遠藤周作のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
どもりのために消極的な性格の福本一平は、ことばで語りあう必要のない動物との触れあいに、心のやすらぎを感じていました。彼は、小学校時代の音楽教師の示唆を受けて、ニホンザルの生態を研究する道をえらびます。彼は日本猿研究所に所属し、志明山でニホンザルの餌付けを試みていましたが、志明山の土地が観光業者の手にわたったことで、ホテルの開発が着手されてしまいます。さらに研究所の所長が交代したことで、人づきあいの苦手な一平は苦しい立場に追いやられ、職を辞して比良山で研究をつづける道をえらびます。
一方、小学校時代から一平と幼なじみの中原朋子は、志明山の開発を進める業者に勤務する夫のもとに嫁いでいました。彼女 -
Posted by ブクログ
短編二編を収録しています。
「白い人」は、第二次世界大戦中に、フランス人でありながら、ナチス・ドイツに協力してレジスタンスの取り締まりをおこなった青年の手記というかたちの作品です。斜視だった彼は、自分以上に醜い容貌であった神学生のジャック・モンジュが、みずからの不遇な運命を、神に対する信仰にすり替えていることに反発をいだきます。そして、ジャックがたいせつに思っているマリー・テレーズをもてあそぶことで、サディスティックな歓びをあじわいます。
「黄色い人」は、宝塚の仁川の教会で牧師を務めていながら、キミコという女性を愛するという、信仰の道にはずれた行為によって教会を離れることになったピエール・ -
Posted by ブクログ
56歳の石井菊次は、娘の純子や会社の部下たちに「けじめ」を説く、戦前世代の頑固一徹な性格の男です。彼は、新商品の香水の開発に力を注いでいましたが、社内の何者かがライヴァル会社に新商品の情報を漏らしたことが明らかになり、さらに社内の権力闘争に巻き込まれて、しだいに嫌気がさしてくるようになります。
スタイリストの仕事をしている純子は、実業家の宗という男からプロポーズを受けます。彼には妻子がありましたが、すでに別居状態になり、まもなく離婚して純子といっしょになりたいというのです。純子は彼の思いにこたえる決意をしますが、そのことを知った菊次は怒り、純子は家を飛び出して一人暮らしをはじめます。
宗の -
Posted by ブクログ
進駐軍として日本にやってきたロバート・オノラは、ミツという日本人女性とのあいだに子どもをもうけますが、朝鮮戦争後にアメリカへもどります。彼は約二十年ぶりに日本にやってきて、ミツとその子どものゆくえを追いかけます。
一方、浪人生の石井信也は、東大合格をめざして勉強に励んでいました。しかし、友人の近藤が受験をやめてアメリカで画家をめざす決意をしたことに心を揺さぶられ、二度目の不合格となります。父親の豊次が彼にかけていた期待の重さに苦しんでいた信也は家を出て、スナックで働きはじめます。そんな彼に、宇田という男をリーダーとする組織が目をつけ、彼を壮大な犯罪計画に巻き込んでいきます。
信也の姉で出版 -
Posted by ブクログ
太平洋戦争中の、捕虜の生体解剖というテーマ設定に惹かれて手に取りました。戦争の残酷な面を明らかにする作品かと思っていたのですが、それよりも「人間の良心」の在り方について語られる作品でした。
解説の夏川草介氏も書いていましたが、「キリスト教という生活規範」がない日本において、確固たる良心/善悪の判断基準がない日本人のモラルのあり様を問う作品です。
例えば、生体解剖に誘われた外科医勝呂(すぐろ)が、それに参加するべきか、断るべきか懊悩する場面では、悩みつつも彼は結果的に参加してしまうのですが、ここでは「参加してしまった」ことが問題なのではなく、「明確な決断もつかないまま、なんとなく」参加したこ -
Posted by ブクログ
太平洋戦争の時、実際に九州の大学で起こったアメリカ捕虜への生体解剖…そんなショッキングな事件を題材にした小説。
「どうせ死ぬんだから、今後の医療のための死ならむしろ有益」という派の医師達や戸田。一方「人を殺す医療はあっていいものか」的な生体実験に懐疑で戸惑いがあった勝呂。
今だと誰しも正論でおかしいと抗議できるはずだけど、当時のような戦時下だと正常な判断はできるものなのか…?私も麻痺して、やるしかない、と思ってたかもしれない…そう思ったら自分にこわくなった
てかそもそもこの事件もフィクションだ、と思いたかった。海水は代用血液として使えるのか、肺は片方取っても死なないのか、生きた捕虜を使っ -
Posted by ブクログ
週刊新潮に連載した「周作恐怖譚」を1959(昭和34)年に単行本として刊行した『蜘蛛——周作恐怖譚』に4編を加え、1970(昭和45)年、『遠藤周作怪奇小説集』と題して出版されたもの(を、『怪奇小説集』と更に改題して1973年に講談社文庫で出したもの)。
中学生の頃私は北杜夫のユーモア・エッセイが好きで、その流れでついでにちょこっと読んでみたのが確か『遠藤周作ユーモア小説集』だった。これの巻末にオマケとして一編だけ怪談が入っていて、これがやたらに怖く、ショッキングだった。このとき味わった恐怖感の味が、ずっと記憶に残っている。私がホラー小説を好んで読むようになったのはずっと先、特にここ数年 -
Posted by ブクログ
ネタバレラストは突然終わる感じ。
戦時中の大きな流れや心が破滅に向かう抗えない状態をタイトルの海に例えた感じなのかな。
アメリカ捕虜を人体実験に参加した勝呂は
現在もその罪の狭間で揺れている状態。
けど、本人も今またやれと言われたらアレをやってしまうだろうと。
人体実験といえばナチスドイツのイメージだったから
日本人のこれは信じられなかった。
まさか生きたまま…あんなことこんなこと…
本当に罪と断絶できるのかなー。
もうその時の環境に置かれないと、誰も何も答えは出せないよ。
その場にいたら、私もねー…
なんで参加したの?断れなかったの?
っていうのは今だから感じれる正常な感情。
続編の『