遠藤周作のレビュー一覧
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ネタバレ出だしの文章から海と毒薬はどう関係してくるのだろうと疑問に思った。
言葉通りの「海」と「毒薬」というものが直接的に作品に出てくる訳ではなく
話中において戦争が蔓延る海という世界で人間の為す罪や罰を毒薬として表しているのだと読み終えてから知るのである。
目の前で人が殺されようとしているところを
自分は手を加えていないから悪くないと、何もしていないのだとこれから起こることに自身だけ目を背ける勝呂の心情こそが人間の罪や罰、つまり毒薬になり得るのだと私は感じた
勝呂は何もしていないのだ
何も
目の前で捕虜が解剖されるというのに
何もしなかったのである
何もしていないから悪いのでは無い
何もしなかった -
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ネタバレ作者自身の人生の振り返りみたいな話だった。
ひとりを愛し続ける本というタイトルだったため独身者の話かそれとも純愛の話かどっちだと思い読んでいったらまさかのどっちつかずみたいな内容で驚いた。一応、愛し続けるの方はこの人と出会った縁を大切にという作者の考えはとても面白いと思った。
昔はどうだか知らないけど今の時代は出会おうと思えばホントにいろんな人に出会えるため、この考えは結婚をするならば大切にしようと思った。
愛の他にも女性と男性の違いを細かく書いていて、男の嫉妬や女の嫉妬の違いが特に面白かった。自分はやっぱり男の嫉妬である権力や地位に嫉妬しているためこの激情の宥めかたを今後どうしていくかが自身 -
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ルイ16世が処刑される前夜の様子が、泣けた。
幼かった王妃が、苦境に立たされ、本当の王妃になった。その様をみせられたような思いがした。
マルグリットという対照的な存在が、とてもうまく物語をひきたてている。
おもしろい小説だった。
史実と比べながら読むのも楽しかった。
2001.11.10
人間である限り、過ちもある。マリー・アントワネットは過ちも多かったかもしれないが、悪い人ではなかった。主要登場人物の関連性が面白かった。歴史の中に生きた人々を感じることができた。生きざま、死にざまというものにちょっと感動した。王妃である生きざまと死にざま。私は何者として生き、死ぬのだろう。確固たるものなく -
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人が生きる上で母親に対して何かをしたいという想いは、大きな比重を占めているものだと思います。でもそのことを他人に素直に言うことはなかなかできないのです。遠藤周作が、生きている間に発表しなかった心情はとてもよくわかるような気がします。彼がキリスト教信者でい続けたのも、母親がそうだったからであり、そうでなかったらきっとキリシタンではなかったのだろうし、何度もキリシタンをやめようと思ったけれども、母親が一生懸命に信じた宗教だからそれを捨てることはできなかったのだ。
そんな遠藤周作が母について書いた小説だ。きっとこれ以上突っ込むのが怖かったのだと思いました。 -
購入済み
「イエスの生涯」にダブル
この「死海のほとり」は、同じ、周作の「イエスの生涯」に先立って書かれたようですが、内容的にダブルところが多くて、「イエスの生涯」の方が完成度が高いように思えます。
「イエスの生涯」を読めばよく、「死海のほとり」を読む必要なしと言えます。
周作のイエスものとしては、やはり、「沈黙」がベストと思います。 -
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『沈黙』を昨夏に読んで以来、久しぶりに遠藤周作の作品を手に取った。
彼の小説は、いつも私に疑問を問いかける。
「神は存在するのか?」「真実の愛とは何か?」。
小説の中に明確な答えが書いてあるわけではないけれど、こんなに真正面から真摯に読者に問いかけてくる作品ってあんまりないような気がして、なんだか嬉しくなってしまう。
けれど相も変わらず、遠藤の作品はどれも暗い。
この暗さと重さに堪えられず、そしてあまりにもミツが可哀想で、一度読むのを離脱してしまったほどだった。彼女の吉岡を思う一途な愛を、少し疎ましく感じることもあった。
同じ女として、「あんな男のことなんて早く忘れて仕舞えばいいのに」と何度 -
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1950年、戦後初の留学生として
日本の港を出た遠藤周作
優秀だったんだ すごい
学者になる予定だったが
船の中で触れあった人々に影響されて
小説家になる決心をする 四等船室で
熱がある時に看病してくれた黒人兵
ミカンをくれた中国人のおばさん
寄港した港で金を請う5.6歳の少女
黄色 白 黒の意味するもの
クリスチャンの彼にいろんな感情が
襲った事だろう
ころび切支丹の話は知らなかった
日本に宣教に来てころび
日本名に改名して 弾圧される通訳を
務める
一人は死後焼かれて仏式で葬られる
再生を信じるクリスチャンでは
これはあり得ない事
知らなかった -
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ミツは愚鈍で教養もなく、美しくもないけれど
心の優しさ、暖かさ、弱い他者への共感する力を誰にも教わることなく持っていた。
自分もそれを理想として生きているけれど、そうなりきれることもなく打算やエゴイズムで世渡りしてきたこともあり、その経験、記憶を消し去ることはできない。
私は神や特定の宗教を信じる者ではないので、生きていく指針は自分で構築していくしかない。
自分の理想に恥じない生き方を省みるためにも、この話はとても沁み入るものだった。
ラストの吉岡の諦観は後味悪く、鼻白むものがあった。
色々な意味で、忘れられない一冊になった。
読み始め、石川達三の「青春の蹉跌」と似た展開だと思ったが
読後感は