遠藤周作のレビュー一覧

  • 母なるもの

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    日本のカトリックをテーマにした短編集。いずれも作者自身がモデルとしか思えない人物が出てくるので、私小説風な話ばかりである。『沈黙』などに代表される切支丹時代を舞台にした長編とかぶるテーマが多く、とても興味深く読めた。しかし巻末の解説が、仏教の経典を引用しつつ遠まわしにカトリックを非難する場違いとしか思えない内容で、ちょっと残念な気分になった。

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    2017年02月10日
  • 愛情セミナー

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    ネタバレ

     めっちゃ笑った。遠藤周作めっちゃお茶目やん。読者に「諸君」とか「奥さん」などと呼びかけたり、(反対する人は反駁してみい)なんて挑発したり、嫉妬への対処法が「⚪︎⚪︎⚪︎もウンコする」と歌ってみたまえ、やったり。かいらしなあと頬が緩む。
     「初手から甘やかしておくと、女はすぐつけあがると先輩が教えてくれたからだ。だから結婚して一カ月目から女房を張り飛ばすことにした。」とかむちゃくちゃやん。奥さんがなかなか強い女性で安心したわ。
     昭和の漢らしい価値観が随所に現れているけど、不思議と嫌な気分にはならない。愛と情熱は違うこと、結婚に結晶作用は必要ないこと、女が与えすぎることの危険、忍耐の末「愛」や

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    2017年01月13日
  • 沈黙

    購入済み

    興味深い

    映画化され話題になっていたので、今更ながら読みました。
    宗教を理由に弾圧、迫害した、された日本の過去の姿を、現代的な感覚で読みやすい、興味深い作品であると思います。
    現在の社会や国際的な問題とも照らし合わせ、人としての葛藤を捉えているこの作品は、いま、多くの人に触れて欲しいなと思いました。
    ただ、最後の文章は、難しいかもしれません。

    ここからはごくごく個人的な感想です。
    作中、よく「えっと◯◯」という表現がありますが、この使い方に少し違和感を覚えました。方言まで正確に書く訳ではないと思いますが、やはり方言は少し違うなと感じることがありました。(しかし、ほんの少しの違和感です)登場人物達が生き

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    2016年12月30日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    普通の人間の物語、なのに時代や立場に飲まれてなんともやりきれない悲しい物語になってしまった。勝者はいないし正解もなく、でも残した足跡から後世の人は色んな思いを抱いたり。歴史てすごい。面白かった。

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    2016年12月20日
  • 聖書のなかの女性たち

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    聖母マリアやマグダラのマリア、サロメ、マルタとマリアなど、聖書に登場する11人の女性たちのエピソードを紹介し、彼女たちの生き方とイエスの言行がどのように交わったのかを説いています。著者の女性論でもあり、ちょっと珍しい視点からの聖書入門でもあるという本です。

    最終章の「秋の日記」は、著者の大学時代の同級生でのちに修道女となった「ひよこ」と呼ばれた女性の思い出などが綴られています。

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    2016年10月26日
  • 遠藤周作短篇名作選

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    シラノ・ド・ベルジュラック、パロディ、イヤな奴、あまりに蒼い空、その前日、40歳の男、影法師、母なるもの、巡礼、犀鳥、夫婦の一日、授賞式の夜、天国のいねむり男、以上13の名作短編と加藤宗哉による解説と充実の年譜。
    久しぶりの遠藤周作に圧倒されたのは、私自身、人生の深み、親子や夫婦の情、生きる苦しさと喜び、人間の弱さとたくましさ‥のようなものが少しは身にしみるような年になってきたということなのだろうか。
    『沈黙』が映画化されるとのことだし、次はじっくりと長編を読み直そうと思う。

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    2016年10月20日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    凄まじい本でした。学生時代に「海と毒薬」を読み、衝撃を受け、勢いでこの本を買いましたが、何となく本棚の奥で眠らせたままでした。今回、何気なく手にとり読んでみましたが、生きることの染み込んでいくような悲しみの存在を感じさせられました。勝呂の罪を背負い、傷ついてきたからこそ発揮できる優しさは世間には認められず、折戸の正論が持ちうる暴力が正当化される世界。よく考えるとこの社会は自分が持ちうる優しさや繊細さを誤魔化せない人が迷い苦しみ、何でも自分に都合がよい正論で白黒をつけて、周囲に構わず突き進むタイプの人間がどんどん地位を築いていく。今も昔も何も変わってない。
    勝呂が死を選ぶのは彼の生涯を考えると、

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    2016年10月15日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    幕末から明治維新の時代にかけての長崎・浦上崩れ(検挙・弾圧事件)を題材にした小説。
    恋い慕うキリシタン青年が流刑になり、その彼のために、死に至るまで自分の身を汚してまでも愛し抜いたキク。
    神を信じているのに、なぜ不条理とも言える苦難が振りかかるのか、、、神義論的な問いを突きつける。

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    2016年08月02日
  • 十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。

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    ようなゲーム(なにかを見たときに使い古された例えではなく違うことを考えること)、抑制法(修飾されたり、詳細な経緯を書いたりといったただ長い文章よりも文章表現を最小限に抑えた方が胸に刺さる場合がある。)氏曰く、「感情をあふれさすより、それを抑制して、たった一すじ眼から泪がこぼれる方がはるかにその感情をせつなく表現するものです。」。転移法(本当に言いたい単語を言わずに他の表現から匂わす。)「夏のまぶしさや暑さを描くなら光の方から書くな。影の方から書け」。分かりやすく、印象深い手紙の書き方を教えてくれるいい本。このユーモアに富んだ手紙教本を病室のベッドで書いたというからさすがだなと思う。

    遠藤周作

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    2016年07月03日
  • 妖女のごとく

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     遠藤周作さんは、時代物から読みはじめました。キリスト者としての清らかな小説が多かったように思います。「海と毒薬」に続いてのこの作品です。起伏が少ない感じの、ちょっとダラダラ続く感じの、でも、彼女を助けてあげて!と叫んでしまいそうな感じが、癖になりそうです。
    抜群にファイブスターってことは無いですが、だんだんそうなっていきそうです。

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    2016年06月16日
  • 反逆(下)

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    ストーリーの合間に根拠となる文献と作者の所管が添えられており、単なるエンターテインメント作品ではなく歴史検証的な作品でもあり知的好奇心をくすぐられます。しかし、解説によると物語の重要な人物、竹井藤蔵が全くの架空人物とのことで、やはり物語であって鵜呑みにはできないなぁと。
    また、キリシタンにまつわる人物が多く描かれているところも作者の信仰心からくることも間違いないですね。
    上巻は荒木村重中心の展開だったが、明智光秀初め高山右近、中川清秀、そして柴田勝家、反逆する武将の心理を浮き彫りにしながら秀吉の天下統一までを描く。反逆の顛末の凄まじさに圧倒される。
    この作品で戦国時代への興味が確実に高まりまし

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    2016年06月08日
  • 反逆(上)

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    信長の残虐ぶりが際立つが、それでも頂点にのし上がった知略や、人の心を読む力には大いに興味をそそる。
    対する主人公、荒木村重は戦略に関しては凡人であり、感情移入しやすい。
    豊臣秀吉、明智光秀それぞれの戦略と照らし合わせながらのストーリー展開で、戦国時代への興味が増します。
    また、この時代の価値観、損得で動く殺伐さがよくわかります。
    上巻の後半で早々と反逆ののろしを上げ、かなりの劣勢となりつつの下巻、この後どう展開するのか楽しみです。

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    2016年06月01日
  • 侍

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    支倉常長の海外渡航から死に至るまでを書いた重厚な1冊。

    これは旅行記ではなく、信仰についての問いかけに満ちている。前に読んだ「沈黙」は神の存在について考えさせられるものであったが、この本は神を信じる人間についての本にだと思う。

    ノベスパニヤにいた日本人が信じる神とローマで信じられている神との隔たりは強者と弱者の信仰の違いを語っているように感じ、そこに神という存在の不明瞭さからくる悲劇を思う。

    最後に支倉常長に寄り添う神はローマの神ではない。

    神とはなんなのだろうか。

    「沈黙」の時にも感じたが、やはり人の心の中にだけ神は存在し、そこに真実があるように思う。

    形に意味はなく、見えない部

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    2016年05月18日
  • 私にとって神とは

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    ネタバレ

    筆者がなぜキリスト教を信じるようになったのか、神とは、三位一体とは、キリストとは、といった質問に対して筆者個人のキリスト教感で以て答えている本。筆者は日本人としての仏教、神道的感覚も持ち合わせているおり、そことの折り合いをつけながら帰依したキリスト教は日本に住んでいると遠い存在のキリスト教を身近に感じさせてくれた。
    特に印象的だったのは「神は存在しているのではなく、働きである」という考え。一神教を信じていない身としては、神の存在は全くぴんとこないが、人の心の底にあって、そこで働く何かが神ということならば何となくだが自分も感じることができる。

    筆者が迷いながらもキリスト教を信じることとなった経

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    2016年04月03日
  • キリストの誕生

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    とても面白く、聖書の理解が深まりました。筆者は常に第三者の視点を保ち、新約聖書の内容的誇張や欠落を数多の学説に基づいた知識で埋める一方、資料の乏しい部分については大胆に想像力を働かせて、イエスの死後、残された弟子たちがどのように葛藤し、生き抜いていったかを描き出していきます。正統的神学からは外れるような言葉遣いにドキッとしますが、それは事実を元にした小説を読むようなもの。特に本作で扱う使徒行伝は、歴史・文化的背景や人物のバックグラウンドが分からないと理解が難しいので、参考になります。

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    2016年03月19日
  • ユーモア小説集

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    面白い話が起承転結でできているとするなら、遠藤さんのお話は起承転ケくらいで終わってる様子で、余韻が長く、読みおわってちょっと考えるというタイプのものです。好き嫌いはあると思いますが、ワタシはこういうの大好きです。
    男には他人に見せてはならない顔が3つある。まず、金を数える顔。第2に、女とナニしとる時の顔。第3にだな…

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    2016年01月10日
  • 十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。

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     十頁だけなんてとんでもない、最後まで飽きることなく読んだ。色々なシチュエーション、その時の複雑な心情に合わせた効果的な手紙の書き方について語っておられるのだけど、私のイメージを良い意味で裏切るようなひょうきんさとユーモアが文章に表れていて、為になるのに堅苦しくない。メールやSNSが普及して手紙離れしている現代でも通じるお言葉ばかりで、手紙が書きたくなる。また、これらのコツはメールなどでも使わなきゃなと思った。

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    2015年12月02日
  • さらば、夏の光よ

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     遠藤周作さんの作品は、必ずその根底に愛があって、細部細部に現れる憎しみ嫉妬裏切り…の中にも愛が感じられます。読んでいて安心できる、そして何だか救われる作品たちです。
     作中の、南条も京子も野呂もそれぞれの若い時代を精一杯生きています。読み終えて最後にわかったことは、野呂に対する南条の愛でした。

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    2015年10月26日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    自分の過酷な運命を受入れ、潔く死地に赴くマリー・アントワネット。幽閉生活の中で彼女は何かを学び、死を静かな心で受け入れる境地に至ったのだ。

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    2015年10月12日
  • 満潮の時刻

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    ネタバレ

     40代の働き盛りの男性が、結核により療養生活を送ることになることから物語は始まり、淡々とした療養生活と、その心境の機微が描かれている。
     今の医療技術からは考えられない治療法、入院期間だが、当時多くの人々が命を落とした結核という病気の恐ろしさを垣間見た気がした。
     その苦痛、死の淵に立たされたときの模写が妙にリアルなのは、作者自身結核を患っていたからなんですね。
     病院のなんとも言えないあの重い空気感も、読んでいるだけで気が滅入るよう。

     ケムリハナゼ、ノボルノカ。
     わたしは今まで大きな病気も事故もしたことがない。
     本当の苦痛、不幸、孤独感を味わったとき、何を考えるのだろう。誰か、そば

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    2016年06月08日