遠藤周作のレビュー一覧

  • 海と毒薬

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    ネタバレ

    人は、信仰を持たないと罪の意識も持てないのだろうか。
    信仰の有無とは違う、という感覚は覚えるけれど、それならばどうやって裁きを受け入れるのだろう。反省して罪を償おうと思えるのだろう。

    “信仰”で捉えるのも二元論的なのかなぁ。
    無理…と押し潰されてしまう勝呂も、良心の呵責を期待して果たせなかった戸田も、両方とも読んでいる自分から距離はありませんでした。
    上田看護婦すら、わからなくもない…という存在。
    特にこの3人の心情がひしひしと生々しく伝わってきます。
    そして、終わらない空襲と敗戦の予感の、疲労と諦念があれば、わたしも容易に傾いていきそうという怖さがあります。

    加えて、F県在住なので、移転

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    2025年07月30日
  • P+D BOOKS おバカさん

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    大人のためのお伽話です。
    ガスさんに癒されました。
    これからは、悪い心を持った時は、心の中でガスさんが「ノン、ノン」と止めてくれるかもしれません。
    イヌさんの運命が悲しかったです。
    肺病の殺し屋が“遠藤”という名前だったのは、作者の意図を推測せずにいられないです。

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    2025年07月26日
  • 満潮の時刻

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    遠藤周作の作品をいくつか読んだ上で、この作品が完成度の高い作品とは思わなかったものの、病気を通じて人生の悲哀を感じるという感覚は、現状健康な自分は持ち合わせていないので良い読書体験。

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    2025年07月07日
  • 沈黙

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    神はいるのかいないのか。罪のない者が苦しめられている状況で答えはこない。 カラマーゾフの大審問官を思わせるような、理不尽な現実に対する信仰と神の沈黙に対する既視感があった。 八百万の神様の国に住む自身としては、一神教の教義は理解は難しい。 一方、沈黙する神の前でなお返事がなくとも自分が正しいと信じたことを貫く姿には心をうたれた。苦しく思い物語だったが、不屈の信念に触れることで感慨を覚えた。

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    2025年07月06日
  • 留学

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    短編集と知らずに読んでしまい、一章と二章の繋がりを何とか探そうとしてしまった。。
    三章で独立した短編とわかり読み続けたけど、三章長い!!!
    とはいえ、遠藤さんらしい男の暗くイジイジした表現が素晴らしいです(笑
    さいごの『爾もまた』の一言。。
    綺麗な締めです

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    2025年07月05日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    「革命」という言葉の持つ高揚感や疼きを、じゃあ実際どうなのって史実ベースで語ると常軌を逸している。身体の奥底から湧き上がる、滾ってくる激情が、正義だの平等だの権利だのお題目を無視て破壊衝動のみを連れてくる。理性的な生き物がただの獣に戻る。「民衆」という、数のみが頼みの存在は、しかし一度でもその武器を振るうと、制御が効かなくなり暴徒と化す。

    エネルギー。それはしかしもしかすると、今の時代に求められている力なのかもしれない。

    マリー・アントワネットが悲しいだとかというよりも、フランス革命がいかにありえないことだったのかが伝わってきた。

    「ありえない」なんて事はありえない

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    2025年06月30日
  • 私にとって神とは

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    遠藤周作が語る、宗教とは、神とは、信仰とは、の話し。

    いちおう対談形式になってはいるが、質問者の質問はほとんど意味をなしておらず、雑で安易な質問ばかりしている印象でした。(架空の対談かもしれないが)
    おそらく初心者や無神論者に対する配慮として、簡単で専門的ではない質問にしているのだと思いますが、もう少し質の高い質問や議論があっても良かったかなと思いました。

    ただ、序盤は世俗的で浅めの思想で始まりますが、中盤から終盤にかけて少しずつ深くなっていく思考の流れが良かったです。

    本人も言っているとおり、2世信者として、意味もあまりわからずに幼少期に受洗しているので、西洋人に近い、生活に根付いた信

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    2025年06月24日
  • 深い河 新装版

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    ネタバレ

    善の中に悪があり、悪の中に善がある。
    東洋思想と西洋思想の違い。
    一神教と多神教の違い。
    普段、自発的に考えることのないテーマに目を向けさせてくれた作品。

    私は、シンプルに楽しく生きることを理想としてきたが、この本には、「深い河」に魂の救いを求める人々や、神に人生を捧げて「僕の人生は...これでいい」という大津が登場する。自分には無い価値観に触れて、心が揺さぶられた。

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    2025年06月21日
  • イエスの生涯

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    この本を読んで安心した。

    「超然」。キリスト教に限らず、宗教やスピリチュアル的なものに感じること。理解を阻むもの、受け入れがたい何かがある。理解を超えてしまっている。理解しようと努めるというよりも、そういうものであるというふうに落とし込む方がいいのかもしれない。この本を読む前まではそう思っていた。

    遠藤周作の描くイエスを読む。そうしたイメージからは程遠い悩む一人の人間がそこにはいた。人々から期待され、担がれても、自分という存在以上になれないと悩む一人の人間であった。

    弟子たちだってそうだ。一枚岩では決してない。今自分が信じているこのイエスを信じなくなることで、自分を自分たらしめている拠り

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    2025年06月21日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    大学生の吉岡が軽い気持ちで無垢な娘・森田ミツの体を奪い、棄てる。その後の人生を2人の視点から描いたストーリー。

    スール・山形の手紙の「もし神が私に1番、好きな人間はときかれたなら、私は、即座にこう答えるでしょう。ミッちゃんのような人と。」が印象的。

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    2025年06月20日
  • 沈黙

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    隠れキリシタン達が奔走する情景が、ありありと思い浮かばれます。海と毒薬も面白かったが、こちらもgood.

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    2025年06月19日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    九州で凄惨な事件が起きた。
    米兵を生きたまま解剖した、という事件が。

    九州の大学病院で学ぶ主人公、勝呂と同僚の戸田は病院内の政治が活発化するのを横目に日々を過ごしていた。毎日戦闘機が飛び回り人々が命を落としていく中、2人は生きたままの米兵を解剖してみないか、という誘いに乗ることになる。

    初めて遠藤周作作品を読んでみました。本当に練り込まれた作品でした。中でも感情移入を強くしたキャラクターは勝呂の友人、戸田でした。悪事をしても罪悪感がそれほど湧かず、一番恐ろしいと感じるのはそのことによる社会的な制裁というキャラクター。どこか自分と重なる部分があります。米兵の殺害の片棒を担いでしまったことに強

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    2025年06月16日
  • 深い河 新装版

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    遠藤周作の最晩年の作品らしい。ブックオクで目に留まり購入。情報無しになにげに読み始めたら止まらなかった。こちらは一気読み。
    インド観光ツアーに参加する人々の過去や事情から、生きる意味、神を信じるとは?転生などの深いテーマが描かれる。
    後半には混沌としたインドの空気が文字から溢れ、目の前に紅茶色の荘厳なガンジス河の風景が広がってくるから圧巻である。 
    聖なる大河に安らぎを求めて集まるヒンズー教徒達。心と身体を洗い清める者、死して流されるために河を目指して歩み続ける老人。遺体や遺灰を流す横で同時に沐浴が行われる。生と死に境目は無く、祈りが存在するのみ。
    キリスト教もヒンズー教も仏教も境目は無い。全

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    2025年06月14日
  • 彼の生きかた

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    一平ほど純粋じゃないけれど、器用に世渡りなんかもっての他、人並みになんとかやっていく(振り)で精一杯の私にはよく分かる部分が多かったです。その分、読んでいて加納や朋子の考えや行動からも、一平が軽んじられることがつらかったです。この生き方しかない、できないという人種もいるのです…。

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    2025年06月11日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    医学と倫理。人を救う仁術が人の命を犠牲にする。この矛盾が精神を蝕む時、人は自省するのか、それとも後付けの自己正当化によって誤魔化すのか。社会が悪い、職場が悪い、過去が悪い、しかしその瞬間行動したのは己である。その責任を負うのか、それとも逃げるのか。そこに僅かな理性が宿ってほしい。状況に翻弄される私たちに課される主題であろう。

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    2025年05月31日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    作中に何か答えがあるわけではなく、ただ、読者はどの登場人物かに自分の中に何か共感のようなものを感じて深く考える…そうなるように描かれているように感じた。
    人間の本質に良心は存在するのか、戸田の苦しみがわかる気がする…
    第二次世界大戦末期の日本、弱くささやかな良心が踏み躙られるような荒廃した舞台は羅生門の世界観と似ている。かも。

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    2025年05月28日
  • 王国への道―山田長政―

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    遠藤周作を読み漁っていたのは20年以上前。遠藤周作らしい宗教感と山田長政の生き様の交錯に週末の読書を満喫。

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    2025年05月25日
  • 母なるもの

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    異端の宗教として政府に抑圧され、拷問にかけられ、転んだとしても罪の意識に苛まれて苦しい生涯を送ることになってしまう
    そんな背景があるからこそ、厳格な父性よりも赦しと抱擁の母性を求めたのかもしれない

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    2025年05月22日
  • 新装版 海と毒薬

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    戦時下、捕虜を生きたまま解剖した実際の事件をモチーフにした小説。
    葛藤し続ける勝呂に対し、良心が咎めることを知らない戸田。
    決して戸田が悪いわけではない。勝呂が素晴らしいわけでもない。
    何を以て「正しさ」とするのかは時代によっても社会によっても人によっても違うので、絶対的な正しさなんてものはない。その中で、自分の信じるものを持てるか。自分の意志と信念を持てるのか。
    そういう問いの物語。

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    2025年05月21日
  • 深い河 新装版

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    人は死を前にしたとき何を思い、どう行動するか。本書は常に死の雰囲気をまといながら生きる人たちを描いている。彼らが行き着いたのはインドのガンジス川。生と死、聖なるものと汚れたもの、貧富、全てが混ざり合って存在するガンジス川。今まさに死に絶えようとしている人が目指す川。その光景をみた人たちは生きる意味を見つける。
    ガンジス川の情景を読み、人は無力だなと感じた。死に絶えようとしている人にできることは寄り添うことだけ。飢えをしのごうと必死で手を伸ばしてくる子供達にしてあげられることはない。その無力感を思うと、人の神なるものへの信仰心が生まれるのかもしれない。

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    2025年05月12日