遠藤周作のレビュー一覧
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ネタバレ最初はキチジローのことが嫌いだったのに、最後には彼の登場を待っている自分がいた。
物語として、非常に惹き込まれる作品だったが、それ以上にキリスト教への信念が圧倒的だった…。
私はクリスチャンじゃないので理解が間違ってるかもしれないけど、この話を通して、キリストは信者と共にいるということを深く感じた。私は、「なぜ酷い状況であっても、信者はキリストの存在を信じるのか?(例:戦時下、不慮の事故など、意図せずに巻き込まれたときなど)」と考えていたが、その苦しみもキリストが一緒に受けていたという考えなんだなと感じた。
「踏むがよい。お前の足の痛さを、この足も感じている。」
ここは本当に美しいし、キリ -
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この人の小説を初めて読んだ。568ページに及ぶ、第二次大戦の頃の長崎を中心に展開する物語。リアルな描写と登場人物たちの強い想いや激しい葛藤が伝わってきて、夢中になって読んだ。
自身もキリスト教信者だった作者の戦中の想いも色濃く投影されているようだ。戦時下で押しつぶされる個人の幸福や信仰心。アウシュビッツでの描写は、この世のありったけの地獄が描かれる。そしてその地獄の中でわずかに芽生える信仰心と人の良心と激しい葛藤。極限状態での人間の姿が刺さってくる。同時に、同調圧力を振りかざしてくる人間の姿もあり、それはコロナ禍で露わになった現代にも繋がるものを感じさせる。
戦争で引き裂かれる純愛。昨今で -
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子供の頃、一人の偉人にスポットを当てた学習まんがをよく読んでいた。マリー・アントワネットもその内の一人だった。小学館のもので、ネットで調べると未だに出てくる。子供の読み物では、主人公を肯定した一面的な描かれ方をする。これは子供が読むことを想定して矛盾を生じさせないように、一貫性を持たせるということなのだろう。しかし、そんな常に善に向かって生きている人間はいないし、何よりつまらない。
今回この遠藤周作の描くマリー・アントワネット及びマリー・アントワネットを取り巻く人物がいわゆる革命前夜にどう蠢いていたのかを、関係性を持たせながら描いており、完全な善悪を区別出来ないところが非常に面白い。主人公マ -
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海外で出会う外国人との考え方や感じ方の違いに、戸惑ったり誤解したりされること。伝わらなくてまあいっかって説明するのを途中で諦めたりすること。共感する人が多いと思う。
異国でつるむ日本人のコミュニティも、けっこう複雑な心理がからんでいて、そこもうまく表現されている。わかるー。
日本に来ている外国人旅行客を見て、戸惑いを感じたり孤独に感じたりしていないか、ちゃんと旅行を楽しんでるのかなといつも考えてしまう。
それは、この作品に出てくる登場人物と同じように過去に自分が留学で孤独を感じた経験があるからだ。病気まではしなかったけど。
見ていると日本にいる外人はすごく楽しんでそうに見えて安心する。
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正確には「作家の」日記ではない。フランスでの2年半の思索と模索の記録。研究者か小説家か評論家か、道はまだ定まっていない。
場所はルーアン、リヨン、そして時々パリと田舎の町や村。部屋には師や友人たちがよく訪ねてくるし、お茶や食事にも頻繁に招かれ、忙しい毎日。しかし本務は勉強と研究、心は時に静謐、孤独な修行僧のよう。持ち前のおどけや冗談は一切感じられない。モーリアック、ベルナノス、ジッド、クローデル、サルトル、ボーヴォワール、カミュ、マルロー、フォークナー……興味の赴くままに読み耽り、真摯にものごとを考える遠藤青年がいる
日記には、天気や風景の描写もあり、その時の空気や日差しも感じられる。どこか朝 -
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ネタバレまさか実際に存在した事件だったとは、思っても居らず。解剖のシーンは、文字だけで映像も何も無いのに、想像されてなかなか読むのがきついものがあったが、故に現実を知らされる。
日本もなかなかの戦争犯罪を犯してきたと初めて知れた本。
日本人の思考は、きっとそのような罪を犯してしまった彼らを庇護してしまうところにあるのでは無いか。ヒルダの「神様がこわいとは思わないのか」という一言は核心をついている。彼らは神という絶対存在が自分の上にある。自分の一挙一動を監視し、裁判を下す神という存在が。なので悪には容赦なく敵意を向けるし、善にはとことん慕う。しかし日本人には基本服従の対象がない。故に悪意を見せられても -
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戦争文学の面白さが詰まった作品
共テ演習とか二次国語で扱われる小説の中でも戦争文学は群を抜いて自分を引き込むものがある。日本史選択で戦争へ向かっていく日本をマクロ的な視点でしか勉強していないせいでミクロ的な視点でその時代に生きる人々の生活文化を知ることは難しいが、戦争文学はそれを媒介してくれる。
この作品は実際の事件を取り扱っている。勝呂は冒頭では面白みもない貧しい町医者として描かれているが、医学生時代を中心に書いた物語の中盤以降では自分にとって彼が人情深い人物に映った。
彼の心を変えたのが生体解剖事件に関与したことであることは確実。
遠藤周作について。
名前しか知らないが、本をほとんど読 -
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面白かった!
恥ずかしながら高校卒業以来世界史には触れず、マリーアントワネットの名前は知っているくらいの知識レベルでしたが、それ故楽しむ事も出来た作品でした。情景を思い描きながらするすると読み進める事が出来ます。
豪華絢爛な王室の様子と対比のように描かれる民衆の暮らし、刻一刻と広がっていく革命の声。。下巻でどのように更に書き進められていくのかが楽しみです。
ちなみに、1番印象的だったのは最初の情景、マリーアントワネットがオーストリアからフランスに来たばかりの様子ですね。まだ政治的な話がそこまで介入しておらず、ひたすらに彼女の可憐な動作や周囲からの印象などが描かれており、自分自身も息を呑む民衆の