【感想・ネタバレ】海と毒薬のレビュー

あらすじ

腕は確かだが、無愛想で一風変わった中年の町医者、勝呂。彼には、大学病院時代の忌わしい過去があった。第二次大戦時、戦慄的な非人道的行為を犯した日本人。その罪責を根源的に問う、不朽の名作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

戦後、一人称の肺を患った男が勝呂医師と出会うことから始まり、徐々にその闇に迫ったところで回想に入るが、その後物語の終わりまで回想から出てくることなく綴られる。初めて読む構成で驚いた。
戦時中の異様な空気感を肌で感じる。病院の屋上の夜の景色、空気、音が、読後も心細くてやるせの無くて気持ち悪い感情と共に想起される。
どろどろとしていて爽やかではないが、透き通っているような雰囲気を纏った作品。

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2026年06月10日

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ネタバレ

戸田は罪悪感が湧かないと言っていたけど、最後の「世間の罰だけじゃ何も変わらんぜ」という言葉が印象に残った。
勝呂は罰を受けることを怖がっていたけど、戸田はやってしまった事実は変わらないことを、どこかでわかっていたのかもしれない。
だから本当は戸田の方が重く受け止めていた可能性もあると思った。

人は誰でも「やるしかなかった理由」を探して自分を納得させることがあるけど、ただ蓋をするだけでは、それは何かの瞬間に顔を出してまた自分を苦しめるのかもしれない。誰が悪いかではなく、人間の弱さや複雑さについて色々考えさせられた。

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2026年05月27日

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ネタバレ

現在から過去の回想に入り、それぞれの人物の手記、最後は戸田から教えてもらったあの詩で締めくくられる。この構造が非常におもしろかった。
全体的に陰鬱な、そして人の生命の重みについて考えさせられる。そして、何かと冒頭の語り手「私」と回想での勝呂が「平凡が一番、幸福」と似たようなことを言っているところが印象に残っている。
(勝呂に対して「しばたたきながら」という表現が多用されている点が少し気になった。)

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2025年08月06日

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ネタバレ

人は、信仰を持たないと罪の意識も持てないのだろうか。
信仰の有無とは違う、という感覚は覚えるけれど、それならばどうやって裁きを受け入れるのだろう。反省して罪を償おうと思えるのだろう。

“信仰”で捉えるのも二元論的なのかなぁ。
無理…と押し潰されてしまう勝呂も、良心の呵責を期待して果たせなかった戸田も、両方とも読んでいる自分から距離はありませんでした。
上田看護婦すら、わからなくもない…という存在。
特にこの3人の心情がひしひしと生々しく伝わってきます。
そして、終わらない空襲と敗戦の予感の、疲労と諦念があれば、わたしも容易に傾いていきそうという怖さがあります。

加えて、F県在住なので、移転前の九大箱崎キャンパスにあったコールタールで塗られた校舎を見かけ、空襲避け本当にやってたんだ…と思ったり(今は撤去済)、
母方の大叔父がこの時の九大に通っていましたので(文系学部だったので学徒勤労動員で長崎にいたそうです。8/9にも)、
勝呂や戸田が眺めていたあの海も街も身近に感じられます。


生体解剖を「これは正義だ。神もお赦しになる」と言われたら、信仰を持つ人はどうするのだろう、と思いました。
善悪の判断の軸を信仰に置くのもなんだか……日本人は無宗教と思ってしまうほど信仰(神道、仏教、アニミズム)が体に染み込んでるだけだと思いますし。

違う形の苦悩を抱える人間ドラマが面白いけれど、信仰がないから罪の意識が〜について色々考えさせられてしまう作品でした。
再読だったけれど、何度でも読めます。
映画も観よう。若い頃はナヨナヨしてた記憶がある(『もう頬杖はつかない』参照)奥田瑛二さんが勝呂、若い頃はたぶん観たことない渡辺謙さんが戸田かぁ。

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2025年07月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

某大学の某捕虜解剖事件を元にした小説
淡々と進む グロテスクな要素はあまりない

あらすじで物語全部解説しちゃってるじゃん! って思ったら全然違ったしあらすじはガチであらすじだった
勝呂の読み方が全く覚えられなくて、出てくるたびに読み方を調べていた バカ

「これ、俺じゃん......(自分が常々考えていることが、近しい形で出てきたという意味)」と思いながら読んでました

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2025年05月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

尊敬する人が遠藤周作さんの本がお好きとのことで読んでみました。
戦争時の生体解剖に関わった人の話。
実際に起こった事件から、少し内容等変えて書かれているそうですが(解説で知りました)
本当に起こっているかのような表現に、ドキドキハラハラしながら読みました。
途中良心が痛みすぎてしんどくてなかなか読み進められないところがありましたが、勝呂さん、戸田さんそれぞれの心境がよく書かれていて、私は勝呂さんの方にとても感情移入しましたが、戸田さんのような人も中にはいるのだなぁと思いました。
勝呂さんもこのようなご経験があったから、冒頭のような生活をしていたのか…などと後でつながりました。
戦争時の心理状態では人命を尊重することが薄れてしまうのかな、と戦争を経験したことがないですが思いました。

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2024年10月17日

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ネタバレ

オーディブルで聴いた。

戦時中の病院で、アメリカ人捕虜を生体実験をして殺してしまう医者と看護師の話。
最後がよく理解できないまま終わってしまった。

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2025年01月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

出だしの文章から海と毒薬はどう関係してくるのだろうと疑問に思った。
言葉通りの「海」と「毒薬」というものが直接的に作品に出てくる訳ではなく
話中において戦争が蔓延る海という世界で人間の為す罪や罰を毒薬として表しているのだと読み終えてから知るのである。

目の前で人が殺されようとしているところを
自分は手を加えていないから悪くないと、何もしていないのだとこれから起こることに自身だけ目を背ける勝呂の心情こそが人間の罪や罰、つまり毒薬になり得るのだと私は感じた
勝呂は何もしていないのだ
何も
目の前で捕虜が解剖されるというのに
何もしなかったのである
何もしていないから悪いのでは無い
何もしなかったのが悪いのだ、と私は考える
自分の行動を正当化しようとする勝呂こそ
戦争で死んでいく人間が沢山いる中で
研究に回され解剖される捕虜をただみているだけだった勝呂こそ
広い海に落とされた数滴の毒薬なのだ。

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2024年08月18日

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