遠藤周作のレビュー一覧

  • イエスの生涯

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    愛されないもの悲しいもの、救われぬものが必要なものは「奇跡」ではなく「愛」であり「寄り添い」である。

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    2023年11月09日
  • 新装版 海と毒薬

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    ネタバレ

    あなたにとっての「良心」とはなにか。

    生体解剖がどれほどいけないことだったのか、私には分からない。
    ましてや戦時中で捕虜を生きたまま解剖するとは!という声が出版当時は聞こえてきそうだが、現代のわたしがこの本を読んだとしても、そのような感想は出てこなかった。
    現在でも病理解剖と言うのも行われているし。
    生きたまま行うのはうわ、っと思ったが麻酔はかけられていたし、描写であったようにどうせ捕虜として戦争で死ぬならば今後の生きる人のためになるならいいんではないか?っという様なことに納得してしまう自分が嫌になった。

    なにか、自分が正しいと心を律するために誤魔化すような能力だけ秀でてしまい本当に考えな

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    2023年10月25日
  • イエスの生涯

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    人間は神の愛よりも奇跡や効果ばかりを求める。著者の言葉を借りるなら、私たちのほとんどは卑怯で弱虫だ。私にもイエス様の哀しげな顔が見える気がした

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    2023年10月19日
  • 白い人・黄色い人

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    フランス人の主人公がナチのゲシュタポとなって旧友ジャックの拷問やマリー・テレーズの凌辱に絡んでいく。神のためと言いながら自己陶酔することを許さず、ひたすらに悪魔的な思想と行動、その後の疲労に支配される。
    斜視・すがめで幼い頃から「一生、女たちにもてないよ。お前は」と顔立ちの醜さを宣言された父の仕打ちも影響している。クリスチャン遠藤周作の芥川賞作品、読み応えあったが、圧倒的な暴力に清々しさはない。
    最後のマリー・テレーズの歌は何を伝えたかったのか。
    薔薇のはなは、若いうち
    つまねば
    しぼみ、色、あせる

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    2023年09月17日
  • 私にとって神とは

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    キリスト教とはこういうものという呪縛から解放され、自分の心と向き合わせてくれるお守りのような本の一つになりました。

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    2023年09月11日
  • 死海のほとり

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    友人が、本書を読んだことをきっかけにカトリックの洗礼を受けたという話を聞いて読んでみた。聖書学者である友人とイスラエルを旅する「私」の旅日記風の物語と、福音書をいくつかの人物の視点からリライトしたような物語が交互に出てくる構成になっている。巻末の解説が著者と親交の深かった井上神父によるものであり、これも必読と言えると思う。

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    2023年08月23日
  • 侍

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    策士で出世欲をにも駆られたエスパーニャ人宣教師。その宣教師と共にノベスパニアへ旅立つ四人の伊達藩使者たち。
    宣教師と日本人も旅立つ目的は全く異なるもの。

    現世の利益のみにだけしか宗教心を持たず、無表情で寡黙、狡猾とも表現される日本人。
    侍とは、日本人とはそういう存在である事が時に哀れに表現されつつも、例え袂を分かつ仲間でさえもその強さに魅了されてしまう。

    『沈黙』に続き手にした作品。
    宗教とは?信じるものとは?そもそも信じるものが現実世界に必要なのか?存在するのか?
    筆者の狙いは別としても、考えずにはいられない謎が浪漫を導く一冊。

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    2023年08月13日
  • 新装版 海と毒薬

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    ある町の怪しい医者、勝呂。彼が過去に関与した"捕虜に対する人体解剖"に関する人間の過去、命、倫理を問いかける。戦時中の命に関する考えの狂いや、人生観によって考えが変わる中で、神の概念の少ない日本人の特徴が描かれているのではないか。

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    2023年08月13日
  • 侍

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    慶長遣欧使節の一員としてローマにわたった支倉常長をモデルとした小説です。

    宣教師のベラスコは、現世を超越したものへの関心をもたない日本人にキリスト教の信仰にみちびこうとする強い情熱をもっていました。同時に彼は、布教のためには手段をえらばない、策略家でもありました。そんな彼のもくろみが功を奏して、陸前の港からノベスパニア(メキシコ)に向けて、使節が派遣されます。使節の役目を果たすことになったのは、召出衆と呼ばれる不遇の「侍」であった長谷倉六右衛門をはじめとする四人でした。長谷倉たちは、ベラスコに不信感をいだきながらも、海外との通商の窓を開くことを決意した藩主の親書をもって海をわたります。

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    2023年07月20日
  • 死海のほとり

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    小説家である「私」を中心とする現代の話と、イエスの物語が交互に語られ、著者自身の信仰の核心にあるものがえがき出されている作品です。

    「私」は、大学時代からの知人であり現在は聖書学者である戸田の案内で、イェルサレムの街をめぐります。戸田はイエスについての史実を説明し、イェルサレムで語られるさまざまな伝承が歴史的な裏づけをもたないことを「私」に話します。「私」は戸田に反論できないものの、彼自身の求めつづけてきたイエスのすがたを手放すことはありません。

    一方で「私」は、やはり昔の知人である「ねずみ」と呼ばれていたコバルスキの最期のようすを知ろうとします。戦争のさなか、ナチスの収容所に閉じ込められ

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    2023年07月20日
  • 生き上手 死に上手

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    ネタバレ

    遠藤周作という人の魅力を知れるエッセイ集。新聞や雑誌に寄稿したエッセイが収録されている。
    キリスト教徒だから聖書のことばとかがたくさん出ているのかと思っていたら、仏教も学んでいて、むしろお坊さんの名言のほうがたくさん載っている。

    お茶に、将棋にと多趣味で交友関係も広くて、通算して3年の辛い入院生活も「無駄ではなかった、役に立った」と言い切る。

    それでいて、押しつけがましい感じもなく、やさしさがにじみ出る文章。

    今読んでも時代を感じさせないやわらかな言葉が心にすっと届く、そんな一冊。

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    2023年07月17日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    パリの民衆たちの王政に対する不満の声は日増しに高まり、ついに革命が勃発します。マリー・アントワネットは、頼りにならない王の背中を押して、暴徒と化した民衆を押さえつけようとしますが、彼女たちはしだいに後退を余儀なくされ、幽閉されてしまいます。

    一方、革命軍もジロンド派とジャコバン派の対立をかかえており、マリーはどちらに転ぶともわからない不安のなかで、けっしてあきらめることなく、彼女を慕うスウェーデン人伯爵のフェルセンに協力を求めて再起の道をさぐります。しかし、革命を実現した民衆たちの高揚は鎮まることなく、やがてルイ16世は死刑台に引き出されることになります。以前は頼りにならなかった夫でしたが、

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    2023年07月16日
  • 留学

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    フランスに留学した人物を主人公とした作品三編で構成されています。

    第一章は、キリスト教文学について学ぶためにフランスにやってきた工藤という青年が主人公の短編です。彼は、日本でのキリスト教布教の希望を疑うことがなく、日本についての想像力を欠いた善意を示すフランスの敬虔な信者たちに、理解されることのない徒労を感じます。

    第二章は、17世紀にヨーロッパにわたり、日本での布教活動を託された荒木トマスという人物をめぐる短編です。著者は、信仰を捨て去ったことでキリスト教の立場においては顧みられることのなかったこの人物にスポット・ライトをあてて、日本に帰国した彼がいったいどのような悩みに直面したのかとい

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    2023年07月15日
  • 沈黙

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    登場人物の感情が文章からすごく伝わってくる作品だった。信仰というと自分にはスケールは大きいが、信じているものやこと、人に沈黙し続けられた時自分はどの登場人物にもなり得るような気がした。それはたぶん信じてる対象と信じてる深さ、信じ方からくるかもしれないなぁと。
    歴史を学ぶという意味でも良い本だった。

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    2025年11月12日
  • 新装版 海と毒薬

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    高校生の頃読んで何度も読み返している。戸田のターンが好き。良心の呵責とは?なんどもなんども考えさせられた。

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    2024年02月16日
  • フランスの街の夜 遠藤周作初期エッセイ

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    キリスト教徒の作者らしい考えを知る事ができて、面白かったです。タイトルの通り、フランスでの生活の事や戦後の日本の事も書いていて、貴重な体験を数多くした方だったのだなと思いました。

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    2023年05月24日
  • フランスの街の夜 遠藤周作初期エッセイ

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    「誰もが一度は味わってみたいとお思いになるフランスの魅力の一つを少し考えてみたいと思います。」から始まる表題のエッセイ。
    イメージとかけ離れたところは私の感じたことと共通する。決して「おしゃれ」とか、「きれい」なところばかりではないという…。

    彼から見た「今」も今は昔。

    それでも「読書について」の他、主に新聞に掲載されたエッセイは、さすがに読みやすく面白いと思いました。
    特に
    「文学碑不要論」
    「修学旅行」
    「大学入試の文章」
    「しゃべれぬ外国語」
    はフムフム、と。

    その他にも「良夫賢父の弁」はユーモアがありました。

    2023年は遠藤周作生誕100年とのことで、また他の本も読んでみよう

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    2023年05月16日
  • 人生には何ひとつ無駄なものはない

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    ネタバレ

    祖父の本棚からもらってきた本。
    共感できる言葉、勉強になる言葉、自分を戒めてくれる言葉などたくさんあった。
    全部挙げればキリがないので、いくつかだけ挙げたい。この一冊を何度も読み返したい。

    「我々の人生というものは、自分が選ぶ状況と、自分の意志とは関係なく与えられた状況がある」

    「我々の人生のどんな嫌な出来事や思い出すらも、ひとつとして無駄なものなどありはしない。無駄だったと思えるのは我々の勝手な判断なのであって、もし神というものがあるならば、神はその無駄とみえるものに、実は我々の人生のために役に立つ何かを隠しているのであり、それは無駄どころか、貴重なものを秘めている気がする」

    「我々の

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    2023年04月29日
  • フランスの街の夜 遠藤周作初期エッセイ

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    ネタバレ

    1950年代から1990年代に書かれたエッセイ。再掲もありますが多くは遠藤周作文学館の資料室で見つかったものだそう。遠藤周作が語る書籍、映画など当時の文化を感じられる。個人的に印象に残ったものをピックアップ。

    ※巻末の初出一覧から発表年を書き出しました。

    ・フランスの街の夜
    表題作。再掲。戦後が色濃く残る1951年。周囲の小国から入ってきた人たちの悲しみ、フランス人自体の悲しみが空気となり存在している。

    「誰もが一度は味わってみたいとお思いになるフランスの魅力」(P12)

    とありますが1951年発表のエッセイなので今の若い人にはもうそういった感情はないかもしれませんね。私もフランスは好

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    2023年04月21日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    文庫版解説で朝井まかて氏が、遠藤周作氏の別著作である「わたしが・棄てた・女」を読んだ時に「小説はここまで書くものなのか」と心を揺さぶられた、と印象を語っているが、著者の死後に発見されたという今作に対しても、当てる角度は異なれどまさしくその表現がふさわしい、と私は思った。
    私小説、とまでは言えないとしても、自身とその家族がモデルであることは自明であるこの「影に対して」には、文字通り愛憎入り混じったどうにも昇華しきれぬ澱のようなどろりとした感情が塗り込められている。
    できれば人に知られたくない、あるいは自らが思い起こしたくもないであろう過去やそれにまつわる自身の想い、それらを曝露することこそは、紛

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    2023年04月13日