遠藤周作のレビュー一覧
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ネタバレめっちゃ笑った。遠藤周作めっちゃお茶目やん。読者に「諸君」とか「奥さん」などと呼びかけたり、(反対する人は反駁してみい)なんて挑発したり、嫉妬への対処法が「⚪︎⚪︎⚪︎もウンコする」と歌ってみたまえ、やったり。かいらしなあと頬が緩む。
「初手から甘やかしておくと、女はすぐつけあがると先輩が教えてくれたからだ。だから結婚して一カ月目から女房を張り飛ばすことにした。」とかむちゃくちゃやん。奥さんがなかなか強い女性で安心したわ。
昭和の漢らしい価値観が随所に現れているけど、不思議と嫌な気分にはならない。愛と情熱は違うこと、結婚に結晶作用は必要ないこと、女が与えすぎることの危険、忍耐の末「愛」や -
購入済み
興味深い
映画化され話題になっていたので、今更ながら読みました。
宗教を理由に弾圧、迫害した、された日本の過去の姿を、現代的な感覚で読みやすい、興味深い作品であると思います。
現在の社会や国際的な問題とも照らし合わせ、人としての葛藤を捉えているこの作品は、いま、多くの人に触れて欲しいなと思いました。
ただ、最後の文章は、難しいかもしれません。
ここからはごくごく個人的な感想です。
作中、よく「えっと◯◯」という表現がありますが、この使い方に少し違和感を覚えました。方言まで正確に書く訳ではないと思いますが、やはり方言は少し違うなと感じることがありました。(しかし、ほんの少しの違和感です)登場人物達が生き -
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凄まじい本でした。学生時代に「海と毒薬」を読み、衝撃を受け、勢いでこの本を買いましたが、何となく本棚の奥で眠らせたままでした。今回、何気なく手にとり読んでみましたが、生きることの染み込んでいくような悲しみの存在を感じさせられました。勝呂の罪を背負い、傷ついてきたからこそ発揮できる優しさは世間には認められず、折戸の正論が持ちうる暴力が正当化される世界。よく考えるとこの社会は自分が持ちうる優しさや繊細さを誤魔化せない人が迷い苦しみ、何でも自分に都合がよい正論で白黒をつけて、周囲に構わず突き進むタイプの人間がどんどん地位を築いていく。今も昔も何も変わってない。
勝呂が死を選ぶのは彼の生涯を考えると、 -
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ようなゲーム(なにかを見たときに使い古された例えではなく違うことを考えること)、抑制法(修飾されたり、詳細な経緯を書いたりといったただ長い文章よりも文章表現を最小限に抑えた方が胸に刺さる場合がある。)氏曰く、「感情をあふれさすより、それを抑制して、たった一すじ眼から泪がこぼれる方がはるかにその感情をせつなく表現するものです。」。転移法(本当に言いたい単語を言わずに他の表現から匂わす。)「夏のまぶしさや暑さを描くなら光の方から書くな。影の方から書け」。分かりやすく、印象深い手紙の書き方を教えてくれるいい本。このユーモアに富んだ手紙教本を病室のベッドで書いたというからさすがだなと思う。
遠藤周作 -
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ストーリーの合間に根拠となる文献と作者の所管が添えられており、単なるエンターテインメント作品ではなく歴史検証的な作品でもあり知的好奇心をくすぐられます。しかし、解説によると物語の重要な人物、竹井藤蔵が全くの架空人物とのことで、やはり物語であって鵜呑みにはできないなぁと。
また、キリシタンにまつわる人物が多く描かれているところも作者の信仰心からくることも間違いないですね。
上巻は荒木村重中心の展開だったが、明智光秀初め高山右近、中川清秀、そして柴田勝家、反逆する武将の心理を浮き彫りにしながら秀吉の天下統一までを描く。反逆の顛末の凄まじさに圧倒される。
この作品で戦国時代への興味が確実に高まりまし -
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支倉常長の海外渡航から死に至るまでを書いた重厚な1冊。
これは旅行記ではなく、信仰についての問いかけに満ちている。前に読んだ「沈黙」は神の存在について考えさせられるものであったが、この本は神を信じる人間についての本にだと思う。
ノベスパニヤにいた日本人が信じる神とローマで信じられている神との隔たりは強者と弱者の信仰の違いを語っているように感じ、そこに神という存在の不明瞭さからくる悲劇を思う。
最後に支倉常長に寄り添う神はローマの神ではない。
神とはなんなのだろうか。
「沈黙」の時にも感じたが、やはり人の心の中にだけ神は存在し、そこに真実があるように思う。
形に意味はなく、見えない部 -
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ネタバレ筆者がなぜキリスト教を信じるようになったのか、神とは、三位一体とは、キリストとは、といった質問に対して筆者個人のキリスト教感で以て答えている本。筆者は日本人としての仏教、神道的感覚も持ち合わせているおり、そことの折り合いをつけながら帰依したキリスト教は日本に住んでいると遠い存在のキリスト教を身近に感じさせてくれた。
特に印象的だったのは「神は存在しているのではなく、働きである」という考え。一神教を信じていない身としては、神の存在は全くぴんとこないが、人の心の底にあって、そこで働く何かが神ということならば何となくだが自分も感じることができる。
筆者が迷いながらもキリスト教を信じることとなった経 -
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ネタバレ40代の働き盛りの男性が、結核により療養生活を送ることになることから物語は始まり、淡々とした療養生活と、その心境の機微が描かれている。
今の医療技術からは考えられない治療法、入院期間だが、当時多くの人々が命を落とした結核という病気の恐ろしさを垣間見た気がした。
その苦痛、死の淵に立たされたときの模写が妙にリアルなのは、作者自身結核を患っていたからなんですね。
病院のなんとも言えないあの重い空気感も、読んでいるだけで気が滅入るよう。
ケムリハナゼ、ノボルノカ。
わたしは今まで大きな病気も事故もしたことがない。
本当の苦痛、不幸、孤独感を味わったとき、何を考えるのだろう。誰か、そば