あらすじ
「使わなかった!」と意識したとき、初めて存在するもうひとつの人生。あのとき、別の決断を下していたら――。去りゆく女性を引き止めることができなかった初老の男、肉親以上に愛情を注いだ弟子に裏切られてしまう中年女性…。透徹した眼差しで作品の本質をつき、そこから浮かび上がる人生の機微を抑制の利いた筆致で描く全三十編の映画評。
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Posted by ブクログ
私は大勢で集まって大騒ぎをするのも決して嫌いではないが
一人きりでいるのも大好きだ。
が、
大勢でいると、しんどく感じる時もあるし、一人でいると寂しいな…と感じる時もある。
一体どうなんだろう?
この我儘な自分の心を満足させてくれそうな記事がここにあった。
>一人でいることは必ずしも寂しい事だけでは無く
楽しみや喜びにも繋がるものだ。
『単独』は『孤独』と同じ事では無い。
しかし
「ひとりきり」でいる事が「楽しみ」を生み出す為には
その状態を側面から補ってくれるものが必要となる。
それは、
離れて住んでいるとしても、どこかで繋がっている家族の存在であり、
会おうと思えば、いつでも会える友人の存在であり
いざと言う時、助けてもらえる隣人の存在であろう。
このうちのひとつかふたつの存在さえあれば、
「ひとりきり」が「楽しみ」につながる可能性は充分にあるのだ。
本書は映画評であるが
いい映画を観た後はしばらく席を立ちたくない。
あの余韻に浸っている時に心の底のほうから湧いてくる言葉のように心地よく読みやすい本だった。
いつかGETしなくては。
Posted by ブクログ
沢木耕太郎が「暮しの手帖」に連載していた映画評。
子供を映画館に連れていく以外に映画を観ない自分が、「この映画観てみたい」と思ってしまうような鋭い評分。
著者の映画評は監督/俳優に詳しく焦点を宛てる。また、その演技だけでなくどんな人生がその背後にあるのかも書く。そこは世界各地を旅した沢木耕太郎だけあって、遠く離れた現地の情景がありありと浮かび上がってくる。
その瞬間不思議と、映画で映されているのは、自分とは無関係の世界ではなく、もしかしたら自分にも相関する/していた人生なんじゃないかとふと思う。
Posted by ブクログ
『暮らしの手帖』の編集から沢木氏が頼まれて
書かれた映画評。書名でもあり導入部に書かれた
「使われなかった人生」というフレーズに惹かれました。
映画は見たい見たいと思いつつ腰が重くなっている
ことのひとつなので、少し映画に近づくために
読みました。
見たくなった映画は「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」
「タクシー・ブルース」「恋々風塵」「オリヴィエ・
オリヴィエ」「ワンダーランド駅で」
沢木氏にかかると映画評も一つの短編のように
味わい深いものでした。
編集から頼まれて始まった連載でしたが
「沢木さんが書かないと映画欄がなくなることになります」
(P316)というのはなかなかの脅し文句ですね。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて。内容は、『暮らしの手帖』に掲載された映画評。映画を観てこれだけ何か人生に響くメッセージを読み解けるのって、実はすごいと思う。「使われなかった人生/ありえたかもしれない人生」「老いについて」「他者のことを理解することは可能か、そもそも自分自身をどのくらいわかっているか?」沢木さんの文章にはいつも自分を重ねやすいので、没入するように読んでしまいました。
Posted by ブクログ
沢木耕太郎が、雑誌「暮らしの手帖」に連載した映画評から30篇を選び、前後に映画にまつわるエッセイを配してまとめた作品集(2001年出版、2007年文庫化)である。
沢木氏は、代表作の『深夜特急』のほか、『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞(1979年)を受賞しているノンフィクション・ライターであるが、一方、『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞(1985年)を受賞し、辛口の山口瞳をして「エッセイを小説のように書く」と言わしめる類まれなエッセイストでもある。
本書は、1947年生まれで50歳を越えた沢木氏が、お気に入りの映画を材料に、「有り得たかも知れないもうひとつの人生」という“人生の午後”に入って初めて意識するテーマをエッセイ風に綴っている。沢木氏はあとがきで、「私にとってこの一連の文章を書く作業は、心地よい眠りのあとで楽しかった夢を反芻するようなものだった」と語っている。
私は多くの映画を見る方ではないが、沢木氏が本書で「滅多に用いることのない「完璧」という評言を使ってみたい誘惑に駆られる」と語る、カズオ・イシグロ原作の『日の名残り』は、私の知り得る、「有り得たかも知れないもう一つの人生」への想いをテーマにした秀作である。
本書はエッセイ集としても十分に楽しめたが、沢木氏が本書を著した年齢に近づき、取り上げられた作品を一作ずつ見てみようかと思う昨今である。
(2013年8月了)
Posted by ブクログ
暮らしの手帖誌上での映画コラム(?)の中から抜粋してまとめたもの。
一応「使われなかった人生」をテーマにしてあるが、新旧東西有名無名を問わずランダムな構成。
読んでるとやっぱりその映画を観てみたくなる。
観ようと思っていて忘れていた映画を思い出させてくれたし、
個人的に好きな映画「フェイク」が取り上げられてたのが嬉しかった。
Posted by ブクログ
私も学生時代よく映画を見た。テレビの映画はほとんど見たし、ロードショーも出来るだけ見た。受験で勉強に集中しなければならない時期に2時間の映画を最初から最後まで集中して見た。
それがなければ、もっといい学校に行けたかもしれないが、映画が情緒的な部分私に与えた良い影響も計り知れない。
この作品は、作者が見た映画で印象に残ったものを、紹介している。簡単なストーリーも紹介してくれるので、そのドラマに引き込まれるようだ。実際に見たことのある映画はわすかだが、今後機会があったら、是非見たいと思った映画いくつかある。
Posted by ブクログ
映画評です。
いや、著者は「批評ではないのは無論のこと、・・・感想文ですらない」と書いているので、普通に映画評ではないですね。
映画を題材にして、まあ、大げさに言えば彼の哲学(?)、人生観(?)を語るような内容でしょうか。
取り上げられている映画は多種多様、ほとんど観たことのないものばかりでしたが、彼独自の視点で解きほぐされていて面白かった。
学生時代には毎日のように観ていた映画。
この本を読んで、またいろいろな映画を観たくなりました。
そう・・・行ったことも、行くこともないかもしれない国に触れ、旅をするように。
そして、使われなかった人生を辿り・・・ありえたかもしれない人生を追憶するように。
【収録作品】
『天使のくれた時間』
『マダム・スザーツカ』
『偶然の旅行者』
『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』
『日の名残り』
『バグダッド・カフェ』
『シルビーの帰郷』
『スピード』
『髪結いの亭主』
『タクシー・ブルース』
『黄昏に燃えて』
『フィッシャー・キング』
『恋恋風塵』
『アンフォギブン』
『人生は琴の弦のように』
『オリヴィエ オリヴィエ』
『グレイスランド』
『青いパパイヤの香り』
『ダンス・ウィズ・ウルブズ』
『運動靴と赤い金魚』
『フォーリング・ダウン』
『春にして君を想う』
『ムトゥ踊るマハラジャ』
『17歳のカルテ』
『ワンダーランド駅で』
『ローサのぬくもり』
『フェイク』
『八日目』
『ペイ・フォワード 可能の王国』
『セントラル・ステーション』
『トゥルーマン・ショー』
Posted by ブクログ
本書は映画感想文です。とても好きなタイプの映画評でした。オリヴィエオリヴィエ。八日目。髪結いの亭主。運動靴と赤い金魚。バグダットカフェ。この5本。鑑賞したことがなかったら6月は雨だしどこにも出かける用事がなくって暇してたらぜひご覧になってみたらいかがでしょうか。きっと観てよかったとなる映像作品たちです。
Posted by ブクログ
6/20 映画評というより沢木耕太郎が一つ一つドラマを語っているようだった。知らない映画でも楽しめた。すきっとしている文章も魅力的。自分の「使われなかった人生」に想いを馳せた。
Posted by ブクログ
沢木耕太郎の映画エッセイ集『世界は「使われなかった人生」であふれてる』を読みました。
沢木耕太郎の作品は、2年前に読んだ『不思議の果実―象が空を〈2〉』以来ですね。
-----story-------------
「使われなかった人生」とは何だろう。
それは、いまここにある自分の人生でなく、もう1つの可能性として「ありえたかもしれない人生」にほぼ等しい。
しかし、それら2つの言葉の間には微妙な違いがある。
「ありえたかもしれない人生」には手の届かない夢といった意味合いがあるが、「使われなかった人生」には具体的で実現可能な人生という意味が込められていると、著者は言う。ほんのちょっとした決断や選択で、手に入れられなかった人生。
著者は、歳をとるにしたがって、いつの間にかそんな「使われなかった人生」を映画の中に探し求めるようになったという。
ここに収められた30編の映画時評と映画にまつわるエッセイ2編では、いわゆる強くて格好いいヒーローやヒロインが主人公の映画は取り上げられていない。
スクリーンを見つめる著者の目に留まるのは、目の前にいる少年の才能にかつての自分を投影した中年女性であり(「出発するための裏切り」)、異国の町で自らを覆っていた殻を破った女性であり(「天使が砂漠に舞い降りた」「父に焦がれて」)、かつて恋心を抱いた女性と再会した初老の男(「飛び立つ鳩を見送って」)であったりする。彼らにとって、「使われなかった人生」は未来と同じ重みを持っている。
著者は、そんな彼らを静かに見つめている。
ときに冷静すぎるほどの抑制された筆致をもって。(文月 達)
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家庭向け総合生活雑誌『暮しの手帖』に連載された『映画時評』から30篇を選んで、2001年(平成13年)に刊行された作品です。
■世界は「使われなかった人生」であふれてる
■出発するための裏切り
■薄暮の虚無
■にもかかわらず、よし
■飛び立つ鳩を見送って
■天使が砂漠に舞い降りた
■焼き払え!
■最後まで降りられない
■官能的にしてイノセント
■不可視の街で
■敗残の可能性
■海を待ちながら
■郷愁としての生
■もう終わりなのかもしれない……
■行くところまで行くのだ
■悲痛な出来事
■プレスリーがやってきた
■水と緑と光と
■滅びゆくものへの眼差し
■貧しさと高貴さと
■切れた絆
■老いを生きる
■新しい世界、新しい楽しみ
■わからないということに耐えて
■男と女が出会うまで
■ひとりひとりを繋ぐもの
■懊悩に沈黙が応える
■笑い方のレッスン
■夢に殉ずる
■父に焦がれて
■神と人間
■そこには銀の街に続く細い道があった
■あとがき――心地よい眠りのあとで
「使わなかった!」と意識したとき、初めて存在するもうひとつの人生。あのとき……別の決断を下していたら――。
去りゆく女性を引き止めることができなかった初老の男、肉親以上に愛情を注いだ弟子に裏切られてしまう中年女性……透徹した眼差しで作品の本質をつき、そこから浮かび上がる人生の機微を抑制の利いた筆致で描く全30篇の映画評。
沢木耕太郎のモノの見方や価値観って独特で、それが好きなんですよねー 一般の映画評論家とは異なる沢木耕太郎の視点で語られる映画に対する評価を愉しめる一冊でした、、、
好きな作品が良い評価を得ていると、やはり嬉しいもので……『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』や『バグダッド・カフェ』、『スピード』、『許されざる者』、『青いパパイヤの香り』、『友だちのうちはどこ?』、『ロッキー』 等々、ジャンルや時代はバラバラですが、久し振りに観たくなりましたね。
観たことのない作品では『オリヴィエ オリヴィエ』の評価が気になった……観てみたいなぁ。
Posted by ブクログ
映画を通してみる人生。映画を見ることは、何か、自分が行かなかった人生を擬似体験することに似ている。どの作品評も映像が蘇るくらいに描かれていて、見てみたいと思ってしまう。
Posted by ブクログ
どの映画も見たくなる。恥ずかしながら「スピード」「ダンスウィズウルブズ」「ムトゥ踊るマハラジャ」「トゥルーマンショー」しか見たことない。あと、本のタイトルと内容はあまり関係がない。
Posted by ブクログ
ある雨の朝、私は会社に入るのをやめることにした。だがあのまま入っていたら、会社員としての人生が始まっていた。つまり、私は会社員としての私の人生を使わなかったのだ。では、それが私にとっての「使われなかった人生」なのだろうか。
映画評とは知らずにタイトルにひかれて読んだけど映画そのものに非常にひきつけられるものがあった。"
Posted by ブクログ
小山薫堂さんのブログがきっかけで買いました。
元々沢木さんの「深夜特急」は読んでいたけれど、これまたタイトルに惹かれて。
なんとも哀愁を感じる本です。
秋の夜長にぜひ。
Posted by ブクログ
@yonda4
タイトルに惹かれて購入。
かなりマイナーな映画をとりあげている映画批評。まずはそれらの映画を観ないと、内容に共感することは難しい。
ただ不思議と、観なければ!という衝動に駆られる。
Posted by ブクログ
映画評だと知らずに買ったけども、おもしろい視点だった。たしかにその通りだよね。『トゥルーマン・ショー』とか『セントラル・ステーション』とかまた観たくなった〜