遠藤周作のレビュー一覧

  • 新装版 海と毒薬

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    人体実験の生命倫理(罪)というテーマは考えさせられるものがありました。

    しかし構図というか、ストーリーの構造がなんとも冗長なものに感じてしまいました。

    「深い川」を読んだ時も思いましたが、
    登場人物それぞれのストーリーが別々に動いたあと、うまく本筋にまとめる事が出来ていないように感じました。

    テンポがあまり良く無いので
    読みやすいはずなのに読みにくいといった感じ。

    絶望的な気怠さはつげ義春を連想しました。

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    2023年09月23日
  • 人生には何ひとつ無駄なものはない

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    んー。本当名言集だった!
    その通りだねも、ん?そう?もあって。
    君は君、僕は僕でいいよねっていう僕の根っこに落ち着きました。 自分の思うバランスだったり、自分以外の人は異質未知っていうのをネガティヴに捉える人は沢山居るけどさ。それもそれで良いじゃん。異質や未知の中にワクワクはあるし、それは今までの自分の中にない"当たり前じゃない"世界を知る機会だなって思うので、再認知するに良い本でした。

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    2023年09月10日
  • 白い人・黄色い人

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    人間はこれほどまでに神に執着しているのに、神はいつもどこにおられるんだろう?遠藤周作さんの作品を読むといつもこうなる

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    2023年09月05日
  • 白い人・黄色い人

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    ネタバレ

    拷問に耐えうる人物か、拷問の仕方に情慾を感じるか感じないかを分析しながら眺めているのが面白い。
    なぜ神は人種など関係がないのに西洋の姿をしているのか、救いは無く苦しみを与える神とは何か、などなど、考えたくなる事柄が色々と出てきた。
    救いのない神ならば、信仰を捨ててしまえば自由になれる。デュランにそんな選択肢など思いつかなかったが、黄色い人たちはそれゆえ自由なのだと悟る。

    白い人(フランス人だが父はドイツ人であったため幾らかドイツ語を使えるため、ナチス・ドイツの秘密警察の事務官の求人に応募し、対象者を拷問し、仲間の名前や場所を吐かせる仕事に就く。過去に、病気の老犬が盗みを働いたため平手打ちして

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    2023年09月22日
  • 夫婦の一日

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    短編5つ。「日本の聖女」ガラシャの信仰について。他4編は自身の体験からのエッセイ風。仏教を主とした日本人の神性と日本人のキリスト教の捉え方が欧州人のそれとは異なるのではないかという作者の考えがなんとなく伝わってきた。2023.8.29

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    2023年08月29日
  • 死海のほとり

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    ネタバレ

    弟子たちや町の人はイエスを見棄てた。それを現在の、信仰を棄てかかっている主人公とリンクさせてイエスの足跡を辿っている。昔も今も変わらないイエスの意思と存在が浮かびあがってくるような物語だった。
    同伴者としてのイエスの描写が印象に強い。人間は弱いものだから、ひたすらに寄り添ってくれる存在があればきっとひとつの慰めになるのだろう。この愛に最後の最後で救われることだってあるだろう。
    主人公とその友人の戸田の言葉は、どちらも著者の偽りない気持ちなのではないかと思ってしまった。何か答えが欲しい主人公と、意地悪な返しをする戸田。まるで自問自答のようだ。
    本小説は『イエスの生涯』と表裏をなすものと、あとがき

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    2023年08月15日
  • 白い人・黄色い人

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    人間の醜さや愚かさを否定して押さえつけるだけの宗教は日本にはなじみにくいだろう。
    人間なんて、そんなに美しいものではない。
    善に偏るのも、悪に偏るのも、結局は見たくないものを見ないという姿勢のように思う。
    どちらも欺瞞だ。
    歪んだ心は醜い。
    汚い。臭い。
    しかし、それも人間。
    自分の正義に固執して貫くのも、人間。
    人間とは、愚かな生き物だ、と思う。

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    2023年08月08日
  • 死について考える

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    遠藤周作は昔の人だから、仏教的な考えで死に向き合ってると思ってたら、まさかのキリスト教
    死というのは、たぶん、海みたいなものだろうな
    入っていくときはつめたいが、いったん中に入ってしまうと…

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    2023年08月02日
  • 彼の生きかた

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    不器用だからこそ、不自由だからこそ見出したその生き方。
    邪魔するのは偽の強さを振り翳すまさに人間という遣る瀬無さ。
    ある意味では「彼の生きる道」なのかもしれない。それでも「生き方」と表現する方が、私も好きだ。
    その時代にどれだけそういう捉え方があったのかどうかはまた別だが。

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    2023年07月23日
  • 満潮の時刻

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    結核にかかった明石という男の入院生活をえがいた作品です。

    肋膜炎にかかったため、召集を受けることのないまま終戦を迎えた明石は、四十代という働き盛りの年に結核で一年以上の入院を余儀なくされたことによって、同世代のなかで自分だけが戦場に行かなかったというコンプレックスを解消することができるのではないかという考えます。しかし、長くつづく入院生活にそうした決意は揺らぎ、妻に不平をこぼします。

    ところが、思いもかけず手術によって早く退院することができるかもしれないという医者の話がもたらされ、明石は手術を受けることを決意します。しかし、彼の病状は医者の予想をはずれて悪化の一途をたどり、退院のめどが立た

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    2023年07月21日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    第二部は、第一部の主人公であるキクの従妹であったミツの孫にあたる奥川サチ子が主人公を務める、第二次世界大戦末期の長崎を舞台にした作品です。

    サチ子は、幼なじみでイタズラ好きの少年である幸田修平に想いを寄せています。成長した修平は、慶応大学に合格し、詩人となることを夢見ていますが、サチ子の気持ちにはなかなか気づいてくれません。

    サチ子たちが幼少のころに大浦天主堂にやってきたコルベ神父は、その後ドイツに帰国し、アウシュヴィッツに連行されます。いっさいの希望がうしなわれてしまった絶望的な状況のなかで、コルベは愛を信じつづけ、みずからの身を賭して愛を果たしうることを示します。

    その一方で、日本の

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    2023年07月18日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    長崎に隣接する浦上村馬込郷に生まれたキクは、中野郷の青年である清吉に恋心をいだきます。しかしキクの兄の市次郎は、中野郷の者は「クロ」であるという理由で、キクが清吉とかかわりをもつことを反対します。やがて「クロ」とは、かくれキリシタンのことであったことが判明します。

    一方、日本にやってきたフランス人の神父であるプチジャンは、厳しい禁教令が敷かれていた日本で、役人たちの監視からのがれてひそかにキリスト教の信仰を守りつづけてきた人びとが存在していると聞き、彼らを見つけ出すことに情熱を燃やします。その後、清吉たちがプチジャンに接触を図り、プチジャンは彼らを正しい信仰へみちびこうと行動を起こしますが、

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    2023年07月18日
  • 母なるもの

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    著者自身がモデルと思われる人物が登場する短編小説や、エッセイに近いスタイルで書かれた文章など、8編が収録されています。

    本書のタイトルにもなっている「母なるもの」は、明治以降も正統なカトリックの教義にしたがうことなく、日本的に変質してしまった信仰を保ちつづけたかくれキリシタンの里を訪ねるという内容の文章です。「小さな町にて」もこれとかさなるテーマをあつかった内容で、「日本人はどの宗教にも母親の姿を求める」という著者自身の考えが提示されています。また「巡礼」は、やはり著者自身を思わせる小説家の矢代が、イェルサレムの地で合理的な立場からキリスト教について語る神学者の西尾の話に納得できずにいるすが

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    2023年07月18日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    マリア・テレジアの末娘であるマリー・アントワネットは、フランスの皇太子妃としてオーストリアからやってきます。夫であるルイ16世は、ひとが好いだけで彼女の心を動かすことはありません。しかも彼女は、国王ルイ15世の寵愛を受けるデュ・バリーとの対立を引き起こしてしまいます。

    パン屋での過酷な労働から逃げ出してパリに出てきたマルグリットという少女は、売春宿に身を置いて働くことになります。女主人である「兎のおばさん」は彼女の世話をしてくれますが、指名手配を受けているマルキ・ド・サドの逃亡を助けたことで逮捕されてしまいます。マルグリットは、生まれながらにして自分とはまったく異なる境遇にあり、すべてを手に

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    2023年07月16日
  • 砂の城

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    高校の同級生である、早良泰子と水谷トシという二人の女性の青春をえがいた作品です。

    泰子は16歳の誕生日に、死んだ母から彼女にあてて書かれた手紙を、父親から受けとります。そこには、泰子とおなじ少女時代の母が、恩智勝之という男性とひそかな交流をつづけており、しかし戦争によって二人の運命が別れてしまったことがつづられていました。その後泰子は、母の夢を追いかけるように、得意の英語を生かしてCAとなる道に進みます。

    他方トシは、星野という男を追って神戸にわたり、信用金庫で働くことになります。星野は定職に就かずギャンブルが好きというだらしのない男ですが、彼に泣きつかれるとトシはついお金をあたえてしまう

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    2023年07月15日
  • 彼の生きかた

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    どもりのために消極的な性格の福本一平は、ことばで語りあう必要のない動物との触れあいに、心のやすらぎを感じていました。彼は、小学校時代の音楽教師の示唆を受けて、ニホンザルの生態を研究する道をえらびます。彼は日本猿研究所に所属し、志明山でニホンザルの餌付けを試みていましたが、志明山の土地が観光業者の手にわたったことで、ホテルの開発が着手されてしまいます。さらに研究所の所長が交代したことで、人づきあいの苦手な一平は苦しい立場に追いやられ、職を辞して比良山で研究をつづける道をえらびます。

    一方、小学校時代から一平と幼なじみの中原朋子は、志明山の開発を進める業者に勤務する夫のもとに嫁いでいました。彼女

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    2023年07月15日
  • 白い人・黄色い人

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    短編二編を収録しています。

    「白い人」は、第二次世界大戦中に、フランス人でありながら、ナチス・ドイツに協力してレジスタンスの取り締まりをおこなった青年の手記というかたちの作品です。斜視だった彼は、自分以上に醜い容貌であった神学生のジャック・モンジュが、みずからの不遇な運命を、神に対する信仰にすり替えていることに反発をいだきます。そして、ジャックがたいせつに思っているマリー・テレーズをもてあそぶことで、サディスティックな歓びをあじわいます。

    「黄色い人」は、宝塚の仁川の教会で牧師を務めていながら、キミコという女性を愛するという、信仰の道にはずれた行為によって教会を離れることになったピエール・

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    2023年07月14日
  • 父親

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    56歳の石井菊次は、娘の純子や会社の部下たちに「けじめ」を説く、戦前世代の頑固一徹な性格の男です。彼は、新商品の香水の開発に力を注いでいましたが、社内の何者かがライヴァル会社に新商品の情報を漏らしたことが明らかになり、さらに社内の権力闘争に巻き込まれて、しだいに嫌気がさしてくるようになります。

    スタイリストの仕事をしている純子は、実業家の宗という男からプロポーズを受けます。彼には妻子がありましたが、すでに別居状態になり、まもなく離婚して純子といっしょになりたいというのです。純子は彼の思いにこたえる決意をしますが、そのことを知った菊次は怒り、純子は家を飛び出して一人暮らしをはじめます。

    宗の

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    2023年07月14日
  • ただいま浪人

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    進駐軍として日本にやってきたロバート・オノラは、ミツという日本人女性とのあいだに子どもをもうけますが、朝鮮戦争後にアメリカへもどります。彼は約二十年ぶりに日本にやってきて、ミツとその子どものゆくえを追いかけます。

    一方、浪人生の石井信也は、東大合格をめざして勉強に励んでいました。しかし、友人の近藤が受験をやめてアメリカで画家をめざす決意をしたことに心を揺さぶられ、二度目の不合格となります。父親の豊次が彼にかけていた期待の重さに苦しんでいた信也は家を出て、スナックで働きはじめます。そんな彼に、宇田という男をリーダーとする組織が目をつけ、彼を壮大な犯罪計画に巻き込んでいきます。

    信也の姉で出版

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    2023年07月14日
  • 新装版 海と毒薬

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    ネタバレ

    戦争犯罪に対し心の迷いを抱く勝呂にフォーカスを当てている物語だが、描写がとてもリアルで目を背けたくなる部分も多々あった。しかし、心情描写を強く読み取れる箇所が少なく、物語としての起伏は少ない印象だった。

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    2023年06月15日