あらすじ
腕は確かだが、無愛想で一風変わった中年の町医者、勝呂。彼には、大学病院時代の忌わしい過去があった。第二次大戦時、戦慄的な非人道的行為を犯した日本人。その罪責を根源的に問う、不朽の名作。
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戦後、一人称の肺を患った男が勝呂医師と出会うことから始まり、徐々にその闇に迫ったところで回想に入るが、その後物語の終わりまで回想から出てくることなく綴られる。初めて読む構成で驚いた。
戦時中の異様な空気感を肌で感じる。病院の屋上の夜の景色、空気、音が、読後も心細くてやるせの無くて気持ち悪い感情と共に想起される。
どろどろとしていて爽やかではないが、透き通っているような雰囲気を纏った作品。
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戸田は罪悪感が湧かないと言っていたけど、最後の「世間の罰だけじゃ何も変わらんぜ」という言葉が印象に残った。
勝呂は罰を受けることを怖がっていたけど、戸田はやってしまった事実は変わらないことを、どこかでわかっていたのかもしれない。
だから本当は戸田の方が重く受け止めていた可能性もあると思った。
人は誰でも「やるしかなかった理由」を探して自分を納得させることがあるけど、ただ蓋をするだけでは、それは何かの瞬間に顔を出してまた自分を苦しめるのかもしれない。誰が悪いかではなく、人間の弱さや複雑さについて色々考えさせられた。
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戦争について考えた作品で1番好き。ミソジニーらしいと色んなところで聞いたし作中でそれとなく感じるところもあったけど、だからと言って作品も嫌いにはなれないくらい良かった。地続きになっている病棟をずっと歩いている感覚
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そんな事実が本当にあったのかって
新たな知識を得た小説でもあり
それぞれの状況や心情、理由あっての行動
今の時代、自分の生活ではありえない
そういうものを知れる良い小説。
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名作だった。
戦時中、捕虜となった白人を生体解剖するという、倫理的問題を真正面から描いた作品。
実際の事件を基にしている。
どうせ死ぬ命なら、実験で多くの人の役に立てるほうが良いとして行われた行為に対し、勝呂医師は深い葛藤を抱く。
一方、戸田医師は自分には心がないのかと良心の呵責を求めて実験に参加するが、恐怖も罪悪感も湧かない自分に気づき、諦めにも似た無感情な境地に至る。
時代背景や環境の影響が、人の倫理観をどれほど左右するのかを考えさせられる。
著者の遠藤周作はクリスチャンであり、キリスト教には明確な倫理規範があるが、日本人にはそうした指針が乏しいため、流されやすいのではないかと彼は考えていたらしい。
重く暗い題材ながら、深く考えさせられる価値のある作品だった。
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第二次世界大戦中の1945年に、福岡県福岡市の九州帝国大学(現九州大学)医学部の解剖実習室で、アメリカ軍捕虜8人に生体解剖(被験者が生存状態での解剖)が施術された事件を元に書かれた小説。解剖実験に疑問を抱く勝呂、逆に全く疑問も良心の呵責もない戸田という2人の研究生を軸に話が進む。
戦時中の人体実験が、731部隊以外にも国内で行われていた事実にまず驚いた。
異常な状況下において正常であろうとする者、自分が異常であると認識しつつも正常にはなれないジレンマに苦しむ者、異常であることに気付いてすらいない者、様々な人間の心模様が交錯する。戦後80年の節目に読めて良かった。
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現在から過去の回想に入り、それぞれの人物の手記、最後は戸田から教えてもらったあの詩で締めくくられる。この構造が非常におもしろかった。
全体的に陰鬱な、そして人の生命の重みについて考えさせられる。そして、何かと冒頭の語り手「私」と回想での勝呂が「平凡が一番、幸福」と似たようなことを言っているところが印象に残っている。
(勝呂に対して「しばたたきながら」という表現が多用されている点が少し気になった。)
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戦争文学の面白さが詰まった作品
共テ演習とか二次国語で扱われる小説の中でも戦争文学は群を抜いて自分を引き込むものがある。日本史選択で戦争へ向かっていく日本をマクロ的な視点でしか勉強していないせいでミクロ的な視点でその時代に生きる人々の生活文化を知ることは難しいが、戦争文学はそれを媒介してくれる。
この作品は実際の事件を取り扱っている。勝呂は冒頭では面白みもない貧しい町医者として描かれているが、医学生時代を中心に書いた物語の中盤以降では自分にとって彼が人情深い人物に映った。
彼の心を変えたのが生体解剖事件に関与したことであることは確実。
遠藤周作について。
名前しか知らないが、本をほとんど読まない自分にとって名前がわかるということは明らかに有名人。
読んでいて引き込まれるというより、臨場感が素晴らしいし、あちらこちらに心情とか時代を理解する手助けになる描写が散りばめらている。
中でも自分の中でも唸ったものが一つ。
海の波の描写。
戦時中の大学病院で研鑽を積んでいくにつれて、彼の中にある医学の在り方が変わっていく。戦争も形勢が悪くなっていく。医学部内の対立も深まっていく。それにつれて海の波は押し寄せるように感じる。
Surge という英単語がもっとも説明がきくだろうか。
医学部に進学する人、人と接する仕事をする人には、人を世話をすることとはどういうことかを捉え直す良い機会になると思うので手に取って読んでみるべき。
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治療や解剖の様子が妙にリアルに書かれていて、読んでいる此方まで体が痛くなってきた。
解剖に参加した人間が単なる異常者というわけでもなく、放心状態で促されるままの人、自分の立ち位置のために心を押し殺した人など、日本人の特質が垣間見えるように書かれていた。
自分の行為に良心を見つけようとする姿は本当におどろおどろしい…
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良心の呵責を感じない戸田が印象的だった。いい子のフリをしたり、蝶のはく製を盗んだり、手を出した女性が妊娠したら自分で中絶手術したり、結構ひどい。でもバレると思うと苦しいのにバレないと分かると平気。
ここまでひどくなくても、バレなければ平気というのは誰にでもある心の動き。そういう記憶は全くない人はいないのでは、と思う。生体解剖の後も戸田は自分の心の中に良心の呵責を探すけれど、見いだせない。良心の呵責、罪の意識、ひどいことをした、という自覚は自分の心の中からわいてくるものだと思うけど、戸田の今までのどこをどうしたらよかったのかわからない。
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九州大学生体解剖事件という実際のテーマをモチーフにしているがあくまでフィクションである。
しかし登場人物を露悪的人物としても時代の被害者としても描かず一人の個人として丁寧に描写することにより、その個人になりうるのだ、という圧力を突きつけられた。
勝呂は患者の死に心を痛める良心的な人物ではあるが、おばはんに親身にするのは本来の優しさだけではなく、どこか自分を良心側だと言い聞かせる盾でもある。
そのおばはんという藁を失った結果、流されるままに解剖に加担する弱さは、良心も嘘ではないが声を上げる正義の味方ではない多くの個人の体現のように感じる。
一方で戸田は他人の死や道徳に対して徹底して冷めており、殺人に加担した後も良心の呵責に苛まれることはない。別の人物として描かれているがこれも人が持つグラデーションのうちの一つであり、
見知らぬ他人の死やニュースを傍観できる、時にはエンタメとして昇華できる、建前の裏にある感情を体現しているように思える。
そして上田は彼らとも違い、ただの嫉みや不満の正当化の行為として、復讐すべき相手への叩き棒として殺人への加担を行う。
そこには人の死に対して焦点すらあっておらず、存在するのは個人的かつ矮小な感情だけである。
これもまた別のベクトルで不気味ではあるが、誰しもが抱える人格である。
戦争という毒薬により人間の死が身近になり、感覚が麻痺して境界線が曖昧となってしまった場合、
人を殺すことに特別な理由はいらず日常の価値観としてそれが溶け込んでしまえば、隣の善人も真向かいの変人も合理的なあなたも絶対的価値観の中にはおらず、流されるままに人を殺すことがあるのだ、と言われた気がした。
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私の好みの作品だった。なんとも思わない私が変なのだがところどころ生々しい描写はあるもののスラスラと読めた。終戦後すぐの話だがすぐに過去に飛ぶ。人々の苦しみや覚悟、容易く想像できるものではないが想像できるほどの文章の心地よさだった。命を軽んじている戦争という存在と命を慮る医療現場の対比が重たかった。
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人間失格にちょっと似てるかな?
話の内容は太平洋戦争中、実際にあった九州の大学病院での米国人捕虜の生態解剖事件が元になっていて、その手術に関わった二人の研修医と看護師の話。
人が死ぬのが当たり前の時代だからなのか、やっぱり倫理観が欠如していて、そういう環境だと人間はそうなってしまうのかと人間の環境適用力をある意味恐ろしく感じた。それとは別に神のいない日本人としての倫理観の欠如も書かれていて、作者はキリシタンなので、ある意味西洋人的な視線で日本人が書かれていることが看護師の話の部分で特に感じた。
特に共感できたのは研修医の戸田の話で、戸田は自分の犯した罪に対する罰には恐れを感じるけど、罪悪感は感じたことはないとたびたび話しておりそんな自分自身を嫌っている様子が書かれているが、確かに自分自身にもそういう部分があるので戸田の心情は共感して読めた。ただ、海と毒薬を呼んで罪と罰とは結局なんなのかよりわからなくなった。
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実際に会った事件をモチーフにしているとのことで衝撃。
人間の生体実験なんて昔の遠い国の一部の人間性を失った集団が行なっていたというイメージだった。
でもそこに関わっていたのは、普通に出世欲に塗れたり、普通に自分の境遇に鬱屈してたり、普通に良心があったりする、どこにでもいる人間だったのかもしれないと思うとやるせ無い気持ちになった。
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生体解剖実験に携わった人たちの話。
罪への向き合い方、命そのものについて深く考えさせられた。自分の罪を責める人の苦しい心情が伝わってきて読んでいて苦しくなることもあったけれどいい学びになったと感じた。また読みたい
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勝呂は一番欲しかった普通の生活を得ることが出来なかった。特に言及はないが戸田も所謂、普通の生活は出来なかったのではないかと思う。どういう状況であれ、後の歴史が証明してくれることを信じて不本意なことはしないように生きたい。
看護長と上田の対比については幻想を持つこととニヒリズムに支配されることは現実を見てないという点で同じだと思う。何事も距離感が大事。
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日本人の精神性を追求する」といった解説もあるけれど、罪の意識や良心は国籍や宗教に規定されるだろうか。むしろ先天的な資質の影響が、環境や教育など後天的な影響より大きいと感じる。時代や国境を越えて読み継がれているのも納得の一冊。
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人は、信仰を持たないと罪の意識も持てないのだろうか。
信仰の有無とは違う、という感覚は覚えるけれど、それならばどうやって裁きを受け入れるのだろう。反省して罪を償おうと思えるのだろう。
“信仰”で捉えるのも二元論的なのかなぁ。
無理…と押し潰されてしまう勝呂も、良心の呵責を期待して果たせなかった戸田も、両方とも読んでいる自分から距離はありませんでした。
上田看護婦すら、わからなくもない…という存在。
特にこの3人の心情がひしひしと生々しく伝わってきます。
そして、終わらない空襲と敗戦の予感の、疲労と諦念があれば、わたしも容易に傾いていきそうという怖さがあります。
加えて、F県在住なので、移転前の九大箱崎キャンパスにあったコールタールで塗られた校舎を見かけ、空襲避け本当にやってたんだ…と思ったり(今は撤去済)、
母方の大叔父がこの時の九大に通っていましたので(文系学部だったので学徒勤労動員で長崎にいたそうです。8/9にも)、
勝呂や戸田が眺めていたあの海も街も身近に感じられます。
生体解剖を「これは正義だ。神もお赦しになる」と言われたら、信仰を持つ人はどうするのだろう、と思いました。
善悪の判断の軸を信仰に置くのもなんだか……日本人は無宗教と思ってしまうほど信仰(神道、仏教、アニミズム)が体に染み込んでるだけだと思いますし。
違う形の苦悩を抱える人間ドラマが面白いけれど、信仰がないから罪の意識が〜について色々考えさせられてしまう作品でした。
再読だったけれど、何度でも読めます。
映画も観よう。若い頃はナヨナヨしてた記憶がある(『もう頬杖はつかない』参照)奥田瑛二さんが勝呂、若い頃はたぶん観たことない渡辺謙さんが戸田かぁ。
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某大学の某捕虜解剖事件を元にした小説
淡々と進む グロテスクな要素はあまりない
あらすじで物語全部解説しちゃってるじゃん! って思ったら全然違ったしあらすじはガチであらすじだった
勝呂の読み方が全く覚えられなくて、出てくるたびに読み方を調べていた バカ
「これ、俺じゃん......(自分が常々考えていることが、近しい形で出てきたという意味)」と思いながら読んでました
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戦時中の異様な環境と異常な振る舞いが生々しい。時代の大きな流れにただ飲まれるだけの絶望感の中に、立ち止まって孤立する主人公に自分もなれるだろうかと考えさせられる。
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戦禍の白い巨塔 やはり残る作品には文学となる良さが確実にあるのだと思う。戦禍という極めて厳しい状況下において、病院で繰り広げられる人間模様と人間の探究および医学の進歩への貢献。これは日本特有のものではなく、どの国にも、いやこれより酷い状況の場合も確実にあったと思う。モラルは今では考えられないほど低かったし、人権なんてなかなか重んじられていない時代でもあったわけだし。過去の惨劇があって、今がある、というわけだ。
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人は誰かから罰せられるから罪があるのか、罪が先か罰が先か。
良心の有無に限らず、誰しも罪を犯す可能性はあると言う事だ。どれだけ良心の呵責に苛まれようとも、結局犯した罪の重さは一緒。
罪を犯してしまうのは環境のせいではなく、各々の選択の結果である。
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☆4.2
なんとなくで手に取った本だったけど、こんなに心に残る時間になるとは思っていなかった。
どんな年齢の時に読んだとしても、必ず読んで良かったと思うことだろう。
続編があるとは知らなかったので、その続編『悲しみの歌』もきっと読もう。
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戦時中、実際にあったことをモデルにした、病院を舞台にしたストーリー。
この頃の日本もなかなかに残酷なことをしていたことは知っているので、驚きはしなかったけれど、人は時代と環境が揃えばこんな感覚でいられるものなのかなと、今もどこかの国では同じようなことをできてしまう人たちが存在するのだと思うと、やはり背中が寒くなる。
あまりこうした小説は読まないのだけれど、とても読みやすかった。
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ドキュメントとして読むべきか、創作として読むべきか。結局のところ時代背景なのかなとも思う。結局みんな死ぬから命が軽い。命を奪うことに罪の意識がない。ましてや米兵。なのに、病院内の権力争いには固執していたり、男女のいろんな執着心も持っている。どうせみんな死ぬと思うのに、執着だけはあるんだ。自分はこの先も生きていくんだとも思っているあたり、よくわからないけど人間って感じ。
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もう一回読もうと思うけど、文章の作り方が面白い。
「私」視点だったのが色んな人の手記になっていって…
統一されてるのは戦争の時代の仄暗い、常に死と隣り合わせの暗くて冷たい雰囲気。
上田看護婦の腹の底からのドス黒い怒りや憎しみや悲しみに、僅かながら共感してしまうところがあった。
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戦時中に九州で行われた捕虜に対する人体実験。
それに関わった人たちの、心情変化がメインテーマと感じた。
病院で死なないのなら市街地の空襲で死ぬ
大陸で人を何人も殺めた
そんな、死が日常にある時代。
自分の努力では何ともならないことだらけだった時代。
それでも医師が死を前提とした人体実験をするということは異常。
読者の感情を揺さぶるのではなく、何かを投げかけるような文章。