遠藤周作のレビュー一覧

  • 砂の城

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    壊れゆくことをわかっていて作る砂の城。高校・大学の打算的だけれど甘酸っぱい青春がよく描かれている。大学から就職にかけて社会を知る時期というのは、ある種現実を知って社会に対する夢や希望が壊れる時期でもあると思う。それを感じられる作品。

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    2022年05月29日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    首飾事件の帰結から、マリー・アントワネットの処刑まで。フランス革命の混乱に翻弄された人生。何度も逃走し、全て失敗して最後は運命を受け入れたというのは初めて知った。終盤は妻として、母としての心理描写が多くて読むのが辛かった…。創作も一部あるけど、基本的に史実に基づいてるので教養として読んで良かった!

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    2022年04月21日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    少し前にテレビで紹介されていて、興味を持ったので読んだ本。
    切なくて辛くて、でもほっこりするような話だった。
    いい本だなと思った。

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    2022年02月06日
  • 新撰版 怪奇小説集 「恐」の巻

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    面白かったです

    タイトルには「怪奇」とありますが、幽霊や不思議な話を作者が体験したように語るエッセイです。私は名古屋に在住なので、「時計は十二時にとまる」がとくに面白かったです。

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    2022年01月26日
  • 王国への道―山田長政―

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    【本書の特徴】
    ・1600年辺りの日本と世界の描写
    ・戦と冒険活劇
    ・政治と権謀術数
    ・少しだけ、位の低い者と高い者の恋愛描写
    ・ノンフィクションである、ということ
    ・現世に生きる人間と宗教のために死ぬ人間
    ・下手にハッピーエンドにしない
    ・集落や組織にとって少数派の生き方/処世術


    遠藤周作氏の作品を初めて読んだが、こんなに読みやすいとは、意外であった。

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    2022年01月12日
  • 秋のカテドラル 遠藤周作初期短篇集

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    装丁が美しいですね。本書に収められている同名の短編の中に出てくる大教会の写真だそう。

    どの短編も時代をあまり感じないです。自分は、と言うことですが。
    女優のはなしや、別の短編に出てくる女性の言葉使いなど今日的ではない箇所がたくさんあるのでその意味では古い時代の話なのですが、描こうとするものの有り様が当時と今とでもさほどに違いはない、五十年経っても人間の心の中にあるものにそう差異はないということなのかもしれません。
    そして自然描写や建物の描写の端的で分かりやすいこと。遠藤先生の文を没後25年経ってまたこのように読めることの有りがたさをつくづく感じました。

    佐藤愛子先生のことは他でも書かれてい

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    2022年01月02日
  • 死について考える

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    「死」というテーマについての短いエッセイがたくさん。「死」は誰も知らない経験。希に臨死体験者はいるが。でもすべての人に平等に訪れるもの。それについて話されることというのは、人間性というか人生観が滲み出てくる感じがする。そう、なんというか、じわじわと伝わってくる。「ああ、そうなんですね」ではない。じわじわとしたのが自分の中のなにかに触れて、ああ、こういうことかという言葉以上の受け取りが出てくるような気がする。

    ”じたばたして死ぬことを肯定してくれるものが宗教にはあると思うからです。”

     たしかにそうなのかもしれない。死ぬことを考えないでもない。でも本当にその可能性があるときとないときでは向き

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    2022年01月03日
  • 愛情セミナー

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    ネタバレ

    遠藤周作の選集「人生には何ひとつ無駄なものはない」の中で度々この本の内容が引用されていて、とても惹かれる内容だったのでこの本を先に読んでしまいました。

    読んでいる最中から、出会えてよかったと思えるほどの珠玉の言葉の数々。

    45年も前に書かれた本なので、現代の価値観とは少し相容れないような表現もありましたが
    クスッと笑えるような話も交えつつ、真摯に男女の愛の本質に近づいていく。

    解説で述べられていた
    「追いつめることは、たぶん子どものすることなのだ」という言葉のように、著者は追いつめることはせず
    人間を見つめている。


    「君の孤独は孤独のためにあるのではなく、孤独から抜け出て信頼のために

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    2021年12月12日
  • 王国への道―山田長政―

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    山田長政については、アユタヤの日本人町で活躍した人、程度の理解。ペドロ岐部は初めて知った。
    長政の最期を知っているとハッピーエンドにはなり得ないのだが、そこへ向けての長政の戦いがなんともいえない。史実だと子供がいたようだが、ここでは常に孤独で1人決断を求められているようなのがなんとも。そこでも宗教に流れなかったのが強さか。
    よく分かっていない部分が多いらしいが(Wikipediaも項目によって濃度がバラバラ)、ペドロ岐部についても含め、色々と知れて収穫大。

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    2021年12月11日
  • 満潮の時刻

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    肺病を患って長い入院生活から生きることの意味を見出そうする主人公の物語。飾ることのない単調な物語に深淵な哲学や宗教観が織り込まれている。

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    2021年11月21日
  • 生き上手 死に上手

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    遠藤周作は小説を読んできた。
    エッセイが小説ではない文章がこんなにも心地良いとは思わなかった。
    遠藤さんの小説は独特の表現と展開する風景がゾクゾクとする。小説の楽しみの真髄たるものがあるが、こちらのようなエッセイでは違う角度から教えて下さることばかりだ。
    これはこう思わないかな?こうしてみると良いよ。
    こんな事があったよ。こう感じたんだよ。
    この人のこれが好きなんだ。
    人の感想や意見なんて読んでも面白くない、そう思っていた私は幼かった…
    感想でも意見でも、書き手の伝え方によっては本当に心に染みて、もっと知りたいと思ったり、血肉になっていくと実感した。
    著者のキリスト教との関わり、キリスト教を知

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    2021年10月31日
  • 怪奇小説集 蜘蛛

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    おもしろい!!!ユーモアとおぞましさがミックスされていて読み応えがある。冷や汗をかきながら読んでいたけど、共感できる部分があるからこそ、ヒヤヒヤしてしまう。「あなたの妻も」「初年兵」がすき

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    2021年10月12日
  • 怪奇小説集 蜘蛛

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    怖がりで幽霊を信じていなくてちょっとシタゴコロのある遠藤周作が、「周作恐怖譚」という連載のため実地取材した怪談集。…となっているけれど、一部以外はドキュメンタリー風の怪談小説であって、完全実体験ではないってことでいいんですよね。


    幽霊を信じていない遠藤周作本人が体験した三つの不思議な話。ルーアンの宿屋で感じた重苦しさと生臭さ、誰もいないはずのリヨンの学生寮に出入りする足音、そして熱海の宿で見たのは亡霊なのか?
    三つ目の熱海の経験というのは作家の三浦朱門とともに泊まった宿での出来事であり、三浦朱門も別のエッセイで書いている。高名作家が同時に体験した怪奇現象(?)というのは珍しいようだ。 /『

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    2021年10月09日
  • 深い河 新装版

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    疎外。自分を信じられるか?

    美津子は恋愛遊戯から一転
    妻の座に就くが、夫と合わない。
    看護婦の自分も本心に思えない。

    人には善悪両方があるのか。
    ヒンズー教の女神の二面性が
    それを肯定する。また、
    病に苦しみつつ乳を与える神もいる。

    弱虫の神学生大津は、誘惑され、
    胸だけを許された後、捨てられる。
    拠り所のキリスト教からも、
    多神教的思考を否定される。
    だが、異端でも、その後の彼の
    行動は、むしろキリスト的だ。

    美津子も大津も、疎外されるが、
    自分を信じられたらよいか?
    精神的危機を乗り越えたトルストイ
    は破門されても強かった。
    捨てるのが男なのが『復活』か。
    恋愛遊戯が、

    #感動する #泣ける #深い

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    2021年09月16日
  • 夫婦の一日

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    人間の心を映したような短編集。
    夫婦の鳥取砂丘の旅から始まり、江戸のキリシタン細川ガラシャ夫人に纏る小編で終わる5篇は、どれも鋭く心の光と闇、人間の弱さを射抜いた、恐ろしくもあり、見逃せない話だった。日本で生まれ育った私にとっては、カトリックの筆者の視点で見た日本人観、仏教観が新鮮で興味深い。生涯をかけて宗教に向き合い続けた筆者だからこそ視える、人間の深層心理なのだろう。
    面白くて、他の遠藤作品も買ってしまった。

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    2021年09月01日
  • イエスの生涯

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    遠藤氏の本を幾つか読んだが、私はその度「神とはなにか?」を考えさせられた。遠藤氏が書く本に現れる神は、所謂神頼みされる神、何かを授けてくれる神、奇跡を与える神ではなく、残酷で、冷酷で、何もしない神だと感じたからである。普段生きていて、神を思う時、それは何かを望む時であったり、なにか幸福に恵まれた時であったりするのが私だった。だからこそ余計に、遠藤氏の作品で現れる神は、どんな信念のもとにその姿をしているのかを知りたかった。この本を読むことで、それがほんの少しわかった気がし、同時にイエスという人に対して遠藤氏がどう考えているのか、イエスの像についてもほんの少し触れられた気がした。この本を読んですぐ

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    2021年08月26日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    『海と毒薬』の続編的な位置付け。これを読むことで「海と毒薬』への理解も深まったような気がする。誰しも不安、迷い、弱さ、後悔、孤独を抱えている。一見、交わることのなさそうな登場人物たちが何かしら勝呂医院と繋がりながら交錯し、すれ違っていく。虚栄や欲望に飲み込まれていく中で、頼りなくもピュアで無償の優しさを持ったガストンの存在が微笑ましく救いになっているような気がする。勝呂も彼にだけは心を開こうとしていた。人を救うために医者になったのに、結局人の命を奪ってばかりいると自らを省みる勝呂。罪の意識がありながらも救いや許しを求めている訳ではない。理解されない寂しさ、悲しさ、諦めによる辛い結末。牧師や聖書

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    2021年08月17日
  • 留学

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    留学の苦しみ。理想と現実との葛藤。

    向坂の以下の発言が胸に刺さる。
    「ぼくら留学生はすぐに長い世紀に亙るヨーロッパの大河の中に立たされてしまうんだ。ぼくは多くの日本人留学生のように、河の一部分だけをコソ泥のように盗んでそれを自分の才能で模倣する建築家になりたくなかっただけなんです。河そのものの本質と日本人の自分とを対決させなければ、この国に来た意味がなくなってしまうと思ったんだ。田中さん。あんたはどうします。河を無視して帰国しますか。」

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    2021年06月27日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    『海と毒薬』の続編のような小説。
    生きることに付き纏う悲しみ。
    弱さと強さの境界でもがいてもがいている人々。
    正義感をふりかざす自己満足。
    無償の愛。
    薄闇と霧にまみれた世界で、生きるとは何か?を激しく問われる。
    多くの登場人物が少しずつリンクしながら繋がってゆく様は、新宿の雑踏を思わせつつも惑うことなく描き分けられ、その描写や緩やかに流れる時間軸が凄まじい悲壮感を極だたせている。
    素晴らしい筆力。
    愚直なゆえ力強く生きる若者たちが光なのか?
    ガストンだけが光だったのか?
    そしてやはりそこに正解を見出せないまま、物語は終わる。
    くるしい。
    悲しい。
    悲しみの歌。

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    2021年06月02日
  • P+D BOOKS 宿敵 上・下巻 合本版

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    宿敵 (上・下巻合本版)

    今から40年以上前に「沈黙」を読んでから遠藤周作のファンです。戦国時代から江戸末期にかけて言葉も十分に通じない異国の宗教に帰依するということに興味を感じます。堺の商人のように実利的な意味で入信した者もいるでしょうが、多くの農民が信じるということは、余程ひどい世の中だったのでしょう。だから現世には希望を見いだせず来世に思いを託す。この小説もそのことを非常に感じました。

    #感動する #深い #切ない

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    2021年05月25日