遠藤周作のレビュー一覧

  • イエスの生涯

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    ネタバレ

    自分の思い描いていたイエスの姿とは全く違った印象を持った。
    神の愛を伝えたいイエスと目の前の見える奇跡を求める民衆とのギャップ。
    イエスがここまでの孤独を抱えていたことを知らなかった。

    イエスの苦しみはまさに人間が抱える様な苦しみで、神の子にも関わらず人間の苦しみも分かち合ってくださる。
    自分の中では勝手にイエスは「思い悩むことのない、完璧な存在」と思っていたが実はそうではない。
    無力だったからこそ、弟子たちに伝えられたことがあったのだ。

    地上に来てくださり、神であり人でもある神の子に感謝する気持ちがより一層強まった。

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    2024年09月09日
  • 海と毒薬

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    戦時中、捕虜の米兵を使って人体実験を行うという物語。
    戸田のキャラクターというか考え方が非常に自分自身に重なって刺さりました。その瞬間・瞬間には罪の意識を強烈に感じるけども、ふとしたきっかけでコロッと忘れる。ほんとにあるある過ぎて自身の性格を言語化されたみたいでした。
    また、ドイツ人の看護婦さんがよかれと思って洗濯したりクッキーを配っている行いが鼻つまみものにされてるのも日本だなぁと思いました。

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    2024年08月13日
  • 海と毒薬

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    重い内容、暗い話で終始どんよりした雰囲気の小説だと感じた。人間の汚い内面が色々見えて共感出来たり出来なかったり…。
    思っていたよりも分かりやすくて読みやすかった。勝呂と戸田の対比が面白いし、上田の醜いところなんかは多少なりとも共感出来る人も多いんじゃないかと感じた。

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    2024年08月13日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    いよいよ革命が起こる!7月14日!ちょうどこの本を読み始めた日。なんと言う偶然でしょう。
    財政の悪化、市民の苦しみ、貴族への恨み。
    そんな中最後まで国民と国王とは愛し合わなければならぬと言う義務を果たそうとするルイ16世。
    この日の日記には、何もなしと書く。
    自ら意見を出し、苦しまずに死刑執行されるようにと、こころから祈った断頭台で自分が処刑されるとは思いもしない哀れな国王。
    そして何もかも理解した上で、最後まで正面を向き、優雅を守り王妃としての威厳を死守しようとするマリーアントワネット。
    群衆の残酷さが人間の悲しさをものがたり、なんとも耐え難い文章を綴っていく。
    唯一の救いは、愛するフェルセ

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    2024年07月15日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    「だがその頃のマリーアントワネットは実に芙蓉のように美しかった。たぐいなく美しかった」
    時代に翻弄される王妃と、マルグリット
    そのまわりで時代を大きく動かそうとする人々
    このエネルギーはこの時代だからこそなのか?
    美しい王妃が哀れでもある。さあこれから後半革命が始まる!遠藤周作さんのこの作品は読みやすくてどんどんのめり込んでいく!

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    2024年07月14日
  • 海と毒薬

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    面白いと思った。導入から本編に入る所は頁を捲る手が止まらなかった。170頁ほどで、2時間半ほどで読み終えれるのに対しての満足感、読み応えを確り感じることが出来た名作。第二章が特に良かった。分かりやすいもので例えるとすると夏目漱石のこころと通じるような、日本人らしい後ろめたさのある心情を上手く掬いとっているように感じた。欧米人である女性と、日本人である女性の対比、誰しもが感じた事がありそうで頭の奥に閉まっている浅ましい考え、これを真正面から描けることの出来る作家は少ない、内容が内容なだけに現代人には"ヤバい"で済まされそうな作品ではあるものの、実際に合った事件が元、という作品

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    2024年07月24日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    一部の続編。
    どんどん文章が素敵になる作家さん。
    一部もよかったけど、私は二部の方が好き。

    アウシュビッツについて、知っているつもりになっていたが、想像を絶することがあったことを知ることができた。
    もう二度とこんなことがあってはならない。

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    2024年06月03日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    海と毒薬の続編。

    生きることの悲しみや苦しみ、正論は人を追い詰め苦しめる。
    登場人物は多いけど、とてもわかりやすく描かれており、文章から情景が見える作品。

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    2024年06月03日
  • 自分づくり~新装版~

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    自分が変わってしまうよう出逢いがあった。
    人間力を高める”人生経験の大切さ“を教えてくれた先輩たちに感謝します。

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    2024年04月26日
  • 海と毒薬

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    ネタバレ

    実際にどのように死体解剖が行われていったかではなく、参加していた一人一人の心情を描写するで読者でも有り得るのではないかと問題を提起するスタイルがとても面白くて新鮮だった。

    1番印象的だったのが戸田の過去で、死体解剖のような大きな出来事ではなくても、日常生活の中で責任感や良心が欠けているときが信仰の不在から起きているということを痛感した。

    深い河もそうだったけど、本当に人の痛い部分に目を向けて言語化するのがうますぎる。

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    2024年04月05日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    ネタバレ

     生体解剖という医学の暴力と無反省を糾弾する折戸が、記事の暴力により人を殺し、その現実を受け入れようとしていないという構造が、冒頭の「泥棒が泥棒をつかまえ」たことに似て滑稽に思えた。

     遠藤が、彼を含めた若い世代の人間に「距離を置いて対している」[427頁]ことも相まって、私は彼らに対して愛着を持って接することができず、正直に言えば「救いようのない」と思えてならなかった。

     ただ、幸運なことに、折戸には野口という気づきの種となる人物がいる。勝呂に後日談があったように折戸にも後日談があるならば、野口は「救い主」になれたのだろうかと想像した。

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    2024年04月02日
  • 侍

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    まさに皆の思い浮かべるTHE SAMURAI的なやつ。もちろんハリウッド版じゃなくて三船敏郎版みたいな。
    侍ってひたすらに我慢を強いられるというか、そういうイメージのもとに明治から昭和の戦時体制やらその後の昭和やら、ずっと力を持っていたわけで、しかしついに日本でもそういう人種が隅に追いやられ始めて、今この令和はまさに時代の切り替わりなんだとか思ったり。さてどうなるのか。
    とは言え日本人にはこの我慢の感覚が染み付いてるわけで、ついつい心を打たれるのは昭和世代ということなんだよね。

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    2024年03月31日
  • P+D BOOKS 宿敵 下巻

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    同じ秀吉恩顧の武将である行長と清正の確執を近習の頃から描いていて、その相容れない性質にひりひりするのだがどちらにも感情移入してしまうほど心理描写がうまい...。宿敵である行長が関ヶ原の戦いに負け処刑されこの世からいなくなった時、清正は宇土城を攻め落としていたが、城内で一人悦びはなく茫然と佇んでたとこがとても印象的だった。
    また行長の妻の糸が行長を深く理解し唯一の支えであり戦友として、最期まで夫を想い続けて行動していたのも泣けた。

    特に信仰と野心との間で揺れ自分の生き方に苦悩するところや、朝鮮出兵を経て何もかもを諦め俗世から去りたいと思う行長の心情の描き方が個人的な解釈にぴったり合う行長像だっ

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    2024年03月26日
  • P+D BOOKS 宿敵 上巻

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    同じ秀吉恩顧の武将である行長と清正の確執を近習の頃から描いていて、その相容れない性質にひりひりするのだがどちらにも感情移入してしまうほど心理描写がうまい...。宿敵である行長が関ヶ原の戦いに負け処刑されこの世からいなくなった時、清正は宇土城を攻め落としていたが、城内で一人悦びはなく茫然と佇んでたとこがとても印象的だった。
    また行長の妻の糸が行長を深く理解し唯一の支えであり戦友として、最期まで夫を想い続けて行動していたのも泣けた。
    特に信仰と野心との間で揺れ自分の生き方に苦悩するところや、朝鮮出兵を経て何もかもを諦め俗世から去りたいと思う行長の心情の描き方が個人的な解釈にぴったり合う行長像だった

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    2024年03月26日
  • 彼の生きかた

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    20代の時に読み(30年以上前)このたび復刊したとのことで改めて読み直しました。若いときにも感動しましたがこの年になって理解できるものがたくさんありました。人生の理不尽をたくさん体験してきたせいかもしれません。無限にあるように感じていた未来は有限なことが実感できます。
    いじめのなくならい日本、若い世代にはぜひ読んでもらいたいです。そして有限の未来を過ごし憂鬱に思われるお疲れの世代の方々にも。声なきもの、弱い立場にあるもの、それはすべて自分自身なのです。遠藤周作氏の深い動物愛、人間愛、醜い面をも含めてうけとめてくれる懐の温かさに励まされます。
    弱くてもいい。大きなことができなくてもいい。身近なも

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    2024年02月19日
  • 秋のカテドラル 遠藤周作初期短篇集

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    大好きな遠藤周作先生。
    新作を今読めるとは思わなかったし、出会いも知らず知らずで。
    前半後半のみならず、エッセイだなと思うところもあれば、あれ?フィクションかな?と思ったり。
    短編集なので、とても読みやすかった。
    オチが明確なことがあ〜!って思ったり。
    ん?と考えさせるオチもあったり。
    遠藤周作のユーモアを感じさせる楽しい作品たちでした。

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    2024年02月15日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    作者が考えた理想の女性とされる森田ミツ。美しくもなければ学問もなく、ただ誰か他人がミジメで、辛がっているのをみると、すぐ同情してしまう癖を持つ彼女は、作者の描くイエス像を思い起こさせます。なぜ彼女がみじめに棄てられなければならなかったのか、という問いはすなわち、なぜイエスが十字架に架けられなければならなかったのかという疑問へと結びつきます。

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    2025年09月21日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    人が人を裁く資格なんてない。40年経った今も、当然それは変わらない。
    追い求める正義は、果たして誰にとっても正義なのか。自分がその立場に立った時、絶対に起こらないと断言できるのか。
    生きることに付随する悲しみが、あまりに多すぎる。もう苦しまなくていい、もう辛いことはない。誰もが死に向かう中で、死を求めることが「良くない」ことだと断言ができなくなる。
    人間の悲しみを知らないように振る舞う人間は、眩しい。し、暴力的だ。

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    2024年02月04日
  • 【新装版】ほんとうの私を求めて

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    自己啓発的な導入で始まった文豪エッセイに若干の戸惑いを抱きつつ、気付けば著者の一生に滑り込んでいた。温かでお茶目で少年のような心を持っていた著者に親しみを感じた。
    私が小学生の頃に亡くなられている。お会いしてみたかった。

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    2024年01月29日
  • イエスの生涯

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    ネタバレ

     私は本書にイエスの天涯孤独を読んだ。
     「汝等は徴と奇蹟を見ざれば信ぜず」(ヨハネ、4・48)とあるが、民衆はおろか、弟子たちですらもイエスの真意には寄り添わず、ひたむきに「愛」を説くイエスに、病を治す奇跡や、ユダヤ民族主義のリーダーとして立ち上がることを期待していた。
     「裏切り者」ユダに、イエスの意図を理解したうえで、民衆が求める者へと路線を変えてほしいと切に願い、幻滅した「哀しき男」[第8章]としての像を見たのは斬新な指摘であると感じた。

     お伽噺のような「物語」を基にして、説得的な「事実」を論理的に追及しているというある種の矛盾がとても面白かった。

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    2024年01月22日