遠藤周作のレビュー一覧

  • 海と毒薬

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    出だしの文章から海と毒薬はどう関係してくるのだろうと疑問に思った。
    言葉通りの「海」と「毒薬」というものが直接的に作品に出てくる訳ではなく
    話中において戦争が蔓延る海という世界で人間の為す罪や罰を毒薬として表しているのだと読み終えてから知るのである。

    目の前で人が殺されようとしているところを
    自分は手を加えていないから悪くないと、何もしていないのだとこれから起こることに自身だけ目を背ける勝呂の心情こそが人間の罪や罰、つまり毒薬になり得るのだと私は感じた
    勝呂は何もしていないのだ
    何も
    目の前で捕虜が解剖されるというのに
    何もしなかったのである
    何もしていないから悪いのでは無い
    何もしなかった

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    2024年08月18日
  • ひとりを愛し続ける本

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    ネタバレ

    作者自身の人生の振り返りみたいな話だった。
    ひとりを愛し続ける本というタイトルだったため独身者の話かそれとも純愛の話かどっちだと思い読んでいったらまさかのどっちつかずみたいな内容で驚いた。一応、愛し続けるの方はこの人と出会った縁を大切にという作者の考えはとても面白いと思った。
    昔はどうだか知らないけど今の時代は出会おうと思えばホントにいろんな人に出会えるため、この考えは結婚をするならば大切にしようと思った。
    愛の他にも女性と男性の違いを細かく書いていて、男の嫉妬や女の嫉妬の違いが特に面白かった。自分はやっぱり男の嫉妬である権力や地位に嫉妬しているためこの激情の宥めかたを今後どうしていくかが自身

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    2024年07月21日
  • 怪奇小説集 蜘蛛

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    針を読みたくて読んだけれど、怪奇小説の名の通りホラーというよりも奇妙な風味を楽しむ短編集。
    説明が足りない印象ではあるけれど、描写が適当なのでそれが更に風味を濃くしていて物足りないとは思わなかった。
    第三者の視点が描かれている中で、ふと読者の視点が入っているように感じた。読者自身も目撃者の1人であるように錯覚させられた。

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    2024年04月22日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    ルイ16世が処刑される前夜の様子が、泣けた。
    幼かった王妃が、苦境に立たされ、本当の王妃になった。その様をみせられたような思いがした。
    マルグリットという対照的な存在が、とてもうまく物語をひきたてている。
    おもしろい小説だった。
    史実と比べながら読むのも楽しかった。


    2001.11.10
    人間である限り、過ちもある。マリー・アントワネットは過ちも多かったかもしれないが、悪い人ではなかった。主要登場人物の関連性が面白かった。歴史の中に生きた人々を感じることができた。生きざま、死にざまというものにちょっと感動した。王妃である生きざまと死にざま。私は何者として生き、死ぬのだろう。確固たるものなく

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    2024年03月02日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    遠藤周作本人の母親について書かれた自伝的作品。
    没死去後に未発表作として発行された作品。
    彼自身、発行するつもりはなくとも、彼にとっては書かずにいられなかったであろう母に対する心の葛藤、愛情や憎悪や憐れみといったものが文章から手に取るように伺えれる。
    自分の足元に常にまとわりつく影のような存在。

    複雑な家庭環境であり、複雑な想いをずっと抱え続けていたのだろう。
    離婚後、母親がキリシタンとなり、彼自身11歳でカトリックの洗礼を受ける。
    彼が最後までキリシタンだったのは、母親の存在が大きく関係しているのであろう。

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    2024年02月29日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    読み易く、物語としても面白い。
    マルグリットの話をうまくからめて、マリー・アントワネットと対比させているところが、うまいと感じる。
    庶民と王室の違いを鮮明に描いている。
    首飾り事件までが上巻。

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    2024年02月25日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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     人が生きる上で母親に対して何かをしたいという想いは、大きな比重を占めているものだと思います。でもそのことを他人に素直に言うことはなかなかできないのです。遠藤周作が、生きている間に発表しなかった心情はとてもよくわかるような気がします。彼がキリスト教信者でい続けたのも、母親がそうだったからであり、そうでなかったらきっとキリシタンではなかったのだろうし、何度もキリシタンをやめようと思ったけれども、母親が一生懸命に信じた宗教だからそれを捨てることはできなかったのだ。
     そんな遠藤周作が母について書いた小説だ。きっとこれ以上突っ込むのが怖かったのだと思いました。

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    2024年02月22日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    三部会からバスティーユ牢獄襲撃、ヴェルサイユ行進、ヴァレンヌ逃亡事件、8月10日事件、そしてルイ16世・マリー・アントワネット処刑へ。

    こういう本を読むとどうしても国王夫妻に同情をしてしまうが、現代のフランス人はどう思うのだろうか。
    ところどころに、著者のキリスト教徒としての視点を感じ取れる。

    「わたくしたちは今、基督そのものに向かっているのよ。基督とは聖絵に描かれている姿ではないの。わたくしたちが目標として行動によって創りあげていく存在なの」(49頁)

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    2024年02月19日
  • 死海のほとり

    購入済み

    「イエスの生涯」にダブル

    この「死海のほとり」は、同じ、周作の「イエスの生涯」に先立って書かれたようですが、内容的にダブルところが多くて、「イエスの生涯」の方が完成度が高いように思えます。
    「イエスの生涯」を読めばよく、「死海のほとり」を読む必要なしと言えます。
    周作のイエスものとしては、やはり、「沈黙」がベストと思います。

    #癒やされる #共感する

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    2024年01月30日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    『沈黙』を昨夏に読んで以来、久しぶりに遠藤周作の作品を手に取った。
    彼の小説は、いつも私に疑問を問いかける。
    「神は存在するのか?」「真実の愛とは何か?」。
    小説の中に明確な答えが書いてあるわけではないけれど、こんなに真正面から真摯に読者に問いかけてくる作品ってあんまりないような気がして、なんだか嬉しくなってしまう。

    けれど相も変わらず、遠藤の作品はどれも暗い。
    この暗さと重さに堪えられず、そしてあまりにもミツが可哀想で、一度読むのを離脱してしまったほどだった。彼女の吉岡を思う一途な愛を、少し疎ましく感じることもあった。
    同じ女として、「あんな男のことなんて早く忘れて仕舞えばいいのに」と何度

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    2024年01月27日
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)

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    見知らぬ土地からでも飼い主のいる家へ戻っていく雑種犬のように、母という存在は死ぬまで薄れず心の原点になる。低く広がり続ける冬の雲のようでもあり、呪縛のような烈しいものでもあるらしい。
    没後発表の貴重な一作でした。

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    2024年01月25日
  • 新装版 海と毒薬

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    運命とは黒い海であり、自分を破片のように押し流すもの。そして人間の意志や良心を麻痺させてしまうような状況を毒薬と名づけたのだろう

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    2024年01月23日
  • ころび切支丹(キリシタン) 遠藤周作初期エッセイ

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    1950年、戦後初の留学生として
    日本の港を出た遠藤周作
    優秀だったんだ すごい
    学者になる予定だったが
    船の中で触れあった人々に影響されて
    小説家になる決心をする 四等船室で
    熱がある時に看病してくれた黒人兵
    ミカンをくれた中国人のおばさん
    寄港した港で金を請う5.6歳の少女
    黄色 白 黒の意味するもの
    クリスチャンの彼にいろんな感情が
    襲った事だろう

    ころび切支丹の話は知らなかった
    日本に宣教に来てころび
    日本名に改名して 弾圧される通訳を
    務める
    一人は死後焼かれて仏式で葬られる
    再生を信じるクリスチャンでは
    これはあり得ない事
    知らなかった

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    2024年01月07日
  • 王妃マリー・アントワネット(下)

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    上下巻とおして終始オリキャラのマルグリットがウザかった。もう一人のオリキャラのアニエス修道女が、歴史人物の某という設定がどうにも受け入れられず、少し残念な読後感に……。文体も辻邦生のようにもう少し端正なほうが好み。読みやすくはあるのだけど。

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    2023年12月02日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    上巻は王妃の首飾り事件まで。フェルセンが出てくるあたりから面白くなってきたけれど、王太子とあるべきところが皇太子になっているのが気になってしまって、いまいち集中できず……。

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    2023年12月02日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    ミツは愚鈍で教養もなく、美しくもないけれど
    心の優しさ、暖かさ、弱い他者への共感する力を誰にも教わることなく持っていた。
    自分もそれを理想として生きているけれど、そうなりきれることもなく打算やエゴイズムで世渡りしてきたこともあり、その経験、記憶を消し去ることはできない。
    私は神や特定の宗教を信じる者ではないので、生きていく指針は自分で構築していくしかない。
    自分の理想に恥じない生き方を省みるためにも、この話はとても沁み入るものだった。
    ラストの吉岡の諦観は後味悪く、鼻白むものがあった。
    色々な意味で、忘れられない一冊になった。
    読み始め、石川達三の「青春の蹉跌」と似た展開だと思ったが
    読後感は

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    2023年11月28日
  • 王妃マリー・アントワネット(上)

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    創作が多分に含まれてはいるとは思うが、ブルボン王政末期の状況を追体験できる。
    ルイ16世もアントワネットも完全な悪人ではないのが辛い。

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    2023年11月16日
  • 善人たち

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    宗教の深いところに触れた気持ち。
    ほんの少しだけど人生観変わるかも。
    今更だけど宗教って哲学なんだね。

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    2023年11月15日
  • 新装版 わたしが・棄てた・女

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    この作品は、出版社の意向で書かれたものであると思われる。
    面白く読んだ。内容は良いのだが、しかし、それまで読んだ色々な遠藤周作作品よりインパクトが弱い。
    本当に遠藤周作作品なのかと思えるような小説である。

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    2023年10月19日
  • 新装版 海と毒薬

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    戦時中の医療現場について。どうせ死ぬなら空襲で死ぬのも医学の発展のために死ぬのも同じである、いやむしろ後世の人々のために貢献している、という考え方は、当事者ではなく遠いところから聞くとなんとなく正しく思えてしまうのが怖い。そして、その状況を医学界の人間目線で描いていき、やはり罪の意識を持ち続けていくのをみて、倫理観について考えさせられた。

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    2023年10月02日