遠藤周作のレビュー一覧

  • 沈黙

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    8月の長崎旅行をきっかけに読み始めた。言わずと知れた名作だが、この度が初読。

    長崎は「鎖国」の江戸時代にオランダとの通商が行われた港であり、カトリック文化の影響を色濃く受けた地域だ。浦上天主堂、大浦天主堂などの歴史的な教会は、長崎を訪れる際には必ず立ち寄る場所。

    キリスト教を生涯にわたって文学のテーマとした遠藤周作は、日本にあって稀有な作家。中学生のころから狐狸庵閑話など軽いエッセイには親しんできたが、なかなかこの作品には近づけなかった。

    キチジローという「転び」キリシタンにひときわ興味を惹かれる。パードレのロドリゴをわずかな金で売り渡した「弱き者」キチジローが、神の救いを最も必要とする

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    2025年09月21日
  • 沈黙

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    過酷な拷問や現実に対する、宣教師の心情の機微を事細かに表現されていて、迫力があった。

    物語は終始雨が降り続く、暗澹な雰囲気のなか進んでいくが、派手さを取り除かれたことで、考える葦としての一人の人間の存在をより強く感じることができた気がする。

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    2025年09月14日
  • 秋のカテドラル 遠藤周作初期短篇集

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    色々な想いにさせてくれる本。気軽にサクッと読めるが、一つ一つじっくり読める。合間時間に読んで楽しませてもらいました。

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    2025年09月13日
  • 深い河 新装版

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    インド旅行の予習として読破。ほぼキリスト教の話で予習としての意味は殆どゼロだったが、それにしてもいい小説だった。

    ホテルの名前を告げてタクシーに乗ったが、結婚式で道が塞がっていて一向に到着しない。焦れて式場の名前を運転手に尋ねると、運転手は悪びれもせずに、目的地のホテルの名前を言った、みたいなエピソードが妙に印象的。
    本筋とはぜんぜん関係のないちょっとした話だが、インドらしさ、少なくとも「日本人の思うインド」をこれ以上なくよく表していると思った。

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    2025年10月30日
  • 海と毒薬

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    ほんとに本って忘れちゃう、
    すごく陰のある話だったけど読んで受けた衝撃がすごかった。
    個人的には芥川の人間失格と近いものを感じた

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    2025年09月08日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    本屋さんで目について。
    沈黙、海と毒薬より読みやすいかなと思って。

    出会えてよかった本。
    最初の方の短編は、終わり方があっけない。救われない。しんどい。

    でも、すごく静かに落ち着いている文章なのに、心にグッと迫ってくるような感じ。他の作品も読みたいと思った。

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    2025年08月31日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    遠藤周作さん著「悲しみの歌」
    「海と毒薬」の続編に当たる作品。主軸であった勝呂医師の30年後が描かれている物語になる。

    研修医として生体解剖に携わってしまった過去のある勝呂は、罪という意識とは少し違う罰を自身に課せているように感じた。
    彼はどちらかというと自分自身に失望しているように感じる。
    彼自身が凄く人間らしすぎて、医師として人として、局面局面で選択せざるをえないその数多は、どの道を通っても誰もが納得できるものではないものばかり。
    その中の一つは生体解剖という間違えでもあった、過ちの中でも最悪のもの。

    そんな彼が辿る道は…
    勝呂のその後の歩みは常に孤独感で溢れていて、まるで社会から隔絶

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    2025年08月29日
  • 沈黙

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    キリスト教を布教しにくるも排斥される宣教師たち。その3人の運命。愛とは、信仰とは、慈悲とは、祈りとは、弱者とは、タイトルの沈黙とは。

    10代までに読むのは読んでもやはりわからなかっただろうなという思いと、たぶんむごすぎて離脱したと思う。いまだからこそ読めたという感覚。すげ〜

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    2025年08月28日
  • 海と毒薬

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    罪悪感って外からは見えないけど、本人の中では一生消えない重りになる。しかも裁判とか法律で裁かれる以上に、ずっと自分自身に裁かれ続ける。

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    2025年08月27日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    捕虜への生体実験という実際の事件をベースにした作品。ここでは、人間を押し流す運命に抗い自由を与える存在として神が捉えられていた。しかし、そのような神が存在せず、ただ海にのまれるように罪を犯してしまう登場人物たち。そして、彼らは、その罪に対して「良心」の問題ではなく、あくまでも一時的な世間的な罰のみの問題として考えている。文章としては大分読みやすく、それぞれが印象的であり面白い。また、解説もとてもわかりやすく面白い。

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    2025年08月25日
  • 海と毒薬

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    第二次世界大戦中の1945年に、福岡県福岡市の九州帝国大学(現九州大学)医学部の解剖実習室で、アメリカ軍捕虜8人に生体解剖(被験者が生存状態での解剖)が施術された事件を元に書かれた小説。解剖実験に疑問を抱く勝呂、逆に全く疑問も良心の呵責もない戸田という2人の研究生を軸に話が進む。

    戦時中の人体実験が、731部隊以外にも国内で行われていた事実にまず驚いた。
    異常な状況下において正常であろうとする者、自分が異常であると認識しつつも正常にはなれないジレンマに苦しむ者、異常であることに気付いてすらいない者、様々な人間の心模様が交錯する。戦後80年の節目に読めて良かった。

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    2025年08月19日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    ネタバレ

    ミツの純粋無垢で不器用な生き方に心掴まれた。主人公の吉岡がクズでミツが田舎生娘であるという単純な構図なのに、何度もミツの言葉に行為に心震わされた。ミツが不幸せな人を見るとたまらない気持ちになってしまうという性質、よく見かける。自分もそう。社会で生きづらいよなと思う。
    特にミツがハンセン病と判明した時、昏睡状態、命からがら「吉岡さん」と発した場面にはウッとなってしまった。
    後半部分は神の存在に関する記述が面白い。さすが遠藤周作。
    重ねてにはなるがミツの死のやるせなさ、吉岡のクズではあるがクズに徹せない人間らしさに感動した。

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    2025年08月14日
  • 悲しみの歌(新潮文庫)

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    勝呂先生のターンはずっと泣きながら読んだ。
    人は自分の目を通してしかこの世界を見れないのに、正義をかざして人を裁こうとするのは何故なのだろう。生きることはなんて辛くて悲しいんだろう

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    2025年08月12日
  • 新装版 海と毒薬

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    戦争中だったから。
    それだけでは済まされないあまりに残酷な行為を行ってしまった医師、看護師達の話です。
    前々から読みたいたいと思っていた作品。本編、解説含めて読んで良かったと思える作品でした。

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    2025年08月12日
  • 海と毒薬

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    ネタバレ

    現在から過去の回想に入り、それぞれの人物の手記、最後は戸田から教えてもらったあの詩で締めくくられる。この構造が非常におもしろかった。
    全体的に陰鬱な、そして人の生命の重みについて考えさせられる。そして、何かと冒頭の語り手「私」と回想での勝呂が「平凡が一番、幸福」と似たようなことを言っているところが印象に残っている。
    (また、勝呂に対して「しばたたきながら」という表現が多用されている点が少し気になった。)

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    2025年08月06日
  • イエスの生涯

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    神の子ではなく、人間としての表現されたイエス。
    最初から最後までずっと悲しい、しかし愛を感じる物語でした。

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    2025年08月04日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    ネタバレ

    大浦天主堂には2回行ったが、恥ずかしながら幕末の切支丹迫害については何の知識もなく、明治維新直後にはまだこうしたことが行われていたとは知らなかった。小説ではあるので、このまま史実として受け取ることはしないが。

    沈黙でも思ったことだが、これだけの迫害を受けながらも棄教をしない精神的な支えってなんなのか⋯。

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    2025年07月29日
  • 沈黙

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    ネタバレ

    人間の苦悩、何かを信じ続けようとする強さ、何かに縋ろうとする弱さ、大なり小なり誰しもが持ったことのある感情がありのまま描かれている。
    最初はイライラしてたけど、だんだんキチジローの気持ちがわかってくる。キチジローになっていく。

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    2025年07月22日
  • 深い河 新装版

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    何度も読み返す。皆、それぞれに背負うものがあり、そのすべてを深い河が包み込んでいく。善と悪が二項対立ではない、生きることを許されると感じる本。

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    2025年07月21日
  • 海と毒薬(新潮文庫)

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    様々なテーマが折り重なった傑作。ちなみに僕はこの話を読んだ後、菊と刀、新渡戸稲造の武士道を読み返した。議論のきっかけになるし、比較すべき作品も非常に多岐にわたる。人の原罪や組織内での正義などを深く考えさせられる。短い作品ながらまさに文学を体現した素晴らしい名作ということで総括したいと思います。

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    2025年07月20日