遠藤周作のレビュー一覧

  • 深い河 新装版

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    平和な時代の日本に生まれた私にとってこの物語はあまりにも未知の世界で、自分の未熟さや無知を感じた。
    「神」「愛」「転生」。
    これらはすべて繋がっているように思えて、ひとりひとりにそれぞれの形があって、その形が誰かの心の中で影響を与えながら受け継がれていくものなのだろうと感じた。

    物語の最後の、あっけない終わり方に驚いた。
    ひとつの神を信仰することも凄いと感じる一方で、大津の生き方は、宗教が対立や紛争を生むこの世界への問いかけのようだと思う。

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    2025年11月22日
  • 死について考える

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    中年に入り、自分よりも親が先に逝くのだろうと思うけど、考えるのを避けられなくなってきた『死』について。
    『老いる』すら(しばらくはいいか…忙しいし)と深く考えずに、『命の結末と向き合う』ことを先延ばしにしているのは、わたしもそう生きているなと思いました。
    準備して置かなければ、いざその時にやってしまうかもしれない…それは、特に先輩の文豪たちをみてきた小説家の心に深く残ったことでしょう。

    狐狸庵先生はクリスチャンですが、仏教にも造詣が深くて、キリスト教至高!みたいなところが好き。

    しかし、キリスト教の「運命は神に委ね、罪は神に判断してもらい、人はそれを粛々と受け入れる」というのは相容れないです。
    八百万の神みたいに、人間のことなんて考えていない高次元の存在…のほうがしっくりくる。
    神が人間を理解して、合わせたり助けたりしてくれるなんて…神は誰も理解しない・理解されない存在なのです(過激派)

    長崎の、遠藤周作文学館で買いました。
    100周年記念カバーをもらったので付けています。

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    2025年11月22日
  • 満潮の時刻

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    あらすじを見て、読んでみたいと思った作品。
    テーマは興味深いのだが、「導入」「起承転結」「終わり方」「題名」がそれぞれ別の方向を向いているような、長編なのにチグハグさを感じた一冊で、
    一つ一つのものはとても興味を持てるのに、全てを線で繋げられていないような不安定さを感じた。
    しかし遠藤周作自身が伝えようと思ったテーマはしっかりと書かれており、読み進めることで考えさせる本だったと思う。

    チグハグさを感じたが、それは逆にいえば全てを集中して記憶するように読まなくても楽しめるということなので、病院内のことが多く明るくはない内容だが興味がある人は手に取ってもらいたい一冊。

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    2025年11月17日
  • 深い河 新装版

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    ネタバレ

    深い河

    著者:遠藤周作
    発行:2021年5月20日
    講談社文庫(新装版)
    1996年6月刊行の講談社文庫を改訂
    初出:1993年6月、講談社より刊行

    あるエッセイが読みたくて、ついでに数冊まとめて買った遠藤周作の古本も、これが最後の1冊。若い頃になんとも思わなかった作家が、妙に心に優しい。書いてあることは結構きびしく、人間の弱さや自己矛盾などをついているが、どうしてかそれが優しく響いてくる。文法的にはあまり正しい日本語とは言いづらいけど、とても読みやすく気持ちがよくなる文章にも惹きつけられる。人柄だろうか、文体だろうか。

    解説によると、深い河は、著者が病気を抱えながら必死で書いた小説だとのこと。93年に発表され、96年に没している。

    これも宗教的な小説である。代表作の一つ。表の主人公は磯辺樹という男性で、妻を癌で喪うところから始まる。最期を看取るしかないなか、病院ボランティアとして世話になった成瀬美津子と出会う。そして、彼女とはインドへのツアーで偶然再会する。磯辺は、いまわの際の妻に、生まれ変わるから探し出してねと言われた。ある研究所に問い合わせ、日本人の生まれ変わりかもしれない少女を探してもらう。この子かもしれない、という情報を得て、インドのある村へ行くのが目的だった。

    一方、成瀬美津子については、第三章でその大学時代が紹介される。彼女は男子学友にけしかけられ、ジュリアン・グリーンの小説「モイラ」よろしく、一人の純真で真面目な学生をもてあそぶ。大津というその男子学生は、神父志望だが、心優しく、宗教的にも原理主義的ではなく柔軟な考えを持つ。それが優柔不断のようにも映る。大津は真面目に結婚まで考えるが、見事にふられる。卒業後、美津子は一度結婚をするが、なぜか新婚旅行先のフランスで夫と別行動をして大津に会いに行く。さらには、離婚後、また大津が気になり、今、(キリスト教の)神父をしているというヒンズー教徒の国であるインドへと向かう。

    出だしは磯辺が主人公かと思うが、実は裏主人公が成瀬美津子と大津となり、そこに、磯辺が妻の生まれ変わりかもしれない少女を探しに行ったり、ツアー参加者である童話作家の沼田や、ビルマで兵士として死にかけたところを助けてくれた戦友のことを思う木口など、それぞれに事情を抱える人物たちが、それぞれ思う行動をしたり、といった物語を展開させる。

    それぞれの人生には深い河がある、その流れの向こうに何があるかは分からないが、過去の多くの過ちを知ることにより、自分が何を欲しているかがわかったような気になった美津子。彼女はインドで大津に再会するが、優しく真面目な大津は、キリスト教の神父でありながら冷遇され、その中でヒンズー教徒たちの死体を運ぶボランティアなどをして、救いを実践している。そして、ツアー参加者である一人の青年(カメラマン志望)が襲われそうになった際、それを助けようとして自分が大けがをしてしまい、最後には危篤へと陥るのだった。

    遠藤周作の小説を、さらに追加で探して買おうと決心した。

    *************

    <一章 磯辺の場合>

    磯辺樹(おさむ):
    啓子:妻、癌で余命3ヶ月
    田中:主任看護婦
    成瀬美津子:病院ボランティア、関西出身、金持ちの娘、学生時代はモイラと呼ばれた
    姪:ワシントン在住
    夫:ジョージ・タウン大学の医師
    マ・ティン・アウン・ミヨ:ビルマに住む日本人が前世?の女子
    ジョーン・オシス:ヴァージニア大学医学部

    <二章 説明会>

    江波:添乗員
    沼田:ツアー参加者、野鳥好き
    木口:ツアー参加者、寺で法要したい
    小久保:ツアー参加者、ヒンズー教の神について質問
    *インド旅行の説明会会場で、成瀬美津子と磯辺樹は再会した

    <三章 美津子の場合>

    大津:大学時代に弄んだ相手、祖父が政界の有力者だった
    近藤:大学時代の学友、男子、大津をからかえと提案
    田辺:大学時代の学友、男子、
    ベル:哲学科の先生、神父だが坐禅を組んでいる
    *ジュリアン・グリーンの小説「モイラ」の女主人公がモイラ。自分の家に下宿した清教徒の学生ジョセフを面白半分に誘惑した

    矢野:卒業後に結婚した相手
    *ノーベル賞作家フランソワ・モウリヤック著「テレーズ・デスケルウ」のテレーズと自分を重ねる美津子。夫ベルナールは悪い夫ではないが、テレーズはそばにいると疲れた

    大学時代、近藤や田辺にけしかけられ、真面目な学生大津をからかってやろうと美津子は大津に接近した。そして、自分の部屋に連れ込む。セックスはさせなかったが、体をもてあそばせた。大津はその気になり、結婚を考えるが振られる。

    卒業後は、まじめなエリートの矢野と結婚した美津子だが、新婚旅行のパリで2人はそれぞれ好きな行動をすることにした。美津子はリヨンに行き、神父になるべく神学校に通う大津と再会する。神から引き離そうとしたが、失敗に終わり、大津は再び神のもとにいたのであった。

    それから4年後、美津子は離婚した(6章で明かされる)。

    <四章 沼田の場合>

    沼田:童話作家、幼少期は大連
    三條夫妻:デリー行きの飛行機の後ろ席、新婚旅行、夫はカメラマン志望、妻は金持ちの娘でヨーロッパ行きを主張していたのでインドは不満
    李:沼田家の大連でのボーイ、クビに(石炭盗む?)

    小四の5月、母親に連れられ帰国。犬のクロを置いてくる。両親離婚。クロは人との会話を教えてくれた犬だった(人と人、人と犬)。
    結婚し、童話作家として活躍。小禽屋が犀鳥というアフリカの珍しい鳥をプレゼントしてくれた。暫くは家族も珍しがったが、途中で飽きられ、面倒は自分で見ろと言われる。
    昔、治療した結核が悪化して長期入院。犀鳥は返すことに。寂しい思い、クロを思い出す。妻がその変わり駕籠に入った九官鳥を持ってきてくれた。人のように「は、は、は」と声を出す。肋膜の手術中に屋上に置きっぱなしにして死なせてしまう妻。

    <五章 木口の場合>

    木口:ビルマで飢えとマラリアの地獄体験
    塚田:戦友、餓死寸前の木口を救ってくれた
    大橋:軍医
    南川:上等兵、手榴弾で自決
    牟田口:無謀な作戦を命じたビルマ日本軍の司令官
    ガストン:戦後に塚田が入院した病院でボランティア(食事を運ぶなど)、外国語学校で仕事をしている

    デリー行きの機上、添乗員江波の隣席には参加者の木口。ビルマのジャングルで壮絶な戦争を経験している。

    飢えとマラリアで次々と死ぬ日本兵。木口も「死の街道」で行き倒れとなり、覚悟を決めたが、戦友の塚田が残ってくれて、行き倒れた兵士の飯盒にわずかばかり残された米を与えてくれた。それと、牛が死んでいたが焼いたから大丈夫だと肉を食わせてくれた。肉はあまりに臭くて吐き出したが、食べないと死ぬぞと塚田は怒った。食べられなかった。なんとか隊に連れ戻してくれた。

    戦後、木口は子供が食べ物のことで不満を漏らすと異常なまでの怒りで折檻。自営業でなんとか生活する中、地下鉄駅で塚田と偶然再会する。戦後は九州にある妻の実家に行き、国鉄で仕事をし、今日は東京に出張だという。2人でしこたま飲んだ。塚田の飲み方は相当だった。

    何年かして、塚田から東京で仕事がないかと言ってきた。マンション管理人の仕事を世話した。塚田夫婦は恐縮した。何年かして、塚田が吐血して入院した。肝臓がやられていた。病院で酒を止めるように説得する木口。やめないと死ぬぞ!と。しかし、どうしても酒を止められない理由があると見た。やがて、誰にも言わないその理由を塚田は明かした。

    ビルマにおいて、木口になけなしの食料を与えた塚田は、自分自身もひもじくなり、出会った日本兵に食べ物はないかと聞くと、10円でトカゲ肉があるといわれてお金を渡した。見ると、それはトカゲ肉ではなく、南川上等兵の死体の一部だとわかった。家族宛の便箋に包まれていたから。彼は手榴弾で自決したのだった。しかし、あまりに飢えていたのでそれを食べ、木口にも与えたが食べなかった。

    復員し、便箋を渡して家族に謝った。子供が南川そっくりの目で塚田を見ていた。それを忘れるために酒を呷り続けていたのだった。

    そのことを聞いたボランティアのガストンは、数年前にアンデス山脈で起きたアルゼンチンの飛行機事故の話をした。一人はいつも酒を飲み、その日も酔っ払っていた。墜落し、生きのびた彼は、残り少ない他の人にこういった。俺が死んだら俺の肉を食べて生きのびてくれ。それで生きのびた2人。しかし、救出後にはその酔っ払いの家族から感謝されたという。迷惑ばかりかけたあの人が、人の役に立てたときっと喜んでいるはず、と。

    <六章 河のほとりの町>

    ラジニ・プラニル:カムロージ村にいる前世が日本人という少女

    三條夫婦は、バスで移動中にも、ヨーロッパに行けば良かったというような発言を繰り返した。夫(青年)はカメラマン志望。

    バスはヴィーラーナスィへと到着。ガンジス川で沐浴をする場所は何カ所もあるが、代表的なのはこのまちだった。

    磯辺は転生など本気で信じてはいない。しかし、彼の耳の奥の奥には妻の最後の譫言が聞こえていた。「わたくし‥‥必ず‥‥生まれかわるから、この世界の何処かに。探して‥‥わたくしを見つけて‥‥約束よ、約束よ」
    江波は三條夫婦に説明する。沐浴は禊ぎ(身の汚れと罪の汚れの浄化)と同時に、輪廻転生からの解脱を願う行為でもある、と。

    ヴァージニア大学医学部のジョーン・オアシスからの2通目の手紙を持参。以前に知らせたマ・ティン・アウン・ミヨという少女以外にも、2ヶ月前に北インドのカムロージ村(ヴァーラーナスィ近く)で日本人として前世を生きたという少女の話が報告された、という内容。ただし、彼女がこの告白を兄姉にしたのは4歳の時であり、我々が前世記憶者の条件に入れている3歳までの年齢は過ぎている。名前はラジニ・プニラル。

    *リヨンに大津を訪ねてから4年後、美津子は離婚

    「わたしは人を真に愛することはできぬ。一度も、誰をも愛したことがない。そういう人間がどうしてこの世に事故の存在を主張しうるのだろうか」美津子がボランティアをはじめたのは、そんな彼女の倒錯した気分からだった。愛が燃え尽きたのではなく、愛の火種のない女。男と女の愛欲の真似事だけは何度もやったが、火種に本当の炎がついたためしはなかった。(201P)
    美津子は病院のボランティアに参加した。愛の乾いた自分だからこそ、愛のまねごとをやってみる自虐的な気分になったのである。(209P)

    美津子はリヨンの大津に出した手紙の返事により、彼がリヨンで一度は神父の道を閉ざされたものの、南仏で職を得て首の皮一枚でつながっていることを知り、その後の手紙ではイスラエルで神父をしていることを知る。さらに、年に一度の大学の同窓会で、彼がインドで神父をしていることを知る。沐浴をやっているまちだという。その代表的な場所がヴィーラーナスィだということも知り、やってきた。

    <七章 女神>

    磯辺は銀座のイタリア料理店オーナーと火遊びの経験。幼女が中学生で反発していたころ。

    江波はいう「ヒンズー教徒は死体を焼いたところに木を植える」。
    沼田はいう「吉野の桜はすべてが墓標だった」。
    江波「1857年にインド人が英国に反乱を起こした際、アラーハーバードの森の樹々は絞首台の代わりに使われてインド人を吊るした」。

    江波は4年間、インドに留学していた。夫に捨てられ苦労して自分を育てた母と、インドの女神チャームンダーとを重ね合わせる。

    <八章 失いしものを求めて>

    クミコ・ハウス
    えくぼのある丸顔の女性:街で出会った結婚式に招待されていた日本人女性

    木口が熱を出して寝こむ。看病のため、美津子は一人残る。ガンジス河へ行った人たちによると、死体を火葬場へ運ぶ日本人神父がいたという。神父だけど、ヒンズー教徒の服装をしていたという。きっと大津だと美津子は思った。

    翌日、沼田と出かける。ヴィーラーナスィの教会へ行ったが、大津などという人物はいないという。ただし、日本人が経営するクミコ・ハウスの存在を知る。沼田が電話をすると、大津はいかがわしいところに行くと会えるという。

    <九章 河>

    磯辺は生まれ変わりがいるという村を訪ねたが、本人(少女)には会えなかった。一家はヴィーラーナスィに引っ越したという。しかし、住所が分からない。

    翌日の(1984年)10月31日
    インディラ・ガンジー首相、暗殺。

    磯辺は前日に行った占師のところに行き、生まれ変わり少女の住所を聞いた。そこを訪ねたが、うまく会えない。しかし、老人にラジニという少女はいないかと行くと、ラ・ジ・ニとものあり気に答えた。

    沼田と美津子は、売春をしているところに。大津は来るが、いつ来るかは不明という。帰りがけ、声をかけられた。大津だった。ついに再会できた。彼はもう教会にはいない、ヒンズー教徒のアーシュラム(道場のようなところ)に拾われたという。しかし、改宗したわけではく、キリスト教の神父をしていると堪えた。

    沼田は九官鳥を買いたいという。

    <十章 大津の場合>

    大津と美津子はホテルの庭園で話をした。ヒンズー教徒は年をとると家を子にゆずり、放浪主業の旅に出る。サードゥーと呼ぶ。大津はそのサードゥーに拾ってもらえたという。ガンジス河で死のうとした貧しい人たちが行き倒れていると、その死体を運んだりする。

    磯辺はラジニに会えなかった。そんな名前の人はたくさんいる。やっぱり占い師にだまされた。分かってはいたが。酒を買い、飲んだくれながら歩く。

    <十一章 まことに彼は我々の病を負い>

    「私はヒンズー教徒として本能的にすべての宗教が多かれ少なかれ真実であると思う。すべての宗教は同じ神から発している。しかしどの宗教も不完全である。なぜならそれらは不完全な人間によって我々に伝えられてきたからだ」
    (マハートマ・ガンジー)

    <十二章 転生>

    沼田と美津子はバスで出かける。アメリカ人30人と乗り合わして会話する。
    沼田は小鳥屋で九官鳥を買い、それをサンクチュアリで解き放つ。
    2月の雪の日、沼田の三度目の手術が行われた。癒着した肋膜の出血で心電図の線が波うたなくなりかけた時、まるで身代わりのように九官鳥は死んでくれた。

    <十三章 彼は醜く威厳もなく>

    三條は、相変わらずガンジス河での撮影を狙っている。死体は絶対に撮ってはいけないと江波に言われている。しかし、まだ諦めない。この日も、死体運びをしていた大津に注意されるが、言い方が優しいのでなめてかかる。

    大津は、どんな宗教を信仰している人にも、玉ねぎは存在すると主張し、ヨーロッパのキリスト教会からは批判される。暗殺されたマハートマ・ガンジーも似たように宗教的寛容さがあり、それが反発された面があった。

    美津子は、結局は自分が大津のことが気になるのは何故だろうと考えた。大学時代に、単にからかうだけの相手だったのに、どうして最後まで存在が気になるのか。

    ガンジス河では、三條が襲われそうになっている。ガンジー暗殺で苛立っているヒンズー教徒たちが、彼の撮影行為に怒ったのであろう。そこに、汚い格好をした男がとめに入る。今度は彼が襲われる。大けがをする。救う美津子。救急車へ。

    帰国前、美津子は大津が危篤になっていることを知る。病院に入って、1時間後に急変したという。

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    2025年11月09日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    ネタバレ

    NHKアナウンサー鈴木奈穂子さんが中学生の時に、読書感想文の課題図書だったと聞いて気になって購入。
    人に優しくばかりして自分が犠牲に女性、好き勝手自由にして幸せを手に入れた男性。
    自分なら中学の時にこの本の感想は書ける気がしない。

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    2025年10月27日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    『海と毒薬』の続編です。

    NSFMさんのレビューがきっかけでこの本を知り、ヒボさんに応援されながらこの本を読みました。お二人ともありがとうございました。
    ···········································································

    戦後の日本の暗い部分にすっぽりと収まってひっそりと暮らす勝呂。戦犯として罪を償った後も医師を続けている彼は、フランス人のガストンから、ある老人の診察を頼まれます。癌の苦しみから老人を救うために勝呂が選択したことを、新聞記者の折戸は彼の過去と同様に追い詰めます。折戸の正義感は一種の暴力のようなものに感じることがありました。

    「断ろうと思えば、断れたんだが······」という勝呂の言葉から、昔のこととして開き直って、今も医師を続けていると受け止めた折戸。「人生を単純に割りきっている青年」に「人が誰かを救う」ことが本当にできるかどうかを伝えることは無理だと思う勝呂。

    正義を振りかざすことが、本当の正義なのか。罪を償って、更に罪を背負って生きていくことは赦されないことなのか。考えるうちに、時代と環境が起こしたあの事件が重くのしかかってきました。罪と罰について、熟考させられる読書になりました。

    この二人の他にも、ろくでもない学生達の考え方や、裏表の激しい大学教授の外面の良さ、その大学教授の娘のなげやりな行動などが多くのページで書かれていました。罰せられない正義ではない行動と、罰せられた正義ではない行動についての違いは、人の死を操ったことだと思いますが、何か釈然としないものを感じました。それと共に、正義を振りかざすだけの人は、他人からいつのまにか壁が作られていることにも気づかないということに、哀れみを感じました。

    この本のなかで唯一の救いのような人物は、フランス人のガストンでした。不自由な日本語で懸命に純粋な気持ちで人を助けようとします。誰かの笑顔が見られればそれでいいという生き方。最後まで勝呂にも寄り添った彼の「ふぁーい」という返事が、頭のなかに響きました。

    勝呂があの事件の後にやってきた医師としての行動は、正しいことではないこともありますが、患者にとっては救いになった部分もあったはずだと思いました。そんな彼の最後の行動は、彼自身の救いになったのかもしれませんが、悲しんでくれる人がいたことに気づいて踏みとどまってほしかったと思いました。(この考え方は読者の私の独りよがりな考え方ですが···。)

    読後、人を救うことと人を裁くことについては、どんな時代になっても考えていくべき問題だと思いました。遠藤周作が伝えたかったことは、考えて欲しいということだったのかもしれません。



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    2025年10月20日
  • 反逆(下)

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    ネタバレ

    有岡城陥落。荒木村重に関係した女性や幼子、使用人までを殺す信長。秀吉と光秀の心理的競り合いを楽しむ信長。反逆の囁きから解き放たれた光秀。生き残った村重と高山右近の人生。

    村重の妻だしの最期と村次と離縁され明智秀満と再婚したさとの最期が悲しい。高山右近の苦悩とか村重の人生など色々思わされる良い作品。

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    2025年10月10日
  • 反逆(上)

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    ネタバレ

    己の力に寸分の疑いを持たず神をも恐れぬ信長への憎しみ、恐れ、コンプレックス、嫉妬。荒木村重、明智光秀、羽柴秀吉の心に揺らめく反逆の光。

    上巻は荒木村重が中心。遠藤周作の歴史小説は雰囲気が良くて好き。信長の存在が不気味で怖い。

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    2025年10月09日
  • 海と毒薬

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    勝呂は一番欲しかった普通の生活を得ることが出来なかった。特に言及はないが戸田も所謂、普通の生活は出来なかったのではないかと思う。どういう状況であれ、後の歴史が証明してくれることを信じて不本意なことはしないように生きたい。
    看護長と上田の対比については幻想を持つこととニヒリズムに支配されることは現実を見てないという点で同じだと思う。何事も距離感が大事。

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    2025年10月21日
  • 新装版 海と毒薬

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    大きな環境の津波に流されてしまう人々を観させられた。
    いわゆる良くない言葉が使われているけど雰囲気が出て良いな。

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    2025年10月07日
  • 彼の生きかた

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    ネタバレ

    吃りのあるニホンザル研究者の話。
    主人公一平は吃りのため弱気な性格。昔から動物に心惹かれ、恩師の言葉もあり、動物の研究者となる。
    小学校からの幼馴染朋子に恋をするも、大学進学してから縁遠くなっていた。
    ニホンザル研究者として猿の餌付けに従事するも、ホテル建設問題や新しく来た研究所長との関係悪化により退所。
    その後別の山で研究を進めるも、以前の研究所でホテルを建設した加納専務の邪魔が入る。加納の秘書は朋子であった。
    朋子は専務の部下である夫がいたが、途中で夫が飛行機事故により死亡。朋子と一平、加納との三角関係や、汚れた人間の世界と自然に生きる猿たちの世界が描かれる。

    今回はキリストには触れられないが、途中長崎が出てくるあたり遠藤周作らしさを感じる。
    いわゆる小説らしい展開(幼馴染との再会や朋子の夫の事故死)はあまり好きではないが、まったく興味のないテーマではありながら楽しめた。

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    2025年09月18日
  • 海と毒薬

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    日本人の精神性を追求する」といった解説もあるけれど、罪の意識や良心は国籍や宗教に規定されるだろうか。むしろ先天的な資質の影響が、環境や教育など後天的な影響より大きいと感じる。時代や国境を越えて読み継がれているのも納得の一冊。

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    2025年09月14日
  • 深い河 新装版

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    前回の聖書読書会でおススメされたので、有名な「沈黙」とあわせてバリューブックスさんでポチった。

    実はわたしにとっては初の
    遠藤周作作品。
    聖書に興味を持つ前からいつか「沈黙」は読みたいと思っていたが、おススメしてくれた方が、
    「それなら是非こちらの方から」と教えてくれたので、「深い河」から読み始めた。

    小説の時代背景は1984年…なので、
    少し古い時代ではあるが、
    歴史ものというわけでもなくとっつきやすい。

    バブル経済が始まる少し前の、日本の景気が上向きで、かと言って戦争の生々しい記憶も留めている世代がいる頃。
    ちょうど今の時代から振り返ると、40年前、アジア太平洋戦争からは40年後の世界が舞台だ。

    それぞれの経験を、それぞれに生きてきた人々が、とあるインド旅行で出会い、それぞれの人生に自分なりの意味をつけ、自分なりの物語に昇華していく。

    その一人一人の物語も読み応えがあってとても引き込まれるのだが、聖書読書会からの縁ということもあり、読み終えて1番印象に残ったのはやはり、大津の、汎神論にも通じるような、
    「彼にとっての神の在り方」についてだった。

    汎神論は先日、國分功一郎さんの「はじめてのスピノザ」にも登場した。
    この時代でも、スピノザの時代ほどではなくともやはり異端的な考えなのかと改めて驚く。
    (ユダヤ人のスピノザ、やはり凄いな)

    ただやはり日本で生まれ、知らないうちに東洋的OSにどっぷり浸かっているわたしのような人間にとって、汎神論的な神の在り方は、聖書を読むのに良い補助線になるな、と思った。

    クリスチャンでもあった遠藤周作自身の苦悩が表れている箇所でもあり、
    まだこの1冊しか読んでいないのでわからないながらも、この大津にもあった一神教の神に対する気持ちの葛藤についてが小説を書く上でテーマのひとつになっているんだろう。

    そして、とても印象に残るラスト。
    物語から投げ出されてしまうようなあの一文に、一瞬戸惑う。
    だからこそのもの凄い余韻がある。

    正直、聖書やキリスト教の話なのに、
    なぜにインドのガンジス川?
    と、おススメされた時疑問に思ったんだが、本当に「沈黙」を読む前にこちらから読んでおいて良かったと思う。

    読んだことある人と、じっくり話したくなるような、本当に深みのある良い本でした。



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    2025年09月12日
  • イエスの生涯

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    遠藤周作が四つの福音書を引用し、解釈するイエス像。

    人智を超越した・圧倒的な希望の象徴・神の子イエスではなく、人間イエス・同伴者イエス。
    人間の苦しみに嘆き悲しみ、「愛」を持って寄り添おうとするイエスの姿が強調されている。
    人間が一番辛いのは貧しさや病気ではなく、貧しさや病気による孤独や絶望。
    人間に必要なのは「愛」であり、一時的な効果を産む「奇蹟」ではない…とイエスは苦悩する。
    奇蹟は起こらず人々に失望され、やがて十字架に向かう、無残なイエス。
    しかし、イエスはその死さえも理解していた、人間の苦しみを理解する為の「愛」によるものだった…。


    本来の全能の救世主のイメージからかけ離れた、人間イエス像。父性原理的な絶対的な存在を、信仰する事で救われる…という教義からすると、確かに異端的…。

    だが、辛い人生に寄り添って下さる母性的なイエス像や、「愛」の理解が辛い人生に於いて重要…という作者の解釈は、私にとって遠い場所にあったキリスト教をぐっと引き寄せてくれた。

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    2025年09月10日
  • 深い河 新装版

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    何年か前に買って、棚に眠っていた一冊。つまり、積読本。
    ここまで感想が書き辛くて、私にとって共感性も低い本だったとは思いもしなかった。書き出すほどに支離滅裂になりそうで、正直戸惑っている。それでも手探りしながら、書き終わりというゴールを目指そうとは思うけど。
    ちょうど、それぞれの目的を果たすため、インド行きを決行した登場人物たちみたいに。

    長年連れ添った妻を癌で亡くした磯辺。学生時代に弄んだ男の行方を追う美津子。動物とのふれあいを、唯一の拠り所とする沼田。「旧日本軍 史上最悪の作戦」と称されるインパール作戦で奇跡的に生還した木口。
    本書のテーマを一言で述べるとしたら、「信仰」になるだろう。登場人物たちは皆それぞれに孤独を抱え、それぞれ信仰の対象…というよりも、信念のようなものを胸に秘めている。
    そんな彼らがインド仏跡ツアーで巡り合い、行動を共にする。やがては全てを包み込む母なるガンジス河に各々の想いを託す…といったところだろうか。美津子だけは未遂に終わった感が強いけど。

    私自身「一人」でいることを好む傾向にあるが、ありがたいことに今は大切な人に囲まれていて、「独り」と思うことがない。彼らのように、やがて「独り」を痛感する時が来るのかもしれないが、今はまだその時ではないようだ。
    そもそも私が本書の購入に踏み切ったのは、「インド行き」の部分に共感性を感じたからだった。読後の今振り返ると、それが唯一の共感・共通点だったのかもしれない。

    かつて私もインドの仏跡ツアーに参加したことがあり、更にはご兄弟をインパール作戦で亡くされた方も、ツアーに参加されていた。
    道中での供養の折、肩を震わせて嗚咽を漏らされていた後ろ姿が、今も目に焼きついている。生き残ったことへの申し訳なさを感じていたであろう木口とその方が、読書中も何度か重なった。
    ガンジス河が本当に全てを包括してくれるのなら、彼らが背負ってきた孤独も丸ごと受け入れてほしい。

    「神とはあなたたちのように人間の外にあって、仰ぎみるものではないと思います。それは人間のなかにあって、しかも人間を包み、樹を包み、草花をも包む、あの大きな命です」(P 199)
    「さまざまな宗教があるが、それらはみな同一の地点に集り通ずる様々な道である。同じ目的地に到達する限り、我々がそれぞれ異なった道をたどろうと構わないではないか」(P 326)

    遠藤周作のことはよく存じ上げていないが、彼は大津(美津子が追い求めていた男)を通じて、クリスチャンだった彼自身の宗教観を喋らせている気がした。
    自分が強く信じているもの・大切に想うものがある限り、その人は「独り」ではない。磯辺の妻が生前話していた、「(大切なものの)命は決して消えない」というのも、間違っていないのかもしれない。
    (随分壮大なロードムービーになったけど)かのインド行きを経て、彼らはそれに気づけたのではないかと思う。

    それでも、本格的にこの深い河へ浸かりに行くのは、まだ早かった。
    今はただ、ここでぶちまけられた沢山の想いが私のもとに押し寄せている。

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    2025年08月30日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    マルグリットという架空の女の子がいることで、物語、市民らに共感でき、読みやすいと感じた。

    マリー・アントワネットは、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」の印象しかなかったから、首飾り事件などもっととんでもないことをしているとは驚きだった。
    そんな中で、可愛げがあるところがたまらない、王宮にはやはりロマンがある。そう思わされる一冊だった。
    トリアノン、ヴェルサイユ宮殿いきたくなる。
    実際、訪れてみると広すぎて、もう行きたくない^_^

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    2025年08月29日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

    Posted by ブクログ

    結末がわかっているが故に、読み進めるのが荷が重く感じる。

    マリー・アントワネットの美しさは、どこか価値観が王妃らしい、危ういところにあるのではないかと思う。

    たくさんの人の前で、祝福されて受け入れたれたのに、

    結末は、投獄されて処刑される運命は悲劇すぎるし、人間の恐ろしく、愚かなところが見え隠れしているのではないか。

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    2025年08月29日
  • 海と毒薬

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    ネタバレ

    再読

    戦争末期の異常な状態であっても心を失わなかった勝呂研究生が、
    初めての患者として気にかけていたおばはんの死によって、波に飲まれるように自分の意思を無くし、蔓延する毒の中に身を委ねた

    「おばはんも一種、お前の神みたいなものやったのかもしれんなあ」
    信仰は持たなかった勝呂だけど、心の拠り所にしていたものが崩れ落ちた瞬間に罪の意識を失い、足を踏み外してしまった

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    2026年08月29日
  • 深い河 新装版

    Posted by ブクログ

    理路整然としている戦後の資本主義社会と、混沌としていて陰を残したインド社会との対比。
    そんなインドにおいて来るもの全てを拒まないガンジス川だからこそ、そこには神の力が宿る。

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    2025年08月26日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    適当に手にした小説だったが、名作が過ぎる。そう思って後を見ると2008年第92刷発行て。初版が1972年とあるので、やはり長年人々の心を惹きつけてきたのかしら。

    セックスをするためだけにミツに近づき一晩で棄てた男。なんのことはない、どこにでもあるありふれた一幕だと思う。でも読んでて苦しい。それは相手がミツだからだろう。
    私は、純朴ゆえ生きるのが下手なミツが愛おしい。そして歯痒い。
    ミツのような人間が近くにいたのなら、あるいは私の人生感も変わっていたに違いない。

    当時の時代背景などもあるが、フェミニスト系の人には受け入れ難いかもしれない。

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    2025年08月11日