遠藤周作のレビュー一覧
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☆☆☆ 2022年7月 ☆☆☆
P287 原始キリスト教のみじかい歴史を調べる時、私がぶつかるのは、いかにそれを否定しようと試みても否定できぬイエスのふしぎさと、ふしぎなイエスの存在である。なぜこんな無力だった男が皆から忘れ去られなかったのか。なぜこんな犬のように殺された男が人々の信仰の対象となり、人々の生き方を変えることができたのか。
『イエスの生涯』『キリストの誕生』の2冊で筆者が読者に語りたいのはまさにこの点である。『キリストの誕生』では弱虫で臆病だった弟子たちが原始キリスト教の創始者となり、キリスト教が広まっていく頃の事が語られる。
ペテロやポーロ(パウロ)といった弟子たちの物語。 -
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☆☆☆ 2022年7月 ☆☆☆
「彼の容貌を私たちは見たこともない。彼の声を私たちは聞いたこともない」
彼とは、約2000年前に生まれ人々の苦しみを背負って十字架にかけられたイエスの事である。キリシタンである遠藤周作氏が「イエスの生涯」というテーマで、イエスとはどんな人物だったのかに迫る。
この本を読んで感じるのは、イエスとは純粋な優しさを持った人だったのだろうという事。人々から誤解され、弟子たちから裏切られても尚、人を恨まず「彼らをお許しください」と乞うたイエス。
臆病だった弟子たちはなぜ強靭な信仰者となれたのか、それは続編の『キリストの誕生』へと続く。 -
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この本は、遠藤周作が宗教について語ったさまざまな作品から、人間とか愛だとかのテーマ別に集めた本である。したがって、遠藤周作の本を何冊か読んだことのある他人にとっては、その本で書かれていた深い言葉の意味を再認識できるのでとても良い。遠藤周作の本を読んだことのない人が読んでも、これは遠藤周作の本に興味を持つ手引になる。
いずれにしても遠藤周作の名言を再認識することができるのと、なぜ人は宗教信仰をするのかという本音がわかってくる。ベルナノスというフランスの作家が「信仰というものは、99%の疑いと1%の希望だ」と書いているそうである。遠藤周作にとってキリスト教は、「脱ぎ捨てようとしたが代わりに着る -
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「海と毒薬」から20年の時間を経た1977年の
「悲しみの歌」新人医師だった勝呂医師はそれと同様に年齢を重ねている。
戦時中 米兵捕虜の生体解剖事件に関与し、戦犯となり罪を償った後、新宿でひっそりと開業していた。彼は過去の罪に縛られて虚無の中生きていた。
一人の若き新聞記者が彼の過去を掘り下げ、正義の記事として発表する。
そのような時、貧困の末期癌患者を受け入れ手当を続け、患者の安楽死の希望を受け入れる。
勝呂医師の背負い続ける罪の意識に対して、当時の自堕落な若者、社会的地位に固執する男、それに反発する娘、平然と生きている様子がおりこまれる。
そして、作者のイエスのイメージと思われるフランス