遠藤周作のレビュー一覧
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この小説に描かれているレベルの悲しみを、噛み締めることができるほどの経験が、まだできていない。
矢野教授のように、自分が偽善的だと反省することもなく、周りに偉そうにして生きている人間もいるし、折戸新聞記者のように、正義を振り回して人を不幸にする人もいて、世の中は正しいとか正しくないとかで決めつけられないのに、自分は同じような振る舞いをしていないか、考える。
今の時代は、新聞記事だけではなく、SNSで、正義感たっぷりに誹謗中傷している人がたくさんいる。
人が人を裁くということが、無くなればいいのだけれど、やっぱりそれが完全に無くなると社会が成り立たないのかな。
人生は悲しみに満ちているけど、最後 -
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ネタバレ尊敬する人が遠藤周作さんの本がお好きとのことで読んでみました。
戦争時の生体解剖に関わった人の話。
実際に起こった事件から、少し内容等変えて書かれているそうですが(解説で知りました)
本当に起こっているかのような表現に、ドキドキハラハラしながら読みました。
途中良心が痛みすぎてしんどくてなかなか読み進められないところがありましたが、勝呂さん、戸田さんそれぞれの心境がよく書かれていて、私は勝呂さんの方にとても感情移入しましたが、戸田さんのような人も中にはいるのだなぁと思いました。
勝呂さんもこのようなご経験があったから、冒頭のような生活をしていたのか…などと後でつながりました。
戦争時の心理状態 -
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ネタバレ【夫婦の一日】
夫婦揃ってキリスト教徒だが、妻が夫の身を案じるあまり占いに頼って言われたことを実行しようとする。
【授賞式の夜】
キリストの教えを守る模範的教徒(?)が実は教えを破り滅茶苦茶にしたいという願望を密かに持ち続け、よく暗示的な夢を見る程追い詰められている話。
【ある通夜】
敬虔なキリスト教徒が、見た目は自分と瓜二つだがダークな従兄弟に、心の底に眠る欲望を刺激されて葛藤する話。
【六十歳の男】
肉体の衰えと死に怯える男が、女子高生の生命力を目の前にして欲望を感じる。
【日本の聖女】
「沈黙」に通ずる、中世日本のキリスト教観の話。日本人は十字架を下ろすために解脱する。キリストは -
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表現に関して一読してみるとよい本として紹介されていた作品。私にとっては少し昔の作家さんの印象があって、読みにくい文章なのかなぁと構えていたものの、挑戦的なタイトルに興味を惹かれて読んでみた。そしたらびっくり。中の文というか語り表現が、内容以前に単純に楽しかった。まっすぐさっぱりアイロニックで、こんなに吹き出すように読む本だとは思わなかった。
男女の捉え方や、取り上げられているものが手紙、というのが時代を感じさせるものの、伝えたいことを伝える、という観点は現代も変わらない。大切なことは「読み手(相手)の身になって」ということ。
食わず嫌いせずに読んでよかった。 -
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『万葉と沙羅』という作品に登場した本作。
気になって手に取りました。
文章が柔らかく綺麗で読みやすかったです。
高校から短大へ、
青春時代を過ごす泰子を主人公に、
周囲の変化や人間関係を描いています。
個人的に印象に残っているのは、
冒頭の泰子が16最になった際に届いた亡き母からの手紙です。
戦争を経験し、自分の愛しい我が子に思いを伝える文面がとても。
そこから泰子はブレずに成長していくのも個人的には読んでいて安心しました。
恋をしたり思想をもったり、それぞれが変わっていく中、泰子の自分を見失わない姿が協調され、泰子を羨ましく思いました。
(私自身はブレブレの人生のため。苦笑)
そして -
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ネタバレ狐狸庵ものの先駆けなる、手紙の書き方を中心とした軽妙なエッセイ。死後発見された原稿ながら、昭和三十五年ごろの、新婚で幼い長男を抱えた遠藤周作が肺結核を患っていた頃のものらしい。
男性読者を想定したものでもあり、かなり時代は感じさせるし、すごく腑に落ちながら読んだわけではないが、「読み手の身になって」書け、という一貫した主張も時に語られる人間心理も普遍的なものである気がした。恋文書く側は男性編で、断る側は女性編と銘打たれているのが、昭和というより平安時代の古典常識だなと思った。森鴎外は『雁』で、「見られる」女から「見る」女への転換と挫折を描いたけれど、このエッセイでは一貫して女は受け身。その辺が -
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ネタバレまず著者自身が疑問を持って考え尽くしたのだろうと思った。迷い苦しむ弟子たちに対する親密なまなざしが、文面からでも伝わってくる。
キリスト教のことはよくわかっていない立場からの感想だが、取り繕わずに率直に、堅苦しくなく書かれていて非常に興味深く読んだ。
著者による福音書の読み解き方を知るにつれ、使徒たちの死を「書かない」という行為に、ルカの正直さと人間味を感じた。胸に浮かんでくるこの気持ちは何なのだろうか。書物の向こうに人間がいると気づいたような感覚。
死はきっとどんな人間にも呆気ない。たとえ神に一生を捧げた者でも、死には劇的なものなんてないのではないかと思う。
強い信仰を持ったことがないわたし -
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教養なく見た目もよくない森田ミツは、修道女に「一番好きなのはミッちゃんみたいな人。どういう人になりたいかと問われればミッちゃんのような人」と言わしめ、自分を棄てた吉岡に「聖女」と言わしめる。
他者に強く強く共感し、自分ごとのように他者の苦しみを受け止め、他者の苦しみを見過ごせないミツ子は、それが美しい行為であることに本人は全く気づいていない。だからこそ、その心の清らかさに周囲が圧倒される。
社会の角で生きて早逝したミツ子は、確かに「消すことのできぬ痕跡」を吉岡に残した。私自身もまた本書を通してミツ子と出会い、その痕跡を残されたような気がする。