遠藤周作のレビュー一覧
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三部作中、小説として完成度が高いのは前二編のように思う。遠藤作品で繰り返し語られるカトリックと日本人とのテーマ。だが自分に一番響いたのは三編目「爾も、また」インテリとしての自負、だが実の所平凡で俗的な自分を自覚し欧州文化に押しつぶされていく主人公。サドを研究テーマとしながら自分とサドの接点などまるでないと悩む。真理を追究もできず表面的にうまく立ち振る舞うことも出来ない。
その姿は、表現すべき中身を持たず、表現の場を得るために上手くコミュニケーションすることも出来ず、それなのに表現することを辞められない自分に酷似。つらい。
時々こういう自分を突きつけられるような体験をするから読書はやめられない。 -
Posted by ブクログ
遠藤周作・・・狐狸庵先生が他界されてからもう17年たちます。
狐狸庵先生の作品は多く残されていますが、
この本は、死後偶然見つかった未発表原稿をまとめたものだそうです。
遠藤さんファンにとっては天国からの贈り物ですね。
遠藤さんらしい作風でユーモアを交えて
実にわかりやすく、主に手紙の書き方を書かれていました。
「一寸したことですが・・・」で始まる文章は、
お礼状からラブレターにいたるまで、
手紙を送る相手をいつも気遣って書いてください。と、
細やかな心遣いを、わかりやすく述べられていました。
手紙をほとんど書くことのなくなった現代をみたら、
狐狸庵先生は何と思われるでしょう。
なにしろ -
Posted by ブクログ
ものすごい久しぶりに読んだら思ったよりB級感のある作品でした。
昔はもっと楽しめたんですけど、なんででしょう。結末とか知っちゃってるからかな。宗教色の濃い遠藤作品の箸休めにいいかもしれません。
主人公の辰野のキャラがあまり好きになれません。時代が時代なので、昭和の男ってこんな感じなのかなぁとは思いますが、そりゃ奥さんにも離婚されるわって思いました。辰野からか奥さんからかは明言されてませんでしたが。
エリザベート・バートリーは読む前から知っているくらい有名な歴史上の人物です。もちろん教科書には載ってませんが、彼女を題材にした小説とかをちょいちょい見かけていたので、辰野より先にエリザベート・バート -
Posted by ブクログ
タイ旅行のお供に持っていった一冊。山田長政については名前くらいしか知らなかったが、今から400年も前にタイ(シャム)のアユタヤ王宮で権謀術数をめぐらせていた人物だったことに驚いた(むろん虚構は入っているだろうが)。わずかばかりのチャンスをつかみ取りながらのし上がっていく彼の生に、ただ日本にキリスト教を布教するという信念のみを持ってローマまで辿り着くペドロ岐部の生が、相対する方向から交差する。「ただこの2人はたがいに気がつかなかったが一点においてよく似ていた。それは狭い日本にあくせくと生きず、おのれの生き方のために海をこえて新しい世界に突入したことだった」(p.285)。「おのれの生き方のために