遠藤周作のレビュー一覧

  • 反逆(上)

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    個人的には、大河ドラマで田中哲司さんが演じていた荒木村重。
    あの外見(いかついんだけどなんか優しそうで頼りない感じ?)がすごくこの小説の村重像に合っていて、想像が捗りました(笑)

    本作は荒木村重という、最低の裏切りものとして名高い、めちゃくちゃ嫌われてる武将を主人公に据え、彼が抱く鬼上司信長への畏怖が不満となり、恨みに変わっていくところにドラマを見る作品です。

    そつなく仕事をこなしながらも、その過程で信長にはげしい逆心を燃やす過激派の松永久秀や、乱世を嘆きながら信長に従うキリシタンの高山右近、人を従える身ながら信長とは対照的な本願寺の顕如上人と出会い、関わることで葛藤し、変わっていく過程が克明に描かれています。

    遠藤周作さんの登場人物は、迷い方がうますぎてこっちまで不安になってくる。
    戦況と心境が同時進行で刻々と変わっていくのが面白かったです。

    作中で村重は責任感が強く、家臣への思いやりのある情の人として描かれています。
    けれども、何かと流されやすい性格と優しさと詰めの甘さ。
    それが原因で窮地に陥り、裏切りを覚悟するまでの自分との戦いが真に迫っています。

    裏切り劇の中でも村重は葛藤していて、光秀との関係、信頼していた仲間である高山右近との関係、ともすれば信長と同じことをしようとするなど、彼が悪化する戦況のなかで着々と冷静さを失っていくのがよくわかります。

    裏切りという決断をしたものの、戦闘中も城中の人質を殺せない、裏切るまでに関わった敵に同情するなど、危機的状態になっても村重の根底にある心の弱さ、優しさが垣間見えてしまって、なんだか切なかったです。

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    2025年04月01日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    ネタバレ

    面白かった。オーストリアから国の友好のために嫁入りした美少女マリー・アントワネットの、宮廷での人間らしい振る舞いは等身大で、ルイ15世の愛妾デュ・バリー夫人に義憤を募らせるところや、小太りでうだつの上がらない夫ルイ16世への親愛と失望や、人間としてあるあるな心の動きが描かれていて理解しやすかった。悪気はないけどわがままで楽天的でチャラくて、それでもコミュ力はあって華やかなこういうギャルいるよなぁ。決して悪人ではなくて、スエーデン人のフェルセンを弟のように保護してあげようとする女心とか、無邪気なところとか、良いところも悪いところもひっくるめた人間アントワネットをそのまま描いていて好きだ。一方裏では孤児マルグリットが娼婦に身を落としながら逞しく、アントワネットに復讐しようとしていたり、飢えている民衆から打倒王室の革命の声が聞こえてきていたり、旧体制や古い基督教道徳への反発が描かれている。その中には遠藤周作によくある、こんなにも民は飢えて苦しんでいるのに、神は沈黙しているという投げかけがある。遠藤周作的と言えば時代的に仕方ないのかもしれないけどねちっこさやいろんな不快な性質を「多くの女に見られるあの性質」的な感じで語るの若干イラっとくる。

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    2025年03月21日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    奥川サチ子と幸田修平が育っていく過程を追いながら、戦時中の庶民の生活を丹念に記述することで、当時の空気をまざまざと感じさせる作品だ.アウシュビッツのエピソードも交えて、人間の残酷さを表現するとともに、神の存在を思索する人間の葛藤も示している.キリスト教の教えと戦争行為の矛盾に悩む修平.その中で特攻隊に志願して戦死する彼の思いをサチ子が遠くから紡いでいく過程が何とも言えないむなしさを覚えた.

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    2025年03月17日
  • 砂の城

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    初めての遠藤周作さんの作品。
    昭和の時代を生きた若い女と男の話。
    同じ時間を共有してもいづれはそれぞれの道を歩んでいく。昭和の時代背景を書きながらも自身もどう生きていくのかを考えさせられる作品でした。

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    2025年03月08日
  • 侍

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    読んでいて、日本の迫害者への怒りとか、キリスト教の偉い方々への不満などを感じましたが、「それでも信仰するの?」という感想から「それでも信仰するよね!」という気持ちが少し出てきました。

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    2025年03月06日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    某所読書会課題図書:明治維新直前の長崎で、当時禁制の切支丹たちが体制の惨い仕打ちに耐え忍んでいく壮絶な物語だが、キクの生き方を中心に当時の農民の生活、都市に住む人々の暮らしなどをリアルに描いており、非常に楽しめた.プジジャン神父が隠れ切支丹を探す過程で当時の長崎の日常が克明に描写されており面白かった.切支丹への拷問は卑劣なもので読んでいてあまり気分は良くなかったが、それに耐えて信仰を守る信念は素晴らしいと感じた.役人たちの行動も容赦ないもので、特に伊藤清左衛門のそれは見苦しいものだったが、最後の場面での告白は小説として最高のエンディングだと思った.

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    2025年02月17日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    「海と毒薬」の30年後を描いた後日談

    以下、公式のあらすじ
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    生きることの悲しみ。我々の生に内在する本質的な悲しみに向けられる眼差し。
    『海と毒薬』から二十年後に書かれた「後日譚」。

    米兵捕虜の生体解剖事件で戦犯となった過去を持つ中年の開業医と、正義の旗印をかかげて彼を追いつめる若い新聞記者。表と裏のまったく違うエセ文化人や、無気力なぐうたら学生。そして、愛することしか知らない無類のお人好しガストン……華やかな大都会、東京新宿で人々は輪舞のようにからみ合う。
    ――人間の弱さと悲しみを見つめ、荒涼とした現代に優しく生きるとは何かを問う。
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    勝呂の他に様々な登場人物の群像劇になっている
    戦犯のその後を追っている「正義」を掲げる新聞記者
    他人を助けるのに躊躇いのないガストン
    権威的な大学教授と、その娘
    単位を貰おうとする幼稚な学生
    新宿で狡猾に生きる少女

    結局、この人達は物語に登場してから最後まで本質は変わらない


    どうして人体実験を行ったのかという新聞記者 折戸の追求に対して、勝呂の返答は「疲れてたからとしか、言いようがない」
    他の戦犯達の「上司の命令」や「軍部に逆らえなかった」という言い訳とは違っているが
    むしろ、だからこそそんな答えに納得できない


    折戸は戦犯達が政治家になったり社長になってたりと、過去の行いに世間も目をつぶっているのが許せない
    そんな正義感の持ち主

    自らの正当性を疑わず、四角四面な正義は時として危うい


    過去に実験に参加して人を殺めた勝呂
    過去の行為を悔いているようにも思えるが、人の命に対してどんな思いがあるのか
    困り果てて訪れる妊婦の堕胎手術を行っているときには何を思うのか

    医師の役目は人を救う事なのだとしたら
    自分の行いは一体何なのかという問い

    読者からしてみれば、勝呂こそが高潔な人間に思えるが
    世間としては、過去に人体実験に参加した医師としか思われない

    他の登場人物達は如何にも俗物で、自己の事しか考えていないように見える
    そんな中で際立つガストンの善良さ

    そして、そんなガストンとイエス・キリストを重ね合わせて
    ガストンから善性を認められる勝呂という構図

    キリスト教の人達、怒るんじゃないかなぁ……


    前にも書いたけど、善と悪の基準や倫理なんて社会の変化に伴って変わってくるもの
    今は一部の国と地域でしか認められていない安楽死にしても
    いずれ世界中で認められる時代が来る予感がする

    勝呂が過去に行った事、患者の望みのまま堕胎し続けた事、末期の患者を楽にしてあげたこと
    これらのいずれの行為も、時代の価値観により批難されるだけで、絶対的な悪ではないんだよなぁ


    勝呂の最後の選択に関しては納得感もあるけど
    今までそれを選ばなかったのは、そのギリギリに立っていたからなのだろうか?
    むしろ、そんな選択をした状況が「疲れてたからとしか、言いようがない」ようにも思える
    その前の、患者を楽にした行為にしてもそう
    本当に、色々な意味で「疲れていた」んだろうな……

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    2025年02月12日
  • イエスの生涯

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    あとがきにもあるが、神としてのイエスではなく、人間としてのイエスの生涯。
    人間は結局、現実的な効果を求める。それをイエスは「汝等は徴と奇蹟を見ざれば信ぜず」と言う。

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    2024年12月19日
  • イエスの生涯

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    聖書ではないイエスの生涯を辿る本。聖書のマタイ伝とかも読んだが本書は小説なので読みやすい。
    ユダヤ教の分派から生じた異端児にして革命を期待され果たせずに民衆から見放されるという流れ。大工の息子だし絵画にあるような華奢な人では無かったとは思う。奇跡については怪しいが「皇帝のモノは皇帝に…」とか相手の狙いを見越した上でいなす知力の高さは本書を読んでも頷ける。
    ユダの裏切りが有名だが他の弟子達の真の裏切りについても言及されており自分も本書の説明の方が理に適っている気がした。

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    2024年11月30日
  • 砂の城

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    遠藤周作の本って大体こういうオチだよな、という予想通りのラストだったけど、良かったです。賢い生き方も、かわいそうな人生も、本人が幸せならいい。全て美しいと感じさせてくれます。

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    2024年11月25日
  • 海と毒薬

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    戦禍の白い巨塔 やはり残る作品には文学となる良さが確実にあるのだと思う。戦禍という極めて厳しい状況下において、病院で繰り広げられる人間模様と人間の探究および医学の進歩への貢献。これは日本特有のものではなく、どの国にも、いやこれより酷い状況の場合も確実にあったと思う。モラルは今では考えられないほど低かったし、人権なんてなかなか重んじられていない時代でもあったわけだし。過去の惨劇があって、今がある、というわけだ。

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    2026年03月14日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    40年近くも古い本だけど、
    マリーアントワネットの生涯について興味があり、
    何故罪に問われ殺されたのか、
    その時代の王室と市民の乖離した感覚など、面白かった。
    少しは(どの程度か分からないけど)脚色され、物語としている部分があるので、全てが真実ではないけど。
    上巻なので、まだ半分。

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    2024年11月22日
  • 反逆(下)

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    いろいろと評価はあろうが、冷酷で、かつ残忍、自らが神になろうとした織田信長。もはや人ではなかったのかもしれない。
    対して、荒木村重、明智光秀、高山右近らの武将をみると、戦いに関し、人間的な悲しみ、弱さ、悲哀を感じていた人間らしい武将であった。
    こんな視点で書かれた正に名作と言える。

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    2024年11月19日
  • アラベスケ 遠藤周作初期エッセイ

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    遠藤周作さんの本久しぶりに読んだけれど、文章の情景がすぐに広がってとても美しい。こんなだったのかな? 

    とても笑ってしまうほどの面白いミスタードーナツのCMと珈琲のCMまで思い出した。
    立て続けに読んでいた時と全く読んでいない今とを比べるためにも又読んでみよう。

    堀辰雄さんとの関係知らなかった事ばかりだ。

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    2024年11月13日
  • アラベスケ 遠藤周作初期エッセイ

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    若い頃に書かれたエッセイ
    堀辰雄に影響を受けたこと
    そして彼の作品を貫く
    宗教と無意識 無意識による罪
    モーリヤックのテレーズ デスケルウ
    彼はフランス留学中にテレーズを
    追って旅をする

    結核で留学を切り上げ
    治療を続けて回復するが
    この病がさらに作品に影響を与えたと
    思わせる
    読む進める毎に遠藤作品の
    奥深さを考えさせられる

    また読み返してみようか
    海と毒薬 沈黙


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    2024年11月06日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    今更になって読む遠藤周作。
    マリー・アントワネットと対の立場となる少女を据えたのが面白い。ただ彼女が読者を映すわけではなく、性格はそれほど良くないし恨みがましい。

    知らないエピソードが多く、興味深くてどんどん読み進めることができた。
    歴史の教科書でしか知らない人物に血が通っていくのは何度経験しても良いものだ。

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    2024年11月02日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    この小説に描かれているレベルの悲しみを、噛み締めることができるほどの経験が、まだできていない。
    矢野教授のように、自分が偽善的だと反省することもなく、周りに偉そうにして生きている人間もいるし、折戸新聞記者のように、正義を振り回して人を不幸にする人もいて、世の中は正しいとか正しくないとかで決めつけられないのに、自分は同じような振る舞いをしていないか、考える。
    今の時代は、新聞記事だけではなく、SNSで、正義感たっぷりに誹謗中傷している人がたくさんいる。
    人が人を裁くということが、無くなればいいのだけれど、やっぱりそれが完全に無くなると社会が成り立たないのかな。
    人生は悲しみに満ちているけど、最後まで生き抜かないといけないし、それには隣にいてくれる伴走者の存在が大きな助けになる。遠藤作品自体が、救いの役目も果たしているように感じる。

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    2024年10月29日
  • 死海のほとり

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    宗教というものを信じていない分、共感出来ない部分は多かったがそれを抜きにしても面白かった。

    誰もが持つ弱さや狡さとしっかりと向きあい
    咀嚼していく。

    そんな生き方をしていきたいものです。

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    2024年10月15日
  • P+D BOOKS おバカさん

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    フランスからやってきたナポレオンの子孫ガストン.そのバカと見まごう無私の行動が引き起こす顛末.彼は何をしに日本に来たのか謎を残しつつその姿を消した.キリスト教信者らしい遠藤周作のイエスの一つのありかたのようだ.

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    2024年10月04日
  • 夫婦の一日

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    ネタバレ

    【夫婦の一日】
    夫婦揃ってキリスト教徒だが、妻が夫の身を案じるあまり占いに頼って言われたことを実行しようとする。

    【授賞式の夜】
    キリストの教えを守る模範的教徒(?)が実は教えを破り滅茶苦茶にしたいという願望を密かに持ち続け、よく暗示的な夢を見る程追い詰められている話。

    【ある通夜】
    敬虔なキリスト教徒が、見た目は自分と瓜二つだがダークな従兄弟に、心の底に眠る欲望を刺激されて葛藤する話。

    【六十歳の男】
    肉体の衰えと死に怯える男が、女子高生の生命力を目の前にして欲望を感じる。

    【日本の聖女】
    「沈黙」に通ずる、中世日本のキリスト教観の話。日本人は十字架を下ろすために解脱する。キリストは十字架を背負いながら生きていくことをよしとする。

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    2024年10月03日