あらすじ
純なナポレオンの末裔が珍事を巻き起こす。
春のある日、銀行員隆盛の妹、巴絵に一通の手紙がシンガポールから届く。姿を現したのは、フランス人、ガストン・ボナパルト。ナポレオンの末裔と称する見事に馬面の青年は、臆病で無類のお人好し。一見ただのうすら“おバカ”だが、犬と子どもに寄せる関心は只事ではない。
変質者か? だが、すれっからしの売春婦をたちまち懐柔したり、ピストルの弾丸を相手の知らぬ間に抜き取るなど、はかりしれない能力も垣間見える。
そして行く先々でその生真面目さから珍事を巻き起こしていく。日本に来た目的は?その正体は?そんな“おバカ”な一方で、彼は出会った人々の心を不思議な温かさで満たしていく。
遠藤周作、得意の明朗軽快なタッチながら、内に「キリスト受難」の現代的再現を意図した心優しき野心作。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
★5つ!!!
ガスさんの訪日してから最初の出会いや出来事。
癒やされます。
殺し屋の遠藤と作者はどんな繋がりなのだろう?
気になる
ナポレオンの最期も悲しい、、、
そしてどんな経緯で新宿に戻ってきたんだろう?
会社で「ふあーい」と応えて場を和まそうと思う今日此の頃
Posted by ブクログ
大人のためのお伽話です。
ガスさんに癒されました。
これからは、悪い心を持った時は、心の中でガスさんが「ノン、ノン」と止めてくれるかもしれません。
イヌさんの運命が悲しかったです。
肺病の殺し屋が“遠藤”という名前だったのは、作者の意図を推測せずにいられないです。
Posted by ブクログ
フランスからやってきたナポレオンの子孫ガストン.そのバカと見まごう無私の行動が引き起こす顛末.彼は何をしに日本に来たのか謎を残しつつその姿を消した.キリスト教信者らしい遠藤周作のイエスの一つのありかたのようだ.
Posted by ブクログ
この作品を読んで思い出した、いつかどこかで読んだ遠藤周作の言葉↓。
神も仏もないというところから信仰は始まる。
私が神を捨てられないのではなく、神が私を放してくれない。
Posted by ブクログ
再読だがすっかり忘れてる。昭和34年に朝日新聞連載とあるからリアルタイムでも読んでいるはず。軽快なノリの小説で当時の風俗を楽しめる。いや私などものすごく郷愁を感じてしまった。
『おバカさん』ことガストン・ボナパルトは『わたしが・棄てた・女』の主人公森田ミツの男性版。すなわち悲しいほどお人よしで純粋、バカみたいな不思議な人。
彼がフランスから日本にふらりと来て、しでかす椿事にまきこまれる隆盛と巴絵の兄妹はごく普通だから、その落差をまず楽しめばいい。
あまりにもドタバタ劇を繰り広げてしまうガストン、なんで日本に来たのだろう?それもこの物語のポイント、作者の意図のひとつ。
ガストンと絡まる殺し屋の名が「遠藤」作者と同名。わざと命名したのだろうか。この「遠藤」にしろ、「隆盛と巴絵の兄妹」にしろ読者にちかい。とても「ガストン」のようにおろかにはなれない。
しかし、この普通ということがいかに「悪」かということも露呈してしまう。
そしてやがて哀愁に満ちたラストで、自分はなんて不純なのだろうと思う。なんてことないのだけれど読後ズーンと響いてくるから。