あらすじ
天運を味方に“天下布武”へ突き進む信長。
絶体絶命の逆境の中、敵をあざむく奇策を講じ、難敵・今川義元を桶狭間にて討ち果たした信長は、やがて美濃・斎藤氏も攻略し、岐阜城を居城とする。
ただ一人愛した女性・吉乃(きつの)に早逝されるも、天運を味方にした信長は“天下布武”の野望を抱き始め、妹・お市を嫁がせた浅井・朝倉の連合軍を破り、ついには武田軍団との決戦に備える。
吉乃の実家・前野家文書「武功夜話」を元に、秀吉、蜂須賀小六らの川筋衆の縦横無尽な活躍までもが生き生きと描かれた筆者渾身の歴史長編の後編。
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Posted by ブクログ
作者が(日本)歴史小説の作家であることは知らなんだ。信長と秀吉の長浜城主となる迄の歴史戦国史である。信長は叛いた者を許さない。朝倉氏を滅ぼし、浅井氏を滅亡させる。浅井氏攻略に大功あった藤吉郎は羽柴秀吉を名乗り、浅井氏の旧北領、北近江三郡を領し、長浜城を築いてついに一城の主となった。信長は、つぎなる決戦の時備えて、一人計画を練る。武田大国の若き武将武田勝頼と、どう戦うかー。作品の資料は古文書に依る所が多く「武功夜話」「甫庵太閤記」「大日本史料」等に例を引く。他の歴史小説との門目の違いだ。この物語「決戦の時」は、他の遠藤作品とある一点において決定的に異なっている。キリスト教における「神」も「主」も一切登場しないのだ。そればかりか、信長と宣教師との関りにもまったく言及しない。作者はあえて信長とキリスト教との関りを一切排除して、この物語りを構成した。(このこ事に先ず小生は驚きを得た)なぜかー。信長が、一切の宗教を否定し自らが神たらんとした人物であったからにほかならない。人間不信からくる徹底した合理主義者として信長を描くとき神の介在は不要である。神を排除した本篇からは、自ずと、神からも人からも孤立した「魔王」信長の姿が浮かび上がってくるのだ。