遠藤周作のレビュー一覧

  • キリストの誕生

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    ネタバレ

    凄まじい名著。

    イエスの死、ヤコブ・パウロ・ペテロの死、ユダヤ戦争の災禍ー。繰り返される「神の沈黙」と「神の不再度降臨」に対する思考と信仰。そしてそれらを途切れさすことのない、イエスの中にあった「何か」(筆者はXという)。

    どのようにキリスト教が立ち上がってきたのかを、人間的リアリティを持って味わうことのできる一冊。

    キリスト教理解のはじめにこの本を読むと、凄まじくとっつきやすいが、小説家・遠藤の視点がかなり内在化しそうな気もする。

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    - イエスの死後...
    - 原始キリスト教団の誕生
    - 12使徒たち中心に
    - 師の本物の愛と、師への裏切りの痛み
    - 「イエスの死の意味は何

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    2020年04月20日
  • イエスの生涯

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    人間イエスの姿が、リアリティを持って迫ってくる一冊。久しぶりに素晴らしい良書に出会った。

    従来のユダヤ教主流派の神は、裁き、怒り、罰する神であった。だが、そのような神は、貧しく、弱い民衆を救うことはできない。

    一介の大工の巡回労働者として生活してきてイエスは、庶民や、特に弱者や、差別され、虐げられた者たちの姿を、つぶさに見ていた。

    人間にとって一番苦しいのは、病や貧しさでは無く、そこからくる孤独と絶望にある。

    そしてそれを救うのは、神の罰では無く、愛である。イエスはこう考えた。

    「神の愛をどのように証明し、知らせるか。」
    イエスは、このテーマに、生涯取り組むことになる。

    ただ、これ

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    2020年04月09日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    まるで今の日本。無知で無能なアホバカ首相。我々の税金を私的に勝手に使いまくるその妻。そして全てにおいてレベルの低い一般大衆。違うところは、人が良く善意のルイ16世に対してアホバカだけでなく性格最悪で腹黒い我が国の首相。気品があり美しい王妃に対して下品で醜い首相の妻。無気力で他人事の日本国民に対して血の気の多い第三身分のアホども。
    フランス革命は明らかにやりすぎであのうす暗いコンシェルジェリーに幽閉されていた王妃に同情するが、日本の革命は徹底的にやれば良い。早く起こらないかな…

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    2020年02月25日
  • イエスに邂った女たち

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    初読み遠藤周作。いちキリスト者として、遠藤さんの独特のものの見方が実に面白かったです。マグダラのマリアについての項目やちょっと悪女っぽい女性が遠藤さんのお好み?「この女は口説けそう。この女はお堅いからちょっと…」みたいな不遜なユーモアある(?)視点も垣間見れて、楽しく読ませていただきました。ほかの本も読みます。

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    2020年02月12日
  • 侍

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    ネタバレ

    ◯昔のことなので記憶が怪しいが、「沈黙」の時に感じた日本人の現世利益的な信仰と、西洋的な信仰の関係性とは異なり、個人の信仰と、組織や政治との関係に関する小説だと読んでいて感じた。
    ◯また、読みながら、歎異抄の「親鸞一人がためなりけり」という言葉を思い出した。こちらは能動的に関係を築き、この境地に至っている点を思えば、「侍」の中で日本には根付かないとされた信仰の心は確実にあったと思う。解説にもあるとおり、侍自身は受動的に始まったものだが。
    ◯そう考えると、「侍」はやはり純粋に信仰に対する試論なのかなと思った。

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    2019年11月13日
  • イエスの生涯

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    作者の既存作品の紹介を公演した記録や、文豪達との様々な交流を通して神をテーマとしたエッセイの様に語りかけ。
    この書籍からドストエフスキーや吉行淳之介に出会えるとは思っておらず嬉しく楽しい読書でした。

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    2019年10月07日
  • 侍

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    実に丁寧に書かれている文章だと感じた。
    侍が、キリスト教に関して問うている部分が、非常に共感できて、また、時代の流れも感じられた。
    淡々と進むストーリーと、感情の変化、揺れが、非常におもしろかった。

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    2019年08月25日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    いやいや、最高にいい小説。あまり人には進めない方ですが、これはめちゃおススメです。新幹線で目的の駅を乗り過ごしそうでした。ヤバイ。

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    2019年08月11日
  • キリストの誕生

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    イエスの死後、原始キリスト教団の歩みを追い、イエスがいかにキリストに高められていったのかを辿る。イエスの架刑、ステファノの受難、ペトロやポーロ、ヤコブの死、ローマ軍によるエルサレムの蹂躙。これら幾多場面において突きつけられた「神の沈黙」、「キリストの不再臨」。わずかの期間に起きたこれら壮絶な出来事を経てもなお絶望しなかった原始キリスト教団の人たちは、愛のみに生きたイエスを忘れることができない。その意味でイエスはキリストとなり彼等ひとりひとりに再臨したのでは、と結んでいる。著者は「人間が続くかぎり、永遠の同伴者が求められる」と記しているが、宗教の本質を端的に指摘しておられると思い、感嘆する。

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    2019年07月28日
  • 侍

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    転ぶ。

    信仰とは何か?、ということすら、生きる上で全く考えることのない、無意味なくらいの、そんな侍の社会。
    その社会で大切なのは、ただただ忠誠であり信仰とは似て非なるモノ。

    その時代の人達が。
    何故ヨーロッパに行くのか?
    キリスト教が介在したのは何故?
    危険を冒す理由があったのか?

    という事は、史実でも、まさに本文中でも、たっぷり書かれている。

    個人的に唸ったのは。

    商売の利と信仰を天秤に計る人の心理
    忠誠を示す為に信仰を選ぶ心のさざ波
    司祭同士の出世争いの場にされた日本
    功名心を信仰心で巧みに隠してく醜さ
    棄教を前提に自分自身を欺くその描写

    日本に戻った侍の心の描写が、その答えだ

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    2019年06月26日
  • イエスの生涯

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    ヨーロッパなどの先行研究に触れながら、著者自身のイエス像を客観的な筆致で描く。
    受難物語では奇跡をみせずに、自らが架けられる十字架を自ら背負い、ゴルゴタの処刑場に向かったイエス。著者は、聖書はイエスの無力を積極的に肯定しながら、無力の意味を我々に問うていると指摘する。また、彼の生涯は愛に生きるだけという単純さをもち、愛だけに生きたゆえに、弟子たちの眼には無力な者とうつった、だがその無力の背後に何がかくされているかを彼らが幕をあげて覗くためにはその死が必要だったのである、とも指摘している。
    その答え、残念ながら今の自分には確たるものがない。

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    2019年06月02日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    ネタバレ

    遠藤周作らしいいろんなテーマがあった。
    神の沈黙が、今回は「殺すなかれ」と教えながら戦争を黙認する教会の沈黙や、「神なんていない」という救いのないアウシュビッツに変奏していた。
    神は直接の救いをもたらすわけではないが、修平の渾身の疑問を正面から受け止めて苦しげに分からないという高木牧師や、アウシュビッツに共に収容されていながら、いつもあなたのために祈っていると語るコルベ神父を通して、神の沈黙は沈黙ではないと語られている気がする。つまり、直接目に見える解決はしなくとも、苦しむ人ともに苦しむ愛なる神、のように。神のみならず人間も、他者の苦しみを前に無力だ。サチ子も修平の苦悩を前にマリア像に祈るしか

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    2019年05月20日
  • ぐうたら人間学 狐狸庵閑話

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    小学生が喜びそうな下の話満載で声を出して笑ってしまうところが何箇所もあったが、ユーモラスな厚化粧が濃いほど遠藤周作のシャイで生真面目な素顔が際立ってくるように感じた。

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    2019年05月18日
  • 王国への道―山田長政―

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    遠藤周作さん、久々に読みました。
    10代の愛読書には、遠藤周作さんの本が沢山あります。

    今回、タイ旅行の事前勉強に、と思って読んだのですが、タイのお話というより、よくできた物語に、久々降りる駅を乗り過ごしそうになる経験をしました。

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    2019年04月24日
  • 死海のほとり

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    聖書の奇蹟の数々をうさんくさく感じていたが、キリスト教徒でも同じなのだろうか。
    イエスの最期をたどる男たちの旅と、イエスに死を与えた者、死を見届けた者たちの断片。 イエスの受難は戦時中の人間の弱さと絡みついていく。
    罪ある者も赦されるという母の愛があるからこそ、ひとは救われるのだろう。

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    2019年04月19日
  • イエスの生涯

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    小説というよりは評伝である。
    しかし、明確な問いが立てられ、それに明敏な答えを与えている点では学術論文にも等しい。
    遠藤周作は小説家だけではなく、なぜ哲学者にならなかったのだろうか。
    当世の安っぽい社会学者や思想家とは異なる、ちいさき者への優しさがある。

    イエスの名前やその最期を知ってはいても、なぜ磔刑に処せられたか、弟子に裏切られ、また復活の伝説が興されたのか、その詳細は日本ではあまり知られていない。

    『侍』でも描かれていた、現世利益をもとめる仏教観と、奇蹟でなく
    苦悩と悲哀に寄り添うキリスト教観の違い。
    イエスの愛は現代のキリスト教ではゆがめられている気がしないでもないが。

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    2019年04月14日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    「正義とは何か?」
    この問いにぶち当たる度に、私はこの本を読んでいる。

    先日、居眠り運転をして交通事故を起こしてしまった。
    その時に正義感に満ちた警察官は「事故を起こした悪人」である私に対して威圧的で、とても苦しかった。そして、この本が無性に読み返したくなった。最近読んだ中で最高に面白い、改めて大好きな本。

    同じ遠藤周作の著書『海と毒薬』の続編で、戦時中外国人捕虜の人体実験に関わった勝呂医師のその後の話だ。この小説の中で「正義」という単語が8回でてくる(数えた)。正義という名のもとで悪を糾弾する若手の新聞記者が、勝呂医師を追いつめていく。白か黒か。正義を信じて疑わない人は、自分がそちら側の

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    2019年04月07日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    ネタバレ

    『海と毒薬』の勝呂医師が登場する、ということで読んだ。彼が主人公の続編というよりは、群像劇の中のもっとも重要な一人というような立ち位置である。
    事前に読んだ人たちからの感想を聞いていたので、かなり身構えつつ読んだのだが、本当に悲しい結末だった。しかし、その救いのなさのために、私は遠藤周作に感謝した。

    なんて人は悲しくどうしようもないのだろう。なぜ善人が傷つけられ、痛めつけられ、苦しみ悲しむのに、しょうもない人間がのうのうと生きてえらい顔をしているのだろう。
    この作品に出てくる勝呂医師やガストンに比べて、若手記者や大学教授、そして学生たちは本当に愚かでしょうもない。彼らは深く考えず自分のために

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    2019年03月17日
  • 口笛をふく時

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    二つの川があって、その二つの川がやがて合流して大きな川になるような壮大な物語でした。戦争の時代を生きた父親と、現代を生きるその子との葛藤そして、善とは悪とはを問いかける内容です。
    年代からいえばワタシは子の年代にあたるのでしょうが、描かれている父の心情はまことに共感のできるものでありました。

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    2019年03月07日
  • 彼の生きかた

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    ネタバレ

    遠藤周作は愚直で純粋な者の味方である。日常劇でありそうな筋なのだが、最後のもの言えぬ哀しみにひきこまれ、涙を誘われた。不器用な研究者と幼なじみ、恋の鞘当てに巧みに言葉で押し込んでくる男。不純の俗界に残された側にもやるせなさが漂う。猿に比べたらば、社会のボスの姿を皮肉に描いている。

    代表作ではないが、良作である。孤独を感じる人向けに。

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    2019年02月18日