遠藤周作のレビュー一覧
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「富も力も虚しかぞ。」
諸行無常のこの世で、いつの時代も心に響くこの言葉。
世界は広い。そして人間の生は短い。人間が本当に求めるべきは、富や力ではなく、魂の救いであろうか。
しかし、人間の生が短いからこそ、存分にそれを火のように燃やして見せようとする者もいる。
この世に必要なのは、富か心か。目に見えるものか、見えないものか。
地上に全てを求める山田長政と、神の国に救いを求めるペドロ岐部との徹底的なまでの二項対立は、人間の価値観について深く考えさせられる。
しかしこの作品の素晴らしい点は、この両者の立場に価値判断を伴わず、完璧な中立で描かれている点である。
キリシタンである遠藤周作も、その一方で「個人と集団」という問題に直面し、苦悩し、それを追及しているのである。
江戸時代、外国など遠かったこの時代、遠い異国でこのような2人の日本人がいたのだと思うと、何とも言われない感慨が湧いてきた。 -
Posted by ブクログ
今までできるだけ多くの遠藤周作作品を読んできましたけれども、「感動」というか「感慨」を一番つよく感じた作品はこれかもしれません。
遠藤自身が病気に伏せる時期が長くあった時に実体験した内容をそのまま作品に投影しているようです。キリスト教信者の視点から見た死と生を病院にいる状況下での視点から描いていきます。
自分よりも病状の悪い患者の部屋を気にするようになったり、その病室が突然片付けられていることを遠目ながらに気づきその人の死を実感すること。遠藤周作の言葉がとても重たい説得力をもって生死に関わる重要な視点を記していきます。
ここから先は、本を読む予定の人は読んで欲しくないのですがこの作品の主人公・明石(つまりは遠藤自身)は病気から回復して退院し、妻と一緒に行くはずだった長崎を自分一人で旅することにします。そこで重たい体を引きずりながら生きて長崎をもう一度みたときの作者の感激を読むと、感動します。この作品が21世紀になってやっと発表されたということにも何か意味があるのではないかと思ってしまいます。
この作品が持つ大きな意味合いは、解説にも示されているとおり、作者の死後発表された作品であるということ。この解説文だけでも一読の価値有りです。
一番最初の「海と毒薬」を読んだときの遠藤文学の怖さというか人間の行動がいかにひどくむごたらしいものになりえるかを読んだときは衝撃的でしたし、その後に「死海のほとり」や「影法師」なども読みましたが、この「満潮の時刻」には遠藤作品全てに共通するテーマと人間の根元と宗教と絡んでいる数少ない作品です。ぜひ読んでみて下さい。 -
Posted by ブクログ
留学経験あり、フランスを巡ったこともあり、キリスト教徒になったこともあり、サド文学を読んだこともある私にとって、この本は、読むべくして読まれた!
「語学力が向上した」「日本文化の魅力を再認識した」「国境を超えた友達が出来た」 そんな楽観的な言葉が聞かれるような留学ではない、これは。遠藤周作のフランス留学の、深い苦しみに、悩みに、私は泣きそうだった。私たちは似たもの同士のような気がして。他の人がいとも簡単に出来ることが、出来ない。根本的な所に行き詰って、考え込んでしまう。私たち、相当人生に不器用ね。
西洋の大きなお世話。Leave me alone!
新しいモノ好き、欧米好きの日本人が、欧米人の大好きな「神」の概念を受け入れないのは何故?
「君のために・・・」この期待に耐えられる?プレッシャーだよ。
皆の期待が重くのしかかる。僕は皆の希望を担っている。皆の星。でも、そんなの鬱陶しい。そんな大役、僕には無理だ。お門違いだぜ。
空気を読む能力に長けているために、ノーと言えない日本人。はっきり意見を言えない日本人。
モラルと和を尊ぶ集団主義の日本人には、神の概念が必要ない。個人主義の欧米人にはお目付け役の「神」が必要不可欠。世界はそういう風にして出来ている・・・?
日本人って難しい。
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「外国文学と自分との違和感をたえず意識している人間」
「自分と全く異質で、自分と全く対立する一人の外国作家を眼の前におき、自分とこの相手とのどうにもならぬ精神的な距離と劣者としての自分のみじめさをたっぷり味わい、しかも尚その距離と格闘し続ける者」
「私生活でも精神の上でもあまりに隔たった人間」
外国文学者の苦しみ。老ハムハムもLewisと?でも、まるで彼と僕。サドとルネ。どうしようもない事実を突きつけられた時、人は自分を見失う。だめだ・・・レベルが違いすぎる!一生かかっても追いつけない!悔しい・・・!僕は愕然とした。