沢木耕太郎のレビュー一覧

  • 一瞬の夏(下)

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    ボクサー、カシアス内藤の復活にまつわる人間ドラマ。一度破れた、韓国のボクサー柳に対戦を申し込み、リベンジに挑戦する。

    上巻とかなり話が変わってくる下巻。というのも、作者自身が試合のマッチングやそのための金策をする話が多く、そこでスポーツに関係のない、人間の嫌な部分が、これでもかというくらいに描かれる。

    不謹慎ながら、そこが一番面白かったのは、冷静な筆致ながら、かなり感情が顕になっていたからであろう。

    試合結果は結局ダメで、ダメなりのハッピーエンドというのは予想していたが、グーッと上下2巻で引っ張って、割とあっさりなのは、個人的には好感を持った。こういう作品だと、試合こそ全て、という具合に

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    2015年09月05日
  • 一瞬の夏(下)

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    纏わりつくような粘度の高い人間ドラマ。次から次に起こる問題はノンフィクションを疑わせるほどだが、そこにある結末は残酷であり一抹の希望を感じさせるものである。

    決意と現実に揺れる内藤、柳戦をマッチメイクするためのハードな交渉を担う沢木、内藤とエディとの強い信頼関係の裏にある極度に脆い緊張状態。すべては何のための闘いなのか。そこ先に何があるのか。目指した「いつか」は見つかったのか。

    読む人にとっては内藤たちの格闘は大いなる敗北に映るかもしれない。朴戦に至るまでの1年の行跡は無駄足に映るかもしれない。しかし理亜ちゃんを膝の上に乗せて思い出した沢木氏の本心と、理亜ちゃんの笑顔は、不要なことはない偶

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    2015年08月24日
  • 一瞬の夏(上)

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    本書はルポとはいえないかもしれない。筆者が被写体に入り込み自分の抱える閉塞感や焦燥感を内藤へ重ね託す。才能ある者は湯水の如く湧く才能を浪費し才能が疲弊し喪失しかかったときに取り返しの付かなさに気付き再起を図るのかもしれない。ニューオリンズでのカシアス・クレイ(アリ)の復帰戦はショービジネスと化した何とも言えない物悲しい残骸感が漂う。試合前の計量者やマネージャーの態度は戦う者への敬意が欠如した見世物に成り下がった実情を感じさせられる。

    一方、カシアス内藤や大戸のボクシングへの真摯な姿勢に対して本番でのある種期待はずれの不完全燃焼な出来は弥が上にも現実は常にドラマチックとは限らない現実を突きつけ

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    2015年08月09日
  • ポーカー・フェース(新潮文庫)

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    もう十年以上前「チェーン・スモーキング」、「バーボン・ストリート」を読んでいたのだが、久しぶりに沢木さんのエッセイを読んだ。
    いろいろな体験をしている沢木さんだけあって、さすがに話題は豊富。ただ、話があちらこちらに飛ぶ印象があり、腰の座らない読後感・・・。
    一章をもう少し短くして、焦点をわかりやすくした文章の方が自分の好み。

    ☆4個

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    2015年07月15日
  • 一瞬の夏(下)

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    人生の中で凝縮された時間

    「優しさ」はボクサーにとってはマイナス

    人生にとっては必要なことかも・・・

    最終章のリアでなんか救われた・・・

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    2015年03月27日
  • 一瞬の夏(上)

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    もう40年前の出来事であるのに、全然古めかしい感じはしない。才能があるが今は落ちぶれたボクサーと、不遇なトレーナー、自分の人生に思いを重ねた私が、再起をかけて闘いをいどむ物語。
    私ノンフィクションの金字塔と評価される作品だが、小説としても評価できる作品。

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    2015年01月31日
  • ポーカー・フェース(新潮文庫)

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    以前は普通に沢木さんの文章を読んでいたけれど、いま、改めて読むと、その表現の的確さに驚かされる。端的に分かりやすく、そしてかつカッコいい。こんな文章を書ける人間になりたいものだ。
    沢木さんのエッセイは久しぶりに読んだので、あまりにストレート物言いや経験の豊富さにのめりこんだ。
    良い文章を読むと、良い文章が書ける気がする。やっぱりすごい人なんだなぁ。

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    2014年09月17日
  • ポーカー・フェース(新潮文庫)

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    やっぱり上手いなぁ、と思う。バーで友人と話しているときのように、ある話がまた別のある話につながり、それが全くの自然で何がきっかけで今この話してるんだっけ?というくらい軽やかに流れていく。さすがの貫禄、筆力。チェーン・スモーキングとバーボン・ストリート、もう10年も前に読んだ本だけど、再読してみよう。

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    2014年07月05日
  • 一瞬の夏(上)

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    カシアス内藤という実在するボクサーの再起を描いたノンフィクションの前編。下巻を読み終わってないので細かい感想はまだひかえる。今のところは面白く読めている。

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    2014年06月30日
  • 危機の宰相

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    確かに所得倍増って言われても、
    それは月給のことなのかGDPのことなのか、
    はたまた他の何かなのか、言われてみると良く分からない。
    後の世代に生まれた者としては、
    とにかく「景気の良い時代だったのだ」、
    というだけの印象が大きい。

    そういう曖昧模糊とした「所得倍増」の成立ちを、
    池田勇人、田村敏夫、下村治の生を通して視ていくのは面白い。
    そこには様々な意図、偶然、思想、人が絡んでいたのだ。

    「テロルの決算」もそうだったが、
    読むことで近代史に目を向けたくなると思わせてくれるところが、
    この本の素晴らしいところだと個人的に感じる。

    「未完の六月」は是非書いてほしかったが。

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    2014年05月03日
  • 一瞬の夏(下)

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    大のボクシングファンなので期待して読んだが、期待に応える内容だった。ボクサーの生活や試合を興業として行うまでの過程のリアリティーが素晴らしい。そしてすべてが終わった後の締めくくり方も秀逸で本当に引き込まれた。

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    2014年04月30日
  • 危機の宰相

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    所得倍増という池田政権下でのあまりにも有名なスローガン、未来を知る者にとっては時代の趨勢として割合に自然と実現したかのような印象をもっていたせいか、スローガンが世に踊る前、そして高度成長期においても大半の学者、政治家は高度成長に懐疑的、批判的であったんだということに、ちょっと驚く。スローガンだけに終わらせず、実現を信じて政策を実行させる力となったのは財務エリートたる大蔵省の中枢、ではなく、それぞれ出世コースから一度離脱を余儀なくされた敗者の3人だった。
    人の縁、時の運、いくつもの偶然が隠されていたんだなぁと、あとがきを読みながらじんわりとした。
    ノンフィクションの醍醐味を味わえる一冊では?

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    2014年01月21日
  • オリンピア ナチスの森で

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    ネタバレ

    冒頭はベルリンオリンピックの記録映画、「民族の祭典」と「美の祭典」を撮ったレニ・リーフェンシュタールのインタビューから始まります。そこでタイトルからオリンピックとナチズムについてずっと書かれているのかと思いきや、その後は日本選手団の勝者、敗者の記述がメインに。ほとんど予備知識のなかったベルリン五輪ですが、プレッシャーで自滅する者、土壇場でも力を出し切って結果をだす者、メンタル面で結果が左右されるのは現代の五輪でも同じ。なかなか興味深く読めます。

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    2013年12月01日
  • 「愛」という言葉を口にできなかった二人のために

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    この本に出てくるのは、様々な映画作品。有名無名を問わず、いろいろと取り上げられて、著者の感想や思い出と共に語られる。

    私にとっては、見た作品よりも、見たことのない作品の方が圧倒的に多かった。けれど、読んでいるうちに、とても観たくなりいくつかは実際に観て、より作品の世界に浸ることができた。

    タイトルからは切ない感じを受けるけれど、読んだり観たりすれば、きっとそれ以上のたくさんの思いを感じることができるはず。

    映画好きでもそうでなくても、きっと新しい発見ができる一冊。

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    2013年02月25日
  • 危機の宰相

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    所得倍増をキャッチフレーズに高度成長を突き進んだ1960年代について池田勇人・田村敏雄・下村治を中心に描いたノンフィクション。デフレで給料も上がらない今、「所得倍増」に現実味があった時代がうらやましく思える。池田・田村・下村は3人とも大蔵省のなかでは敗者に見られていたという切り口は面白い。もっとも、通常の敗者ではありえないんだけど。

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    2013年02月05日
  • 一瞬の夏(下)

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    東洋チャンプにまでなったあと
    ずるずると姿を消したボクサー「カシアス内藤」

    その復帰への道筋を、描いた作品

    内藤に惚れ込み、すべてを共に歩んだ作者の文章だけに
    内容が迫ってきます

    夢と現実、努力と失意、挫折・・・

    それでもボクサーって
    戦うことをやめられないんだね・・・

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    2013年01月12日
  • 一瞬の夏(下)

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    ノンフィクションということもあり、沢木作品ということもあり、やはりと言うべきか読後感にカタルシスはなくある意味消化不良満載だが、それこそが人生というものだろう。
    絶えず選択を迫られ、それにつき自問自答を繰り返す。
    「勝たなければ」と思う時もあれば、それだけではないと思い返す。
    濃密に普遍的な人生を描き出しているこの作品に爽快感など求めてはいかんでしょうな。

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    2012年11月17日
  • 一瞬の夏(上)

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    ネタバレ

    小説のような本当の話。

    人間臭さがボクサーとしては仇になってしまう主人公と、彼を支える沢木たちとが共に、世界チャンピオンを目指し夢を語る場面では、何度もその場にタイムスリップしたような感覚に陥る。

    ノンフィクションならではの結末が、プロスポーツの厳しさを表している。

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    2012年09月02日
  • オリンピア ナチスの森で

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    レニ・リーフェンシュタールの「民族の祭典」と「美の祭典」の二部作、通称「オリンピア」を主軸に、日本人と当時日本人とされた参加者達を描く1936年のベルリンとその後。

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    2012年05月21日
  • 一瞬の夏(上)

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    沢木耕太郎のスポーツのほうは初めて。

    文章自体が好きなわけじゃないので、
    紀行モノ以外はどうかなと思ったけど…
    意外によいです。
    やっぱり彼の人間の見方がいいのかな。

    ボクシングに
    夢に
    熱くなるひとたち。

    ノンフィクションだから、
    結末は「ああ、まぁこんなんもんか」で終わる可能性がずっと高い。
    でも時に、フィクションをはるかに上回るものが出ることもある。
    その時のためにも、成り行きを見続けていたいな。

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    2012年04月01日