沢木耕太郎のレビュー一覧

  • 世界は「使われなかった人生」であふれてる

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    タイトルに惹かれて。内容は、『暮らしの手帖』に掲載された映画評。映画を観てこれだけ何か人生に響くメッセージを読み解けるのって、実はすごいと思う。「使われなかった人生/ありえたかもしれない人生」「老いについて」「他者のことを理解することは可能か、そもそも自分自身をどのくらいわかっているか?」沢木さんの文章にはいつも自分を重ねやすいので、没入するように読んでしまいました。

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    2019年11月04日
  • 危機の宰相

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    池田勇人、田村敏雄、そして下村治。三人の人生が交差して戦後最大のキャッチーな政策「所得倍増」が誕生した。旧大蔵省という超エリート組織のLoserである三人が不思議な縁で結びつき、高度経済成長という経済主導の「新しい形の『強い国家像』」を牽引することになったのは歴史的必然なのだろう。池田内閣が組閣された1960年は安保改定という戦後脱却のエポックメイキングがあり、退陣した1964年は東京五輪開催の年であった。まさに時代の変革期にうまく日本国を成長軌道に乗せた、と振り返って今思う。

    沢木耕太郎氏の俊逸な取材力を文章力には毎度驚かされるが、本作品では下村治の再発見が特筆すべき点だろう。安定成長路線

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    2019年07月08日
  • 将監(しょうげん)さまの細みち 山本周五郎名品館IV

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    「山本周五郎名品館Ⅳ 将監さまの細みち」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)

    山本周五郎の短編集。相変わらずのクオリティ。
    この1冊で好きなのは「ひとごろし」。臆病で弱虫な侍が、剣の達人に向かってどう立ち向かうか、という一編ですが、なんとこれはユーモア小説です。クスッと笑える、エバーグリーンなユーモア小説なんだけど、その奥にちょっとぞっとするような人間観というか世界観があって、さすが。
    実はこれ、臆病者=松田優作、剣の達人=丹波哲郎という魅力的なキャスティングで映画にもなっていて、これが実はまだ未見なので先々の楽しみ。

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    2019年03月23日
  • 裏の木戸はあいている 山本周五郎名品館II

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    「山本周五郎名品館Ⅱ 裏の木戸はあいている」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)

    山本周五郎の短編集。
    相変わらずのクオリティ。
    「ちいさこべ」。火事に焼かれて家屋敷と両親を失った大工の若棟梁。同じ火事で行き場を失った孤児たち、その面倒を見る娘さん。
    三つ巴それぞれの事情が描かれるだけなんですけれど、こういうお話しが染みてくるのは、世界には理不尽な都合で孤独になったり死んでしまったり不遇になったり、自力でどうにもならないことが多くある、まあつまり人生は運不運次第の受け身なゲームである、ということが感じてくる年齢以降なんだろうか、改めて思いました。
    「ちいさこべ」は何度もドラマにもなっているらしく、

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    2019年03月23日
  • おたふく 山本周五郎名品館I

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    山本周五郎の名作短編9篇が、沢木耕太郎によって選ばれている。江戸期の武家や商人達とその妻や女性が温かい人情を示す。短編の中にその情を浮き立たせてくれる。昔の人はこんなに情が深かったのか、と半分疑いながらも楽しく読める。でも、人情は貧しいところに集まるのか?衣食足りて礼節を知る、という言葉もあるが、人情とは、礼節と次元の異なるものなのだろう。

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    2018年12月09日
  • 波の音が消えるまで―第1部 風浪編―(新潮文庫)

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    皆が怖くて、でも憧れる「果ての果て」に、私たちの代わりにいってくれた話。
    解説を読んで、さらに面白かったと思えた。
    最初のほうはかなり飛ばしてしまったけど、また機会があったら読み直してみようと思う。

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    2018年04月10日
  • 波の音が消えるまで―第3部 銀河編―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    日本に一時帰国し、束の間の平和な日々を送っていた主人公が心が通じ合いつつあった村田明美の制止を振り払い再びマカオに行く姿が渋くてカッコよかった。
    そう思うのは男だけだろうけど…

    死んでしまった劉さんの残した言葉
    「波の音が消えるまで」の意味を求めてバカラにのめり込んでいく。

    全てを失い後戻りするチャンスを捨ててバカラをする主人公。なぜそこまでやれるのか?
    客観的には没落しているが、果ての果てまで追求する姿に羨望の念を抱いてしまった。

    最後の50ドルだけで勝負していくところは緊張感があって引き込まれた。全てがあのシーンのためのフリだったように感じる。

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    2018年01月11日
  • 波の音が消えるまで―第3部 銀河編―(新潮文庫)

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    マカオでのギャンブルの話。ギャンブルが嫌い、苦手な人こそ面白いと思う。バカラなんか絶対したくないけど、必勝法はあるかもな。いや、しないぞ。

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    2018年01月10日
  • 波の音が消えるまで―第2部 雷鳴編―(新潮文庫)

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    まさにバカラ滞在記
    バカラに必勝法はあるのか?

    ギャンブルって溺れずに真剣に向き合えば、実に濃い人生を歩めるものなのではないかと感じた。

    これを読んでいると実際にマカオにいってやってみたくなる。

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    2018年01月11日
  • 波の音が消えるまで―第1部 風浪編―(新潮文庫)

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    偶然訪れたマカオで出会ったバカラ

    バカラの持つ熱に魅せられた主人公はどんどんのめり込んでいく。

    ギャンブルの最中はつねに自問自答。
    どこまで自分の信念を貫き通すことができるかが勝ちにつながる。

    主人公の内面の動きが上手く描けていて面白い。

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    2018年01月08日
  • 危機の宰相

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    安保危機のなか経済成長を遂げた1960年代の政治経済を 軽くまとめた本。危機を成長に変えたのは、池田勇人総理と そのブレーン達による「所得倍増」というスローガンにあるとした

    池田勇人が 魅力的に描かれている。次は 吉田茂→池田勇人→田中角栄を中心とした現代史や政治比較の本を読みたい

    「所得倍増」「日本列島改造」に比べて、今の政治スローガンは インパクトがない と思う

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    2017年06月18日
  • テロルの決算

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    1960年に起きた、右翼少年による社会党の浅沼委員長刺殺事件、を題材としたノンフィクション作品。

    物語は被害者と加害者である二人の生い立ち、事件当日の状況や現場に居合わせた人々の様子、そして事件後に残された関係者の行末を、とても鮮明に描き出している。

    防衛庁に勤める父親を持つ少年が、兄の影響により右翼活動に参加し、浅沼委員長をターゲットに定めるまでの経緯、そして浅沼氏が政治家を志し、書記長から委員長へと登り詰めた時代背景など、何の接点もない二人の人生が交錯する一瞬までの模様が、非常にスリリングに描写されている。特に、浅沼氏自身も多くを語らなかった、恩師である麻生久氏との関係に触れた、第三章

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    2017年03月11日
  • テロルの決算

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    沢木氏初の長編ノンフィクションということで良い意味で肩に力が入っている。中立的かつ硬派に、浅沼社会党委員長刺殺事件の背景を抉り出す。

    「あとがき」で著者が書いているように、本書は山口二矢とともに、浅沼稲次郎へも焦点を当てたことにより飛躍的に重層感増す作品となっている。戦後混迷期の少年による野党党首殺害というセンセーショナル性だけが現代でも語り継がれているが、山口二矢という極右的思想を持った一途で頑強な極めて稀有な人物がたまたま少年だったという事実と、党内紛と熱量低下でモチーフ化しつつあった浅沼稲次郎が至極不幸な形で交叉したのがあの3党首立会演説会であった。小林日教組委員長でも野坂共産党党首だ

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    2016年06月27日
  • 旅の窓

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    ネタバレ

    プロのカメラマンでない著者が撮つた写真が添えられた文章と一緒になって、ほんわかした気分にさせられる。

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    2016年05月29日
  • テロルの決算

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    沢木耕太郎の傑作と名高いので読んでおかねばと思って読んだ。浅沼稲次郎暗殺の全貌を膨大な取材と正確な筆致で炙り出している。終戦後の日本の政局や当時の右翼・左翼のあり方についてある程度の知識がないとややつらい

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    2016年03月21日
  • 危機の宰相

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    タイトルの危機の宰相とは、池田勇人のことである。
    本作は、彼とそのブレーンであった下村治、田村敏雄の3人に焦点を当てた物語である。
    池田勇人といえば「所得倍増」である。
    著者が戦後最大のコピーというこのキャッチーなコピーもさることながら、実現不可能と言われた経済成長率を彼らは見事に実現させた。
    紆余曲折を経て彼らは出会い、歴史の1ページに名を残した。
    一国の総理ですら挫折を味わったのだと思うと、親近感が湧くと同時に、当時の彼の想いを想像すると切なくなる。
    丹念に取材されていて、読みやすくとても面白かった。

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    2016年02月15日
  • ポーカー・フェース(新潮文庫)

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    沢木耕太郎による、『バーボン・ストリート』(1984年、第1回講談社エッセイ賞受賞作)、『チェーン・スモーキング』(1990年)に次ぐ、2011年発表のエッセイ集。2014年文庫化。
    複数のエピソードの間を魔法の絨毯で飛んでいるような、さり気なくも絶妙かつ緻密な構成は、相変わらずである。
    沢木氏はあとがきで、「『チェーン・スモーキング』を書き終えたとき、このようなスタイルのエッセイ集はもう出せないだろうと思った。「話のタネ」の入っている箱を逆さにしてポンポンとはたいてしまったような感じがしていたからだ。しかし、気がつくと、空っぽになってしまったはずのその箱に、友人や知人に向かってつい酒場で話し

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    2017年12月22日
  • 世界は「使われなかった人生」であふれてる

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    沢木耕太郎が、雑誌「暮らしの手帖」に連載した映画評から30篇を選び、前後に映画にまつわるエッセイを配してまとめた作品集(2001年出版、2007年文庫化)である。
    沢木氏は、代表作の『深夜特急』のほか、『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞(1979年)を受賞しているノンフィクション・ライターであるが、一方、『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞(1985年)を受賞し、辛口の山口瞳をして「エッセイを小説のように書く」と言わしめる類まれなエッセイストでもある。
    本書は、1947年生まれで50歳を越えた沢木氏が、お気に入りの映画を材料に、「有り得たかも知れないもうひとつの人生」という“人

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    2016年01月15日
  • 一瞬の夏(下)

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    ついに生活が逼迫し、仕事を始めてしまう。
    そして練習時間が取れなくなり、体に肉が付く。
    万全では無い状態でリングに上がらざるを得なくなる。
    そして敗北。
    ボクシングとは本当に厳しい世界だと思う。
    実力だけではなく、お金、周りの人の協力、特にひいきにしてくれる力のある人物などが、この世界で成功するためには必要なのだ。

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    2016年01月15日
  • 危機の宰相

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    池田勇人とそのブレーン下村脩、更に後援会の田村敏雄という大蔵省における敗者三人が、所得倍増計画を作って実行していく様子なので、果てしなく地味な話ではあるものの、なかなか皮肉な運命が散見されておっていやはや。

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    2015年11月25日