遠藤周作のレビュー一覧

  • 深い河 新装版

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    名作。
    胸が熱くなり、最後は涙が出そうだった。
    死を迎えるためにガンジス河へ向かう、貧しく苦悩に満ちたヒンドゥー教徒たち。
    ガンジス河は人生を、罪を、そして死を流していく場所で、生と死がそこで交わる。
    全てを優しく包み込む深い河。愛に満ちた河。

    本書にはキリスト教、ヒンドゥー教、仏教が登場するが、特に大津の思想が強く印象に残った。
    神は多面的であり、どの宗教にも存在すると語る彼は、周囲から異教徒とみなされてしまう。
    宗教の違いで争いが起こるこの世の中で、私は無宗教だからかもしれないが、大津のような考え方があってもいいのではないかと思った。

    人生で一度は、聖なるガンジス河、そして飢えと病苦と

    0
    2025年12月13日
  • 深い河 新装版

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    一気に読んでしまった。
    「沈黙」の結論ともいわれる「深い河」の一行はインドに向かう。神はいるのか、いないのか。姿は見えなくとも、さまざまに転生するのだと。美津子の二面性に共感しながら、その両面を糊付けした孤独を馳せた。大津の生きざまを肯定したい。また読み返すだろうし、人生で大事な一冊になりそう。

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    2025年12月10日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ

    良心の呵責というものについて、こんなにも深く考えさせられたことはない。
    戦時中の医療現場という、自分には縁もゆかりもない世界なのに、まったく他人事とは思えなかった。
    とにかく物語への没入のさせ方が巧妙だった。
    プロローグでは読者の立場に近い、平凡な名無し男の視点から風変わりな開業医・勝呂を描き、第一章では勝呂の視点から事件に至るまでの経緯を描き、第二章ではとある看護師と、勝呂の同僚・戸田の過去を深掘りし、最終章ではそれらのピースが全て繋がって、全員が同じ禁忌の場に居合わせる。
    それぞれのチャプターで、全く異なる切り口から善悪や良心、正しさとは何かを訴えかけてくる。
    とりわけ第二章の戸田の子ども

    0
    2025年11月30日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ


    冒頭は戦後が舞台なので
    はて..?となるが
    医師が登場して戦時中になって
    読み進めていくうちに
    どんどん闇が深くなっていく物語だ。

    登場人物の過去も描いてるが
    その表現がすごく良い
    特に戸田の過去を読んでいると
    実際に同じような境遇をしてる人がいるのではと思う

    個人的にページをどんどん進めた部分がある。
    それは、解剖直前の場面だ。
    ''生きた人間に麻酔をかけ殺す''という状況が
    文章だけでも伝わってきた。
    反戦とか歴史の出来事から学んでという作品ではない。



    絶対オススメしないが
    時間もあってする事もなくて
    ネットサーフィンしてるくらいなら
    2

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    2025年11月26日
  • 王国への道―山田長政―

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    新聞か、雑誌のオススメ記事で見かけて、読んだのだが確かに面白かった。
    どんどん登場人物が策略で死んでいく。スリリングで一気読みできました。
    主人公の長政、岐部に共通するのは、最後は人に裏切られて死ぬという事。
    Thai Land の"T"は、天国のTだと聞いたことがあるが、違ったか。
    人を一方的に信じてはいけない、また野苺をいじってもいけない。

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    2025年11月22日
  • 沈黙

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    強い者、弱い者とはどういうことか?
    自分にとって人生の折々に読み返したい一冊になった。

    物語はキリスト教信仰の中で一見強い者ーー信仰を捨てたと言わず心を強くデウスなる神に向け続ける人たちと、一見弱い者ーー脅しや痛みに耐えず神を捨てる態度を示すキチジローや棄教する宣教師たちを対比させながら進む。

    物語に登場する強烈なキャラクター、臆病者で卑怯な行動を繰り返し何度も惨めに許しを請うキチジロー。「なんのため、こげん責苦ばデウスさまは与えられるとか。パードレ、わしらはなんにも悪いことばしとらんとに」
    その臆病者の愚痴が、司祭ロドリゴの胸をじわじわと刺し、神の沈黙を問いかける。迫害、多くの信徒の呻き

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    2025年11月19日
  • 沈黙

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    名作。
    江戸時代、司祭ロドリゴはフェレイラ教父を追って日本へ潜入するが、そこでキリスト教への容赦ない弾圧を目の当たりにする。
    信徒たちが苦しみ抜く姿を前にして、ロドリゴは問い続ける。
    なぜ神は沈黙したままなのか。
    なぜ救いを求める者たちが報われないのか。

    祈りは本来讃美のためのものなのに、次第に呪詛のように変わっていき、もし神がいないのだとすれば信徒の死も自分の人生もどれほど滑稽なものかと自問する。

    最後にはロドリゴなりの答えにたどり着くものの、その後の人生は決して胸を張れるものではない。
    深い葛藤と苦悩が生々しく伝わってきて、神とキリストと人間について深く考えさせられる。
    読み終えたあと

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    2025年11月19日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    海と毒草の続編という形。捕虜の生体実験に加わった勝呂のその後とそれを正義の名の下に取材する折戸、イエスキリストの生まれ変わりのようなガストンらが主な登場人物。結局人が人を裁くなんて無理があるんかな。胃癌末期のお爺さんを苦しみから解放するために安楽死させることにした勝呂だがその行為が本当にダメなことなのか、当人が望むなら正当性があるのか難しい問題。全体的に文章も暗く読んでて陰鬱になりそうになるがテーマとしてはとても大事な気がする。
    文化人かつ教授の矢野の描かれた方が面白い。結局こういう人たちは何も生まず偉ぶってるだけなのか。

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    2025年11月17日
  • 沈黙

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    これはもう永久本棚です (日本語?、

    遠藤周作の沈黙が読みたくて読みたくて仕方なかった
    パードレの葛藤、涙が零れ落ちるほど辛く屈辱的だった

    一応仏教の宗派こそあるが、ほぼ無宗教レベルに信仰がないので、
    信仰とは、命とは、何故ここまで命を捧げられるのか、もう想像をはるかに超えた境地での体験でした

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    2025年11月16日
  • 白い人・黄色い人

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    西洋(キリスト教)の「永遠」の感覚と日本(仏教)の「無常感」の対比が面白かった。
    キリスト教では罪を犯しても神に懺悔して赦しを乞えば救われる、死=永遠の命への入り口っていう考え方。
    対して日本では抗えない運命への静観、移ろい衰えていくものへの諦めに近い無常感が根底にある。
    根本的な感覚がこんなにも違うのに、日本でクリスマスとか祝われてるのが陳腐に思えてくる。
    あと日本人キリスト教徒はこの辺りの感覚の違いをどう対処しながら自分をキリスト教徒たらしめているんだろう。機会があれば当事者に聞いてみたい。


    以下、読んでいて感じた疑問とchatGPTの回答
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    2025年11月10日
  • 沈黙

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     遠藤周作「沈黙」を読んだ。生前の遠藤が「この作品を書けたら死んでもいい」とこぼしたという、不朽の名作。本作は国内外で高く評価され、キリスト教文学の金字塔との呼び声も高い。また一方では、日本人独特の価値観と、キリスト教の善悪二元論の狭間で苦悩した遠藤の私文学とも表される。まさしく作家・遠藤周作の魂の一冊と言える。

     舞台は江戸初期、キリシタン弾圧下の長崎。潜伏したポルトガル人司祭・ロドリゴは、日本人信徒のあまりにも残忍な殉死や拷問に心を痛め、天の神に切実な祈りを捧げる。しかし神は沈黙を貫き、ロドリゴは理想の神を信じたまま信徒を見殺しにするか、踏み絵に足をかけることで彼らを救済するか、決断を迫

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    2025年10月29日
  • 海と毒薬

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    名作だった。
    戦時中、捕虜となった白人を生体解剖するという、倫理的問題を真正面から描いた作品。
    実際の事件を基にしている。
    どうせ死ぬ命なら、実験で多くの人の役に立てるほうが良いとして行われた行為に対し、勝呂医師は深い葛藤を抱く。
    一方、戸田医師は自分には心がないのかと良心の呵責を求めて実験に参加するが、恐怖も罪悪感も湧かない自分に気づき、諦めにも似た無感情な境地に至る。

    時代背景や環境の影響が、人の倫理観をどれほど左右するのかを考えさせられる。
    著者の遠藤周作はクリスチャンであり、キリスト教には明確な倫理規範があるが、日本人にはそうした指針が乏しいため、流されやすいのではないかと彼は考えて

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    2025年10月20日
  • 沈黙

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    ## 感想

    キリスト教と言うだけで、日本人からひどい目に合わされるロドリゴ司祭や信徒達。

    宗教や思想の違いだけで、人間が人間にこれだけひどいことをできるのだと言うことに恐怖を感じる。

    『沈黙』はフィクションではあるものの、大方は史実に基づいていて、歴史的にも同じような迫害が行われていた。

    今では違う宗教に対しても寛容になったと思うが、そうは言っても差別や迫害はなくなっていない。

    沈黙ではひどい迫害に遭いながら、ロドリゴが神はいないのかと自分の中の信仰と戦うことを主軸に描かれている。

    私は無宗教なので、この神はいないのかと言う問いが、どれだけキリスト教の信徒の方々にとって恐ろしいもの

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    2025年10月17日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ


    戸田ターン、途中いきなり読み手側に問いかけてくるからびっくりした

    戸田らだけではなく、私だって、世間や社会に絡まなくとも罰だって罪だって意識できるのか
    良心による罪と罰を知らないかもしくは無視してしまわないか
    自分に正直でありたいと強く感じた

    戸田ターンで出てくる首に包帯を巻いた少年、君、太宰治の人間失格にもいなかった....?

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    2025年10月14日
  • P+D BOOKS おバカさん

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    ★5つ!!!
    ガスさんの訪日してから最初の出会いや出来事。
    癒やされます。
    殺し屋の遠藤と作者はどんな繋がりなのだろう?
    気になる
    ナポレオンの最期も悲しい、、、
    そしてどんな経緯で新宿に戻ってきたんだろう?

    会社で「ふあーい」と応えて場を和まそうと思う今日此の頃

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    2025年10月13日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    遠藤周作らしく、キリスト教絡みの重いストーリーである。キリスト教の教えと国家の板挟みとなる主人公2人の心理描写がすざまじい。

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    2025年10月08日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ちょうどよい厚みの本。
    昔中学生あたりで一度読んだときは全く理解できずに終わったのだが、大人になってから読むと色々考えさせられる本だった。
    わかりやすい起承転結を求める人には向かないが、人それぞれの感情の機微について考えたい人に薦めたい作品。

    第一部での勝呂の最後の一言が、最後まで読み終えると違う意味だったことに気が付いて胸が苦しくなった。

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    2025年10月03日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    終戦前の九州大学生体解剖事件をモチーフにし、登場人物の出生や罪の意識の感じ方の違いを良く表現していた。個人個人の罪の意識の違いは勿論、当該事件の当事者になった際にもその罪の意識の違いによる心情の違いを垣間見え、読者にも正義感や罪の意識の感じ方を問い直す作品になっていた。事件について表面的にしか分からなかったが、当事者目線のように事件を体感できたし終戦直後の福岡の様子も垣間見えたのが面白かった。

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    2025年09月30日
  • 沈黙

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    天草一揆直後のキリシタン弾圧が激しい時代の空気感も感じ取れる程に、風景や空気感の描写が的確で、まるでその時代を覗いているような感覚になった。迫害から逃げるシーンも緊張感が文字から伝わってくる。「沈黙」というタイトルは様々な意味合いを含んだタイトルかと感じた。迫害から逃れる為に沈黙を守るキリシタン、キリシタンを飲み込んでも沈黙したような海、キリシタンが耐えられない苦しみを受けているのに沈黙する神。この小説を読み終わってもう一度「沈黙」というタイトルについて考えるほど、のめり込んだ物語だった。

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    2025年09月30日
  • 沈黙

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    特定の宗教への信仰がないからこそ考えさせられた。
    日本にキリスト教が根付かなかったのは、政策のせいなのか、それとも日本人の気質からそうさせたのか。
    今まで神がいるならば世界で戦争など起こらないはずだと思っていたが、そのような心の影がいっそう深くなった。
    神々は沈黙してばかりなのかもしれない。

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    2025年09月27日