遠藤周作のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「富も力も虚しかぞ。」
諸行無常のこの世で、いつの時代も心に響くこの言葉。
世界は広い。そして人間の生は短い。人間が本当に求めるべきは、富や力ではなく、魂の救いであろうか。
しかし、人間の生が短いからこそ、存分にそれを火のように燃やして見せようとする者もいる。
この世に必要なのは、富か心か。目に見えるものか、見えないものか。
地上に全てを求める山田長政と、神の国に救いを求めるペドロ岐部との徹底的なまでの二項対立は、人間の価値観について深く考えさせられる。
しかしこの作品の素晴らしい点は、この両者の立場に価値判断を伴わず、完璧な中立で描かれている点である。
キリシタン -
Posted by ブクログ
今までできるだけ多くの遠藤周作作品を読んできましたけれども、「感動」というか「感慨」を一番つよく感じた作品はこれかもしれません。
遠藤自身が病気に伏せる時期が長くあった時に実体験した内容をそのまま作品に投影しているようです。キリスト教信者の視点から見た死と生を病院にいる状況下での視点から描いていきます。
自分よりも病状の悪い患者の部屋を気にするようになったり、その病室が突然片付けられていることを遠目ながらに気づきその人の死を実感すること。遠藤周作の言葉がとても重たい説得力をもって生死に関わる重要な視点を記していきます。
ここから先は、本を読む予定の人は読んで欲しくないのですがこの作 -
Posted by ブクログ
留学経験あり、フランスを巡ったこともあり、キリスト教徒になったこともあり、サド文学を読んだこともある私にとって、この本は、読むべくして読まれた!
「語学力が向上した」「日本文化の魅力を再認識した」「国境を超えた友達が出来た」 そんな楽観的な言葉が聞かれるような留学ではない、これは。遠藤周作のフランス留学の、深い苦しみに、悩みに、私は泣きそうだった。私たちは似たもの同士のような気がして。他の人がいとも簡単に出来ることが、出来ない。根本的な所に行き詰って、考え込んでしまう。私たち、相当人生に不器用ね。
西洋の大きなお世話。Leave me alone!
新しいモノ好き、欧米好きの日本人が、 -
Posted by ブクログ
得体の知れない幽霊モノというか、そういう作品集かと思って読んだのだが、違っていて、ちょっと残念(?)だった(笑)。
幽霊モノというより、日常にある人が起こす「人間ってこわい・・・」と思う作品たちだった。ちょっとした復讐の怖さもあれば、怖いというより、奇妙な話もあったり、人間の心理を上手く表現した話もあった。
一番気に入った話はドラキュラの話だった。
恐怖バー(店員がお化けの恰好をして、客を怖がらせるお化け屋敷とバーが合体した店)でバイトをした青年が、そこで女性客が次々と気分が悪くなるという奇妙な事件に遭遇する。青年は、バイト仲間がドラキュラで、女性の血を吸ったため、彼女たちは気分