遠藤周作のレビュー一覧

  • 新装版 海と毒薬

    Posted by ブクログ

    「やがて罰せられる日が来ても、彼等の恐怖は世間や社会の罰にたいしてだけだ。自分の良心にたいしてではないのだ。」

    人間の生態解剖という極限での心理を描きながらも、このセリフは、自分自身の日常の行動1つ1つへの善悪判断基準が本当に正しいかどうかを考えさせるセリフだった。

    看護婦が抱く、院長の妻ヒルダへの感情も生々しく、自分の心のえぐみをほじくり返されるようだった。

    0
    2026年05月02日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    毎年8月になると終戦○年という特集が組まれる。今回はその流れでこちらの本を手に取った。

    太平洋戦争中に実際にあった米軍捕虜解剖事件をもとに執筆された本作は、戦争という非常事態が人間の倫理観に与える影響を教えてくれる。

    医療の発展という一見正しそうな理由をつけて米軍捕虜の解剖を正当化する登場人物たちの描写はとても生々しい。

    敵と味方、彼らと我々の関係で支配された戦時中の感覚では、米国人などもはや人間ではなかったのかもしれない。戦争が人々の視野をどれだけ狭めるか、心の貧しさにつながるかを改めて考えることができた。

    とはいえ、人間の残酷さというのは戦争中でなくても常に社会に露出している。極端な排外主義や新自由主義などによって社会的弱者は追い詰められている。
    戦争中だからではなく、そもそも人間という存在に大層な倫理観など存在しないのかもしれない。

    0
    2026年04月23日
  • 砂の城

    Posted by ブクログ

    読み終わってなんとも言えない気持ち…
    なんで星野なんかに、とか、なんでそんな選択肢を、とかやるせない気持ちに何度も襲われる。
    何よりも背表紙にあの解説はダメ。絶対。

    0
    2026年04月21日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    モデルとなった事件は数年前にWikipediaで読んでおり、その際は流し読みする感覚で「こんな事があったんだ〜」くらいの軽い気持ちでした。
    本書を読み終わり、改めて事件の概要を読んでやるせない気持ちで胸がぐっと締め付けられました。
    クリスチャンである遠藤周作さんが書かれたためか、登場人物のヒルダの言動や彼女に対する周りの感情がひどく印象的でした。

    0
    2026年04月13日
  • 新装版 海と毒薬

    Posted by ブクログ

    著者はキリスト教徒。本書は〈神を持たない日本人〉をテーマの一つとして書かれたものらしいが、人は神がいれば(宗教を持っていれば)道を踏み外さない…わけではない。
    人を救うために医者になった者が「生体実験はゆくゆくは大勢を救う」と解釈して人を殺すように、どれだけ残忍な行為でも自分の都合の良いように解釈して正当化できてしまうという人間の恐ろしさを炙り出している。
    戦争がはじまれば人はいまより簡単に人を殺す、という認識を共有するために読むべき本である。

    0
    2026年04月09日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

    Posted by ブクログ

    一部のキクの従姉妹、ミツの孫にあたるサチ子のお話。サチ子の幼なじみの修平との話と長崎の教会にいたあとポーランドに戻ったコルベ神父の話とが並行して描かれています。

    五百ページを超える長編に様々な登場人物の関わりが細やかに描かれていて、非常に読みやすい文章ではあるものの、苦しくて途中から涙が止まらなくて休み休み読み終えました。

    ひとたび戦争が始まると殺すことを命じられる苦しさ。
    見下ろす港がキラキラとして綺麗で、美しい教会、坂道、緑多い山々。
    あんな悲惨なことがこの美しい長崎で暮らした普通の人たちに起こったということがあまりにも苦しく切ないです。

    0
    2026年04月07日
  • 海と毒薬

    Posted by ブクログ

    実際に会った事件をモチーフにしているとのことで衝撃。
    人間の生体実験なんて昔の遠い国の一部の人間性を失った集団が行なっていたというイメージだった。
    でもそこに関わっていたのは、普通に出世欲に塗れたり、普通に自分の境遇に鬱屈してたり、普通に良心があったりする、どこにでもいる人間だったのかもしれないと思うとやるせ無い気持ちになった。

    0
    2026年04月05日
  • 沈黙

    Posted by ブクログ

    ー自分の信仰する宗教に対しての肯定と否定ー
    救いを求めて神に祈りますが、神は答えません。
    惨たらしく信徒たちが殉教していく描写は見るに耐えません。
    「沈黙」も神の沈黙なのだと思いました。

    救いを求めて、祈る。
    なぜ救ってくれないのだと神に問う。
    神はいるのか?
    というよりも、無駄かもしれないし、救ってくれないかもしれないけど、祈りを重ねて自分の内なる神に気付くのか?
    とも思いました。



    0
    2026年09月02日
  • さらば、夏の光よ

    Posted by ブクログ

    鈍くてモテない気の優しい青年の恋。何度も繰り返される普遍的な設定ではあるけれど、遠藤周作にかかればやっぱり光る。人間はか弱い小鳥じゃない。

    0
    2026年03月19日
  • 女の一生 一部・キクの場合

    Posted by ブクログ

    表紙のキクが可愛くて手に取ったので、こういうお話とは全く知らずに読んで、序盤では後にこんな展開になるとは思いもしていなかったのでものすごくショッキングだった。
    あまりにも凄惨で苦しかった。
    それでも読み進められずにはいられずすぐに読み終えました。
    長崎を訪れた際、大浦天主堂で綺麗と感動して、こんな歴史があったなんて知らなかった自分を恥じるような気持ちになりました。
    信仰とは、愛とはなんなんだろうとなんとも言えない気持ちになりました。

    0
    2026年03月12日
  • 侍

    Posted by ブクログ

    長谷倉という侍と、ベラスコという司祭、二人の視点で描かれる物語。
    『沈黙』と似た雰囲気があり、本書も事実に基づいているらしく、こんな辛い時代があったのかと驚かされる。

    キリスト教にも宗派の違いがあり、そこに政治も絡んでくる。
    ベラスコは征服欲の強さから教えを押し付けるような行為をしてしまい、その傲慢さを自覚しながらも正当化していた。
    しかし終盤になると、自分の行いを見つめ直すことになる。
    そこでキリストや神への信仰が本物であると感じた。

    暗く、報われない現実。
    そんな世界にこそキリストは寄り添ってくれる存在なのだという。
    華やかな生活の中ではなく、見すぼらしい苦しみの中に、それぞれの人の中にキリストはいるのだそうだ。

    0
    2026年03月11日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    時代だとは思いますが、女性の立ち場が無い。
    現東京藝術大学を卒業した母が、ヴァイオリンばかり練習していて家庭のことを顧みないと思ってる夫、
    主人公が入院したときに、子どもをちゃんと面倒みてないから入院したんでしょ?と思い込む伯母、
    病院のベッド脇で左指だけでもバイオリンの練習をする母見て、怒りだす主人公。
    主人公の退院後、まったくバイオリンを弾かなくなった母を見て、夫は満足そうにしていたが、結局両親は離婚。精神を病む母。
    満州から帰国後も、バイオリン指導が厳しすぎて仕事をやめされられた母。

    誰も救われない。

    父親が酷い。主人公を父の元か、母の元、どちらに住むか選ばせるようでいて、半強制的。
    そのくせ選ばせるように確認するから、どちらかを選べばどちらかを捨てると考えてしまうように思う。
    子どもにそんな残酷な選択をさせてはいけないように思う。

    成長した主人公も、妻に対して着物を売ればいいとか言うなんて酷い。

    でも、ここまで書いておいて、遠藤周作の未発表作品を読めて嬉しいとも思う。

    0
    2026年03月11日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ずっと濁ってて良かった。
    こんな事言うべきではないんだろうけど、現代のsnsでもこんな感じなんだろうなぁ。
    変な正義感持った奴の声が大きすぎる。

    0
    2026年03月10日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    2026年共通テスト国語で出題されていたことをきっかけに興味を持ち、手に取った短編集。

    芸術の追求のために、我が子の手を払いのけることができた意志の強い女性——それが主人公の母だった。
    戦前の昭和には珍しく、家庭に馴染めず、離婚という道を選んだ母。
    幼い頃に植えつけられた寂しさ、慕情、後悔。
    そうした生々しい傷や感情を、主人公は無理に忘れ去ろうとするのではなく、向き合い、人生の傍らに置いたまま生きていこうとする。その姿が静かに描かれていたように思う。

    私が特に驚いたのは、母が遺した言葉である。
    「海の砂浜は歩きにくい。歩きにくいけれど、うしろをふりかえれば、自分の足あとが一つ一つ残っている。あなたも決して、(歩きやすいけれど足あとが残らない)アスファルトの道など歩くような、つまらぬ人生を送らないでください。」

    親とは、子に少しでも楽な人生を歩ませたいと願うものだと、私は当然のように思っていた。
    しかしこの母は違う。
    辛くとも、厳しくとも、生きている実感を得られる道を行けと言い切ってしまう。その強さこそが、子の心に烈しい爪痕を残した理由なのだろう、と腑に落ちた。

    もう一つ印象に残ったのは、主人公が恩師に宛てた手紙の一節である。
    「我々は、他人の人生の上にどのような痕跡を残し、どのような方向を知らずに与えているのか、気がつきませぬ。」
    自分の人生は、決して自分だけのものではない。
    そう突きつけるような、私にとっては思わず立ち止まらせる力のある一文だった。

    遠藤周作の作品は、テスト対策として名前だけは知っていても、実際に読んだことはなかった。
    この一冊をきっかけに、他の作品にも手を伸ばしてみたいと思う。この母の影を色濃く映した作品が、他にもあるらしい。

    0
    2026年02月15日
  • 死海のほとり

    Posted by ブクログ

    主人公が自身の信仰への疑念や葛藤に区切りをつけるため、イスラエルへ巡礼の旅に出る。一方、イエスを巡る群像達の物語が描かれ、これらが交互に織りなし、信仰の本質とは何んであるかが問われていく。
    それにしても「ねずみ」の存在は印象的だ。主人公が学寮に住んでいた頃に出会った臆病でずる賢いゆえに軽蔑されていたユダヤ系ポーランド人のねずみは、収容所で飢餓の刑に処せられる。そのなんとも哀れな姿は、群像達の描写に現れる哀れな十字架を背負うイエスの姿と折り重なる。このねずみとイエス交差に著者の信仰のあり方を感じる。

    0
    2026年02月14日
  • 侍

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    解説で、この物語の元となる歴史背景が書かれている。江戸初期に支倉という人物が使節団の一員として、メキシコを経て、ローマまで渡ったそうだ。
    物語の侍はこの人物で、ベラスコ神父も支倉の使節団に関わった神父がモデルとなる。

    17世紀初期に、実際に使節団としてアメリカ大陸からヨーロッパまで渡った日本人がいたことに驚いた。
    また、物語は旅の苦労や日本で起こるキリスト教迫害をドラマチックに描いている。激しい争いなどは起こらないが、使命(仕事)を命懸けで果たす姿は、私の目を離さなかった。
    それ故に、時代の運で使命が無意味になってしまう事が、無念という言葉で表せられないほど虚しい。

    0
    2026年02月14日
  • 死について考える

    Posted by ブクログ

    死にざまは美しくなければならないか
    私がこの本を読んで1番よく考えた事です。
    彼は、その美しさを保つ自信がないと言い、
    神は死に際、冷静さを装ったもしても
    その深層を見抜けるのだから
    じたばた死んでも良いのだと教えてくれる。
    私は例え神であっても私の深層を覗けないだろうと
    そういう種類の傲慢さがあり、美しく死にたい。
    特に、生活をするための自分(社会的な自分)は
    地上に残していくかたみのようなものだ
    というセリフにはグッときたし、
    尚更綺麗なまま残していきたいと思ってしまった。

    また、カトリックで自殺が良くない
    とされている理由は自分の人生への愛がないから、
    という理由にはかなり納得してしまった。
    当然、人生を愛せなくて死を選ぶのだから
    本当に自殺について考えている時期に
    これを読んでもあまり響かなかったと思うが、
    その波を超えて今読めて良かったと感じる。
    孤独を愛する以上、人生を愛する他ない。

    0
    2026年02月09日
  • 深い河 新装版

    Posted by ブクログ

    なぜ人は神を信じたり、信じなかったりするのか、ガンジス河に集う様々な人たちの物語。キリスト教も仏教もヒンズー教も混じる聖なる河。

    「信仰」「転生」について自分なりの答えを出すきっかけになりました。解説で遠藤周作が闘病中に執筆した作品らしく、渾身の作品というのが伝わってきます。

    個人的は「沈黙」より読みやすくとっつきやすかったです。すごく面白かった。

    0
    2026年02月01日
  • 周作塾

    Posted by ブクログ

    好奇心旺盛な先生はどうでもいいことを書いておいて、実は密かに何より無意識という観念に結構時間をかけて語っている。でもメインはためにならない話だけど。

    0
    2026年01月29日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

    Posted by ブクログ

    キリスト教、戦争、虐殺、男女の恋愛という重奏のベクトルを通じて宗教観や人間観を表現した作品。作中に幾度となく登場する『人、その友のために死す。これより大いなる愛はなし』を多層的に描写して、愛の深みや広さを表現したかったのかなと思った。
    サチ子と修平の心の動きもリアルで、苦しさと切なさと愛おしさを一緒に感じながら読み進めた。特に、2人が詩でつながる様子に、人を本当に愛することの意味を感じた。鎮魂歌の章はこの作品の核心。「そして、それから」との対比が重い。
    長崎必ず行こう。

    0
    2026年01月28日