遠藤周作のレビュー一覧

  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    見知らぬ土地からでも飼い主のいる家へ戻っていく雑種犬のように、母という存在は死ぬまで薄れず心の原点になる。低く広がり続ける冬の雲のようでもあり、呪縛のような烈しいものでもあるらしい。
    没後発表の貴重な一作でした。

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    2024年01月25日
  • 新装版 海と毒薬

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    運命とは黒い海であり、自分を破片のように押し流すもの。そして人間の意志や良心を麻痺させてしまうような状況を毒薬と名づけたのだろう

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    2024年01月23日
  • ころび切支丹(キリシタン) 遠藤周作初期エッセイ

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    1950年、戦後初の留学生として
    日本の港を出た遠藤周作
    優秀だったんだ すごい
    学者になる予定だったが
    船の中で触れあった人々に影響されて
    小説家になる決心をする 四等船室で
    熱がある時に看病してくれた黒人兵
    ミカンをくれた中国人のおばさん
    寄港した港で金を請う5.6歳の少女
    黄色 白 黒の意味するもの
    クリスチャンの彼にいろんな感情が
    襲った事だろう

    ころび切支丹の話は知らなかった
    日本に宣教に来てころび
    日本名に改名して 弾圧される通訳を
    務める
    一人は死後焼かれて仏式で葬られる
    再生を信じるクリスチャンでは
    これはあり得ない事
    知らなかった

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    2024年01月07日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    上下巻とおして終始オリキャラのマルグリットがウザかった。もう一人のオリキャラのアニエス修道女が、歴史人物の某という設定がどうにも受け入れられず、少し残念な読後感に……。文体も辻邦生のようにもう少し端正なほうが好み。読みやすくはあるのだけど。

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    2023年12月02日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    上巻は王妃の首飾り事件まで。フェルセンが出てくるあたりから面白くなってきたけれど、王太子とあるべきところが皇太子になっているのが気になってしまって、いまいち集中できず……。

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    2023年12月02日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    創作が多分に含まれてはいるとは思うが、ブルボン王政末期の状況を追体験できる。
    ルイ16世もアントワネットも完全な悪人ではないのが辛い。

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    2024年12月30日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    この作品は、出版社の意向で書かれたものであると思われる。
    面白く読んだ。内容は良いのだが、しかし、それまで読んだ色々な遠藤周作作品よりインパクトが弱い。
    本当に遠藤周作作品なのかと思えるような小説である。

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    2023年10月19日
  • 新装版 海と毒薬

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    戦時中の医療現場について。どうせ死ぬなら空襲で死ぬのも医学の発展のために死ぬのも同じである、いやむしろ後世の人々のために貢献している、という考え方は、当事者ではなく遠いところから聞くとなんとなく正しく思えてしまうのが怖い。そして、その状況を医学界の人間目線で描いていき、やはり罪の意識を持ち続けていくのをみて、倫理観について考えさせられた。

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    2023年10月02日
  • 新装版 海と毒薬

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    人体実験の生命倫理(罪)というテーマは考えさせられるものがありました。

    しかし構図というか、ストーリーの構造がなんとも冗長なものに感じてしまいました。

    「深い川」を読んだ時も思いましたが、
    登場人物それぞれのストーリーが別々に動いたあと、うまく本筋にまとめる事が出来ていないように感じました。

    テンポがあまり良く無いので
    読みやすいはずなのに読みにくいといった感じ。

    絶望的な気怠さはつげ義春を連想しました。

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    2023年09月23日
  • 人生には何ひとつ無駄なものはない

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    んー。本当名言集だった!
    その通りだねも、ん?そう?もあって。
    君は君、僕は僕でいいよねっていう僕の根っこに落ち着きました。 自分の思うバランスだったり、自分以外の人は異質未知っていうのをネガティヴに捉える人は沢山居るけどさ。それもそれで良いじゃん。異質や未知の中にワクワクはあるし、それは今までの自分の中にない"当たり前じゃない"世界を知る機会だなって思うので、再認知するに良い本でした。

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    2023年09月10日
  • 白い人・黄色い人

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    人間はこれほどまでに神に執着しているのに、神はいつもどこにおられるんだろう?遠藤周作さんの作品を読むといつもこうなる

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    2023年09月05日
  • 白い人・黄色い人

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    ネタバレ

    拷問に耐えうる人物か、拷問の仕方に情慾を感じるか感じないかを分析しながら眺めているのが面白い。
    なぜ神は人種など関係がないのに西洋の姿をしているのか、救いは無く苦しみを与える神とは何か、などなど、考えたくなる事柄が色々と出てきた。
    救いのない神ならば、信仰を捨ててしまえば自由になれる。デュランにそんな選択肢など思いつかなかったが、黄色い人たちはそれゆえ自由なのだと悟る。

    白い人(フランス人だが父はドイツ人であったため幾らかドイツ語を使えるため、ナチス・ドイツの秘密警察の事務官の求人に応募し、対象者を拷問し、仲間の名前や場所を吐かせる仕事に就く。過去に、病気の老犬が盗みを働いたため平手打ちしていたイボンヌの白い腿、曲芸で男の頭の上で芸をする裸の女など、主人公に歪んだ情慾を育む。神学生のジャックに縛られているマリー。ある時、ジャックが拷問対象となり、口を割らないためマリーを連れてきて、陵辱すると脅すと、舌を噛み切って自殺した。マリーは発狂した。)

    黄色い人(戦争で全てを失った女・キミコと関係を持ってしまったデュラン。たちまち噂は流れ、教会を追放される。神を信仰するも、罪の意識で苦しみ続ける。解放されるために、隠し持っていた拳銃を教会に隠して警察に密告し、金銭的援助をしてもらっていたにも関わらずブロウ神父を陥れる。空襲で、デュランもキミコも倒れる。)

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    2023年09月22日
  • 夫婦の一日

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    短編5つ。「日本の聖女」ガラシャの信仰について。他4編は自身の体験からのエッセイ風。仏教を主とした日本人の神性と日本人のキリスト教の捉え方が欧州人のそれとは異なるのではないかという作者の考えがなんとなく伝わってきた。2023.8.29

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    2023年08月29日
  • 死海のほとり

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    ネタバレ

    弟子たちや町の人はイエスを見棄てた。それを現在の、信仰を棄てかかっている主人公とリンクさせてイエスの足跡を辿っている。昔も今も変わらないイエスの意思と存在が浮かびあがってくるような物語だった。
    同伴者としてのイエスの描写が印象に強い。人間は弱いものだから、ひたすらに寄り添ってくれる存在があればきっとひとつの慰めになるのだろう。この愛に最後の最後で救われることだってあるだろう。
    主人公とその友人の戸田の言葉は、どちらも著者の偽りない気持ちなのではないかと思ってしまった。何か答えが欲しい主人公と、意地悪な返しをする戸田。まるで自問自答のようだ。
    本小説は『イエスの生涯』と表裏をなすものと、あとがきにあった。たしかにこの小説で謎だった部分は『イエスの生涯』で納得のいく解釈が書かれていたように思う。

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    2023年08月15日
  • 白い人・黄色い人

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    人間の醜さや愚かさを否定して押さえつけるだけの宗教は日本にはなじみにくいだろう。
    人間なんて、そんなに美しいものではない。
    善に偏るのも、悪に偏るのも、結局は見たくないものを見ないという姿勢のように思う。
    どちらも欺瞞だ。
    歪んだ心は醜い。
    汚い。臭い。
    しかし、それも人間。
    自分の正義に固執して貫くのも、人間。
    人間とは、愚かな生き物だ、と思う。

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    2023年08月08日
  • 死について考える

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    遠藤周作は昔の人だから、仏教的な考えで死に向き合ってると思ってたら、まさかのキリスト教
    死というのは、たぶん、海みたいなものだろうな
    入っていくときはつめたいが、いったん中に入ってしまうと…

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    2023年08月02日
  • 彼の生きかた

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    不器用だからこそ、不自由だからこそ見出したその生き方。
    邪魔するのは偽の強さを振り翳すまさに人間という遣る瀬無さ。
    ある意味では「彼の生きる道」なのかもしれない。それでも「生き方」と表現する方が、私も好きだ。
    その時代にどれだけそういう捉え方があったのかどうかはまた別だが。

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    2023年07月23日
  • 満潮の時刻

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    結核にかかった明石という男の入院生活をえがいた作品です。

    肋膜炎にかかったため、召集を受けることのないまま終戦を迎えた明石は、四十代という働き盛りの年に結核で一年以上の入院を余儀なくされたことによって、同世代のなかで自分だけが戦場に行かなかったというコンプレックスを解消することができるのではないかという考えます。しかし、長くつづく入院生活にそうした決意は揺らぎ、妻に不平をこぼします。

    ところが、思いもかけず手術によって早く退院することができるかもしれないという医者の話がもたらされ、明石は手術を受けることを決意します。しかし、彼の病状は医者の予想をはずれて悪化の一途をたどり、退院のめどが立たなくなってしまいます。明石はそうした自分の運命を嘆きつつも、あたりまえだった日常の「生活」から離れて病院で長い時間を過ごしていくなかで、「人生」に思いをめぐらせます。

    『沈黙』と同時期に執筆され、著者自身は改稿の計画をもっていたものの、そのままになってしまった作品ということもあって、構成に多少難があるようにも感じられますが、入院生活という即物的な条件によってさまざまな思いが去来して心が揺れ動く展開になっており、興味深く読むことができました。

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    2023年07月21日
  • 女の一生 二部・サチ子の場合

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    第二部は、第一部の主人公であるキクの従妹であったミツの孫にあたる奥川サチ子が主人公を務める、第二次世界大戦末期の長崎を舞台にした作品です。

    サチ子は、幼なじみでイタズラ好きの少年である幸田修平に想いを寄せています。成長した修平は、慶応大学に合格し、詩人となることを夢見ていますが、サチ子の気持ちにはなかなか気づいてくれません。

    サチ子たちが幼少のころに大浦天主堂にやってきたコルベ神父は、その後ドイツに帰国し、アウシュヴィッツに連行されます。いっさいの希望がうしなわれてしまった絶望的な状況のなかで、コルベは愛を信じつづけ、みずからの身を賭して愛を果たしうることを示します。

    その一方で、日本の戦況は日増しに悪くなっていき、修平のもとにも召集令状がとどけられます。キリスト教徒である彼は、戦争で殺しあいをしなければならない立場に置かれたことに苦しみますが、残酷にも彼に特攻隊としての任務があたえられることになります。修平は悩みながらも、みずからのたどらなければならなかった運命にひとつの意味を見いだそうと考えつづけます。

    第一部のキクとは異なる時代ではあるものの、キリスト教を信仰する者に対して彼らの生きた時代が課することになった重い問いかけを背景としながら、主人公であるサチ子の悲恋がえがかれています。

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    2023年07月18日
  • 女の一生 一部・キクの場合

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    長崎に隣接する浦上村馬込郷に生まれたキクは、中野郷の青年である清吉に恋心をいだきます。しかしキクの兄の市次郎は、中野郷の者は「クロ」であるという理由で、キクが清吉とかかわりをもつことを反対します。やがて「クロ」とは、かくれキリシタンのことであったことが判明します。

    一方、日本にやってきたフランス人の神父であるプチジャンは、厳しい禁教令が敷かれていた日本で、役人たちの監視からのがれてひそかにキリスト教の信仰を守りつづけてきた人びとが存在していると聞き、彼らを見つけ出すことに情熱を燃やします。その後、清吉たちがプチジャンに接触を図り、プチジャンは彼らを正しい信仰へみちびこうと行動を起こしますが、彼らの活動を知った奉行所に、清吉たちは捕らわれてしまいます。

    やがて江戸幕府の体制は崩壊しますが、そのあとの明治政府も禁教政策を引き継ぎ、清吉たちは厳しい弾圧を受けます。奉行所の役人である伊藤清左衛門は、清吉の身を案じるキクの弱みにつけ込みますが、彼女はみずからの身を削って清吉への愛をつらぬきます。

    「浦上四番崩れ」の史実をもとにした小説です。クリスチャン作家としてこれまで著者が手掛けてきたテーマが随所に示されますが、基本的にはキクの悲劇的な恋を中心にしたストーリーとなっています。

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    2024年08月17日