遠藤周作のレビュー一覧
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人間失格にちょっと似てるかな?
話の内容は太平洋戦争中、実際にあった九州の大学病院での米国人捕虜の生態解剖事件が元になっていて、その手術に関わった二人の研修医と看護師の話。
人が死ぬのが当たり前の時代だからなのか、やっぱり倫理観が欠如していて、そういう環境だと人間はそうなってしまうのかと人間の環境適用力をある意味恐ろしく感じた。それとは別に神のいない日本人としての倫理観の欠如も書かれていて、作者はキリシタンなので、ある意味西洋人的な視線で日本人が書かれていることが看護師の話の部分で特に感じた。
特に共感できたのは研修医の戸田の話で、戸田は自分の犯した罪に対する罰には恐れを感じるけど、罪悪感は感じたことはないとたびたび話しておりそんな自分自身を嫌っている様子が書かれているが、確かに自分自身にもそういう部分があるので戸田の心情は共感して読めた。ただ、海と毒薬を呼んで罪と罰とは結局なんなのかよりわからなくなった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1部の孫の世代のお話で、また違う重さがある内容だった。
戦争へと向かっていくにつれ、キリスト教そして信者に対する風当たりが強くなる描写は、1部を彷彿とさせるものがあり、胸が痛かった。
しかし、2部はそれよりも、せまりくるすさまじい戦争といかに向き合うかに焦点が当てられていた。サチ子は、途中本文中にもあったが、ミツと似ているところがあり、自分がどう生きるか。誰を愛するかを自分で決めたい強い女性であった。最後まで修平を思い続け、祈りを捧げ続ける姿には心を打たれた。また、文学を愛し、サチ子にも次第に愛情を感じはじめる修平の精神的な成長にも、心を揺さぶられた。それとともに、あらゆる思いがある中で特攻隊として志願した彼の思いは、確かに誰かが実際に感じた思いなのだと、考えていると少し辛くなってしまった。
皆が無慈悲な戦争と向き合い、その中でも救いを求め、辛さや苦しみにすら必ず意味があるのだと自分に言い聞かせる描写は、苦しいものがあった。
絶対に美化できない歴史だけど、その中でも色んな人の信念があったことは、今と何も変わらないもので、美しいものだと感じた。
ちょっと一旦、遠藤周作さんの作品はおなかいっぱいなのでお休みする…笑
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Posted by ブクログ
遠藤周作は読んだことなかったけど、"死に上手"という言葉が目につき、手にした一冊だった。
死に様こそ、その人の生き方の集大成な気がして、死に上手って何だろうと思って。
結果読んでみて、理解はできたものの深い共感までは得られなくて、まだまだ死からはほど遠い場所にいるんだなぁと感じた。
一方、深く頷きながら読んだのは"生き上手"の部分。(生きる、死ぬを切り分けて書かれてるわけではないし、何なら切り分けられないものだと思うけど、あえて切り分けた)
その中から特に印象に残った感じたことを記したいと思う。
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呼びかけても、そこには沈黙しかないこと。
でもそれはメッセージの伝え方の違いで
言葉にならない声にならないメッセージがあったかもしれない。それを聞き取れなかっただけかもしれない。沈黙を聴く。沈黙の中にある言葉。
もしくは沈黙というメッセージ。
『神も仏もあるものか』
神に祈り、必ず好転すると信じて信じて、結局裏切られて、出た失意の言葉。
しかし、そこから本当の信仰は始まると著者は言う。
再生するその過程は何より尊いもので、そこには例えば奇跡体験があり、運命や巡り合わせなどのスピリチュアル体験があり、"神や仏"を一番身近に感じられるのが再生の過程。
ゆえに再生は信仰になり得る。
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"このみち、ひとすじ"という極めて日本人らしい生き方に対して異論を唱える。ひとつのチャンネルだけじゃなく複数のチャンネルを持ち、好奇心を持つことで、得られる可能性、悦びと幸せ。
おそらく、そうなのだろう。
みんなそう言うし、本当にそうだと思う。
自分はそこまで好奇心旺盛ではない。
というか、自分が好きなことや好きなものが、本当に好きすぎて、他に目を向けられない。両手が塞がってる。
本当はもっと余裕を持って、あれこれやってみたいけど、広く浅く的な人生は出来そうにない。
出来そうにないけど、ひとつ胸に刻んでおいても損はないだろうし、いつか好奇心を試される選択を迫られたときに思い出せたら、と思う。
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『恋と愛の違い』
一篇だけ毛色の違うものがあって、それがこの話。
なんだか他の話とは違って口調がくだけてて、照れ隠しのようでかわいらしさすら感じた。
愛とは忍耐。据える気力。
恋は誰にでもできても、愛は簡単ではない。
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『一人の人間の個性を創り出すためにそこに働いたあまたの縁がある』
個性的、独創的といわれる要素にも必ず源流があり、あまたの縁や出会いがある。今の自分は自分の力だけで切り拓いたと驕ることなく、周囲の環境ゆえにあることを忘れずにいたい。
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随所に見られた芸術論に感銘を受けた。
模倣することは良いことだが、そこから自らで噛み砕いたオリジナル作品を生むことで完成されるのが本当の芸術。(だから日本はいまだに芸術の輸出国になれない)
動十分心 動七分身
余白にこそ風趣を感じさせるのが日本の美学の縦糸。
人を驚かすものは一時的に驚愕を与えても、長い鑑賞には耐えず、それは芸術とはいえない。
実力の七、八分で賞をもらい、なお余裕のある者こそ長距離競争に耐えられるプロになる。
もはや芸術論を超えて、人生論のように思う。
やっぱり余白、あそびの部分って大事だよなぁ。
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毎年8月になると終戦○年という特集が組まれる。今回はその流れでこちらの本を手に取った。
太平洋戦争中に実際にあった米軍捕虜解剖事件をもとに執筆された本作は、戦争という非常事態が人間の倫理観に与える影響を教えてくれる。
医療の発展という一見正しそうな理由をつけて米軍捕虜の解剖を正当化する登場人物たちの描写はとても生々しい。
敵と味方、彼らと我々の関係で支配された戦時中の感覚では、米国人などもはや人間ではなかったのかもしれない。戦争が人々の視野をどれだけ狭めるか、心の貧しさにつながるかを改めて考えることができた。
とはいえ、人間の残酷さというのは戦争中でなくても常に社会に露出している。極端な排外主義や新自由主義などによって社会的弱者は追い詰められている。
戦争中だからではなく、そもそも人間という存在に大層な倫理観など存在しないのかもしれない。
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一部のキクの従姉妹、ミツの孫にあたるサチ子のお話。サチ子の幼なじみの修平との話と長崎の教会にいたあとポーランドに戻ったコルベ神父の話とが並行して描かれています。
五百ページを超える長編に様々な登場人物の関わりが細やかに描かれていて、非常に読みやすい文章ではあるものの、苦しくて途中から涙が止まらなくて休み休み読み終えました。
ひとたび戦争が始まると殺すことを命じられる苦しさ。
見下ろす港がキラキラとして綺麗で、美しい教会、坂道、緑多い山々。
あんな悲惨なことがこの美しい長崎で暮らした普通の人たちに起こったということがあまりにも苦しく切ないです。