遠藤周作のレビュー一覧
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太平洋戦争中の、捕虜の生体解剖というテーマ設定に惹かれて手に取りました。戦争の残酷な面を明らかにする作品かと思っていたのですが、それよりも「人間の良心」の在り方について語られる作品でした。
解説の夏川草介氏も書いていましたが、「キリスト教という生活規範」がない日本において、確固たる良心/善悪の判断基準がない日本人のモラルのあり様を問う作品です。
例えば、生体解剖に誘われた外科医勝呂(すぐろ)が、それに参加するべきか、断るべきか懊悩する場面では、悩みつつも彼は結果的に参加してしまうのですが、ここでは「参加してしまった」ことが問題なのではなく、「明確な決断もつかないまま、なんとなく」参加したこ -
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太平洋戦争の時、実際に九州の大学で起こったアメリカ捕虜への生体解剖…そんなショッキングな事件を題材にした小説。
「どうせ死ぬんだから、今後の医療のための死ならむしろ有益」という派の医師達や戸田。一方「人を殺す医療はあっていいものか」的な生体実験に懐疑で戸惑いがあった勝呂。
今だと誰しも正論でおかしいと抗議できるはずだけど、当時のような戦時下だと正常な判断はできるものなのか…?私も麻痺して、やるしかない、と思ってたかもしれない…そう思ったら自分にこわくなった
てかそもそもこの事件もフィクションだ、と思いたかった。海水は代用血液として使えるのか、肺は片方取っても死なないのか、生きた捕虜を使っ -
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週刊新潮に連載した「周作恐怖譚」を1959(昭和34)年に単行本として刊行した『蜘蛛——周作恐怖譚』に4編を加え、1970(昭和45)年、『遠藤周作怪奇小説集』と題して出版されたもの(を、『怪奇小説集』と更に改題して1973年に講談社文庫で出したもの)。
中学生の頃私は北杜夫のユーモア・エッセイが好きで、その流れでついでにちょこっと読んでみたのが確か『遠藤周作ユーモア小説集』だった。これの巻末にオマケとして一編だけ怪談が入っていて、これがやたらに怖く、ショッキングだった。このとき味わった恐怖感の味が、ずっと記憶に残っている。私がホラー小説を好んで読むようになったのはずっと先、特にここ数年 -
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ネタバレラストは突然終わる感じ。
戦時中の大きな流れや心が破滅に向かう抗えない状態をタイトルの海に例えた感じなのかな。
アメリカ捕虜を人体実験に参加した勝呂は
現在もその罪の狭間で揺れている状態。
けど、本人も今またやれと言われたらアレをやってしまうだろうと。
人体実験といえばナチスドイツのイメージだったから
日本人のこれは信じられなかった。
まさか生きたまま…あんなことこんなこと…
本当に罪と断絶できるのかなー。
もうその時の環境に置かれないと、誰も何も答えは出せないよ。
その場にいたら、私もねー…
なんで参加したの?断れなかったの?
っていうのは今だから感じれる正常な感情。
続編の『