜在的に感じている感覚的な部分まで細かに言語化されている。こちらがとらえている人間以上の人間らしさを、まったくうまく描写してるんだよな〜とやはり痛快に思った。

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Posted by ブクログ 2016年01月03日

藩命により、日本人未踏のヨーロッパに行き、不本意のまま洗礼を受ける。苦難の末帰国した一行に待っていたのは、キリスト教禁制、鎖国した故国。支倉常長一行が長旅の末に至った信仰は、やむを得ずか、自らであろうか。2016.1.3

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Posted by ブクログ 2022年03月15日

『沈黙』と同様、読後に心に重くのしかかる1冊だった。遠藤周作の作品を読むたびに信仰とは何かを考えさせられ、カトリックである私は自己の信仰を見直すことになる。ここでは、使節団がノベスパニヤで出会った元修道士が語るように、自分は「教会や神父たちの説くイエス」は信じておらず、自分の信じるイエスは「金殿玉楼...続きを読むのような教会におられるのではなく、このみじめなインディオの中に生きておられる」ということ。信仰の原点を知らされた思いがした。

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Posted by ブクログ 2014年01月08日

務めのため異国に渡った侍の話であり、宣教者の信仰の話でもある。
長谷倉(支倉)はスペインに渡って同化するどころか、その文化とも信仰とも、交わるところはない。翻弄されても日本人であろうとする姿は、今はなき侍の矜恃である。
そこかしこに神がおり、人間以上のスーパーマンは不在の日本に、キリスト教は馴染まな...続きを読むい。異文化を通じて日本人というものが浮かびあがってくる。

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