【感想・ネタバレ】新装版 海と毒薬のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年11月01日

個々人の内なる価値判断基準、神の存在、または良心とも言われるものから行動をおこすこと。このアンチテーゼをひたすら描写したのだと思う。
あくまで組織内部の人間関係や、異性関係やなどを前提とした行動とはどのようなものかを描写したのだと思う。
なぜ日本が太平洋戦争を引き起こし、敗戦したのか、ということにも...続きを読む重ね合わせられているようだ。

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Posted by ブクログ 2023年03月01日

私の中の戸田を見つめ直すことができた。
周りのお咎めがなければどんな残酷なこともしでかしていたかもしれない。
私達日本人は良心、善悪を世間に委ねている。しかし自分の心の拠り所は自分の核として存在していなければいけないし、柔軟であってはいけない。
流される勝呂の弱さ、自己を肯定するために歪んだ解釈をし...続きを読むてしまう戸田の受動的態度をもしかしたら生活の中でしてしまっているのかもしれない。そこで人間らしい優しさや思いやりを忘れ、誰かを取り返しのつかないほど傷つけていたのだと思うと辛くて。

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Posted by ブクログ 2022年10月07日

大岡昇平の野火を読んだ時にも思ったけど、自分がそういう場所に立たされたときに自分ならどうするんだろうが常に付き纏う。そして解説で「日本人とはいかなる人間か」っていう問いには、安易ではあるけど「同調圧力」「派閥」ってものに弱いんだなと感じてしまった。
上田ノブという看護婦さん、25歳で嫁き遅れと感じて...続きを読むいて、この男でいいから子供がほしいと結婚する描写…戦後70年経っているのにこういう焦燥感みたいなものが今でも残る日本、やはり同調圧力みたいなものは相当根深いのでは?って思う。
そこからの上田さんの人生はたしかに哀しみが深いものだ…お腹の中で子供が死んで、自分がこれから子供を産めないってなったら、放っておいてもいつか殺される捕虜の生体実験を手伝うことに心が揺り動かされるかと言われるとそんなことないだろうな。

このお話に出てくる人たちは戦争によって深く傷つけてられているか、そもそも人間的感情を持たないことに苦悩している人たちで、すでに生きる意味を見失った上で、さらに人間としての尊厳を失くす行為をしていっている。そんな心情のまま極限の状態でそれを断る避けるということは出来ないだろうし、それをやってしまってなお良心の呵責を感じるのであれば、むしろとても清廉な人だし、生きづらいだろうなと思ってしまった。

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Posted by ブクログ 2022年08月25日

読後、あぁなんかすごい小説を読んでしまった…と感嘆の声が漏れた。話の構成もとてもよく、深い海に引きずり込まれる感覚で読んだ。
戦争末期、空襲でたくさん人が死んでゆく日常の、その時代を生きぬいた日本人にしかわからない殺伐とした空気。だが、この小説の問いらしきものには現代人の私も深く考えさせられる。

...続きを読む「世間や社会の罰に対する恐れはある。だが、自分の良心に対する恐れに苦しめられたことはあったのか?」

「ぼくらの中には、世間や社会の罰をしか知らぬ不気味な心がひそんでいるのではなかろうか?」

「この人達も結局、俺と同じやな。やがて罰せられる日が来ても、彼等の恐怖は世間や社会の罰にたいしてだけだ。自分の良心にたいしてではないのだ」

いや、私は自分の良心だって痛むに決まっている!と胸を張って言えるのは、心擦り切れることなく、平和な日常を送れているからなのだろうか。
勝呂と戸田は一見対照的に見えるが、大きなものに流されるままにゆく2人は同じなのだろう。それが日本人の心の弱さなのだと訴えかけられているような小説でした。
私もその環境にいれば、同調圧力に屈してしまうんではないだろうか?それとも日本人と対照的に描かれたドイツ人妻ヒルダのように、世間や社会ではなく、神が見ているのだと、自分の中の神(良心)を指針に行動できるのだろうか。


「医者かて聖人やないぜ。出世もしたい。教授にもなりたいんや。新しい方法を実験するのに猿や犬ばかり使っておられんよ。そういう世界をお前、もう少しハッキリ眺めてみいや」

「患者を殺すなんて厳粛なことやないよ。医者の世界は昔からそんなものや。それで進歩したんやろ。それに今は街でもごろごろ空襲で死んでいくから誰ももう人が死ぬぐらい驚かんのや。おばはんなぞ、空襲でなくなるより、病院で殺された方が意味があるやないか」「どんな意味があるとや」「当然の話しや。空襲で死んでも、おはばんはせいぜい那珂川に骨を投げ込まれるだけやろ。だがオペで殺されるなら、ほんまに医学の先柱や。おばはんもやがては沢山の両肺空洞患者を救う路を拓くと思えばもって瞑すべしやないか。」「本当にお前は強いなぁ」「阿保臭。こんな時代にほかの生き方があるかい」

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Posted by ブクログ 2022年08月02日

「ドクターM  ポイズン」を読んだ後、急に読みたくなる。
多分、高校生くらいの時に一度読んでいると思うのだけれど、その時の記憶は無い。
1986年の映画は観ていない。

1945年、米軍捕虜に対して九州にある医大で実際に行われた生体実験が題材。

戦後に、新しい土地に引っ越してきたサラリーマンの語り...続きを読むで始まる。
彼は結核を患っており、「気胸」の治療を行う必要があった。
近所に一軒だけある「勝呂(すぐろ)」という医院。
無口で風変わりな医師は、気胸の腕前は確か。
しかし、ひょんなことから彼が、太平洋戦争末期の、捕虜への生体実験に関わっていたと知る。

この物語は、事実をもとにしたフィクションなので、実際に事件に関わった人たちの心情がどうだったかは分からない。
医療モノではあるが、神を持たない日本人の倫理観、人間の本質を描くことが最重要だったと思われる。

捕虜の扱いに対する倫理。
医療倫理。
人としての良心。
・・・のなかった人々の過ち。

戦時中、次々と空襲で人の命が失われ、病院であろうとその他の場所であろうと、人は毎日死んでいく、という時代の特殊性があった。
空襲で多くの日本人の命を奪ったアメリカ兵で、銃殺が決まっていたのだから解剖しても構わないのでは無いかという(へ)理屈。
アメリカ軍捕虜に対する実験によって、結核の手術の基準ができ、患者を救う指針ができるという、大義名分。

しかし、解剖の執刀教授はその前に医療ミスによる死亡事故を起こしており、医局長の選挙に向けての自身の点数稼ぎのため、軍に媚を売るための捕虜の解剖であった。

教授の傘下にあった医学生(当時)の勝呂は、助手を務めないかと誘われる。
ここで彼は、その「実験」の是非をよく考えずに、長いものに巻かれるように参加してしまったのである。

この作品では、その後の裁判の模様などは描かれない。
代わりに、裁かれる人々の、来し方や事件に至るまでの心情が手記のような形で描かれる。

解説では、「神を持たない日本人」の、「良心のありか」について書かれているとある。
この「神」は、人の行いを厳しく見張る、規律を持った神である。
日本人にも神はいるが、ほぼ、自分達に都合のいい「ご利益」をもたらしてくれるものであり、お布施さえしておけば人間の行動に何ら口出しして来るものではないという認識だ。

勝呂医院に通うサラリーマンは、当時の裁判の記録などを調べる。
気胸に通うことに恐怖を覚えるが、勝呂医師の腕は良い。
私が一番驚いたのは、事件の後様々な経験を経て、流れ着いた街で医院を開いている勝呂二郎の言葉である。
捕虜の生体解剖という事件に対して、後悔をしていることは想像に難くない。
取り返しのつかないことをしてしまったという思いも事実だろう。
しかし、勝呂は
「仕方がないからねえ・・・これからも同じような境遇に置かれたら僕はやはり、アレをやってしまうかもしれない・・・アレをねえ・・・」
と言うのだ。
どんな経験をしても、人間の本質というものは、こうも変わらないものなのかと思った。
生体解剖の場面で、勝呂は怖気付き、何も手伝わずに後ろで見ていただけだった。
参加を断ることもできたのに、ズルズルと付き合った挙句「自分の人生をメチャにしてしまった」と言った。
自分のしたことへの罪の意識よりも、まず自分の人生の心配が重要なのである。
一見、勝呂とは正反対のタイプに見える同僚の戸田の、「やがて罰せられる日が来ても、恐怖は世間や社会の罰に対してだけで、自分の良心に対してではないのだ」という考えと何ら変わることはない。
しかも、戸田のような自覚もない。

現代の小説やドラマではこういう場合、己の立場が悪くなろうとも、倫理に照らして間違っているものとは断固として戦う、というのが主人公だろう。
しかし、遠藤氏の作品には、そういう英雄はあまり出てこない。
人間は、正義を貫き通せない弱い存在として描かれることも多い。

他の作家の小説には、人間的な弱さを、むしろ愛おしいものとして見つめている場合もある。
この小説もそうなのだろうか?
いや、「仕方ない」と言わせつつも、それを肯定はしていない。
転んでしまう弱い人間に対しての、やや厳しい目(やや・・・である)、そして微かな嫌悪感も感じられる。
宗教を持つ、遠藤氏ならではの見方かもしれない。
だからと言って厳しく批判することもできないのは、自分もそうであろう、という自覚があるからにしての、同族嫌悪なのかもしれない。
読者としての立ち位置も同じである。

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ちなみに、同じ事件を題材とした作品の原作で、
『しかたなかったと言うてはいかんのです』
というドラマが去年放送された。
事件の後、死刑を宣告された主人公の妻が、減刑を求めて奔走する姿が描かれる。

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Posted by ブクログ 2024年01月01日

・小説として面白い。文が上手い。惹きこまれる。長すぎずに、短く読めるのが良い
・解説者によると「日本人の良心はどこにあるのか」というのが遠藤周作の根源的テーマらしい。確かに、そのようなテーマを感じさせつつ、堅苦しすぎないストーリーがよかった。普通の人間が、どのような過程でおぞましい行為に手を染めるの...続きを読むかが理解できる。
 ・相当強い倫理観や信条でもない限り、人は組織のルールや価値観に沿って動く。所属する組織のあk痴漢や手0マが邪悪であれば、誰でも法を犯す可能性がある

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Posted by ブクログ 2023年12月10日

倫理についての捉え方、命の価値や正義は、その時代に応じて大きく変わる。
10年程前のアメリカでは、半数以上の人が、日本への原爆投下は正しかったと言った。だが、今では7割の人が、原爆投下は不必要であったと答えた。
テロは神風と呼ばれ、特攻はテロと同列に語られることもでてきた。
私たちは戦争のない国に生...続きを読むまれ、道徳というものを学んだから、この九大の事件を酷い話だと感じるが、例えば今、自国で戦争が始まったとして、敵国の捕虜が人体実験に使われようとしていると知ったとき、そのことに対し声を上げることは出来るのだろうか。同胞の仇を前にして、倫理を貫けるか。自分が勝呂の立場に立ったとき、恐れることは、人命を軽々しく扱うことではなく、そのことが露見して激しく糾弾されることではないだろうか。
また、時代が変わったときに読みたい一冊である。

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Posted by ブクログ 2023年10月25日

あなたにとっての「良心」とはなにか。

生体解剖がどれほどいけないことだったのか、私には分からない。
ましてや戦時中で捕虜を生きたまま解剖するとは!という声が出版当時は聞こえてきそうだが、現代のわたしがこの本を読んだとしても、そのような感想は出てこなかった。
現在でも病理解剖と言うのも行われているし...続きを読む
生きたまま行うのはうわ、っと思ったが麻酔はかけられていたし、描写であったようにどうせ捕虜として戦争で死ぬならば今後の生きる人のためになるならいいんではないか?っという様なことに納得してしまう自分が嫌になった。

なにか、自分が正しいと心を律するために誤魔化すような能力だけ秀でてしまい本当に考えなければいけないことを考えれていないと思った。
誰かに意見を言われたら「確かにそうだね」とすぐに意見を流されてしまい「良心」が変わってしまうような日本は今そんな世の中になっている気がする。

誤ったニュースが報道されたとしても自分で真意を調べずにすぐに自分の意見を主張する。悪いと思ったら徹底的に批判する。
その後、本当のニュースが流れたとしても前回の自分の意見を撤回することなくまた意見を変えて流される。
そういう自分にならないように意識していかなければならない。

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Posted by ブクログ 2023年08月13日

ある町の怪しい医者、勝呂。彼が過去に関与した"捕虜に対する人体解剖"に関する人間の過去、命、倫理を問いかける。戦時中の命に関する考えの狂いや、人生観によって考えが変わる中で、神の概念の少ない日本人の特徴が描かれているのではないか。

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Posted by ブクログ 2024年02月16日

高校生の頃読んで何度も読み返している。戸田のターンが好き。良心の呵責とは?なんどもなんども考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2022年12月12日

一線を超えることで、人として非難される行為をした事にはなるが、当人は人として、何か変わるというのか。勝呂は人間らしく、戸田は非人間なのか。良心とはなんなのか。機会さえ与えられれば、誰もが非情な人間という烙印を押されるのではないか。

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Posted by ブクログ 2022年10月19日

タイトルとあらすじから、おどろおどろしい物という先入観から、読み終わると意外とそうでも無かったなと先ず感じた。

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Posted by ブクログ 2022年10月09日

面白かった。扱う題材が、ひどく重い。淡々と登場人物の過去や、そう思うに至った経緯みたいなのを描写することで、余計に悲しさや虚しさみたいなものが強調されていると思った。また、緊迫感のあるシーンでは非常にドキドキとした。これも淡白な文章で起こった出来事を次々と描写していった結果だろうと思う。それぞれが何...続きを読むを思っているのか、三人称がとても活かされた作品だと思った。始まり方からもそう思わせる。

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Posted by ブクログ 2022年09月04日

実際の事件をもとにした作品。神がいない日本で、何が罪で、罪とどう向き合うのか、人の葛藤が描かれている。

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Posted by ブクログ 2022年09月01日

物語として読みやすく面白いかと言われたから賛否分かれると思うが、戦後の医療の現場としてあってはならない実事件を題材にしているという点で、文学的価値が非常に高い作品だと捉える。

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Posted by ブクログ 2022年08月25日

久しぶりに再読。
戦時中という時代背景で、どんな人でも死があまりにも身近にあった。
戦争では殺される前に殺す、そんな経験を経た人たちが日常を送っている中で、捕虜の人体実験という殺人を止められなかったことで壊れてしまった一人の人間のはなし。

登場人物たちは主人公と対照的に、罪の意識が欠如したキャラク...続きを読むターとして描かれている。しかし彼ら自体はありふれた、どこにでもいる人物たちのように感じた。彼らのその後はわからないが、彼らも主人公のように、心のどこかでは一生悔いて生きていると思う。

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Posted by ブクログ 2022年08月18日

再読。昔学生の頃 感想文を書いたとき「戦時下では人の感覚が狂うのだと恐ろしく感じた」とか浅い感想書いた覚えがある。

これは「戦時である」「実際にあった事件である」という背景は実は単なる舞台設定で、日本人の本質を問う普遍的な物語だ。

罰は怖いが罪の意識は希薄。罪の大小を問わなければ戸田のような精神...続きを読む性の人間は案外よくいる。
畏怖する神を心に持たない日本人は「良心」を指針として生きる必要があるだろうが、容易なことではない。「世間」が指針の人間がいかに多いことか。自戒も込めて。

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Posted by ブクログ 2022年08月07日

一言で言えば、日本版「罪と罰」なのかもしれない。

初期の場面で‘私’が様々な人間と関わるが、その人間達の過去の話はスティーブンキング小説のような日常の中に潜むリアルな狂気を感じさせる(狂気、恐怖、畏怖、似合う言葉がみつからない)

アメリカ捕虜の人体実験に関わる主な人間のバックグラウンドと内心の描...続きを読む写が秀逸で、まさに罪と罰のようななんとも言えないなんとなく黒く粘っこいような作品だと感じた。

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Posted by ブクログ 2024年01月23日

運命とは黒い海であり、自分を破片のように押し流すもの。そして人間の意志や良心を麻痺させてしまうような状況を毒薬と名づけたのだろう

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Posted by ブクログ 2023年10月02日

戦時中の医療現場について。どうせ死ぬなら空襲で死ぬのも医学の発展のために死ぬのも同じである、いやむしろ後世の人々のために貢献している、という考え方は、当事者ではなく遠いところから聞くとなんとなく正しく思えてしまうのが怖い。そして、その状況を医学界の人間目線で描いていき、やはり罪の意識を持ち続けていく...続きを読むのをみて、倫理観について考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2023年09月23日

人体実験の生命倫理(罪)というテーマは考えさせられるものがありました。

しかし構図というか、ストーリーの構造がなんとも冗長なものに感じてしまいました。

「深い川」を読んだ時も思いましたが、
登場人物それぞれのストーリーが別々に動いたあと、うまく本筋にまとめる事が出来ていないように感じました。

...続きを読むテンポがあまり良く無いので
読みやすいはずなのに読みにくいといった感じ。

絶望的な気怠さはつげ義春を連想しました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年06月15日

戦争犯罪に対し心の迷いを抱く勝呂にフォーカスを当てている物語だが、描写がとてもリアルで目を背けたくなる部分も多々あった。しかし、心情描写を強く読み取れる箇所が少なく、物語としての起伏は少ない印象だった。

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Posted by ブクログ 2023年06月14日

太平洋戦争中の、捕虜の生体解剖というテーマ設定に惹かれて手に取りました。戦争の残酷な面を明らかにする作品かと思っていたのですが、それよりも「人間の良心」の在り方について語られる作品でした。

解説の夏川草介氏も書いていましたが、「キリスト教という生活規範」がない日本において、確固たる良心/善悪の判断...続きを読む基準がない日本人のモラルのあり様を問う作品です。

例えば、生体解剖に誘われた外科医勝呂(すぐろ)が、それに参加するべきか、断るべきか懊悩する場面では、悩みつつも彼は結果的に参加してしまうのですが、ここでは「参加してしまった」ことが問題なのではなく、「明確な決断もつかないまま、なんとなく」参加したことが致命的なのである。

一方で、何となく「難解だ」という印象がある点については、「生体解剖という『絶対的な悪』に対してすら、明確な判断基準を持ちえない日本人」という構図があって初めて成立する作品であることが原因と解説では分析されています。「戦争中に捕らえた兵隊を生体解剖する」という行為がどれほどの悪であるのかが分からなくなっている(=戦争による様々な「死」のなかに埋没している)と指摘されています。

医療小説や戦争小説としてまとめて紹介してよい本かどうか迷う作品ですが、倫理問題(良心の在り方)を考える作品としては、解説部分も含めて読んで欲しいと思います。

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Posted by ブクログ 2023年06月08日

誰しもが環境や境遇によって、避けられない運命に出会ってしまうことがある。
決断までの期間が短いほど周りの力に流されてしまうことが多いような気がする

勝呂は本能ではどうしたらいいのか迷う中でも、人道的にやってはいけないことだし、参加した先に自分の人生が壊れてしまうような予感を持っていた。

勝呂は時...続きを読むが経っても、その時のことを後悔しつつ、でもどんな選択が正しかったのか悩み続けているように感じた

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Posted by ブクログ 2023年05月13日

なぜ人は罪をおかすのか?
どのように悪徳を悪徳と認識するのか?
罪悪感はどこから来るのか?

日本は絶対的な宗教の浸透もなく、倫理観が非常に曖昧なのかな?
本編が語っている内容は理解できたが、作者がその背後に書きたい心理が何なのかはまだ読み解けなかった。

小心の【普通】の青年が恐るべき罪に手を染め...続きを読むる背景には、時代背景はもちろんだが、自分自身の無力感や、思考の放棄、堕落を律するものが無くなる、崩れることなのかとおもった。

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Posted by ブクログ 2023年05月02日

太平洋戦争の時、実際に九州の大学で起こったアメリカ捕虜への生体解剖…そんなショッキングな事件を題材にした小説。

「どうせ死ぬんだから、今後の医療のための死ならむしろ有益」という派の医師達や戸田。一方「人を殺す医療はあっていいものか」的な生体実験に懐疑で戸惑いがあった勝呂。

今だと誰しも正論でおか...続きを読むしいと抗議できるはずだけど、当時のような戦時下だと正常な判断はできるものなのか…?私も麻痺して、やるしかない、と思ってたかもしれない…そう思ったら自分にこわくなった

てかそもそもこの事件もフィクションだ、と思いたかった。海水は代用血液として使えるのか、肺は片方取っても死なないのか、生きた捕虜を使った人体実験…

まずそんなことが本当に日本人によって起こされてた事実が一番ショック…

数年くらい時間置いて再読する

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Posted by ブクログ 2023年01月12日

米国人捕虜の生体解剖をするまでの医師たちの心境や戦況化の日本の病院についてが冷淡かつ簡潔に描かれていた。咀嚼するまで時間がかかる本だった。

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Posted by ブクログ 2022年09月09日

ラストは突然終わる感じ。

戦時中の大きな流れや心が破滅に向かう抗えない状態をタイトルの海に例えた感じなのかな。

アメリカ捕虜を人体実験に参加した勝呂は
現在もその罪の狭間で揺れている状態。
けど、本人も今またやれと言われたらアレをやってしまうだろうと。

人体実験といえばナチスドイツのイメージだ...続きを読むったから
日本人のこれは信じられなかった。
まさか生きたまま…あんなことこんなこと…

本当に罪と断絶できるのかなー。
もうその時の環境に置かれないと、誰も何も答えは出せないよ。


その場にいたら、私もねー…
なんで参加したの?断れなかったの?
っていうのは今だから感じれる正常な感情。

続編の『悲しみの歌』も読もうかな。




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Posted by ブクログ 2022年06月25日

昔の作品で読みにくいのかなと思ったけど、読みやすかった。手術シーンがとても生々しく描かれていて世界に引き込まれた。海と毒薬というタイトルはどういう意味なのだろう。自分なりに考えてみた。海は手術中に床に血液が固まらないように流している水。毒薬は、勝呂先生が、後方で全員を見渡していたときの「よく解剖がで...続きを読むきるな…」と、まるで他の人たちが毒をもっているようだ…そんな感じかな。あまり、わかりやすく表現できない…
数年後、また再読したい。

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Posted by ブクログ 2022年05月19日

読みやすい文体ではなかった。
しかしながら、日本人とは、という問いを張り巡らせた作品であることは理解できるし、また高校時代に読書感想文の課題として読んだときとはまた違う読み方ができたのではないかと思っている。
戦争に関する小説はまだ経験が浅いので、またいろいろ物色していきたい。

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