【感想・ネタバレ】夫婦の一日のレビュー

あらすじ

不幸に襲われたとき、心のよりどころになるものは何か。老いて死を間近に感じたとき、不安から救ってくれるものは何か。生涯をかけて厳しく宗教を追求してきた著者は、実人生の中で、傍らにいる妻の苦悩と哀しみを受け入れるために、信仰とは相反する行動に出た……。生身の人間だけが持ちうる愛と赦しの感情を描いた表題作ほか、心の光と闇の間で逡巡する人間の姿を描いた短編集。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

人間の心を映したような短編集。
夫婦の鳥取砂丘の旅から始まり、江戸のキリシタン細川ガラシャ夫人に纏る小編で終わる5篇は、どれも鋭く心の光と闇、人間の弱さを射抜いた、恐ろしくもあり、見逃せない話だった。日本で生まれ育った私にとっては、カトリックの筆者の視点で見た日本人観、仏教観が新鮮で興味深い。生涯をかけて宗教に向き合い続けた筆者だからこそ視える、人間の深層心理なのだろう。
面白くて、他の遠藤作品も買ってしまった。

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2021年09月01日

Posted by ブクログ

短編集。
表題作も印象深いのですが、この作品唯一の歴史小説の「日本の聖女」が一番印象的でした。
細川ガラシャの話です。
聖職者からみた、それも批判的?なガラシャ評価が心に残ります。

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2009年11月04日

Posted by ブクログ

この短篇集含めて、僕が遠藤周作を好きなのは、高潔に生きたいという理想と情欲に溺れたいという堕落性、その双方が一人の人間の中に存在している矛盾について、認めて、許して、悩んでいるからです。
良い悪いの二元論で物事を切るのは明快かつ論理的で、一見逞しいけれども、空疎で断定的で、どこか脆い。
誰かと戦っているわけでもないし、自分に正直に存分に苦しめば良いのではないか、そう伝えてくれているように思えるのです。

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2018年09月20日

Posted by ブクログ

遠藤さん作品は読みやすい。
とは言え読みやすかっただけで、お茶漬け本として最高の本だったということです。
内容については遠藤さんの晩年って、こんなこと考えてたんだ!!
という新しい発見もあり、面白いなあという感想。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【夫婦の一日】
夫婦揃ってキリスト教徒だが、妻が夫の身を案じるあまり占いに頼って言われたことを実行しようとする。

【授賞式の夜】
キリストの教えを守る模範的教徒(?)が実は教えを破り滅茶苦茶にしたいという願望を密かに持ち続け、よく暗示的な夢を見る程追い詰められている話。

【ある通夜】
敬虔なキリスト教徒が、見た目は自分と瓜二つだがダークな従兄弟に、心の底に眠る欲望を刺激されて葛藤する話。

【六十歳の男】
肉体の衰えと死に怯える男が、女子高生の生命力を目の前にして欲望を感じる。

【日本の聖女】
「沈黙」に通ずる、中世日本のキリスト教観の話。日本人は十字架を下ろすために解脱する。キリストは十字架を背負いながら生きていくことをよしとする。

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2024年10月03日

Posted by ブクログ

作者のキリシタンとしての葛藤に苦しむ姿が描かれた「授賞式の夜」「日本の聖女」「夫婦の一日」。作者の中に渦巻く残酷さや人間臭さを書いた短編「ある通夜」「六十歳の男」。どれもリアルで生々しく、非常に興味深い内容でした。

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2023年11月14日

Posted by ブクログ

未読の遠藤の短編。「侍」から「スキャンダル」に移るその軌跡を見事に表している、とあとがきにあった。5つの短編からなる、短編集であるが、どれも心に響いた。晩年の遠藤は、人間の無意識に関心を非常に寄せており、そこに潜む悪とそこからの救いという観点から、宗教と信仰を深く見つめている。その辺の関心が、この五つの中にありありと描かれている。

個人的には「日本の聖女」が一番響いた。細川ガラシャを遠藤流に描いている。

13/7/9

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2013年07月09日

Posted by ブクログ

深層心理がうまく描かれている。行動と理性と感情のバランスが見事。日本文化を深く観察された遠藤周作の晩期らしい作品。

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2012年11月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 5編を収めた短編集。『日本の聖女』が素晴らしい。修道士の独白体で細川ガラシャを描いている。
 謀反人・明智光秀の娘であり、秀吉が禁制とした切支丹である彼女の危険な立場は、夫との確執を生み、彼女は厭世観を強くしていく。キリスト教への信仰を深めていくように見えるガラシャだが、現世の苦悩(十字架)を背負おうとはせず、むしろ死による救済を願う姿に、修道士はキリストの教えとの根源的な差異を感じ取る。
 修道士はガラシャの死を「切支丹として死んだのではなく、日本人の宗教で亡くなったのだ」と語る。彼女の宗教観、人生観は本質的に変わることはなく、その死にいたるまで、極楽浄土を願う日本的な精神に支配されたままだった。

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2012年01月18日

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表題作の「夫婦の一日」と「日本の聖女」が個人的に好きな作品。

特に、「夫婦の一日」は、カトリック信者であるにもかかわらず、立て続けに起こった不幸から占い師を尋ね、その言葉に信心する妻の様子が印象的。カトリック信者なのだから、占い師の言葉など信じること自体おかしいと説く夫の気持ちも分からないでもなかった。けれど、夫が1年で亡くなるといわれ、それまで続いた不幸のことも考えると、たとえカトリックといえども何かにすがりなんとしても夫を助けたいと思ってかたくなに実行する妻の心情も理解できた。きっと女性ならではなのかもしれない。

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2010年11月15日

Posted by ブクログ

日本の聖女が気に入った。他はいまいちだったが、後書きによって新しい側面を見たので、もう一度読み直す。

2011.8.24 再読
背徳的なものに快感を覚える悪魔の呼吸音に耳をすませながら

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2011年08月24日

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短編5つ。「日本の聖女」ガラシャの信仰について。他4編は自身の体験からのエッセイ風。仏教を主とした日本人の神性と日本人のキリスト教の捉え方が欧州人のそれとは異なるのではないかという作者の考えがなんとなく伝わってきた。2023.8.29

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2023年08月29日

Posted by ブクログ

「夫婦の一日」
  「放っておくと、あんたの御主人に十一月には大きな不幸が来ますよ」
インチキ占い師の出鱈目な預言に妻はだまされた。妻は吉方のお水と砂をとりに鳥取に行きたいと言う。夫婦共にキリスト教信者である。作家である夫は大いに悩み、最後に神父に相談した。

「君がその迷信を信じていない以上、行こうが行くまいが、君には問題ないだろ。むしろ奥さんの気持ちがそれですむなら、行くことで解決したまえよ」

神父様のこのアドバイスで夫は葛藤しながらも心に変化が訪れる。

宗教が絡むので複雑になるのかもしれないが、正しくなければ共感しづらい男性とは違う女性の立場から言わせていただくと、

⁇と思いながらもそれであなたの心が晴れるならと優しく従っている、母なる心を持った女性たちは大いにいると思う。

だからこそ、夫の行動に嬉しさを、私は覚えたのかもしれない。

「夫婦の一日」他、四篇

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2021年08月08日

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『夫婦の一日』★1
占いを信じて必死になる妻がその行動一つで知らない人のように思える話。陳腐な設定に陳腐な行動や心情。何もなく終わった。つまらない。印象に残らない。
短編なので仕方ないと思うけど別人のように見える前の妻の描写があまりないので「私」が感じている感情(憤りとか怖さとか)を読者があまり共有できないのではないかと思う。平たく言うともともとそういう人だったのでは?何をいまさらという感じ。こういうテーマは時代とともに陳腐化してしまうように思う。具体的には2chや小町、増田なんかでよくみかける話。「私」の妻への対応についても妻を理解することを放棄しているようにみえてあまり共感できない。もともと妻を少し下に見ているように感じる。

『授賞式の夜』★1
何か起こりそうな予兆はあるけどここからというところで終わる。印象に残らない。

『ある通夜』★1.5
国語の教科書にのりそうな話。お行儀の良い小説家の私と顔は似ているが品行は正反対の親戚、高さんの話。設定は陳腐だけど構成は王道。

『六十歳の男』★4
面白いし巧い短編。60歳というお年寄りの心情を書いた話はあまり読んだことがなく新鮮でリアルに感じた。主人公が抱くのは性欲ではなく若さへの嫉妬。著者の別小説『イエスの生涯』で、捉えられたイエスに対して掌を返した民衆がイエスをひどく虐めることを自分の言葉で噛み砕いて書けていないと感じており、その一つの答えとして、この短編の主人公で表現している。純粋なものへの嫉妬であると。

『日本の聖女』★4
ある程度面白さもあるし、歴史上の人物を登場させてとても巧く構成している。豊臣秀吉が表向きキリスト教を禁止した時代のお話。布教のためには教えを捻じ曲げることも厭わないパードレ(司祭)を上司に持つ信心の強い修道士目線の物語。『沈黙』で井上様やフェレイラが言っていた日本で魔改造されたキリスト教の話。修道士の考えは遠藤周作の考えなのではと思わされる。高山殿や細川ガラシャは魔改造されたキリスト教を信仰し棄教を拒絶し殉教をも厭わない。キリスト教徒の民衆はそれが美しく正義であると支持する。修道士はその考えに疑問を呈し、ガラシャの殉教は逃げであるとする。表向きは棄教して裏切り者扱いをされ裏ではキリスト教徒のために動きながらも最期まで報われなかった小西殿こそ美しい殉教だとする。嫉妬から、仕え主であるガラシャが不幸になることを悦びとする(と修道士が考える)小従徒は『六十歳の男』と少し繋がっている。実在の人物を上手く動かし、これが本当の話である可能性を100パーセント否定することはできない作りが巧い。

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2020年12月10日

Posted by ブクログ

久しぶりの遠藤周作です。
遠藤周作の考えるキリスト教の世界観を久しぶりに味わいました。

短編の中で、「日本の聖女」が一番よかったです。
むか~し読んだ三浦綾子の「細川ガラシャ夫人」を読み返して、
遠藤周作と三浦綾子の世界観を比べてみたいなと思います。

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2011年08月09日

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