遠藤周作のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
キリスト教でもなければイエスについてそこまで詳しいわけでもないのだが、イスラエルに滞在経験があり、ゆかりの地をあちこち回ったのでそのときの記憶とともに読み進めました。とかく神聖視されがちなイエスだが、実際のところその生涯は惨めでみすぼらしく、失望され、罵声を浴び続けてきた。しかしいつも苦しんでいる者悲しんでいる者のそばに寄り添うことをやめなかった。矛盾するようですが、自分はきっとイエスのような人間にはなれないと確信すると同時に、これまでで最もイエスを身近に感じられる、そんな小説でした。挟まれる私小説で語られる「ねずみ」のエピソードにより、そんなイエスの存在がよりくっきり浮かび上がる仕組みになっ
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Posted by ブクログ
「イエスの生涯」よりも難しい…。
う〜ん、難しい…というよりも、
弟子達や弟子の布教によって信徒になった人達によって
イエスをキリストとして高めるまでの過程やその心情が、
キリスト教徒でもなければ、
他の宗教に強い信仰があるわけでもない私には理解しづらい。
でもわかりたいと思ってしまう。なんだかちょっと羨ましい。
イエス死後、弟子達の自問自答や自責の念を考えると切なく感じる。
悩み続けるその姿に、同じ人間としての悲しみや弱さを見ることができ、
遠い昔に生きた人達を少し身近に感じられた。
弱さがあったからこそ強い信仰につながった、というのは納得。
イエスの復活についての考えも、なるほど〜と思 -
Posted by ブクログ
・読んだ動機は、自由主義を考えるにあたり、古典的自由主義が発生した時代背景を感じてみたかったこと。
・特権階級の優雅さと平民の苦しさはある程度表現されていたので、概ね満足。この格差が不満を募らせる、革命の要因になったことが伝わってきた。
・古典的自由主義は、特権階級による圧政からの自由であることが具体的にイメージ出来た。
・革命後の平民の狂暴さと残忍さがよく描かれていた。
・一般的に革命を起こしたあとの混乱をどう治めるかは、革命前に考えておかなければいけないが、革命が考えている以上の自体に発展するために上手く行かないという構図が見えた。
・マリーアントワネットの死までが描かれているが、フランス -
Posted by ブクログ
ネタバレやはりというか、暗く不気味な物語であった。現代の『私』の旅行記・回想と、イエスの生涯の一部が交互に語られていくが、何せよどちらも暗い。
物心ついたときからキリスト教徒に「させられていた」主人公が、棄ててしまった信仰の原点を求めにエルサレムへ。だが、イエスの影など跡形もなく、曖昧な聖書の記述にそって決められた、イエスを記念する場所。
民衆から見放され、ゴルゴダの丘へと至るイエスの姿は、後に西洋世界の、ひいては世界全体の歴史に大きな影響を与えることになったキリスト教のいう『神の子』のイメージからはあまりにもかけ離れている。とにかくみすぼらしい。
そして、『私』の回想の中でたびたび登場する『ねずみ』