沢木耕太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ思えば、ボクシングというのは独特なスポーツである。選手には過酷なまでのトレーニングと節制が求められる一方で、リングの下では大金が動き、怪しげな人士が跋扈する。試合と興行という言葉が矛盾なく同居する唯一の競技でもあるだろう。
いまからおよそ四十年ほども前、そんなボクシング世界の片隅に一瞬去来した光芒を、優れたルポライターが拾い上げて書いた。本書をごくかいつまめばそのようなものになるのだが。
実のところ、筆者自身はまるでボクシングというものに知識がない。本書に書かれる不世出の天才ボクサー、カシアス内藤という名前も初めて知ったていどである。混血のボクサーであり、かつては天才として一世を風靡 -
Posted by ブクログ
沢木耕太郎のボクシング小説。上下2巻。
40年前、小さなボクシングジムで共に世界を目指した階級違いの4人のボクサー。夢に破れ、それぞれ孤独な生活をしていた4人が再び一軒の家で共同生活を送りながら、知り合った若いボクサーを育て、世界チャンピオンに挑戦するお話。
とても面白い。上下二巻が気にならないくらいサクサク読めます。
でもね、マンガの面白さなのです。一試合毎に4人ぞれぞれの必殺パンチを若いボクサーに伝授し、それを使って見事なダウンを奪って行く。そんなストーリー立ても登場人物の設定も、なんか絵に描いたような稚拙さです。でも、流石に文章は上手いし、マンガなんだと割り切ってしまえば面白い話なのです -
Posted by ブクログ
令和になって読んでもっとも驚くのは、こんなふうに情熱をもって、「尽忠報国」の精神で働ける政治家がちゃんと日本に存在していたのだということ。
いまの政治家の実情を知っているわけではないが、そんな姿勢でまつりごとをしていれば絶対にこんなふうにはならないのではないかと、思えてならない。
下村治のゼロ成長理論への転換と、三島由紀夫の「世界の静かな中心であれ」を絡めた段には、常々自分が感じていることに非常に近いことがらが語られていたことにも膝を打つ思いがした。
経済大国であるという誇大妄想、これからも「高度成長」できるという嘘をかがげながら権力闘争に明け暮れる政治屋たち、「終活」を考える気のないこの国で -
Posted by ブクログ
沢木耕太郎が40年以上前に当時の若手のキレ者的な人々について書いたもの。世に出てきた頃の沢木さんの筆力を感じるのも面白い。さすがに随所で若さを感じる。自ら「人物紀行」と銘打っているけど、確かに人物評というわけではない著者のうるささがあまり入っていないのはいい。とはいえ、取り上げる人を選んだのは、唯一の女性である安達瞳子を除けば沢木さん自身であり、好みや興味が寄る人を取り上げていることにはなる。
取り上げているのは、尾崎将司、唐十郎、河野洋平、秋田明大、安達瞳子、畑正憲、中原誠、黒田征太郎、山田洋次、堀江謙一、市川海老蔵、小沢征爾という面々。45年くらい前に世に出てきた方々を、40年以上を経た現