感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
◯昔のことなので記憶が怪しいが、「沈黙」の時に感じた日本人の現世利益的な信仰と、西洋的な信仰の関係性とは異なり、個人の信仰と、組織や政治との関係に関する小説だと読んでいて感じた。
◯また、読みながら、歎異抄の「親鸞一人がためなりけり」という言葉を思い出した。こちらは能動的に関係を築き、この境地に至っている点を思えば、「侍」の中で日本には根付かないとされた信仰の心は確実にあったと思う。解説にもあるとおり、侍自身は受動的に始まったものだが。
◯そう考えると、「侍」はやはり純粋に信仰に対する試論なのかなと思った。
Posted by ブクログ
侍って作中にあえてでているのはなぜなんだろう。
安土桃山時代に主君の命とはいえ、異国に行けといわれどんな気持ちだったろ。
実話に基づく話でこんな日本人がいたことを知らなかった。時代の流れに翻弄され無念だったろう。
ローマに残るのも心残り。不本意にキリシタンになりそこの地で暮らすのも不本意。行き場のない気持ちがえがかれていた。
キリスト教にとって、インディオの村も日本も野蛮で改心させねばとおもわれていたんだな。何故ほっといてくれないのかと悲しい。
歴史に翻弄され
海外からの文化が入ってきたばかりの時代で
太平洋、アメリカ大陸、大西洋を渡って旅をするなんて
とんでもない冒険であった事だろう。
帰国後の国内情勢の変化も不遇であったが、信仰心に救いはあったのだろうか。
Posted by ブクログ
「沈黙」のテーマ「神の存在の有無」に対し「侍」は「宗教とは何か」という問いかけの小説だと思います。
キリスト教のお話でありながら、日本の宗教観についても描かれていて、「なぜキリスト教は日本に向かないのか」をヴァレンテ神父が語る場面は、深く頷きながら読みました。ヴァレンテ神父の語った日本の宗教観や社会構造は現代日本に脈々と受け継がれているものがあるのを感じました。
また、江戸時代の日本社会の陰湿な部分を、政府上層部や役人の描き方や、暗く冷たい建物の描写で表してるところがすごく印象に残りました。
でも正直読みながらずっと思ってたのは「ベラスコのせいでこんな事に…!!」ということです。こいつさえいなければ…!!そして、やはり宗教の押し付けは古今東西良いことがない。
ただし、最終的には実はベラスコは自らの信仰と布教において勝利しているところがまたこの小説のすごいところです。
「侍」は最期、何を、誰を思ったのでしょうか…
残酷な現実と絶望の向こう側に真理が少しだけ見えるような描き方が素晴らしかったです。
神とは、宗教とは、日本とは…考えさせられる一冊です。