感情タグBEST3
Posted by ブクログ
20代の時に読み(30年以上前)このたび復刊したとのことで改めて読み直しました。若いときにも感動しましたがこの年になって理解できるものがたくさんありました。人生の理不尽をたくさん体験してきたせいかもしれません。無限にあるように感じていた未来は有限なことが実感できます。
いじめのなくならい日本、若い世代にはぜひ読んでもらいたいです。そして有限の未来を過ごし憂鬱に思われるお疲れの世代の方々にも。声なきもの、弱い立場にあるもの、それはすべて自分自身なのです。遠藤周作氏の深い動物愛、人間愛、醜い面をも含めてうけとめてくれる懐の温かさに励まされます。
弱くてもいい。大きなことができなくてもいい。身近なものを守っていこう、応援していこうと思わせてくれる本です。
都内にも猿が出没しているようです。猿の側からも少しだけ見てくれる人が増えますように
Posted by ブクログ
遠藤周作は愚直で純粋な者の味方である。日常劇でありそうな筋なのだが、最後のもの言えぬ哀しみにひきこまれ、涙を誘われた。不器用な研究者と幼なじみ、恋の鞘当てに巧みに言葉で押し込んでくる男。不純の俗界に残された側にもやるせなさが漂う。猿に比べたらば、社会のボスの姿を皮肉に描いている。
代表作ではないが、良作である。孤独を感じる人向けに。
Posted by ブクログ
読み終わったあとに、心に何かが残る。
久々に、そういう本を読んだ。
主人公の福本、朋子、加納、藤沢と
大きく4人の生き様、生き方が描かれているが
どの生き方に対しても、理解ができるし、
身近なあり方として感じられ、
自分の生き方と合わせて考えられるところが
本作のすごいところなんだと思う。
Posted by ブクログ
10年以上前に1度読み、この本がきっかけで遠藤周作が好きになった。
「うすよごれた、陰険な人間の世界」「純真無垢な動物たちの世界」
この2つの世界を対比させたとき、確かに人間って醜いなあと思った。利益のために自然を破壊する行為、共存を唱えても、権威のためには、動物愛護などの崇高な言葉は引っさげてしまう。
自分の私利私欲のために動物を殺す人間と、生存するために必要な殺生しかしない動物。
なんだかやるせない。
朋子の人間関係による心情の変化も、すごくうまくかけていると思う。「生きるって、時には周りを傷つけてしまう」相手を慮った言葉だけど、一平からしたら違うとらえ方をしている。
結局、自分のことを一番よく知っているのは、他人。他人あってこその、自分なんだと思う。
強く生きたい。その強さとは何か、を考えさせられる良書だと思う。
あと、生きるって、本を読めて、少し食べられればそれでいいっていう捉え方ができればなあとおもった。
Posted by ブクログ
就活前の私にピッタリな一冊。
人からどう思われようとかそんなことは構う必要はなくて、それより自分の意志を大切に。
守りたいものは、なにがなんでも守る。守りたいものを見つける事は人生において大切だとつくづく感じたな。
遠藤さんのメッセージが伝わりやすい、読みやすい一冊。
Posted by ブクログ
読み終わった後も本を読んでいる余韻が残っているような本。
私が遠藤周作の作品の中で一番好きな作品。
自分のやることに一身を捧げる決意、その強い意思を一平から感じた。
一平の生き方、加納の生き方、朋子の生き方はそれぞれに違う。
誰の生き方が悪とか善とかいうことではなく、ただ単に生き方が違う。
そんな当たり前のことを改めて理解する。そんな作品であると思う。
Posted by ブクログ
どもりのため子供の頃から気が弱い一平。人よりも動物を愛した彼は野生猿の調査に生涯をかける。人間の身勝手に翻弄される動物たち。
この本が書かれたのは20年前なのに、こういうストーリーということが哀しい。全然人間は変わらないのかしら。久し振りに泣いた本でした。
Posted by ブクログ
大学の卒業研究でニホンザルについてちょこっとかじったから、あまりに内容が近くてちょっとびっくりした。
一平はあれで幸せ……なんだろうなあ……。”彼の生き方”を考えると胸が苦しくなる。
加納は嫌い。嫌い。嫌いだ。根本から女を馬鹿にしてる。…でも朋子の気持ちも分かる…。
朋子は『昔の女性』という印象だったけど、今もこの頃と変わっていない部分はあるんだろうな。だから彼女の気持ちの変遷も行動も理解できるんだと思った。
ずっとオチのついた話しか読んでこなかったから、最後は少し戸惑った。
でもホントにすごく読みやすい。昔の文庫だから字も小さいしこの本は厚みがあったけどあっという間に読めた。かといって字だけなぞってる訳でもないし。
読んでるのが楽しい。
Posted by ブクログ
まっすぐに自分の生き方を貫く主人公は素敵ですね。
どうしようもなく他者に影響されたり、阻害されて、変えざるを得ない時もやっぱりあるけれど…。
主人公が恋い焦がれている女性も、最終的には悲しい結末になってしまって、エンディングを物悲しくさせているところがあるけど、美しい描写で描かれていてGoodですね。
Posted by ブクログ
心にずしっと考えさせられる小説です。けれども非常に読みやすく引き込まれるようにして中に入っていけました。
純真でまっすぐしかし弱い面を持つ主人公”一平”はもちろん、その他の登場人物”加納””朋子””藤沢”の人間描写がとてもよく書けていると思いました。
そしてそれらの人物それぞれに人間の持つ悲しさのようなものが見え隠れしていて、私はとてもつらくなりました。
日本猿の生態の記述も非常に興味深いものです。
エンディングの風景描写も、頭の中でくっきり思い描ける素晴らしいものでした。
また遠藤周作氏のいい本に出会えて非常にありがたく思っています。
Posted by ブクログ
せつねー、なんか読後に泣きそうになった。おれもこんな生き方が出来たらな、と思う。いい奴だな一平は。正直めちゃくちゃ良い本。とにかくなきそうになった。
Posted by ブクログ
面白かった!嵐山の猿山モデルだそう。あそこが出来るまでの流れがこんな感じだったのかと思うと実に興味深い。もちろん創作盛なんだろうけど。主人公は「深い河」の大津や「優駿」のジャガイモ(渡海博正)系の、不器用だけど真っ直ぐな生き方。リアルではごめんだけど、小説では応援したくなる。
Posted by ブクログ
著者のイメージはテレビで、ユーモアあふれる会話をする作家さんと言うものでした。間違いなく著者は日本の文壇で名前を残している方だと思います。ただ残念ながら、後世に読み継がれていくのかと思うと不安になります。私の杞憂かもしれませんが、「海と毒薬」「沈黙」「深い河」など。感銘を受けた作品が沢山あります。今回読んだ作品は彼の代表作とまでは言えない作品かもしれませんが、面白く読めました。著者の弱い立場の人に寄り添う姿勢が読み取れます。主人公の学歴に対するコンプレックスなどは著者に通じるものがあるのではないかと勝手に思っています。今度は、著者のエッセイを読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
生来の吃音から人を避け動物に興味を持つようになった主人公が、職業もニホンザル研究を選択する。人間たちに翻弄されるサルを自分と同化し、幼なじみの朋子の影響で徐々に強い気持ちを持つように成長していく。2019.1.1
Posted by ブクログ
2つのテイスト違いの物語が絶妙に絡み合う良作。ひとつめは、一平と猿、そしてとそれを取り巻く人たちの純情物語。勝手にココリコ田中を想像しながら読んでました。そしてもう一つが、朋子の大人の恋愛事情。絵に描いたような小者の夫・藤沢と、切れ者専務・加納(ここまでくれば調教師と呼んでも良いかも)の両方ともいいキャラしてる。結局良いも悪いもなく、最後は個々の納得感が大事、とまとめてもよいくらい、教訓めいたものもなくさらりとした読後感。
Posted by ブクログ
強引な組織方針に屈しない主人公という典型的なストーリーだが、吃音をもつ自虐的思考の主人公だけにインパクトがある。野生の猿に餌付けすること自体良くないことではと現代の概念を持って読むので違和感が出るがそこがストーリーの本質ではないので。
幼なじみとの恋愛は思わぬ展開に。残念だけどこちらのほうが主人公の生き方をより印象づけることにもなります。ページが残り少なくなるなか、淡い予想を裏切るラストの展開。そこまでしなくとも…と思わなくもない。
Posted by ブクログ
口の不自由な男と猿達、
それを取り巻く人間達の話。
主人公の男の性格の為か、
海と毒薬、侍といったような作品と違い
スッキリと明るい印象を受けました。
結末もどこかおとぎ話のようです。
読み終わった時、
ずっしりと重い気持ちは残らず、
彼の純朴さが心に残るようでした。
Posted by ブクログ
著者は洗礼を受けたキリシタンとして有名であるが、今回のストーリーには彼独特の宗教観は見受けられなかった。
吃音症の少年が成年へと成長していく中で、変わらない純朴さが描かれている。対照的に、その友人は成長するにつれて少女から女性へと変化していく。
ただひたすらにまっすぐ生きようとした、不器用な男性が、時代の波にもがきながら戦い続ける。
愛とは何なのか。
自らの信じるものは何なのか。
そんなことを考えされられた一作だったと思う。
この辺りが遠藤周作氏の魅力ではないだろうか。
Posted by ブクログ
いくら猿がすきでも ここまでは・・( ̄_ ̄∥) と最初は
思っていたけれど こういう生きかたも「あり」なんだと
読み終わったあと 不思議な勇気が湧いて来た作品。
あとになって いろんな想ぃが じわじわ来ます。
ヒトは 何を人生の主軸に持って来るかによって これほどまでに
生きかたに こだわりを持てるんだなぁ・・と 考えさせられた感じ。
Posted by ブクログ
理想に生きる事と現実社会で生きる事の対比。
一平のような生き方には憧れるけど、絶対に出来ない。ひたむきでどこまでも真っ直ぐでいつまでも純粋な人間って凄いと思った。
Posted by ブクログ
耳をすませばのお父さんのセリフを思い出した。
人と違う人生を歩むことは・・・
ってやつね。
やっぱり好きな仕事に情熱注ぎたい。自分の信念を持って生きていきたい。本当にそう思えるようになる。だからこの本好きなんだよね。
Posted by ブクログ
不器用だからこそ、不自由だからこそ見出したその生き方。
邪魔するのは偽の強さを振り翳すまさに人間という遣る瀬無さ。
ある意味では「彼の生きる道」なのかもしれない。それでも「生き方」と表現する方が、私も好きだ。
その時代にどれだけそういう捉え方があったのかどうかはまた別だが。
Posted by ブクログ
どもりのために消極的な性格の福本一平は、ことばで語りあう必要のない動物との触れあいに、心のやすらぎを感じていました。彼は、小学校時代の音楽教師の示唆を受けて、ニホンザルの生態を研究する道をえらびます。彼は日本猿研究所に所属し、志明山でニホンザルの餌付けを試みていましたが、志明山の土地が観光業者の手にわたったことで、ホテルの開発が着手されてしまいます。さらに研究所の所長が交代したことで、人づきあいの苦手な一平は苦しい立場に追いやられ、職を辞して比良山で研究をつづける道をえらびます。
一方、小学校時代から一平と幼なじみの中原朋子は、志明山の開発を進める業者に勤務する夫のもとに嫁いでいました。彼女は、志明山の開発に反対しているのが一平であることを知り、彼の研究に対する真摯な態度にひそかな感銘をおぼえていました。しかし、彼女の夫の藤沢が飛行機事故によって命を落とし、彼女は夫の上司である加納からの求婚を受けます。
自分の望むものはかならず手に入れようとする加納のアプローチを拒むことができず、ついに朋子は加納との結婚を承諾しますが、不器用でありながらも一途にニホンザルを守ろうとする一平のすがたに、朋子は心のなかで声援を送ります。
ドラマティックな構成の作品で、信仰をめぐる著者独自のテーマが追求されている作品群とは異なる印象ですが、単純にたのしんで読むことのできる内容でした。
Posted by ブクログ
男性の強引さに押し込められ、悔しさと諦めを胸に前を向く女性の生き方は、女性にとって幸せなのだろうか。
「彼女の生き方」として現在もあるであろうこういった生き方は、「そういう男らしさを彼女らは望んでいる」と男性が信じ込む根拠になるのだろうか。
強引さを求めてるというのは現在でも言えるのだろうか。AVのように「男性の夢」に過ぎないということはないだろうか。気になる。
書かれた時代もあるだろうし、戦争を乗り越え安寧を求めた朋子を書いているためというのもあるだろうけど、この「男性の夢」を肯定、再生産するような読み方はこの本の試みたことに反すると思う。
『沈黙』のように、人々の生き方を考えさせるような作品だったのではないだろうか。もしそうだとしたら、天才的。