遠藤周作のレビュー一覧
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ネタバレ「イエスの生涯」の続編のような本で、イエスの死から原始キリスト教団の成り立ちを使徒言行録を元にしつつ想像し書いている。原始キリスト教団についてはあまり本も読んでいないのではっきりとは言えないが、「イエスの生涯」よりはかなり現実的・学術的なラインに近づいている気がする。しかしここでもパウロやペトロ、ヤコブが神の沈黙のもとにみじめに死んだ、という想像に基づいた仮定が原始キリスト教団の試練として肝の部分になっており、またもやこのみじめさ、無力さという遠藤周作特有のテーマが大きく張り出してきている。
サウロは啓示を受ける前から律法に対し疑念があったはずで、だからこそステファノを激しく憎んだのではないか、という部分はなるほどと思った。パウロとエルサレムのユダヤ人信徒たち(ヘブライオイ?)の長く続く対立の様子の描写もおおよそ納得のいくものだった。もうちょっと勉強してからまた読みたいかも。 -
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遠藤周作の「こわい話」を集めた短編集。怖いと言ってもどストレートに幽霊が出てくるものはほとんどなく、好井まさおさん言うところの「ナニソレ」話が多いのだけど、サブタイトルにもなっている「恐怖の窓」をはじめ、めちゃくちゃ怖いと言うわけでもないけど記憶の隅に残ってしまうようなじっとりした話が多くて良かった。
あと、「戦中派」という人たちがいたことが衝撃だった。簡単に言えば「戦時中の方がよかった」という人たちだと思うんだけど、まあ確かにそういう人もいたかもな…と思わされた。「平和(仮)」の世の中では自分を保てなくなってた人、結構いるのでは。
私が子供の頃は、祖父をはじめ戦争に行った人たちが5-60代だったので、そのへんに昔人を殺した人や戦争で人が死ぬのを見ていた人がたくさんいたのだと思うと、すごい時代だったなと思う。 -
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ホラー小説と思って読むと少し物足りないかも。
遠藤周作の作品と思って読むべし。
じんわりと漂う陰鬱な雰囲気、よくないことが起こりそうな気配を描かせたら右に出るものなし。
細々とした情景描写ではなく、場面を伝える必要最低限の描写を淡々と入れてくる。
心理もつらつら描いてるわけでもないのに、なんとも言えない「やな気持ち」が心に滲んでくるのはなぜだろう。こう言うところが遠藤周作は本当に上手いと思う。
あと病院の使い方、描き方が本当に上手い。遠藤周作の病院は怖い。
「初年兵」、「鉛色の朝」はそう言った遠藤周作の良さがよく出ている。
「初年兵」の語り手の「ちょっと狡くて、でも悪いとまではいかない」人間を描くうまさ。
好きだった話は上の2つに加えて、「月光の男」。実際の事件をモチーフにしているだけあって、ぞくっとしたものがあった。 -
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個人的には、大河ドラマで田中哲司さんが演じていた荒木村重。
あの外見(いかついんだけどなんか優しそうで頼りない感じ?)がすごくこの小説の村重像に合っていて、想像が捗りました(笑)
本作は荒木村重という、最低の裏切りものとして名高い、めちゃくちゃ嫌われてる武将を主人公に据え、彼が抱く鬼上司信長への畏怖が不満となり、恨みに変わっていくところにドラマを見る作品です。
そつなく仕事をこなしながらも、その過程で信長にはげしい逆心を燃やす過激派の松永久秀や、乱世を嘆きながら信長に従うキリシタンの高山右近、人を従える身ながら信長とは対照的な本願寺の顕如上人と出会い、関わることで葛藤し、変わっていく過程が克明に描かれています。
遠藤周作さんの登場人物は、迷い方がうますぎてこっちまで不安になってくる。
戦況と心境が同時進行で刻々と変わっていくのが面白かったです。
作中で村重は責任感が強く、家臣への思いやりのある情の人として描かれています。
けれども、何かと流されやすい性格と優しさと詰めの甘さ。
それが原因で窮地に陥り、裏切りを覚悟するまでの自分との戦いが真に迫っています。
裏切り劇の中でも村重は葛藤していて、光秀との関係、信頼していた仲間である高山右近との関係、ともすれば信長と同じことをしようとするなど、彼が悪化する戦況のなかで着々と冷静さを失っていくのがよくわかります。
裏切りという決断をしたものの、戦闘中も城中の人質を殺せない、裏切るまでに関わった敵に同情するなど、危機的状態になっても村重の根底にある心の弱さ、優しさが垣間見えてしまって、なんだか切なかったです。 -
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ネタバレ面白かった。オーストリアから国の友好のために嫁入りした美少女マリー・アントワネットの、宮廷での人間らしい振る舞いは等身大で、ルイ15世の愛妾デュ・バリー夫人に義憤を募らせるところや、小太りでうだつの上がらない夫ルイ16世への親愛と失望や、人間としてあるあるな心の動きが描かれていて理解しやすかった。悪気はないけどわがままで楽天的でチャラくて、それでもコミュ力はあって華やかなこういうギャルいるよなぁ。決して悪人ではなくて、スエーデン人のフェルセンを弟のように保護してあげようとする女心とか、無邪気なところとか、良いところも悪いところもひっくるめた人間アントワネットをそのまま描いていて好きだ。一方裏では孤児マルグリットが娼婦に身を落としながら逞しく、アントワネットに復讐しようとしていたり、飢えている民衆から打倒王室の革命の声が聞こえてきていたり、旧体制や古い基督教道徳への反発が描かれている。その中には遠藤周作によくある、こんなにも民は飢えて苦しんでいるのに、神は沈黙しているという投げかけがある。遠藤周作的と言えば時代的に仕方ないのかもしれないけどねちっこさやいろんな不快な性質を「多くの女に見られるあの性質」的な感じで語るの若干イラっとくる。
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某所読書会課題図書:明治維新直前の長崎で、当時禁制の切支丹たちが体制の惨い仕打ちに耐え忍んでいく壮絶な物語だが、キクの生き方を中心に当時の農民の生活、都市に住む人々の暮らしなどをリアルに描いており、非常に楽しめた.プジジャン神父が隠れ切支丹を探す過程で当時の長崎の日常が克明に描写されており面白かった.切支丹への拷問は卑劣なもので読んでいてあまり気分は良くなかったが、それに耐えて信仰を守る信念は素晴らしいと感じた.役人たちの行動も容赦ないもので、特に伊藤清左衛門のそれは見苦しいものだったが、最後の場面での告白は小説として最高のエンディングだと思った.
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「海と毒薬」の30年後を描いた後日談
以下、公式のあらすじ
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生きることの悲しみ。我々の生に内在する本質的な悲しみに向けられる眼差し。
『海と毒薬』から二十年後に書かれた「後日譚」。
米兵捕虜の生体解剖事件で戦犯となった過去を持つ中年の開業医と、正義の旗印をかかげて彼を追いつめる若い新聞記者。表と裏のまったく違うエセ文化人や、無気力なぐうたら学生。そして、愛することしか知らない無類のお人好しガストン……華やかな大都会、東京新宿で人々は輪舞のようにからみ合う。
――人間の弱さと悲しみを見つめ、荒涼とした現代に優しく生きるとは何かを問う。
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勝呂の他に様々な登場人物の群像劇になっている
戦犯のその後を追っている「正義」を掲げる新聞記者
他人を助けるのに躊躇いのないガストン
権威的な大学教授と、その娘
単位を貰おうとする幼稚な学生
新宿で狡猾に生きる少女
結局、この人達は物語に登場してから最後まで本質は変わらない
どうして人体実験を行ったのかという新聞記者 折戸の追求に対して、勝呂の返答は「疲れてたからとしか、言いようがない」
他の戦犯達の「上司の命令」や「軍部に逆らえなかった」という言い訳とは違っているが
むしろ、だからこそそんな答えに納得できない
折戸は戦犯達が政治家になったり社長になってたりと、過去の行いに世間も目をつぶっているのが許せない
そんな正義感の持ち主
自らの正当性を疑わず、四角四面な正義は時として危うい
過去に実験に参加して人を殺めた勝呂
過去の行為を悔いているようにも思えるが、人の命に対してどんな思いがあるのか
困り果てて訪れる妊婦の堕胎手術を行っているときには何を思うのか
医師の役目は人を救う事なのだとしたら
自分の行いは一体何なのかという問い
読者からしてみれば、勝呂こそが高潔な人間に思えるが
世間としては、過去に人体実験に参加した医師としか思われない
他の登場人物達は如何にも俗物で、自己の事しか考えていないように見える
そんな中で際立つガストンの善良さ
そして、そんなガストンとイエス・キリストを重ね合わせて
ガストンから善性を認められる勝呂という構図
キリスト教の人達、怒るんじゃないかなぁ……
前にも書いたけど、善と悪の基準や倫理なんて社会の変化に伴って変わってくるもの
今は一部の国と地域でしか認められていない安楽死にしても
いずれ世界中で認められる時代が来る予感がする
勝呂が過去に行った事、患者の望みのまま堕胎し続けた事、末期の患者を楽にしてあげたこと
これらのいずれの行為も、時代の価値観により批難されるだけで、絶対的な悪ではないんだよなぁ
勝呂の最後の選択に関しては納得感もあるけど
今までそれを選ばなかったのは、そのギリギリに立っていたからなのだろうか?
むしろ、そんな選択をした状況が「疲れてたからとしか、言いようがない」ようにも思える
その前の、患者を楽にした行為にしてもそう
本当に、色々な意味で「疲れていた」んだろうな……